"天邊一朶雲"
2005年台湾
監督)ツァイ・ミンリャン
出演)チェン・シャンチー リー・カンション 夜桜すもも ルー・イーチン ヤン・クイメイ
満足度)★★★★ (満点は★5つです)
シアター・イメージフォーラムにて
全土が記録的な水不足に襲われ、水の代用品として西瓜ジュースが飛ぶように売れている台北。
女(チェン・シャンチー)は男(リー・カンション)と出会い(再会し)淡い恋心を抱くが、男はAV男優として身をたてていた。
5、6年前でしょうか、大島渚の『愛のコリーダ』のノーカット版が上映され僕もいそいそと観にいったのですが、これが噂に違わぬ名作で。
製作当時(1976年)の基準からすると思い切った猥褻表現だったのかもしれませんが、21世紀に生きる僕達から観るとそれはまあそんなにビックリするほどのものではなく。
だからこそ、と言っても良いかと思うのですが、その分クッキリと僕の心に残ったのはその純愛映画としての素晴らしさ。
果てしない愛欲の末に行き着くところまで行ってしまうふたり。
全てを捨てて求め合う男女の姿、これは紛れも無く純愛映画に思えたのでした。
この『西瓜』にも、同種の手触りを感じました。
インパクト大なAV撮影場面やシュールで過剰なミュージカル・シーンを濾過してみたらそこにはしっかりと純愛成分が残っているという。
気を失ったAV女優と交わる男と、窓越しにそれを見つめる女。
目があった二人がお互いに感応し絶頂に到る。
ツァイ・ミンリャンらしい過剰に長いこのシーンの緊張感たるや、何だか観ているこっちが逃げ出したくなる位で。
だけど、同時に切なくもあるんです。
強く求め合う二人なのにお互いの体を感じあうことが出来ず、他人の体を介して絶頂に達するというその構図が。
西瓜を被ったり、秘宝館みたいな格好をしてお笑いスレスレの体当たり演技を見せるリー・カンション、この怪しげな作品の中でも清明さを失わないチェン・シャンチー、両名のギリギリ演技も特筆です。
しかしあのミュージカル・シーンの数々、どれも何だかものすごいことになってましたが、意外とオシャレだと思うのは僕だけでしょうか?