あさねぼう

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中野剛志・柴山佳太「グローバル資本主義」

2019-08-06 12:11:29 | 日記
経済思想
経済ナショナリストによる思想の再解釈を通して、これらの思想の底流にあるのは、理性と思索により抽象化・単純化した思考ではなく、文化や社会慣習、常識の蓄積などをあるがままに掴み取ろうとする解釈学的アプローチであるとする。抽象的な数理モデルや、経済現象を利己的個人に還元した方法論的個人主義など、これらに基づく主流派経済学の非現実的な抽象論を批判し、これに依拠する民営化・規制緩和・小さな政府などの新自由主義的な手法が問題解決に対して失効しているばかりか、軋轢や問題の原因でもあると主張している。
中野は、新自由主義が信奉する自由放任の市場経済は、家族・共同体といった保守が重視する価値を破壊するため、国家・道徳のためにも、保守は新自由主義と手を切るべきだと主張している。
経済史
経済思想史の流れで経済が順調ではない時の傾向として、通常の経済学の議論で見落とされていたものに注目する動きが出てくるとし、危機の時はオーソドックスから逸脱できた国だけが生き残れるとする。
経済論
デフレーションを解決することが最優先課題であるとし、内需拡大こそ重要であるとしている。外需促進は貿易黒字の拡大を伴うが、これは円高を促し国際競争力を失う自殺行為であると指摘する。むしろ、財政出動により内需を拡大することで輸入が増加し、これが円を安くし国際競争力を高めることにつながるとする。すなわち、財政出動による内需拡大こそが円高を止めるとする。マンデルフレミングモデルに対して、デフレ下では金利の大幅な上昇はありえないため、自国通貨高にはならないと主張している。
「くたばれグローバル資本主義」が座右の銘であり、海外からの需要取り込みや国際分業の伸展により経済活性化を目指すグローバル成長戦略論には否定的である。
TPP反対派の代表、TPP反対の急先鋒とも言われており、反TPP論者として注目されている。TPPについて中野は「日本はすでに開国している」「TPPで輸出は増えない」「TPPは日米貿易だ」と持論を展開している。中野が編集した『TPP 黒い条約』ではTPPが内包する問題点を、中野を含め専門家7人がそれぞれ解説している。

[著者情報]
中野剛志(なかの たけし)
評論家。元・京都大学大学院工学研究科准教授。エディンバラ大学大学院にて政治思想を専攻し、博士号取得。主な著書に『TPP亡国論』『世界を戦争に導くグローバリズム』など。

柴山桂太(しばやま けいた)
京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。専門は経済思想。主な著書に『静かなる大恐慌』、共著に『グローバル恐慌の真相』『TPP 黒い条約』『「文明」の宿命』など。