消費増税の“政治判断”の材料 ~ 給与額は上昇、実質賃金は下降(平成26年9月 毎月勤労統計調査)

2014-11-06 15:32:21 | 日記
厚生労働省が昨日発表した『毎月勤労統計調査 平成26年9月分結果速報及び平成26年夏季賞与の結果』によると、今年9月の給与水準と賞与水準について報告がなされている。安倍政権は、来秋の消費増税(税率8%→10%)の判断について、今もまだ今年7~9月の経済指標を基にすることにしているようだ。

今回の消費増税は、社会保障システムを維持するのに必要な安定財源を確保するためのものだ。その消費増税の可否判定について、短期的な経済動向を以て行おうとすることはそもそも奇妙だ。しかし、政治的にそう決まっているので仕方ない面はある。経済動向を示す指標は様々だが、賃金水準はその最たるものになるだろう。そういう意味では、この9月分の結果による効果や影響も相当なものになるはずだ。

月間現金給与額はごく一部の業種を除いて、前年比でプラスになっている(資料1)。これは、これだけを見ると決して悪い数字ではない。むしろ、実態を反映していると思われる。しかし、名目賃金指数を消費者物価指数で除して算出した実質賃金の動きを見ると、ここ1年で明らかに下降傾向にある(資料2)。

これは、消費増税に対しては大きなマイナス材料だ。他方で、消費増税の回避を悦ぶべきとは思えない。今後の社会保障財源が確定しないということだけではない。そのように判断しなければならないほど、経済事情が改善していない結果が数字で出ていることを憂慮すべきだ。そこで景気対策の大判振る舞いをするとしても、それは確実に短期的な税収減をもたらす諸刃の剣となる。

いずれにせよ政治判断に委ねられるわけだが、短期的経済指標だけで長期的財源確保策を決する愚挙から早々に脱しないと、いつまで経っても将来不安は解消されない。増税は大手を振って歓迎されるようなものではない。はっきり言えば、嫌な事。だが、それをしないことによるリスクを数字で再度現していくこともまた重要である。あくまでも、税と社会保障の一体改革なのだ。



<資料1>

(出所:厚生労働省資料


<資料2>

(出所:厚生労働省資料

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