くつろぎ日記

ストーリーとセリフに注目したドラマレビューです。

カノン

2005-09-18 16:31:09 | book
篠田節子著です。
図書館で目が合い、ああまた篠田さんを借りてしまったという流れでした。
神がかり的でもあるし超常現象のようでもあるこれは氏の得意とする
ところのようでこの本を人はホラーと呼ぶかもしれません。
でも私は遠い日に残してきた忘れ物を再び受け取りにいく
ファンタジーと思いました。

瑞穂は主婦で小学校の音楽教師をしています。
そのもとに康臣が死の間際に録音した逆回しのバッハのカノンが届きます。
この録音テープがさまざまな不思議現象を引き起こして
謎を解くように瑞穂は移動し、記憶をよみがえらせ、昔の夢を思い出し
やがて取り戻していきます。
若く輝いていたときにはすべてが可能なように思えた。
目の前に横たわる時間はひとつひとつ上っていく階段にすぎなかったはず。
しかし、現実という選択をした瑞穂は頂点を目指す意味を失い
代わりに安定を手に入れ、それでいて人生の折り返し点で揺れる日々である。
康臣は自分の愛した人に死を賭けてメッセージを残した。
瑞穂はそれをしっかりと受け止めたということになるでしょうか。
ラストはちょっとした感動があり、瑞穂は教師をやめ演奏家への一歩を
踏み出すことになります。
康臣の魂が奏でるバイオリンと瑞穂のチェロはこれからの演奏の日々を
しっかりとした足取りで支えあっていくのでしょう。
氏は思うがままに生きることは決して難しいことではないと
もしかしたら人々の背中を押してくれているのかもしれません。

篠田節子の作品はどれも女性がたくましくかっこいい。
こんな生き方をできる人は少ないけれど共感をもって読めた本です。

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