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セルロイドの英雄

ぼちぼちと復帰してゆきますので宜しくお願いしまする。

【映画】トリノ、24時からの恋人たち

2006-09-18 13:12:58 | 映画た行

"Dopo Mezzanotte"
2004年イタリア
監督)ダヴィデ・フェラーリオ
出演)ジョルジョ・パゾッティ フランチェスカ・イナウディ ファビオ・トロイアーノ
満足度)★★★ (満点は★5つです)
ル・シネマにて

トリノの映画博物館”モーレ・アントネッリアーナ”で夜警として働く内気なマルティーノ(ジョルジョ・パゾッティ)は秘かに近所のハンバーガーショップで働くアマンダ(フランチェスカ・イナウディ)に思いを寄せるているが、彼女にはアンジェロ(ファビオ・トロイアーノ)という薄情な恋人がいる。
ある夜、店長と悶着を起こし警察を呼ばれたアマンダがマルティーノの働くモーレに逃げ込んでくるが・・・。
一人の女と二人の男の三角関係を、トリノと映画への愛情を込めて描いた作品。

トリノには仕事で何回か行ったことがあるのですが工業都市というイメージが強かったし、実際イタリア人も「あそこはつまらない街だ」みたいなことを言っていたのであんまり観光しよう、という気にはならなかったのですが。
そうですか、こんな立派な映画博物館があったのですか!
これは至福ですよ。
古い映写機やら往年のスターのピンナップやら古典作品のフィルムやら。
その後転職して今更トリノに行く機会なんて無いので、とても残念です。

さて、この作品の主人公のひとりマルティーノはそんな映画博物館に住み込み(!)の夜警として働いており、人気の無い夜中には古いフィルムを観放題、自分が古い手回しカメラで撮りためた映像を編集し放題な、何とも羨ましい生活を送っているのです。

但しその生活は生身の人間の生活とはバッサリと切り離されていて。
ほとんど現実の人間と交わらない無口な彼から見える世界は現実と映画、しかも思いっきり古い映画がごっちゃになっている。
現代のトリノの電車を撮ってそれをリュミエール兄弟の『列車の到着』となぞらえてみたり。彼から見た現実の世界は全てカメラを通して見たかのようなロマンに溢れているわけです。

そんな彼の生活に映画のように飛び込んできたジーン・セバーグのような女性アマンダがまた映画的で。決してとんでもなく美人というわけではないんだけどそこにいるだけで絵になっています。

彼女をきっかけとして現実の世の中と接点を持ったマルティーノではあるのですが、その立ち居振る舞いはそこまでも映画的。
アマンダの彼氏アンジェロと渡り合う彼の仕草は敬愛するバスター・キートンのようだったり、現実の世界に一歩踏み込んではみたもののまだそこは映画博物館の自分の世界の延長に思える。

終盤、映画博物館を後にし現実に生きることを決意するマルティーノ。そのラスト・シーンまでが古い映画のラストのようで。
結局、最後まで映画から逃れられないマルティーノをスクリーンの向こうに見つめる自分こそが映画から逃れられていないことに思い至り、不思議な感慨を覚えたりするわけです。
コメント (2)
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【映画】ダック・シーズン

2006-06-05 00:55:58 | 映画た行

"Temporada de Patos"
2004年メキシコ
監督)フェルナンド・エインビッケ
出演)ダニエル・ミランダ ディエゴ・カターニョ エンリケ・アレオーラ ダニー・ペレア
満足度)★★★★☆ (満点は★5つです)
シアター・イメージフォーラムにて

メキシコ・シティーのアパートメント。
ピザを頼みテレビ・ゲームに興じる留守番中の14歳の少年フラマ(ダニエル・ミランダ)と親友のモコ(ディエゴ・カターニョ)。ケーキを作るために台所を借りに来た高校生のリタ(ダニー・ペレア)とピザの配達人ウリセス(エンリケ・アレオーラ)。
4人の登場人物がひとつ屋根の下過ごす日曜日の昼下がりを淡々と描くメキシコ産コメディー映画。


最近ライブ・ドキュメンタリー作品『The Long Season Revue』も公開され、その根強い人気を改めて再認識したフィッシュマンズなのですが、彼らに『宇宙 日本 世田谷』というアルバムがあります。
世田谷と地続きの宇宙、世田谷という日常が内包する宇宙―。
色々なニュアンスが感じられてなかなか印象的な題名なのですが、そういう意味で言えば、さしずめこの”メキシコのジャームッシュ”エインビッケ監督の処女作『ダック・シーズン』は『宇宙 メキシコ トラテロルコ』でしょうか。

この作品、基本的にはメキシコ・シティーの(パンフレットによると)トラテロルコ地区にあるアパートでほぼ全てのお話が展開します。だけどこの作品、僕にはとても大きな広がりが感じられた訳です。

主要な登場人物はどこにでもいるような中学生に女子高生、そしてさえないピザの配達人。全くもってアンチ・ドラマチックな人物設定。このどこにでもいる登場人物たちが狭い空間で時には小競り合いし、時にはじゃれあい、を繰り返すだけの作品なのですが、その中で4人それぞれが持つ悩みとか問題とかが徐々に明らかになってゆき、それを認識した彼らは一種の連帯感を持つに至る。

そんな4人がじっと見つめるのは居間に掛けられたアヒルの絵。飛び立ったばかりのアヒルを描いたその絵を、それぞれがそれぞれの思いを持って見つめる様がジワリと感動的なのです。
大袈裟に言えば、狭い家という枠組みの中でその絵こそが世界への、宇宙への入り口に思えるような。

ミニマルな設定なのに、というかだからこそ際立つこの広がり。
初監督作らしいこの瑞々しいこの『ダック・シーズン』、僕は断然支持します。

最後になりましたが主題歌について一言。この作品の冒頭で掛かるナタリア・イ・ラ・フォルケティーナの"O Pato"(アヒル)。ボサ・ノヴァの巨匠ジョアン・ジルベルトの名曲"Un Pato"をスペイン語でカバーした作品なのですが、とんでもなくキュートで。サントラが出てないものだから、この曲が入っている彼女らのCD"Casa"探しまくってしまいました。
やっと見つかったときはうれしかったなあ。
2分ちょっとのこの曲、只今我が家で大ヘビー・ローテーション中であります。
コメント (8)
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【映画】ドッグ・デイズ

2006-05-29 00:39:19 | 映画た行

"Hundstage"

2001年オーストリア
監督)ウルリヒ・ザイドル
出演)マリア・ホーフステッター アルフレート・ムルヴァ エーリヒ・フィンシェス ゲルティ・レーナー フランツィスカ・ヴァイス ルネ・ヴァンコ クラウディア・マルティーニ ヴィクトール・ラートボーン クリスティーネ・イルク ヴィクトール・ヘンネマン ゲオルク・フリードリヒ
満足度)★★★★ (満点は★5つです)
シアター・イメージフォーラムにて

無目的にヒッチハイクを繰り返す女。異常に嫉妬深い恋人に悩む若い女。子供を交通事故で亡くし離婚した後も同じ家に同居する元夫婦。家政婦に亡き妻の服を着せストリップをさせる偏屈な老人。酒に酔った恋人とその友達によって乱暴な仕打ちを受ける女教師・・・。
夏のある日、ウィーン郊外の住宅地で繰り広げられる異常な人間模様を描いた群像劇。
2001年度ヴェネチア映画祭審査員特別大賞受賞作。

かのヘルツォークが「私はザイドルほどには地獄の部分を直視してはいない」とのたまわった、という不快作。

ウィーン郊外の小奇麗な住宅地、登場人物達はまあ普通の人々。
群像劇とは言え全ての挿話が最後に鮮やかにつながったり、ドラマチックに展開したるするわけでもなく。

じゃあ、何が「地獄」なのかと言うと、それはもう登場人物達の存在そのものが地獄、としか言いようが無い。身も蓋も無いですが。

この映画の登場人物達、とにかくその一挙手一投足がとにかく醜い。
デップリした腹を見せながらストリップするメイドの女性とそれを見つめるやはりデップリした老人。
乱交パーティに出入りする中年の女性。
若い恋人を待つ間念入りに化粧をする女教師。
その体型、その行動、その言葉、全てがとにかく醜悪。

そして狂言回し的に登場するヒッチハイカー・アナ。ある意味無垢な存在である彼女にも監督は容赦ありません。拾って貰った車の中で無邪気に人の欠点を指摘したり、聞かれても無いのになりやすい病気ベスト10をべらべら喋り続ける彼女もとにかく不快。
物語の終盤で彼女にある悲劇が訪れるわけですが、それさえも当然の報いにさえ見えてしまう。

この作品の登場人物、ほとんどが演技経験の無い素人の方々が演じているようです。
僕はこれがこの作品のミソだと思います。つまり、これがプロの役者が演じていたら、不快さをうまく演じてしまい、もっとフィクショナルになってしまったような気が。
素人だからこそ、自然に不快さを出せたというか。
もっと言ってしまえば、演じなくても普通の人間というのはそこにいるだけで不快なものなのかもしれず、それがまさにヘルツォークがこの作品に感じた地獄なのかもしれません。
コメント (6)
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【映画】ドア・イン・ザ・フロア

2005-10-29 17:56:23 | 映画た行

"The Door in the Floor"
2004年アメリカ
監督)トッド・ウィリアムズ
出演)キム・ベイジンガー ジェフ・ブリッジス ジョン・フォスター エル・ファニング
満足度)★★★ (満点は★5つです)
恵比寿ガーデンシネマにて

マリアン(キム・ベイジンガー)とテッド(ジェフ・ブリッジス)のコール夫妻は2人の息子を事故で亡くして以来満たされない結婚生活を送っており、末娘の幼いルース(エル・ファニング)も放って置かれ気味。絵本作家・画家のテッドは奔放な女性関係を続けることで痛みを克服しようとしているが、マリアンはその事故をいつまでも忘れることが出来ないでいる。そんなとき、テッドは助手として作家志望の高校生エディ(ジョン・フォスター)を夏休みのアルバイトとして雇いいれる。満たされないマリアンと若いエディは関係を持ってしまうが・・・。
原作はアメリカ文学の巨匠ジョン・アーヴィングの「未亡人の一年」。

ジョン・アーヴィング原作の映画化って今まで外れが無いんですよね。「ガープの世界」「ホテル・ニュー・ハンプシャー」「サイモン・バーチ」「サイダーハウス・ルール」。全て水準以上の、というか堂々の名作映画揃いです。
ジョン・アーヴィングの面白さというのは、よく言われるように、決して深刻にならない悲劇と、無様にも見える喜劇がごった煮になって奇想天外に展開してゆくところにあると思うのですが、今までの映画化はそうゆう所をうまく掬い取って来ていたと思います(特に「ホテル・ニュー・ハンプシャー」)。

今回の映画化はちょっと毛色が違います。マリアン、テッド、エディそしてルースのそれぞれのキャラクターをじっくり掘り下げてゆく。その鍵となるのは二人の息子を亡くした事故とテッドの書いた絵本「ドア・イン・ザ・フロア」。
じっくりした物語がロード・アイランドの美しい風景の中で展開されてゆきます。

こういうシンプルに人の内面を掘り下げてゆく映画ですから、役者にハイレベルな演技力が要求されます。そういう点ではキム・ベイジンガー、ジェフ・ブリッジスの両ベテランはもちろん、ジョン・フォスター、エル・ファニング(ダコタ・ファニングの妹!)も大好演しています。特にキム・ベイジンガー。色気と絶望と諦観が入り混じった難しい役を味わい深く演じています。

ただ、基本的には話が淡々と進んでゆくので、観ている方がエモーショナルに動かされるところがほとんど無いのが惜しいです。何か物足りない。それは恐らく僕がこの映画にジョン・アーヴィングらしい奇想天外さを期待していたからだと思います。原作は結構素っ頓狂で好きなのですが、もうちょっと何とかならなかったなあ?
コメント (10)
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【映画】ティム・バートンのコープス・ブライド

2005-10-29 13:47:05 | 映画た行


"Tim Burton's Corpse Bride"

2005年アメリカ
監督)ティム・バートン マイク・ジョンソン
声の出演)ジョニー・デップ ヘレナ・ボナム=カーター エミリー・ワトソン
満足度)★★★☆ (満点は★5つです)
シネプレックス幕張にて

19世紀末のイギリス。成金の息子ビクター(声:ジョニー・デップ)と没落貴族の娘ビクトリア(声:エミリー・ワトソン)は両親の都合で政略結婚することになっていた。本人達の意思を全く無視した結婚ではあったが、実際に会った二人はお互いに好意を抱く。そして結婚式のリハーサル。あがってしまったビクターはなかなかうまく誓いの言葉が言えない。落ち込んだ彼は森をさ迷い、一人きりで式の練習をしていたが、無意識に指輪を挿した小枝は、実は、死後も花婿を待ち続けるコープス・ブライド(声:ヘレナ・ボナム=カーター)の指先だった。
ティム・バートンのストップ・アニメーション映画。

仕事が忙しかったり何か行き詰まったときに、「南の島に行きたいなあ」とか思うことってありますよね。ティム・バートンの描く死後の世界は、この南の島のようです。踊り歌うガイコツ。愛想の良い生首バーテン。猥雑でライブリーな世界。
それに比べて、思うようにならない現世はひたすら陰気。肩をすくめ道を行き交う人々。自分のことしか考えないビクターとビクトリアの両親。結婚詐欺師。
この映画を観ていると、南の島に逃避するかわりに死ぬのも良いかも、とさえ思ってしまいます。ちょっと不健康ですよね、そういう考え方。

この映画のユニークさは、その不健康さをファンタジーに仕上げてしまった所にあると思います。最初、コープス・ブライドを眼にしたときは、眼球が取れて蛆虫が出てくるは、ところどころ骨が見えるわで、結構ヤバイ見た目なのですが、それがだんだん気にならなくなってくる。むしろその一途さに愛おしささえ覚える。美しく見えてくる。
異形のもの達に向けるティム・バートンの眼差しは今回もとても優しいです。

子供向けのアニメ映画の宣伝文句で「大人も楽しめる」ということがよく言われますが、本当に大人が楽しめる作品って少ないですよね?この映画は大丈夫です。大人こそ楽しめる映画だと思います。

コメント (12)
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【映画】チャーリーとチョコレート工場

2005-09-15 16:38:03 | 映画た行


"Charlie and the Chocolate Factory"

2005年アメリカ
監督)ティム・バートン
出演)ジョニー・デップ フレディ・ハイモア
満足度)★★★★☆ (満点は★5つです)
ワーナー・マイカル・シネマズ市川妙典にて

貧しくも暖かい家族に囲まれて幸せに暮らす少年チャーリー(フレディ・ハイモア)は、ウォンカ社のチョコレートが大好物。ウォンカの工場への招待券”ゴールデン・チケット”を手に入れた彼は、他の4人の少年少女と共に何十年も人が出入りしたことの無いその工場に赴くが、そこはとても奇妙な世界だった。。。
原作は「南から来た男」などの風変わりな短編小説でも知られるロアルド・ダールの児童小説。


基本的に児童向けの小説が原作ですから、教訓的にも観られるはずなんです。「欲張ってはいけません」「わがままばかり言ってはいけません」「知ったかぶりはいけません」そして「やっぱり家族を大切にしましょう」とか。

だけど、その舞台が「ロッキー・ホラー・ショー」的な、奇妙な人達による奇妙な世界なんです。もう教訓なんてどうでも良くなってきます。本当に。
全編に渡って歌に踊りに大活躍のウンパ・ルンパ族、ナッツ選別専用リス、ピンクの羊、チョコの川など、もうティム・バートンが好き放題に作り上げた、可愛くもグロテスクな造形達にとにかく目が釘付けになりっ放しの2時間です。
自分のや他人の映画へのパロディーも結構入っていて、バートンさん、これ作るのとても楽しかったんだと思います。それが伝わってきます。そして観ているこちらも楽しくなってきます。

あと、やっぱり、チョコ作りの天才ウォンカさんを演じたカメレオン俳優ジョニー・デップ!もう文句のつけようがが無い演技です。エキセントリックな性格なんだけどちょっと悲しげ、という役柄をうまーく演じております。僕はこのジョニー・デップの「ちょっと悲しげ」感がすごく好きです。

チャーリーも良いし、おじいちゃんも良いし、いや、どこを切っても良いですね、この映画は。

「スリーピー・ホロウ」以降ちょっと普通になってきて興味が薄れかけてたんですが、やっぱりティム・バートン良いですね。戻ってきてくれたって感じですね。

これ多分DVD出たら買います。ということで★★★★☆。

コメント (17)
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