犬がおるので。

老犬から子犬まで。犬の面倒をみる暮らし。

黙とう。

2012年06月24日 | おせわがかり日誌


しばらくぶりに神社に行くと、

なじみのカラスの家族に異変。

森に入ったとたん、なんとなく、感じていたんだけど。






藪の中に、あるべきではないところに、カラスの黒い羽根が見えた。

あの頭のいいトリが、藪の中で、まさか、あおむけに寝るはずがない。

だからあれは遺骸だ。





見たところ大人のようんだけど、にしては小さい気もする。

悪い予感がした。





先日、カラスに頭をどつかれた、といったけど、

あのとき見かけた、雛2羽のうちの1羽ではないか。

もちろんそうでない可能性もあるんだけど、

この森をねぐらにしているのはあの親子だけみたいだし。

気になる。

姿を探すと、親子がいた。

やはり三羽。

あの藪の中の黒い羽根は、雛だったんだ。





大人に近いところまで成長したのに。

背を向けた瞬間、母親にどつかれて、そのときは怖かったけど、

藪の中で、警戒心もなく、二羽で仲良く、あそんでいたきょうだい

彼(彼女)の目には、世界はどのように、うつっていたんだろう。

生まれてから、死ぬまで、どんな思い出があったんだろう。

いつ死んだんだろう。



・・・自然は厳しい。






生命は、その中で、勝手に生きて、勝手に死ぬ。

いつかのニュースで、森の中で、たくさんのカラスが死んで、

いったいなんなんだ、って大騒ぎしたことがあったけど、あれはすべて餓死だった。

恵まれた人間には、なかなか信じられないことだけど、自然の世界ではままあること。

特に、新しいいのちがどうにかやっていけるようになるには、それまでよりたくさんの食べ物が必要になる。

その上、雛たちがようやく大人になろうとする時期は、夏枯れで、春先や、実りの秋ほどには、食物もない。

ほかの鳥たちも必至で子育てしている時期で、食べ物が少なくなるのは当たり前だ。

病気かもしれないし、台風で落ちて怪我したのかもしれないが、食べ物が足りなかったのかもしれない。

なんと切ない。





親子は三羽で、こちらを見ている。

あんなに頭のいいトリが、人ほどに悲しんでいないなんてことがあるものか。

でも、生きていかなければならない。

残った一羽を一人前にしなくてはならない。

藪の中にいるこどもが、土に還るまで、同じ森で暮らしながら、カラスの親は何を思うのだろう。

何も感じない、っていう人もいるけど、そんなことあるものか。

それはあんたに想像力がないだけの話だ。

なんと切ない。





だが同時に、この神社にはよく、家を持たない人が、

一時の憩いを求めてやってくるのだが、そのことを思うと、また切ない。

まだ働けるような若い人で、障害も、ハンディも見受けられない。

そんな人が、心あたりだけでも、2~3人いて、すれ違うたびに、切なくなる。

もし、この人たちがきちんと働ける場所があれば、眠れる場所があれば、家族がいれば。

好きでそういう生活をしている人もいるかもしれないし、

やるべきことをしないで逃げているだけなののかもしれない。

でも、そうではないかもしれない。

マザーテレサが豊かな日本になんて自分のする仕事はないだろうと思っていたが、

ホームレスの人たちを見て、またその人たちをいないものとしている人たちを見て、

なんてことだろう、日本にも自分のするべきことがある、と感じた、と言ったという。

そう。本当に、そう。





同じ森に、やはり、猫たちも好き勝手に生きている。

猫も切ない思いをしているのかもしれないが、表情だけは、ツンとすまして、

なんでもないさ、というように、生きている。

私が猫を好きな理由は、そのせいかもしれない。

そしてそれが、とっておきの強がりだったりすることも、心得ているからかもしれない。

だけど時々は、生きていくのに、強がりがいることもあるよねえ。





台風が来るという日は、せめてこの神社や、

ここそこに生まれた子猫たちや、小鳥たちに、

危ないんだからね、気をつけてね、雨風しのいでがんばるのよ、って、

教えて回りたかったけど、教えたところで、わかるわけもなく。

でも野生の力は偉大なもので、動物たちはあらかじめ知っていて、

ちゃんと、備えることができるのだ。

縄張りや力関係で、いい場所がもらえないことはあるかもしれないが、

あらしをしのぎ、こどもたちを守る方法を、ちゃ~んと、知っている。

たのもしい。





毎日の営みは、切ない思いをかき消して、

ゴーっという強い風のように、抵抗できない力で、すべて流していく。

でも、たぶん、忘れないよ。

小さな黒い瞳が、新緑の木々を、見上げていたこと。

木の実を拾ったり、きょうだいとふざけたり、小枝をついばんだりしていたこと。

その姿がとてもかわいらしかったこと。

この森で、小さないのちが、生まれて、消えていったこと。

お父さんとお母さんが、必死で君を育てていたこと。

君が、一生懸命生きたこと。

忘れないよ。

時々は、思い出すよ。




そして散歩のとき、おれこと話すよ。

とても大事なことのような気がするからね。