旧時代では取るに足らない流通経路に対しても独占が存在していたが、資本主義の発展が公正かつ迅速な市場を必要とし、それら旧時代のしがらみを洗い流した。しかしそれらのしがらみは、最初から無意味な搾取機構だったわけではなく、安定した商品取引を実施するための重要な役割を果していたものである。とくに資本主義以前の国家機構が未発達の時代では、強制的に信用を流通させるための封建的秩序を、地縁属人的な暴力装置が確保する必要があったのである。しかし国家機構の発達により、それらのほとんどは単に無意味になっただけでなく、違法な存在へと転化した。この独占や寡占の不可能化こそが、経済発展の基礎であり、資本主義存続の鍵である。現代資本主義において重要な位置にあり、いまだに独占商品であり続ける商品は、労働力商品と土地である。そのいずれもが、 資本主義的生産に対応できない商品的特性をもつために、生来の独占商品になっている。
労働力商品がもつ独占的性質は、商品市場の需給調整機能への反逆として現れる。つまりその性質は、商品化を拒否する人間としての自律性に由来する。この自律性は、人間的自由の構成条件であると同時に、人間的自由そのものでもある。話は外れるが、資本主義以前の国家誕生の時代から支配層は、労働力商品からこの独占的性質を剥ぎ取るために様々な工夫をしてきた。資本主義以前の支配層は、人間を役畜にする形の暴力的囲い込みを行い、労働力の商品的自律自体を許さなかった。これに対し資本主義で登場した新しい支配層は、人間を労働者という名の放し飼いの役畜に変えた。これは技術進歩により、役畜に餌を与えている隙に多くの使用価値を奪い取れば良くなったためである。旧時代に比べると役畜の扱いは大幅に改善されたが、旧時代に支配層が行っていた役畜の生活管理を、資本主義では役畜が自らの義務として負うことになった。この結果として資本主義への移行期に、多くの役畜が悲惨な運命を辿ることになった。支配層が役畜に生活手段を与えずに放逐したためである。支配層は、生活管理のアウトソースにより身軽になった一方で、放し飼いにした役畜からより多くの使用価値を奪い取る 工夫が必要になった。旧時代の暴力的強奪方法もまだ有効であるが、その有効性は限定されたものとなり、支配層自身にとっても時代に逆行した方法となりつつある。資本論1巻は役畜から剰余価値を奪取する各種方法の指南書でもあるが、それらの方法も基本中の基本でしかない。おまけに産業予備軍などという荒唐無稽な方法まで指南している。現代の長期不況において支配層は、帝国主義戦争などの大技から労働力市場の規制緩和などの小技まで含めた上で、さらにその先の方法を提示する新しい資本論を求めている。それは、労働力商品から独占的性質を剥ぎ取る方法が無いのを、今では支配層も理解しているからである。
上記までの展開に目を通していただければ、資本主義の延命策として何を提示しようとしているかは、想像がつくことと思われる。
資本主義の延命策は、土地商品の独占的性質の剥奪である。
以下に土地商品の各種の流動化方法ないし注意事項を示す。
•平均居住面積以上の土地に対する固定資産税・相続税の大幅課税 (消費税・法人税の全廃と抱き合わせでも可)
•居住者のいない居住用賃貸物件に対する固定資産税の大幅課税 (土地の課税優遇措置の廃止の一環)
•根抵当権の廃止 (不良資産圧縮と土地の有効利用)
•外国人・在外邦人の土地取得の制約強化 (土地版金解禁の抑止と土地の有効利用)
•平均居住面積以下の居住用賃貸物件に対する固定資産税の大幅課税 (居住環境の改善による内需増加)
•特定面積単位以下・特定形状基準以下の土地に対する固定資産税の大幅課税 (不良資産圧縮と土地の有効利用)
本来なら、平均居住面積以上の土地の相続禁止が一番簡単なのだが、それは資本主義の延命策というより共産主義化の方策である。それはもっと先の世代が実施する方策である。資産の海外流出にも派生する可能性があるので、ここに含めない。
日本における貧者の税引き後給与の半分近くが、地代のために使われる。地代は非生産的消費に属し、資本回転の外側に位置し、生産拡大の役目を果さない無意味なものである。この無意味さは、貧民だけでなく資本家をも苦しめており、日本における資本の効率的運用を阻害し、生産力の発展の桎梏になっている。また 居住面積の狭さを中心にした居住環境の悪さは、内需増加の最大の障壁である。土地の課税優遇措置は、都市部における土地の複雑な権利関係を産み出し、土地を不良資産化させ、土地の有効利用を阻んでいる。
技術革新による生産性向上が富の増大をもたらす一方で、地代が果している役割は、膨れ上がる富をすくい上げるザルの目である。ザルの目が拡がりすぎると、どんなに生産性を向上してもザルの中に富は残らない。ザルの中に貧者に必要な生活資材を残せるように、ザルの目の大きさを調整する必要があるが、このザルの目が狭まることは無い。貧者は生涯の半分近くを地代に費やしたことになるが、資本家から見ても、労働者に支払った労賃の半分近くが地代に消えたことになる。資本家にとっても地代は重荷なのである。そして重荷に感ずる資本家は、低賃金を求めて国内産業を発展途上国に移動させる。しかし労賃に占める地代部分が消失するなら、発展途上国よりも安く高品質の労働者はいつでも国内に存在している。支出の半分近くを占める地代に対し有効な対策をせずに、定額給付金などの小技に終始する限り、一時期的な景気回復があったとしても、資本主義の延命は無い。(2010/11/16 ※2015/08/15 ホームページから移動)
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資本論の再構成
・・・ 利潤率低下vs生産性向上
・・・ 過剰供給vs利潤減少
・・・ 搾取人数減少vs利潤減少
・・・ 機械増加vs利潤減少
・・・ 過剰供給vs必要生産量
・・・ 労働力需要vs商品市場
・・・ 過剰供給vs恐慌
・・・ 補足1:価値と価格
・・・ 補足2:ワークシェア
・・・ 補足3:流通費
・・・ 補足4:商人資本
・・・ 補足5:貸付資本
・・・ あとがき:資本主義の延命策
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