"United 93"
2006年アメリカ
監督)ポール・グリーングラス
出演)クリスチャン・クレメンソン シェイエン・ジャクソン ベン・スライニー etc.etc...
満足度)★★★★☆ (満点は★5つです)
ワーナー・マイカル・シネマズ市川妙典にて
2001年9月11日。
アメリカ上空は東から西までほぼ快晴、サンフランシスコに向かうユナイテッド93便は定刻より少し遅れてニュー・アークを飛び立った。
9.11のテロでハイジャックされた4機の飛行機の内、唯一テロの目的地に達することのなかったユナイテッド93便。その乗客達とテロリスト達の攻防、混乱する管制官や軍の様子をドキュメンタリー・タッチで描く。
2001年9月11日の夜。
僕がこの事件を知ったのは会社帰りに乗せてもらった同僚の車の中でした。それは確か既に2機めの旅客機が貿易センター・ビルに突っ込んだ後で、繰り返しその映像が流れていて。
そのときはその背の高いビルが貿易センター・ビルだったことさえ知らなかったのですが、とにかく尋常ではないことが起こっていることだけは分かりました。
ある意味、僕にとってあの同時多発テロはこの第一印象が全てなんですよね。
あの映像が全てを物語っていて、その後の注釈や解説は全て後日譚に思えてしまう。
大袈裟に言えば、(他の2機も含めて)たまたま飛行機に乗り合わせた人々、貿易センターに居合わせた人々、救出に駆けつけた人々、それらの無名の人達の叫びや思いが全てあの現実の映像にむき出しに映りこんでいるような気がするのです。
だから僕はあれだけの衝撃を受けたし、その記憶はいまだに鮮明なのだと思うのです。
そんな未だに生々しい印象を残すこの事件を映画化するにあたってポール・グリーングラス監督が取ったのはドラマ性を極力廃したドキュメンタリーチックな手法。
衝撃的な現実を前にして大袈裟な解釈は不要ということだったのか、事件当時管制センターで実際に働いていた人間を大量に起用してまでそのとき起こったことの再現に神経を注いでいます。
それでも唯一再現できなかったのがハイジャックされたユナイテッド93便の機内。
乗客と陸上との電話でのやり取りを元に乗客がテロリスト達に立ち向かった経緯をなぞることは可能な訳ですが、その機内の空気感はあくまでも製作者達の想像に拠るもので。
極限状態の中で団結してテロリストに立ち向かう乗客達の勇気。
製作陣が事実の再現というくびきから開放されることを許されたこの描写にこそポール・グリーングラス監督の強いメッセージがあるように思います。