久々の更新です。
ここのところ、土曜日に会社の研修が入ったり飲みが重なったりとなかなか家でじっくりとPCに向き合う時間が取れなくて。
年が明けて早1ヶ月が過ぎてしまいましたが、ずーっと書こうと思っていた2006年の部門賞もやっとこの3連休にアップすることが出来そうなわけです。
それでは、今更感たっぷりではありますが、部門賞の発表です!
(◎が私的受賞作、その下に羅列してあるのがその他ノミネート作です)
作品賞)
◎『楽日』
DVDが2月23日に発売ですね。
監督賞)
◎ツァイ・ミンリャン (『楽日』『西瓜』)
テレンス・マリック (『ニュー・ワールド』)
ジョージ・クルーニー (『グッドナイト&グッドラック』)
今後も期待している監督さんたちです。
主演男優賞)
◎デヴィッド・ストラザーン (『グッドナイト&グッドラック』)
フィリップ・シーモア・ホフマン (『カポーティ』)
両者とも雰囲気たっぷりで良かったのですが、黙っていても滲み出る苦みが素晴らしかったデヴィッド・ストラザーンに軍配。
主演女優賞)
◎チェン・シャンチー (『楽日』『西瓜』)
クオリアンカ・キルヒャー (『ニュー・ワールド』)
小林聡美 (『かもめ食堂』)
サンドリーヌ・ボネール (『親密すぎる打ち明け話』)
ジョデル・フェルランド (『ローズ・イン・タイドランド』)
とぼけていながら一本芯の通ったチェン・シャンチーさんの演技、好きです。
助演男優賞)
◎ジョン・タトゥーロ (『セレブの種』)
『ゴッドファーザー』のマーロン・ブランドの物真似一発で、この映画の登場人物の誰よりも印象に残りました。
助演女優賞)
◎ジャニュアリー・ジョーンズ (『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』)
こちらはダイナーでアンニュイに煙草を燻らす姿一発!
エドワード・ホッパー的な孤独な佇まいが素晴らしく。
ベスト・アンサンブル・アクト)
◎『楽日』
『クラッシュ』
『楽日』は、よく考えると3人の主な出演者の絡む場面が全く無いのですが、それぞれの演技が静かに共鳴していて。
「ある視点」賞)
◎『ドッグ・デイズ』
この神経を逆撫でするような不快感!
ベスト・ロケーション賞)
◎福和大戯院 (『楽日』)
ヘルシンキ (『かもめ食堂』)
テキサスの田舎町のダイナー (『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』)
モンタナ州ビュート (『アメリカ、家族のいる風景』)
寄宿学校 (『エコール』)
アイルランドはコーク界隈の山 (『麦の穂をゆらす風』)
どれも行ってみたくなるロケーションたちです。
主題歌賞)
◎"O Pato" Natalia y la Forquetina (『ダック・シーズン』)
"Seasons of Love" (『レント』)
『ダック・シーズン』の冒頭に掛かる"O Pato"。
これだけで「イイ映画に違いない」と確信できた。
音楽賞)
◎『西瓜』
『サムサッカー』
『グッドナイト&グッドラック』
『ウォーク・ザ・ライン 君につづく道』
『アメリカ、家族のいる風景』
『ニュー・ワールド』
ツァイ・ミンリャンさんのミュージカル演出ってぶっ飛んでて楽しいです。
ベスト・シアター賞)
◎シアター・イメージフォーラム (『ダック・シーズン』『ドッグ・デイズ』『西瓜』『楽日』再映)
ここのラインナップ、好きです。
渋谷でも比較的人が少ないロケーションもグッド。
如何でしょうか?
何だか偏りの多いラインナップになってしまいましたが・・・。
"Marie Antoinette"
2006年アメリカ/フランス/日本
監督)ソフィア・コッポラ
出演)キルスティン・ダンスト ジェイソン・シュワルツマン ジュディ・デイヴィス ジェイミー・ドーナン スティーヴ・クーガン リップ・トーン アーシア・アルジェント マリアンヌ・フェイスフル
満足度)★★★★ (満点は★5つです)
ワーナー・マイカル・シネマズ市川妙典にて
ハプスブルグ家から、後にフランス王ルイ16世となるルイ・オーギュスト(ジェイソン・シュワルツマン)の許に嫁ぐマリー・アントワネット(キルスティン・ダンスト)。
世継ぎを望む宮廷の空気と夫ルイの無関心の狭間で悩むマリーは、華やかな宮廷の中で逃げるように贅沢と浪費に耽るようになる。
全面的にヴェルサイユ宮殿でロケを行ったことでも話題のソフィア・コッポラ最新作。
「ヴェルサイユの生活は想像できなくてもティーンの気持ちはわかると思った」とのたまうソフィア・コッポラ監督。
そんな彼女の描くマリー・アントワネットの物語は、革命に翻弄されるひとりの女性の悲劇でも、民衆を搾取する悪女の一代記でもなく、悩めるセレブ・ティーンエイジャーの青春物語。
まあ、監督自身が生まれつきのセレブリティーなわけですから、存分に甘やかされたマリー・アントワネットの生活の描き方に全く迷いが無い。
時代考証に拘らず、とにかく自分の(多分)チヤホヤされて育った青春時代に思いっきり引き付けてマリー・アントワネットの宮廷生活を描ききった印象。
もっともらしくヴェルサイユ宮殿でロケなんかしてますが、これだって物語に当時の空気を呼び込む効果は全く感じられず、その豪華絢爛さはマリー・アントワネットのセレブリティーっぷりに奉仕する為のみに存在しているように見えます。
そう、一般日本人男性である僕なんかから見るとこれは相当嫌味な作品なんです。
共感も何も無い。お金持ちによる、大金を掛けたおままごとを見せられてるようなものです。
それなのに、この映画は嫌いになれない。むしろ好き。
なにしろセンスが良いんです。
80年代のニューウェーブを多用した音楽。カラフルな色使い。光の扱い方が抜群な映像。
センスの良さ一発で、この嫌味な物語が何だかすごく魅力的に思えてしまう。
『ヴァージン・スーサイズ』以来一貫しているこのハイセンスっぷりこそがソフィア・コッポラをソフィア・コッポラたらしめているわけで、極論すれば中身の薄い内容を、何だかそれらしく観せてしまうんだと思います。
フランス革命前夜の不穏な時代を描きながら、ほぼキレイなものしか出てこないという、例えばケン・ローチ作品とは対極にある映画ですが、僕はこれもこれで積極的に価値を認めます。
あっという間にまた溜まってしまいました。1本の映画で1本の記事、というスタイルはあんまり変えたくないし、最近観た作品はなかなか充実していて色々書きたいのですが、とりあえずまたまとめて一気にリスト・アップしたいと思います。
『悪夢探偵』と『リトル・ミス・サンシャイン』はもしかしたら後で個別記事を書くかもです。
デート・ウィズ・ドリュー "My Date with Drew" 2004年アメリカ
満足度)★★★★
TOHOシネマズ六本木ヒルズにて
これはなかなかの拾い物。
イロモノ映画と思って観てみたら意外に後味スッキリ。
これもひとえに主演のブライアン・ハーズリンガーの憎めない人柄のお蔭なんでしょう。
シャーロットのおくりもの "Charlotte's Web" 2006年アメリカ
満足度)★★★
TOHOシネマズ六本木ヒルズにて
1月2日の六本木ヒルズ、外人の家族連れが異様に多くて。
何だか肩身が狭くて映画に集中できなかった小心なKenなのでした。
恋人たちの失われた革命 "Les Amants réguliers" 2005年フランス
満足度)★★★
東京都写真美術館ホールにて
最近『1968 世界が揺れた年』(マーク・カーランスキー著/ソニー・マガジンズ刊)という本を読んでいて、当時のフランスが舞台のこの作品にも興味が出て。
このスチール写真もオサレですしね。
しかし長かった・・・。
リトル・ミス・サンシャイン "Little Miss Sunshine" 2006年アメリカ
満足度)★★★★☆
ワーナー・マイカル・シネマズ市川妙典にて
これは面白い!
例えばウェス・アンダーソンとか『サムサッカー』のマイク・ミルズとか。
分類するとその系譜なんでしょうが、この作品はスノッブなところが全然無いのが好もしいです。
「ガハハ」と笑える。
悪夢探偵 2006年日本
満足度)★★★★☆
シネプレックス幕張にて
塚本晋也監督はあんまり観ていなくて、この作品が『ヴィタール』に続く2本目です。
しかしこの監督は確固とした映像イメージを持ち続けているんでしょうね。
塚本作品初心者でもそれは感じ取れる。
混乱と洗練が丁度良い具合にバランスしており、さすがの風格です。
それにしてもこうして並べてみるとヘンテコリンなラインナップですね・・・。
年が明けて早3日目、今更の感もありますが昨年の映画ベスト10を!
これ、本当に楽しいです。
去年1年分のパンフレットを引っ張り出して見ていると思わず読み込んでしまってなかなか進まなかったり。1年を振り返るイイ機会になりますよね。
ということで今年もソロリと参ります。
1.『楽日』
思い入れの強い作品です。コメントも沢山頂きました。有難うございました。
2.『かもめ食堂』
癒される以上に、「こういう生き方もあるかも」と思わせられた。
3.『ダック・シーズン』
シンプルさの中に宇宙的な広がりを感じさせる作品でした。
4.『ニュー・ワールド』
風に揺れる草の音、静かに水が流れる音・・・。
五感に訴える、映画ならではの作品。
5.『アメリカ、家族のいる風景』
ヴィム・ベンダースの、アメリカへの愛情溢れる置き土産。
6.『明日へのチケット』
3人の巨匠監督の持ち味がクッキリと出たオムニバス映画の一つの理想形。
7.『クラッシュ』
LAの人間模様を描きつつ、日本人にも通じる普遍性に説得力を感じました。
8.『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』
男の世界!
9.『グッドナイト&グッドラック』
デヴィッド・ストラザーンの苦味!スタイリッシュの極み。
10.『ローズ・イン・タイドランド』
ヘンテコなんですけどね。何だか心を打たれました。
追記)ついでにワーストも挙げてみますと次の4本。
『ラストデイズ』
思わせぶりなだけで、イライラした。
『プロデューサーズ』
お下品さが僕にはトゥーマッチでした。
『キンキーブーツ』
このテの感動作には食傷気味で。
『Oiビシクレッタ』
お父さんの頑なっぷりにイライラ。
それでは今年も宜しくお願いします!
スキャナー・ダークリー "A Scanner Darkly" 2006年アメリカ
満足度)★★★☆
シネセゾン渋谷にて
実写をアニメ化した映像の独特の風合いが、フィリップ・K・ディックの不確かで不安な世界感にピッタリとマッチしていて。
しかし、ドラッグの売人ドナを演じたの、ウィノナ・ライダーだったんですね。分からなかった。
鉄コン筋クリート 2006年日本
満足度)★★★★
シネプレックス幕張にて
クロが、シロが、ネズミが、イタチが、木村が、藤村が動く!
何回も読み返した原作ですので、スクリーンの中の登場人物を見ているだけで涙が滲む。
熱烈なファンの多い松本大洋作品のアニメ化、チャレンジングだったと思いますが、手堅くまとめて好印象。
特に宝町の風景とシロの声を吹き替えた蒼井優さんは良かったなあ。
ダーウィンの悪夢 "Darwin's Nightmare" 2004年フランス/オーストリア/ベルギー
満足度)★★★★☆
シネマライズにて
所謂先進国に搾取され続けるアフリカ。
決して目新しい話題ではないですが、ヴィクトリア湖で異常繁殖したナイル・パーチと魚加工業を主題に、その縮図を丹念に映像に焼き付けたこの作品の説得力!
加工工場から出た魚の残り物を干す隻眼の女性の足元にうごめく蛆虫を目の辺りにしながら、グローバリゼーションとは何なのか?と考え込んでしまいます。
皆様、明けましておめでとうございます。
2ヶ月あまり更新をサボってしまいました。
11月は仕事が忙しかったこともあったのですが、12月は時間がそれなりにあった筈なんです・・・。
やっぱりこういうのは時間を空けたらダメですね。家に帰ったらPCをつける、という習慣が無くなってしまいまして。
今年はもう少しマメに更新してゆきたいと(とりあえず・・・今のところ・・・)思ってますので懲りずにお付き合い御願いします。
ということで、更新していない間に観た映画たちをザーッと列挙してみます。
エコール "Innocence" 2004年ベルギー/フランス/イギリス
満足度)★★★☆
シネマライズにて
美しくも儚い幼年期の世界・・・。
というのは大人が後から振り返って感じる印象であって、当事者である少女達から見るとそれは不気味で不安なものなんでしょうね。
そういう空気感が漲る映像は雰囲気たっぷり。
ただ、僕はラストの明快さに若干鼻白んでしまいました。
麦の穂をゆらす風 "The Wind That Shakes the Barley" 2006年アイルランド/イギリス/ドイツ/イタリア/スペイン
満足度)★★★★
シネカノン有楽町にて
イングランドの影で悲惨な歴史を歩んできたアイルランド。
それだけに待ち望んだ国家への理想・思い入れはそれぞれに大きく、国家観の違いを基にかつて思いを同じくした者達が今度は敵同士として争う―。
現代日本人の目から見ると想像すら難しい訳ですが、ケン・ローチの素朴な話術の説得力が素晴らしく。半世紀前の遠い国の若者達の命を賭してもがき苦しむ様が胸に迫ります。
ルナシー "Sílení" 2005年チェコ/スロバキア
満足度)★★★★
K's Cinemaにて
ヤン・シュヴァンクマイエルの、相変わらず皮肉で極端にデフォルメされた社会批評。
神経を逆撫でするような気持ち悪ーい映像・演出はいつも通り。
だけど何だか憎めない。それもいつも通り。
イカとクジラ "The Squid and the Whale" 2005年アメリカ
満足度)★★★☆
新宿武蔵野館にて
「何を観るか」「何を読むか」「何を聴くか」でその人のセンスを計ってしまうことってありませんか?僕はあります。
それだけに、この作品のスノッブな父親のみっともなさを見てると何だか身につまされて。
いや、家族を持ってるわけではないんですが(爆)。
その5に続く!
"Tickets"
2005年イタリア/イギリス
監督)エルマンノ・オルミ アッバス・キアロスタミ ケン・ローチ
出演)カルロ・デッレ・ピアーネ ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ シルヴァーナ・サンティス フィリッポ・トロジャーノ マーティン・コムストン ウィリアム・ルアン ガリー・メイトランド
満足度)★★★★☆ (満点は★5つです)
シネ・アミューズにて
ローマに向かう国際列車。
大学教授と提携先企業の秘書。将軍の未亡人と彼女に付く事になった兵役中の若者。サッカー観戦の為にスコットランドからやってきた若者とアルバニア難民。
列車をテーマに3人の巨匠が共同監督した”半”オムニバス映画。
『木靴の樹』のオルミ、『桜桃の味』のキアロスタミ、そして今年『麦の穂をゆらす風』でついにパルムドールを獲得したケン・ローチ。
このラインナップ、ものすごくないですか?問答無用の豪華さ。銀河系集団。
名のある監督があるテーマの下に短編を持ち寄るオムニバス作品は多々ありますが、各監督の力の入り具合にバラツキがあったり、思い切った冒険をしてしまう監督がいたりで全体としてまとまりの無い作品になってしまうことが多いように思います。
まあ、こういう作品の場合、観るほうも、作品の完成度なんかよりもそれぞれの監督の個性を楽しんで観たりしているわけですが。
しかし、この『明日へのチケット』は一味も二味も違う。各監督の個性を味わうのと同時に、作品の完成度も楽しめる。
老境に差し掛かった大学教授の、ある女性に出会ったことによって呼び覚まされる朧な想い出。
ナイーブだったあの頃を思い出した彼のささやかながら勇気ある行動。
決して饒舌ではありませんが、というかだからこそ深い余韻を残すオルミ編。
絵に書いたようなオバサンの図々しさを発揮する将軍の未亡人に翻弄される人々をユーモラスに描きながら、そこにしっかりと市井の人々への愛情をにじませるキアロスタミ編。
普段は地元のスーパーで働き、セルティックを応援することが唯一の生き甲斐。
そんなスコティッシュ庶民が思いがけず移民問題に直面し、アルバニア人家族の運命を決めなければならなくなる―。
移民問題は他人事ではない、という重いテーマをあくまでも爽やかに直球勝負で描くケン・ローチ編。
それぞれの監督が自分の手癖をしっかり主張しながらリレーのように次の監督につないでゆくこの作品ですが、その流れが全然不自然ではない。
静かなオルミ編からユーモラスなキアロスタミ編を経由してローチの感動編に至る。
三人三様の作風ながら、全ての作品に共通する暖かい人間賛歌が快い後味を残してくれます。
しかしケン・ローチ、絶好調ですね。
もうすぐ公開の『麦の穂をゆらす風』も楽しみになってきました。
久しぶりの更新です。
何やら最近忙しく、落ち着いてPCを開く時間がなくなってきて・・・。
映画を観る時間は何とか確保してるんですけどね。
11月は出張が多かったりしてさらに時間のやりくりに苦労しそうな気配なのですが、ボチボチと記事をアップしてゆきたいと思っています。
ということで今回も最近観た作品を駆け足で振り返りたく。
Oiビシクレッタ "O Caminho das Nuvens" 2003年ブラジル
満足度)★★
シネマ・アンジェリカにて
うーん、こういうネオ・レアリズモ風の映画を「つまらない」と言うのってちょっと気が引けますね。
だけど言い切ってしまいましょう。
これはつまらない。
貧困から抜け出すために自転車で都会を目指す家族を描いたロード・ムービーなのですが、なにしろプライドだけは高い父親の虚勢のはりっぷりにイライラしてしまって。
ちなみに自転車でスローな旅をする家族ののんびりほっこりした話を期待すると裏切られます。
ブラック・ダリア "Black Dahlia" 2006年アメリカ
満足度)★★★★
スカラ座にて
ブライアン・デ・パルマによるジェイムス・エルロイ作品の映画化。
これが期待せずにおられましょうか!胸を躍らせて観にいきました。
確かに面白い。水準を大きく超える出来。
デ・パルマの流麗な映像とエルロイの男臭さがバッチリ堪能できて。
だけど、それだけ。想定の範囲内というか。
ちょっと期待が大きすぎたのかもしれませぬ。
トリスタンとイゾルデ "Tristan & Isolde" 2005年アメリカ
満足度)★★★☆
シネプレックス幕張にて
普通だったら絶対に観にいかない類の作品なのですが、大好きなアイルランド絡み、ということで全然期待せずに観に行きました。
いや、これはなかなかの拾い物。
古典物語が原作なだけに、なにしろストーリーの骨格がしっかりしていて飽きさせない。
地味な俳優陣の地味な演技も地味に良かった。
サンキュー・スモーキング "Thank You for Smoking" 2006年アメリカ
満足度)★★★☆
シャンテ・シネにて
こぼしたコーヒーをファスト・フード店のせいにしたり、電子レンジの中で死んでしまった猫を電器メーカーのせいにしたりして裁判を起こしてしまう(そして勝ってしまう)ヘンチクリン国家・アメリカらしい作品。
親と子のいかにもな絆をサブ・プロットに据えているのもアメリカ風味を強調。
それにしても、主人公の煙草業界ロビイストの敵役を演じたウィリアム・H・メイシー、相変わらず良い仕事してます。
悪魔とダニエル・ジョンストン "The Devil and Daniel Johnston" 2005年アメリカ
満足度)★★★☆
ライズXにて
正気と狂気の狭間で創作活動を行う芸術家にはやっぱり惹かれます。
大学の同級生への憧れを25年後も歌い続けるダニエル・ジョンストン。
悪魔に付け狙われていると信じ込むダニエル・ジョンストン。
マウンテン・デューへの愛着を真剣に唄いこむダニエル・ジョンストン。
全てが愛おしい。
CD速攻で買ってしまいました。
レディ・イン・ザ・ウォーター "Lady in the Water" 2006年アメリカ
満足度)★★★
渋谷TOEIにて
もっともらしくメジャー映画を作り続けていますが、シャマラン監督作品の本質はそのB級感にあると思います。本作のショボさを観るとそれがよくわかる。
全てがご都合主義的に強引に展開してゆくし、CGの怪物も随分なのですが、それでも駄作!と切り捨てるには惜しい何かがあるのも確か。
テレ東のお昼の映画を観ていたら意外に面白くて気付いたら全部観ちゃった、みたいな微妙な魅力があります。
ワールド・トレード・センター "World Trade Center" 2006年アメリカ
満足度) ★★★☆
ワーナー・マイカル・シネマズ市川妙典にて
オリバー・ストーン監督ですから政治的で押し付けがましい作品になるかと思ったのですが、思ったよりも抑制の効いた印象。
WTCの瓦礫の下で救助を待つ警察官とその家族に焦点を絞った力強い作品。
題材が題材ですから色々な意見もあるかと思いますが、惨状の中でも助け合う人達の様子にはやっぱり感動します。
来週以降は、また通常営業に戻るつもりですので、ひとつ宜しく御願いします。
天高く馬肥ゆる秋、皆様いかがお過ごしでしょうか。
最近観たい映画がドッと封切られまして嬉しい悲鳴。
とりあえず何とか全部観てはいるのですが、困ったのは記事を書く時間が取れないこと。
もう6本も溜まってしまいましたよ。このままだとどうにも行き詰まってしまいそうで。
ここらで一回身軽になるべく最近観た映画を一括一言レビューしてお茶を濁そうなどと画策してみました。
そんなわけで、最近観た映画一言レビュー、どうぞ!
『サムサッカー』 "Thumbsucker" 2005年アメリカ
満足度) ★★★☆ (満点は★5つです)
シネマ・ライズにて
この映画の予告編で、監督のマイク・ミルズについてソフィア・コッポラやジェフ・マクフェトリッジとお友達、などとそのオシャレっぷりを強調していたものだからケッと思っていたのですが作品自体はまあまあ。普通に面白い青春譚です。
自分がティーンエイジャーだったらもっとグッと来たかも。
サントラはエラく良かったなあ。
『セレブの種』 "She Hate Me" 2004年アメリカ
満足度) ★★★☆
アミューズCQNにて
『セレブの種』という邦題からはキワイ印象を受けますがなかなか正統な作品ですよ、これは。
イタリアン・マフィアを演じたジョン・タトゥーロのマーロン・ブランドの物真似がナイス!
『カポーティ』 "Capote" 2005年アメリカ
満足度) ★★★☆
シャンテ・シネにて
本作でアカデミー男優賞を取ったフィリップ・シーモア・ホフマンは大好きな俳優さんだし、カポーティの小説も好きなのですごく楽しみにしていた作品だったのですが、うーん、期待の割にはグッと来なかったですね。水準以上ではありましたが。
ただ、特にふてぶてしくしているときのカポーティの嫌らしい雰囲気は良かったなあ。
ということで第2弾に続く!
"天邊一朶雲"
2005年台湾
監督)ツァイ・ミンリャン
出演)チェン・シャンチー リー・カンション 夜桜すもも ルー・イーチン ヤン・クイメイ
満足度)★★★★ (満点は★5つです)
シアター・イメージフォーラムにて
全土が記録的な水不足に襲われ、水の代用品として西瓜ジュースが飛ぶように売れている台北。
女(チェン・シャンチー)は男(リー・カンション)と出会い(再会し)淡い恋心を抱くが、男はAV男優として身をたてていた。
5、6年前でしょうか、大島渚の『愛のコリーダ』のノーカット版が上映され僕もいそいそと観にいったのですが、これが噂に違わぬ名作で。
製作当時(1976年)の基準からすると思い切った猥褻表現だったのかもしれませんが、21世紀に生きる僕達から観るとそれはまあそんなにビックリするほどのものではなく。
だからこそ、と言っても良いかと思うのですが、その分クッキリと僕の心に残ったのはその純愛映画としての素晴らしさ。
果てしない愛欲の末に行き着くところまで行ってしまうふたり。
全てを捨てて求め合う男女の姿、これは紛れも無く純愛映画に思えたのでした。
この『西瓜』にも、同種の手触りを感じました。
インパクト大なAV撮影場面やシュールで過剰なミュージカル・シーンを濾過してみたらそこにはしっかりと純愛成分が残っているという。
気を失ったAV女優と交わる男と、窓越しにそれを見つめる女。
目があった二人がお互いに感応し絶頂に到る。
ツァイ・ミンリャンらしい過剰に長いこのシーンの緊張感たるや、何だか観ているこっちが逃げ出したくなる位で。
だけど、同時に切なくもあるんです。
強く求め合う二人なのにお互いの体を感じあうことが出来ず、他人の体を介して絶頂に達するというその構図が。
西瓜を被ったり、秘宝館みたいな格好をしてお笑いスレスレの体当たり演技を見せるリー・カンション、この怪しげな作品の中でも清明さを失わないチェン・シャンチー、両名のギリギリ演技も特筆です。
しかしあのミュージカル・シーンの数々、どれも何だかものすごいことになってましたが、意外とオシャレだと思うのは僕だけでしょうか?
"X-Men The Last Stand"
2006年アメリカ
監督)ブレット・ラトナー
出演)ヒュー・ジャックマン ハル・ベリー ファムケ・ヤンセン アンナ・パキン ジェームズ・マーズデン パトリック・スチュワート イアン・マッケラン ベン・フォスター ショーン・アシュモア アーロン・スタンフォード エレン・ペイジ ケルシー・グラマー
満足度)★★★★☆ (満点は★5つです)
スカラ座にて
前作でジーン(ファムケ・ヤンセン)を失ったX-Men。
特に結婚を約束していたサイクロップス(ジェームズ・マーズデン)は自暴自棄に陥っていた。
そんなとき、プロフェッサーX(パトリック・スチュワート)が運営する”恵まれし子供たちの学園”を訪れたミュータント省大臣ビースト(ケルシー・グラマー)は、ワージントン研究所がミュータントを普通の人間に戻すという新薬「キュア」を開発したことを告げる。
このニュースはミュータント界に大きな衝撃を巻き起こす。
そして、この新薬を人類のミュータントに対する挑戦と取ったプロフェッサーXの宿敵マグニートー(イアン・マッケラン)はミュータント達を扇動し、人類への蜂起を目論む。
監督がブライアン・シンガーからブレット・ラトナーに交代したX-Men最終作。
ティム・バートンからジョエル・シューマッカーに監督が代わった途端ペラペラな作品になってしまったバットマン・シリーズの例もありちょっと心配しつつ「まあ前2作も観たからまあこれも」ということで観にいった本作。
うむ、これ、個人的には前2作よりもむしろ好きです。
基本的にウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)を主人公にしつつも、集団劇ということで各キャラクターがどれだけ立っているか、が作品の面白さに大きく関わってくると思うわけですが、そういう点ではこの3作目が前2作よりもクッキリしていたように思います。
まあ、3作目ですから、自分が各キャラクターに慣れただけなのかもしれませんが。
特にハル・ベリー演ずるストーム。
あの人やこの人が亡くなって、リーダーたらんとする学級委員長的な佇まいが美しく。いやあ、このオスカー女優、実はこのシリーズでしか観たこと無いんですが、今作で相当好きになりました。
白目はコワいですが。
アクションもドラマもてんこ盛りなのに、上映時間も1時間45分と潔く。
最近のこのテの作品、平気で3時間近くいっちまい、疲れてしまうこともあるのですが、これだけ人が死んだり捨てられたり復活したり忙しくドラマが展開するのにキッチリ2時間以内に収めたのも好感度大。
これだけのドル箱作品、これで終わりは勿体ないということなのか最終作と言いながら続編への色気もバッチリなラスト・シーン。これがあざとく観えずにむしろイイ余韻を残してくれたように思えてしまいました。
ウルヴァリンやアイスマンのスピンオフ作も期待ですが、この本シリーズも勿体ぶらずにバシバシ作っちゃってほしいものです。
"Stoned"
2005年イギリス
監督)スティーヴン・ウーリー
出演)レオ・グレゴリー パディ・コンシダイン デヴィッド・モリッシー モネット・メイザー ツヴァ・ノヴォトニー アメリア・ワーナー
満足度)★★★☆ (満点は★5つです)
シネクイントにて
1969年7月3日。ローリング・ストーンズを脱けたばかりのブライアン・ジョーンズ(レオ・グレゴリー)が自宅プールで死んでいるのが見つかった。
警察はオーバードーズが原因と結論づけるがその真の死因は?
初期ローリング・ストーンズの音楽性を決定づけたオリジナル・メンバー、ブライアン・ジョーンズ。いまだ謎の多いその死を頂点として、天才肌のミュージシャンの苦悩を描く。
ローリング・ストーンズは若い頃なにしろ大好きなバンドで。
ストーンズの楽曲そのものもさることながら、何よりも彼らの音楽を手引きにして古いブルースやR&B、カントリーまで辿ったりするのがとても楽しくて。
ロバート・ジョンソン、チャック・ベリー、ハウリン・ウルフ、マディ・ウォーターズ、グラム・パーソンズ・・・。
正直ロバ・ジョンなんて当時全部同じ曲に聴こえたりしたんですけど、酒を呷りながら聴いて、ひとり悦にいっておったりしたものです。
思いっきり背伸び。
この映画をきっかけに、そのロバート・ジョンソンの"King of the Delta Blues Singers"というヴィニール盤を引っ張り出して聴いてみたのですが、いやいや、改めて、これとんでもなくイイではないですか!
このタメ、このコク!
ノイズ(録音は1936年)の向こうから届く、ビョロローンと響くギターとダスティーな歌声。ギターの腕前と引き換えに十字路で悪魔に魂を売ったとも言われるロバート・ジョンソンの危険な魅力が、Mr. Jack Danielsの助けが無くてもビシッと迫ってくる。
やっぱり歳をとってわかる音楽ってあるんですね。
ブライアン・ジョーンズは、ブルース好きのメンバーが集まるストーンズの中でも特にこういう音楽への拘りが大きかったんでしょうね。
スーパースターであるよりもブルースを追求する一ミュージシャンでありたい。
そういう姿勢が、早すぎた死と相俟って今でも彼を神格化させているのだと思います。
・・・という、僕にとって、長々とした先入観抜きに観るのは難しい作品で、実際にこの作品を観て新鮮な驚きを得ることは全く無いわけですが、元ストーンズ・ファンとしては、現在のストーンズのライブを観るよりもこういう映画を観たほうがよっぽど「ああ、もう一回ストーンズ聴こうかな」という気になるような気もして。
映画の中で描かれたデモーニッシュで我儘で天才肌のミュージシャンの最期を観てそんなことを感じました。
"Dopo Mezzanotte"
2004年イタリア
監督)ダヴィデ・フェラーリオ
出演)ジョルジョ・パゾッティ フランチェスカ・イナウディ ファビオ・トロイアーノ
満足度)★★★ (満点は★5つです)
ル・シネマにて
トリノの映画博物館”モーレ・アントネッリアーナ”で夜警として働く内気なマルティーノ(ジョルジョ・パゾッティ)は秘かに近所のハンバーガーショップで働くアマンダ(フランチェスカ・イナウディ)に思いを寄せるているが、彼女にはアンジェロ(ファビオ・トロイアーノ)という薄情な恋人がいる。
ある夜、店長と悶着を起こし警察を呼ばれたアマンダがマルティーノの働くモーレに逃げ込んでくるが・・・。
一人の女と二人の男の三角関係を、トリノと映画への愛情を込めて描いた作品。
トリノには仕事で何回か行ったことがあるのですが工業都市というイメージが強かったし、実際イタリア人も「あそこはつまらない街だ」みたいなことを言っていたのであんまり観光しよう、という気にはならなかったのですが。
そうですか、こんな立派な映画博物館があったのですか!
これは至福ですよ。
古い映写機やら往年のスターのピンナップやら古典作品のフィルムやら。
その後転職して今更トリノに行く機会なんて無いので、とても残念です。
さて、この作品の主人公のひとりマルティーノはそんな映画博物館に住み込み(!)の夜警として働いており、人気の無い夜中には古いフィルムを観放題、自分が古い手回しカメラで撮りためた映像を編集し放題な、何とも羨ましい生活を送っているのです。
但しその生活は生身の人間の生活とはバッサリと切り離されていて。
ほとんど現実の人間と交わらない無口な彼から見える世界は現実と映画、しかも思いっきり古い映画がごっちゃになっている。
現代のトリノの電車を撮ってそれをリュミエール兄弟の『列車の到着』となぞらえてみたり。彼から見た現実の世界は全てカメラを通して見たかのようなロマンに溢れているわけです。
そんな彼の生活に映画のように飛び込んできたジーン・セバーグのような女性アマンダがまた映画的で。決してとんでもなく美人というわけではないんだけどそこにいるだけで絵になっています。
彼女をきっかけとして現実の世の中と接点を持ったマルティーノではあるのですが、その立ち居振る舞いはそこまでも映画的。
アマンダの彼氏アンジェロと渡り合う彼の仕草は敬愛するバスター・キートンのようだったり、現実の世界に一歩踏み込んではみたもののまだそこは映画博物館の自分の世界の延長に思える。
終盤、映画博物館を後にし現実に生きることを決意するマルティーノ。そのラスト・シーンまでが古い映画のラストのようで。
結局、最後まで映画から逃れられないマルティーノをスクリーンの向こうに見つめる自分こそが映画から逃れられていないことに思い至り、不思議な感慨を覚えたりするわけです。