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『虚実妖怪百物語 序・破・急』 京極 夏彦

2017-11-14 | 著者別・あ~の
 先日『シン・ゴジラ』が地上波初放送でして、ご多分に漏れず私もツイッター片手に
リアタイしていたわけですが、その豪華キャスト陣に片山修一 役で出演している
嶋田久作さんを見て、彼が五芒星の白手袋をはめてゴジラに立ち向かえばいいんじゃ
ないかなぁと思ってしまった、荒俣宏さん好きな方は他にもいるはずです。

 

 今日の三冊
 『虚実妖怪百物語 序・破・急』 京極 夏彦

 
 うそまこと、と読みますので図書館などの検索時には要注意です。
序・破・急の三冊に分かれての刊行。123巻や壱弐参巻や上中下巻でなく、あえて序破急。
ちなみに『一、二、三、死』と言えば高木彬光さんの墨野隴人ですね。
あれの最終巻が好きでして、ついクイーンの『ドルリー・レーン』ものやオルツィ『隅の老人』
も読みたくなってきますね。


 フィクションにも実在の人物などを登場させるメタであったり、作品群がリンクしていたり
と一癖も二癖もあるのが京極作品。
虫太郎も顔負けにあれやこれやと小ネタ雑学トリビアを包括するせいかやけに分厚く、本一冊で
支えなどなしに自立するのも、京極作品。
本作には多数の妖怪の他、加藤保憲やクトゥルーや陰陽師、貞子までもが登場しては名だたる
作家さんや、著名人たちと結束して自衛隊などに応戦してしまう、なんでもアリなメッタメタな
作品です。
大好きなんであります。


 いろんな意味で名作であり同時に迷作でもある本作。とにかく面白い。

 例えば本作の主人公のひとりである、特撮ファンである榎木津平太郎。
京極作品の『榎木津』といえば当然、視える探偵である"彼"の関係者を連想する読者の心理を
逆手に取りみごと欺く。
特撮、いい響きだなぁ。『来来! キョンシーズ (殭屍小子系列)』とか宇宙刑事とかとか。



 愛すべきお馬鹿なキャラクター、レオ☆若葉は最初からとことん馬鹿なのですがその彼が終盤で
重要な役割を果たすのは、童話によくみられる末子成功譚にも似ていて、

また、水木しげる大先生(この作品はフィクションとのことです)のセリフ
『まともな世の中ならアンタ、働けば金塊は手に入るですよ。
金塊を手にしたら怠ければいいんです』(本作の"急"より引用)

はひたすら働かされて余裕のない現代に一石投じるようでもあり。
この辺はトルストイの名著『イワンのばか Иван-дурак』を彷彿とさせました。


 
 爆笑したのは、存在しないものを可視化させるアイテムにより妖怪たちを出現させた後に怪獣も
出そうということになったシーン。
まずガメラを出し、当然のようにゴジラも、となった時に『キングコング対ゴジラ』なのか
『モスラ対ゴジラ』か、はたまた他の作品からか、どのゴジラかでもめて結局見送り、ラドンで
決着したのだとか。
挙句地の文で『何たって奴らは自衛隊慣れしている』(本作の"急"より引用)ですからね。


 この作品は何と1900枚らしい。
それをハイテンションを保ちつつ飽かせず一気に読ませてしまうのだから、京極夏彦、いや人類
おそるべし。
シン・ゴジラの第五形態に人型のものが見られたのも、うなずけますね。

『書楼弔堂 破曉』 京極 夏彦

2017-10-27 | 著者別・あ~の
こう、図書館や本屋などで並ぶ背表紙を眺めていると、『わたしを読んで』と
話しかけてくる本が時折あります。

今日の一冊
『書楼弔堂 破曉』 京極夏彦


これもその一冊。
シリーズ第一弾。

御一新後、東京の外れが舞台。
主人公は武家の出身であり、現在は病気療養中である高遠彬。
これが知人の話にあった書舗をふらりと訪ねたことから始まる、
不思議な ーーいや、この世に不思議な事などないのでしたねーー 物語。

薄暗い書舗店内にたたずむ白い着流しの主の言うことが面白い。
曰く、本は墓のようなものであり読むことが本にとっての供養になる。
本はその内容ではなく読んで読者が何かを感じ取ることに価値がある、
(人間として、かな?)未完のままで構わない、
本は読みさしでその良し悪しを判断せず、きちんと読み終えるのが良い、
などなど。
本好きの方々だけでなく、人生に迷う方々にも手にとっていただけたらな
と思わせる本。

ところで本というものは、その時の読み手の心身状況によってもその
語りかけてくる内容を変化させはしませんか?
一種の生き物でもあると、私は思いますよ。

この最終章で作者の仕掛けにニヤリとしてしまうのは当然のことで。
弔堂は高遠と共に、高遠が預かっていた猫を里親希望の某神職さんの元へ
届けに行く他大切な用事で中野にある神社へ向かう。
その神社、武蔵晴明社宮司の中禅寺輔と交わす会話がまた面白いけれど、私が
注目し想像してしまったのはむしろ、この神社の数十年後なんですよね。

石榴がいるのも、その影響なのかしら?

『PK』 伊坂幸太郎

2015-09-14 | 著者別・あ~の
 リードを付ける練習。
背中に何かが乗っていると違和感があるのか、腰が引けちゃって匍匐前進。


 今日の一冊
 『PK』 伊坂幸太郎

 『PK』、『超人』、『密使』の三篇から成る。
読み終えた後で何度も読み返すこと必至。


 8月31日、夏風邪をひく。
9月に入るなり微熱が続き仕事も休み、最初の週末まで寝込んで筋トレや弓道稽古もままならず。
9月8日、ようやく的前稽古再開。ぐだぐだ。
9月10日、なんとか的の近くに矢を寄せられるようになる。
9月13日、やっと弓と身体がなじんできた。

このように一旦寝込んでしまうと、感覚を取り戻すのにおよそ2週間かかってしまうのが私で
あって、またここから射を作り始めるのですが、体調を崩すというのは悪いことだけじゃない。
寝込んでいる間ずっと、我が家の三毛猫さんがぴったりくっついていて、こんなことでもない限り
一日中密着していられないから、これはこれで至福。


 おもしろいですよね、物事は見方を変えるだけで如何様にも解釈できる。


 さて『psychokinesis サイコキネシス、念力』のお話かと手に取った本書、とんでもなくSFで
ありファンタジックでもあり、笑いあり謎ありの一冊。
単純に時系列を順に追うのではなく、行ったり来たり場面もせわしく変わり、そこがまた勢いや
奇妙な浮遊感、俯瞰しているかのような錯覚。
以下は未読な方にはネタバレにもなりかねないのでご注意を。













 時系列的な感覚が狂いそうになる伊坂節。
司馬遼太郎『項羽と劉邦』みたいな、こういう構成は頭の中でメモをとりつつ読み進めるのが常。

 『PK』では勇気と信念について再認識させられる。
秘書官の最後のひとことだけでは『次郎=秘書官』と決めることはできず、どちらかと言えば
大臣の父である作家の本を読んだうえでの、大臣を支えるユーモラスなセリフではないかなと思った。
ゴキブリが送り込まれた世界ですね。
そうすると『密使』の『私』は消滅してしまったということか。

 
 『超人』での三島・田中コンビのやりとりに、くすりとしてしまう。
大臣の決断には本田毬夫がキーとなっていて、メールの文面が変化したくだりはSF的だ。
レストランから消えたスーパーマンもどきは三島なんだろうな。
ゴキブリが送られなかった世界。
『密使』でメモリカードが発見された、つまり『私』という犠牲の出なかった版。
ん? けれど、何かを為すには何かしら犠牲はつきものじゃないのかな、とふと思ったり。


 『密使』
『僕』と『私』が交互に語られる。
何といっても3億年の大先輩ですからね、かないませんよね。
『私』は幼い本田毬夫に同化したのかな?

『家紋の話』 泡坂妻夫

2015-03-22 | 著者別・あ~の
 猫ばってんぎゅーを撮影しようとしたらバレた。



ので、熟睡しきったところを狙い定めて爪をにゅっと出して弄んでみた。


 シルバーグレーや禿頭の方っていいですよね。
経験の深さ、豊かさを感じさせ包容感もあり冷静でいらっしゃる。
感情的になって何かと失言しがちな私としては学ぶところ多く、いつも助けられています。
特に弓道の射技についていただける数々のアドバイスはとてもありがたいものばかりで、この土曜の
稽古では新たな発見の連続でした。


 矢って、何もしないからこそまっすぐ的へ飛び、弦音や的中音も豪快なんだな。
弓を執る時も体配も、ごく自然な動きだけで十分なのであり、だから無理も隙もなく美しいんだ。



 今日の一冊
 『家紋の話』 泡坂妻夫

 ここではミステリ作家でも手妻師でもなく、紋章上絵師としての泡坂妻夫氏。
家紋の成り立ちから由来、作図法、江戸の遊び心ある紋や源氏香にも言及し、家紋自体も多く載っていて
入門するには最適な一冊。
買いたいと思い探してみたものの、表紙が泡坂先生でないものが今では一般的らしく、これは古い版を
見つけ出すしかなさそうです。


 弓道ともなれば五つ紋を着用する機会も多くあり、周りには様々な家紋があふれております。
源氏車、右三つ巴、一文字三ツ星、揚羽蝶、武田菱、丸に根笹(3本かYの字か失念、失礼)、
三階菱などなど。私のは丸に花菱。母の実家の家紋です。


 素材としては身の回りの道具や自然界のもの――動物や魚介甲殻類に比べ植物が多く、鳥類では鳥
そのものより羽根が用いられることが多い(違い鷹の羽など)、雪や月、星など――が主。
おもしろいのは、素材を裏側から見たもの(花など)や正面から見たもの(ウサギなど)も家紋になっていたり
細長いもの――大根や稲、藤――をうまく丸めて円にしたり、朧状に描いたり、見立て――茗荷を並べて胡蝶を
描く――などもあり、当時の職人のセンスが感じられる。


 丸で囲む紋が多いのは、また弓道の矢渡しで入場後の射手が遠回りをして本座に着くように、一種の結界を
張っているのかな、と思ったり。



 こんなことを考えながら二輪通勤していると、交通標識までが家紋に見えてくるからこれはまずい。
赤と白で描く『丸の内に一つ引き』とか。

猫の日記念:『猫弁と少女探偵』 大山淳子

2015-02-22 | 著者別・あ~の


先週のお話。

 タネも仕掛けもございます。
通勤で乗っている125cc。
自宅に駐輪しておく際には車体に異状無いのを確認してから、チェーンロックで駐輪場所に固定。
カバーもすっぽり掛けます。
それが週末をはさむとあら不思議、パンクしていたではないですか。

正確には、直径7mmくらいのネジが後輪の脇、カバーをめくった辺りにがっつり刺さっていた。
カバーに穴は開いてない。


フーダニットものかな?

ここはミステリの定番『刺さったナイフは抜くな。抜いたら大量に出血するからあえて抜かずに
そのまま栓をしておけ』に則って、空気が抜けないようそのままの状態で近所のホンダ系列バイク修理店さんへ。
途中でバーストしなくてよかった。




 今日の一冊
 『猫弁と少女探偵』 大山淳子

 猫を保護し、獣医にみせ、里親に引き渡す猫弁護士、通称『猫弁』の百瀬。
保健所での殺処分もなくしたいと、作中で彼に語らせる作者はきっと猫好きなんだ。


 保護した三毛猫がいなくなった、との依頼には猫の習性を利用し奔走。
ひとつの事も違う角度から見ると全く異なる結果に成る。
その一方で百瀬の弟や、婚約者・亜子との進展度など、『家族』も本書のテーマのひとつになっていて
あたたかみのある、人情味のあるミステリに仕上がっている。
弁護士と言えばペリイ・メイスンのようなバリバリな人を想像してしまう私にとっては物足りないが
これはこれでいいか。

『桐島、部活やめるってよ』 朝井リョウ

2014-12-29 | 著者別・あ~の
 あったか帽子買いました。
ボーナスが思ったより高額でしたので、まずはいくつかの動物保護団体さまへ寄附送金。
ニンゲン用のこの帽子は、猫様も気に入っているので共用ですにゃー。


 今日の一冊
 『桐島、部活やめるってよ』 朝井リョウ



 終わってしまいました、全国高校バスケ選抜優勝大会(ウインターカップ) 2014
男子準々決勝の途中から3位決定戦、決勝戦に至るまでをケーブルテレビで猫と一緒に観、
その白熱ぶりには不整脈もふっとんだ。


 強いチームの共通点としていくつか挙げられると思う中、次の事柄を感じた。
*個人のスキルの高さとチーム全体の一体感
*相手チームを脅かし味方の精神的支柱ともなる、絶対的エースの存在
*広い視野
*最後まで諦めない強い意志と闘争心
*コーチをはじめ、ベンチからのフォロー
*応援団


 これは弓道にも言えることで、集中しきってしまうと周りの音も聞こえなくなる。
風景は視界に入るか入っても意味を持たない色彩の塊だったりし、その反面で対象物しか見えなくなる。
暑さ寒さも関係ない。
それでも雰囲気は肌で感じ取る。
試合という特殊な状況の中でどこまで実力を発揮させることができるのか、すべては自己責任。
弓道で言うところの『発して中らざるときは、即ち己に勝つ者ものを怨みず。 反ってこれを己に
求むるのみ』は名言だと、つくづく思う。


 そして強い選手はとにかく目立つ。
名を全国に知らしめ、こうして私のようなど素人にも強い印象を与える。



 ここで、本日の一冊なる『桐島、部活やめるってよ』ですが、本書のおもしろいところは
タイトルに挙がっている桐島くん本人を書かずに、その存在感を浮かび上がらせているところ。
バレー部キャプテンであり、リベロとしても強い桐島。
チームメイトや友人の彼女、クラスメイト達による桐島談を読み進めるに、彼の影響力にはっとする。
ニンゲン誰でも誰かに影響を及ぼし、それが広がって意外なところから反響があったりするもので。


 
 さて大晦日は、みなさまのご協力によりいつものメンバーで射会のはしご。
いつもありがとうございます。
先輩主催108射会に向けて、景品は準備したし替弦もつくった。
今年は弓道着ではなく和服で引こうかな。
そこから電車で移動、年末年始にかけての明治神宮奉納弓道大会。
奉納、なのであって勝負でないのがミソですね。

『妖盗S79号』 泡坂妻夫

2014-09-04 | 著者別・あ~の
 猫様。
弓具メンテナンスのチェックしてくれるのはありがたいのですが、握り革変えたいんです。
ちょっとそこをどいてくれますか。



 今日の一冊
 『妖盗S79号』 泡坂妻夫

 手妻師でもあった泡坂先生の、ユニークであたたかみのある文体。


 
 ちょっとイライラすることがあったので髪を更に短く切ってみた。
長い部分でも5センチくらい。
男前度が更に上がった!

そんな髪型に加え、FSS "ナトリウム・シング・桜子" そこのけのまな板胸、出かける時もデニムに
スニーカー、Tシャツというラフな格好でバイクに乗ることが多いためか、よく少年に間違えられる。
某弓友からは『ぼっちゃん』と呼ばれる。我輩は猫にゃー。
いっそ男袴で弓道稽古しようかな。


 というわけで、中性的なキャラクタには親近感を持つ。
けれどこの、ルブランのアルセーヌ・ルパンのような『ようとう えす しちじゅうくごう』を
好意的に読み進めるのはそれだけじゃない。
芸術を愛し、人を殺さず、他人が勝手にその名を騙って犯罪を起こそうとしてもそれを逆手にとって
しまう、など機知に富んだ魅力的な人物に描かれている。

S79号を追うのは警視庁の2人、逮捕に情熱的な東郷警部と風雅を解する二宮刑事。
白昼堂々と貴重な品を持ち去るS79号に何度も翻弄され、それでも終盤ではちょっといいエピソードと
なっており、ほっとする。



 作中でS79号がよく用いる小道具に、ダイヤのジャックというカード(トランプ)がある。
なぜそのカードなのか?
一般的にダイヤのジャックと言えば、『パリスの審判』で有名なパリスの兄であり『イリアス』に
登場するトロイの "輝く兜の" ヘクトールを指し、スートとしてのダイヤならば貨幣や鈴を意味するらしい。
英雄と貨幣・財産とを示唆してるのかな。


『ルピナス探偵団の当惑』 津原泰水

2014-08-18 | 著者別・あ~の



 下僕が動かにゃい……。
はッ!
下僕が起きたぞ!
おやつおやつ!

……おやつ……くれないのか。


 土日も発熱により寝込んでおりました。
猫様が、ごはんも食べずにべったり寄り添ってくれていました。
ゴロゴロ音は回復系呪文に違いない。
金曜に友人とお出かけし、白桃のおいしいカキ氷と十五穀米のお昼を摂ってはしゃぎすぎたの
でしょう。
もっと体力つけなきゃな。
そのまま月曜の今日、仕事して汗かいたらなんか熱下がったかもしれない。
この読書日記は勢いで書いてる。




 今日の一冊
 『ルピナス探偵団の当惑』 津原泰水

 私立ルピナス学園高等部の、3人の少女と1人の少年の探偵物語。
本書には3作品を収録。


『冷えたピザはいかが』

 宅配ピザって高い割にベジタリアンメニューはないし、味も濃すぎてあまりおいしくないと思う。
おまけに手も周りも汚れてしまう、文筆業の食事としてはどうなんだろうか。


『ようこそ雪の館へ』

 クローズド・サークルものは、携帯端末の普及し、ネットワークも張り巡らされている現代
ではどこまで通用するのか。
が、あえてそれを考慮しない古典的なにおいがまた良いのだ。


『大女優の右手』


 『手套の麗人』と異名をとる俳優、野原鹿子。
舞台での公演中に絶命し、遺体は楽屋へ運ばれたが消失。
後に発見されたその遺体からは、右手とそこにつけられていた豪華なブレスレットまでもが
なくなっていた。


 さりげない手がかりがあちこちに落とされていて、注意深く読み進めると真相へ近づくことが
でき、灰色の脳細胞を刺激してくれます。
ニンゲンの二面性、もろさ、身勝手さもにじみ出る、ちょっと切ない一作。



 さて。




『アリス殺し』 小林泰三

2014-08-10 | 著者別・あ~の
 ジョーズ風におひるね。


 台風11号の影響下、それでもこの地域は大雨と強風程度で済みつつある。
自然災害にはどうしたって勝てやしないから、せめて一緒にいられる時は一緒に過ごしたい。
毎日が一期一会。
ずっと一緒に居てね、猫様。



 今日の一冊
 『アリス殺し』 小林泰三


 不思議の国での殺人(人?)と現実世界での事件。
それらはリンクしているのか、それなら不思議の国での人格と現実世界での人格、どうつながって
いるのか。
次々へと起きる事件の真相は。
ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス Alice's Adventures in Wonderland』を
思い起こしながら読み、二重の意味でやられた。


 ひとつは作者の技巧。
会話が延々とループするキャロル節を取り入れつつ、二つの世界のリンクを登場人物の名前でそれと
におわせることによって読者を思考の国へ誘い込み翻弄する。

 ひとつはグロさ。
あのぅ、私、ホラーやスプラッタってダメなんです。
生理的に受け付けない。
もしこんなにグロいとわかっていたら読まなかったであろう、それくらい。
三津田信三氏の刀城言耶シリーズだって、読みたいのに読めないくらい。
道尾秀介の『背の眼』でぞぞぞっと来て眠れなかったくらい。



 それでも、そのループやグロさがこの独特の世界観を醸し出していて一読の甲斐はあり。
ラストシーンではそれこそ、規模のでかさと背筋の凍る一行に魂消た。
そんなのアリですか!?



 さて、秋の弓道イベントの多さにも魂消るぞ。
9月15日 県西ブロック大会。役員支部なのに、仕事の都合でぜんぜん打ち合わせに行けてない。
9月28日 大遠的大会。
10月19日 四段審査。受けてみるかな?
10月26日 第二回若手親睦射会。
11月2日 菊の射会(確かこの日でしたよね)。
11月3日 明治神宮奉納全国大会。現金書留で申し込まねば。
11月23日 香取神宮奉納射会? 
11月30日 高校審査の役員。

合間を縫って遠的稽古にも行きたいもんです。

『あほうがらす』 池波正太郎

2014-07-09 | 著者別・あ~の
 猫の耳にロック。

 LINKIN PARK "THE HUNTING PARTY" 初回生産限定盤(CD+ライヴDVD)に収録されている
映像を観るにテンションが意味もなく上がる、微熱続きの夜でした。
猫様のゴハンとトイレのお世話以外には起き上がれず、ひたすら寝るだけの日々。
一時は体重も1.5キロ落ちたが結果的には、筋肉率およそ 41.3%、体脂肪率およそ 17.5%の体型を
キープできている。
このバランスを維持するのには、好きな食物を制限するのと運動と筋トレ。
平和なこの世の中だから、それくらい自分に課したって罰あたらんだろう。

 ヴィーガンに近い食生活を選んだゆえに、こうした具合の悪い時でも肉などは摂らなかったのだが
それでも何とか持ち直したのは気力ってやつか。
そう、ある程度は気合を入れれば何とかなってしまうものだ。
弓道でも同じことが言えると思う。


 そのライヴの中の一曲がこちら。
Linkin Park - One Step Closer (Official Music Video)
リリース当時のこのPVを観るとやっぱ若いな。
Mikeは派手な赤髪でしたね。





 今日の一冊
 『あほうがらす』 池波正太郎

 どこから読んでも楽しめる11篇を収録。
江戸時代を舞台に巨匠が描き出すのは人間の奇妙さ、奥深さ、底力、高貴さ、欲深さ、二面性……。
そのいくつかは

『鳥居強右衛門(とりい すねえもん)』
柄にもなく家族愛というものに興味をおぼえた。
ひとりの人間をそこまで駆り立てるものは何だろう。

『荒木又右衛門』
感情を殺し信念を貫くことはそう易しいことではないが、できなくはない。

『狐と馬』
驕ることの愚かしさ。
ニンゲンなんて所詮はとるに足らない存在であり、生かされていることを自覚しなくては
ならないな、と、窓際に仰向けに全身伸びて爆睡するシマ三毛猫を眺めて思う。


他、浅野内匠頭の意外な一面をむき出しにした『火消しの殿』など。
池波氏だから書ける物語なのだと、ふと感じるのでした。


『希望』 瀬名秀明

2014-06-20 | 著者別・あ~の

 スリッパを枕に熟睡する三毛猫にあ様。
リラックスしてくるとこんな具合に足の指が開くにゃー。




 今日の一冊
 『希望』 瀬名 秀明

 ハヤカワ文庫より刊行の短編集。

収録作品
魔法
静かな恋の物語
ロボ
For a breath I tarry
鶫と鷚(つぐみとひばり)
光の栞
希望


 
 アジモフの『ロボット三原則』がちらつく本書は、シートンの本歌取り的な作品などもあって
ひとくちにSFだとか科学だとか、そういったジャンル分けの枠にはまらない。
巻末の解説はややネタバレにつき、先に読むのはおすすめできぬ。


 中でも『魔法』が印象深いのは、手品を扱っているから。
相手に特定のカードを引かせる技術など、心理戦みたいでその原理はどうなってんだか不勉強な私
にはよく理解できないのだけれど、ゆえにそこに惹かれるのだ。

 登場するマジシャンの優れた素早い手技を読めばむしろ手妻と言うべきなのか、それが義肢による
ものであるという時点で、実現すればあらゆるエンジニアの注目の的となること必至。
それでいてミステリ要素も小ネタもある。
バイシクル・カード、いわゆるトランプを片手に『エラリー・クイーンのカード』と言われれば何を
連想するか?
そこであのカードを持ってくるあたり、ニヤリとせずにはいられない。
瀬名さん大好き。



 一方で科学と哲学が同居しているように思えるのが表題作『希望』。
そもそも科学も哲学も、探究するという面に於いて同じものじゃないですかね。
いささか乱暴ですかね。
本作ではシンパシーという単語が頻発しており、私自身の経験に置き換えれば我が家のワガママ三毛猫と
マジメに対話していたり、弓道稽古でたまに弓との一体感があったりしていることを思えば、ひとくちに
生物学や物理学といったデータだけでは説明しきれないものも相まってこの世が在ることの不思議さ。



 さて日曜は『黒潮弓道大会』。
雨降るんじゃないぞこら。



『ノックス・マシン』 法月綸太郎

2014-04-18 | 著者別・あ~の

 『心を亡くす』と書いて『忙しい』。
まったくその通りで、いっそ休職し入院でもしてしまえば楽になるのだろうけれどそうはいかない。
甘ったれで内弁慶なこの仔虎は、時々寝ぼけてキャットタワーから転げ落ちる鈍くさいお方につき、その
最期までしっかりお仕えせねば。
だから発熱しようが動悸が激しかろうが弓道的前稽古をできなかろうが(私は強めの弓を気力で引くため、
ウツ入った時には引けないのだ)、何とか持ちこたえておるよ。

ちなみに職場の私のデスクマットには、『緊急連絡先(自宅に猫がいます)』を書いたメモをはさんである。




 今日の一冊
 『ノックス・マシン Knox's Machine』
 法月綸太郎 Rintaro Norizuki



 物理学や数学の美しく面白いところは、事象が計算によって証明され唯一の解を得られることにあると思う。
思考を明晰する哲学と紙一重、時に『解なし』なんて解もあり、それには最初こそ魂消たもののすぐに慣れ、
『無いが故に有る』のであり『ゼロ0』の存在意義とも通じるものも見られ興味深い。

『2乗するとマイナス1になる』概念を持ついわゆる『虚数、i』も興味深く、これの存在があるから数の
世界も更に広がったのだと軽い感動をおぼえたような。



 複雑に見える計算式も、定義や公式を用いてほぐして行けば案外単純だったりする。
元素周期表を眺めてはその整った美しさに見とれることしばしである化学も同様に一定のルールに従っている
だけで、そうしたものは一種の言語とも捉えることもでき、いささか乱暴かも知れないが、猫の声や仕草から
彼女の気持ちを理解することとも同じだと言える。
つまり世の中すべては単純なのだ。



 例えば『キャットタワーから転げ落ちる猫による、その下に居た私へのダメージ』や『猫缶を開けた時の
猫ダッシュ速度』や『弓道で、安土に刺さった矢の安土表面から板付先端までの深さ ~的中ver. と土束ver.~』
あるいは『離れの際の弦音の冴え』なども計算できるのだったっけ、学生時代にもうちょっと真面目に物理学や
数学をやっておけばよかったな。
猫のゴロゴロ音などは『環境的快適度、身体的満足度、心的満足度』の数値から求められるだろう。


 
 ミステリにSFをかけると、本書になる。全4篇を収録。
と言ってもアジモフやウェルズとはまた一味違う。
クイーンやクリスティのかの名作にも時にネタバレぎりぎりの線で言及し、バンターやヴァン・ダインも登場、
『日本語の本』という存在を生かした一遍もあり、ノックスに興味のあるなしに関わらず楽しめる。



 一見とっつきにくいのだが読み始めるとそうでもなく、謎を思考の面から解明するのが一般的なミステリだと
すれば、本書は数値の面から解明するミステリだというだけかと。
それをやってのける法月氏、そこに痺れる憧れるゥ。

『一刀斎夢録』 浅田次郎

2014-04-05 | 著者別・あ~の
 猫様、ふとテレビに映った鳥に興味しんしんらしい。
モニタの前を行ったり来たり。



 今日の一冊
 『一刀斎夢録』 浅田次郎


 新撰組幹部に斗南藩士、警視庁警部その他もろもろ、名を変え住まいを変え、天保から大正の時代まで
生き抜いた剣豪・斎藤一。
左利きとか一刀流とか無外流とかいろんな説もあり謎は多く、作家によってその人となりも様々に描かれる。
彼について書かれた物語がこちら。


 主観で申し訳ないのだが、うるさいのが苦手なせいか、無口な人に惹かれる傾向にあるらしい。
手当たり次第に読みまくる中でも、寡黙で宴席でもひそりと控えているように描かれることが多い斎藤に興味を
持ったのは当たり前で、ついには夢にまで見るようになった。
あれっ、これってもしかして恋?  だとしたら一生叶わんね。



 大正時代。
剣術の達人、陸軍の梶原稔(みのり)中尉とそのライバルで全国大会優勝者である榊吉太郎警部。
榊に教えられて一刀斎こと斎藤一を訪ねる梶原、その語りが剣に影響することは必至。
うまい構成だと思ったのは、語りを聞き終えた梶原が大会におもむくラストシーン。
吉と出るか凶と出るのか。


 私は剣についてはまったく知らない。
だが、本書における剣を弓に置き換えるとなんとなくつかめそうにも思える。
『守破離(師の型を守り、研究を重ねるうちにそれを破り、自己の個性を打ち出したことにより型から離れ自在
となる)』という概念を忘れかけておりましたよ。
武道だけでなく人生何事も、この繰り返し。

ところで、弓術について語る人は多くあれど、弓道について語る人は少ないのだろうか。




 夕方、陽の落ち着いた頃にウォーキングし、帰りにちょっと回り道をして焼き芋を買いに。
せまい歩道をすれ違う際、脇に寄り道を譲るとそれが年配の方ならばご自身も半身になり、通り過ぎ際に会釈を
返してくれるのが嬉しい。帽子をかぶっていらっしゃればついと手をやり軽く揖を返してくれるのだね。
会釈どころか我がもの顔でのしのしと歩くのはたいてい若い連中だが、そういう方々とは付きあわなければ
よいのであるからどうでもいい。




 現在のiPhoneプレイリストは職場カラオケ対応あれこれ。
声は身体全体で出すものだけに、体力気力もっとつけて音域広げなきゃな。
ミュージシャンが裏声で歌うならこちらも裏声で、地声で行くなら地声で。
キーは自分の音域に合わせ設定して声の使い方は原曲にならう。これ私の信条。


1.GLAY "春を愛する人"
  カラオケメンバーの世代的にGLAYは受けがよい。歌詞も日本的でよいね。
  
2.ONE OK ROCK "C.h.a.o.s.m.y.t.h"
  『ワンオク歌ってよ~』と、上司からのリクエスト。
  サビ2回目の後の "precious" がひっくり返らんよう。
  
3.AAA "Love Is In The Air"
  ひとりAAA。私の音域は頑張ってもmid1F~hiF。
  宇野ちゃんの艶やかな女声サビに合わせると原曲キーとなるが、そうすると男声伸びやかなにっしーパートが
  再現しにくいのは否めない。
  男声のしゃべりに近い日高くんラップは更にきつい、でもコントラルト駆使して頑張るぜ。
少年の声をあてる女性声優さんとか、宝塚の男役の方とか、どういう発声稽古してんのかな。

『密偵』 秋山香乃

2014-02-27 | 著者別・あ~の
 猫様がいない! 
外には出さない筈なのに。
ベッドの下も冷蔵庫の上もこたつの中も探した。
いない。

真っ青になりかけたところで、もぞもぞと動く気配が。
ベッドの毛布にくるまり実に気持ちよさげに爆睡。
安心したにゃ。




 今日の一冊
 『密偵』 秋山香乃

 
 懐紙入れを欲しいのだけれど、こちらにはほとんど売ってない。
懐紙も本当は店頭で実物を見て買いたいが仕方ない、ネット通販を利用して買ったのが
京都の辻徳さんが出している『kaishi 三毛猫』。こちらのお店にもいつか伺いたいにゃー。



 そんな今日は、明治19年を舞台にした、高田崇文『QED』シリーズにも似る歴史ミステリ。
スパイ対スパイ、裏切者は誰なのか、かごめ歌の暗号とは。
孝明天皇暗殺の疑いを解く鍵を求め、北海道から京都まで西から東。
監獄でのシーンや謎解きのくだりでは背筋がうすら寒くなってくるような展開ともなり、夜に一人で
読むにはちと怖かった。
剣と銃、和装と洋装、時代の移り変わりを背景に剣技も読むことができ、その迫力に圧倒される。



 秋山氏の描く藤田五郎は、ひょうひょうとしていながらもいろんな意味で凄腕。
その彼がメインキャラの一人として大活躍するのだから、斎藤ファンとしてはたまらないのだ。
北海道とくれば松前藩、当然杉村先生も登場してこれがまたにくい演出ですねぇ。

『名人伝』 中島敦

2013-05-14 | 著者別・あ~の

 猫様の横ばってんぎゅー。
骨ってムダがなくて、身体の中でもいちばん美しいパーツだと思うよ。



 今日の一話
 『名人伝』 中島敦

 趙の邯鄲の男、紀昌(きしょう)が天下第一の弓の名人を目指して修練を積む。
名手・飛衛(ひえい)に師事の後、百歳をも超えるかと見える甘蠅(かんよう)に9年間師事。


 『射之射(しゃのしゃ)』、『不射之射(ふしゃのしゃ)』ということばが出てきます。
前者は見た目にもわかりやすい。
的中はもちろん、貫徹力があってしかもそれが永遠であるような状態ではないかと想像しうる
のですが、じゃあ『不射之射』って? と問われると難しい。


 弓矢を執らない射?
ヘル・オイゲン・ヘリゲルのように困惑しつつも、それは『射ると決意したら既に射っている』と
いうことなのかとも、思うのです。
気は技に優先するってこと?
確かに的前稽古では体力より気力を消耗するし、どんなに身体的に良いコンディションであっても
気力がからっぽでは的まで届かないことが多い。
ちょっとばかり面白いですね。
夏の短い夜のお供に。