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『沙門空海 唐の国にて鬼と宴す』 夢枕貘

2017-12-03 | 著者別・は~ん
祝映画化記念。
2018年2月24日公開。

今日の4冊
『沙門空海 唐の国にて鬼と宴す』

「沙門空海 唐の国にて鬼と宴す」
夢枕貘
読了。
ハードカバーにしておよそ1,884ページ、原稿用紙換算でも1,000ページを
超える大作を、さくっと1日半程で一気に読ませてしまう夢枕貘の筆力恐るべし。

倭国から唐への留学僧である空海を主人公に、玄宗皇帝と楊貴妃のエピソードを
柱とし、仏教密教、呪法合戦に漢文詩文、おまけに人間のエゴもこれでもかと
盛り込んで飽きさせない。

このような、大陸が舞台である面白さは多国籍性にあると思う。
本作にも唐の長安の人々の他にいわゆる胡の人や物、ペルシア人、天竺出身人、
など様々な人物や物が登場し、物語をカラフルなものにしている。

属する人種が様々だから言語も宗教も思考形態もみんな違う。
違って当たり前だから、互いを尊重することから始まり、結果の1つとして自己を
高めることにもなるのかな。

日本のような島国で排他的・鎖国的な思考が前提になるのは当然で、それが
悪い方に発展すると「空気読め」や暗黙の了解、「みんな一緒」という
没個性・没人権に至ってしまうのか。

タイトルにある通り宴を催すシーンがあり、これがまた美しいのです。
空海の、この特別な宴に対する心遣いを感じ取った時、柄にもなく思わず落涙。


ラストでは憲宗皇帝との曹操・項羽・曹植の書のエピソードが描かれています。
このようなシーンを読むにつれ自分の不勉強さを思い知り、同時に教養は
深く身につける程にこうした作品を楽しめるのだと改めて認識。
聖書や各神話はそういう意味でも必読書ですね。

常々思うに、他人からどのように見られよう・とられていようとも、揺らがない
自己たるものを確立できていれば全く問題ないのです。

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2 Comments

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映画を観て・・・ (もののはじめのiina)
2018-03-05 09:42:41
いま公開中の「空海」を見て参りました。

夢枕獏は、「神々の山嶺」でもエベレスト初登頂に挑戦の途中に遭難したジョージ・マロリーが頂を踏んだかの謎を扱ってました。
https://blog.goo.ne.jp/iinna/e/e1158d2ca552c12b66ec397a5ee8334c

こんどは空海が中国留学中に、権力者連続死亡事件の真相を追うミステリーに仕立ててました。
「描こう」としたのは、綴りのよく似た「猫」でした。
夢枕獏は、そんな書き手でしたか・・・。

原作を読んでみたく思いました。図書館に3巻だけあったので拾い読みしたら、この当から読んでも面白そうでした。

>もののはじめのiinaさん (管理人)
2018-03-05 19:11:03
もう映画版をご覧になりましたか。
日本では、日本語吹替版しか上映しないらしいのがとても残念です。
張榕容 チャン・ロンロン他、中国の役者さん達自身の声で観たいものですが……。

サブタイトルが違うなど、映画化にあたっては様々な演出がなされているように思います。
『化け猫』ですものね。

夢枕貘はフィクションにミステリを絡めるのが上手い作家さんだと思います。
これからも多くの本や映画を楽しんでいきたいものですね。

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