KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

マラソンを愛する皆様、こんにちは。
2022年は積極的に更新していく心算です。

2007上半期マラソン・ニッポン総括(女子)

2007年06月24日 | 記録データ・ランキング
男子と同様に、今年上半期の日本の女子マラソンの記録ランキングを作成してみよう。


1位 原裕美子(京セラ) 2:23:48 大阪優勝
2位 小まり(ノーリツ) 2:24:39 大阪2位
3位 加納由理(資生堂) 2:24:43 大阪3位
4位 大南博美(トヨタ車体) 2:26:37 ロッテルダム優勝
5位 橋本康子(セガサミー) 2:28:49 名古屋優勝
6位 弘山晴美(資生堂) 2:28:55 名古屋2位
7位 大南敬美(トヨタ車体) 2:29:24 名古屋3位
8位 大平美樹(三井住友海上) 2:29:34 名古屋4位
9位 岡本治子(ノーリツ) 2:30:09 名古屋6位
10位 真鍋裕子(四国電力) 2:30:34 名古屋7位

2年前の世界選手権ヘルシンキ大会で、日本の女子マラソンは10年ぶりにメダルを取り逃した。そのレースで6位に終わったとはいえ、優勝したポーラ・ラドクリフに食らいつく走りを見せ、マラソン・ファンの一部からはその積極性を評価された原の復調が、今年上半期の収穫だったと言えそうだ。大阪でも、優勝候補の大本命だった渋井陽子に食らいつき、中盤、渋井が失速するとトップに立ち優勝、と自らのレースパターンを築いている。大阪でも、有力選手をぴったりマークする走りを見せそうだ。悪く言えば、
「自分でレースを作れない。」
と言うことになるが。

今回の世界選手権代表、この原が25歳で、他の代表は全て30代である。原以外の4人は全て4年制大学卒、ということを見ても、日本の女子マラソンランナーの競技生活も大きく変わっているなと思う。

中学、高校から駅伝で活躍した少女が高校卒業後に実業団入りし、2~3年後でマラソンにチャレンジし、20代半ばから後半には一線を退く、という流れが変わってきた。女子ランナーも男子並みに、長きに渡って競技を続けられる環境が整ってきたのだと思う。

それを思えば、今回の世界選手権の代表の平均年齢も、この10傑の面々の平均年齢も30歳
であるという事も悲観的にならなくてもいいかもしれない。マラソンは「大人のスポーツ」だ。高校生までもがゴルフをやるというご時世に、1つくらいは、「18歳未満の出場お断り」のスポーツがあってもいいじゃないか。

やれアイちゃんだマオちゃんだ、あるいは王子だと10代ばかり追いかけたがる今のスポーツマスコミのトレンドに見事に逆行しているが。

とは言え、新人が不作なのは、北京以後を考えたら不安が募る。実はこのランキング外の、11位に相当するランナーが今秋以降、ブレイクするかもしれない。

2月の東京マラソン、女子は世界選手権の選考レースにはなっておらず、女子の招待選手はなく、有森裕子さんや谷川真理さんをはじめ実業団OGたちのエントリーが注目を集めていた。そんな中、レース直前になって、新谷仁美がエントリーしていた事が判明し、ファンのみならず、陸連の関係者までも驚かせた。

昨春、須磨学園から、小出義雄監督が指導する豊田自動織機入りしたばかりの19歳。高校時代は、全国高校駅伝の1区で3年連続区間賞を獲得し、先ごろ決まった、1区にケニア人留学生の起用を禁止する新ルールも女子は不要じゃないかと思わせた逸材である。いずれはマラソン・デビューもと思っていたが、まさかこのタイミングでデビューするとは全くの予想外だった。

選考レースではなかったし、テレビ中継もあらかじめ有森さんの「ラストラン」(6年前の東京の時もそう言っていたはずだが)中心と決めていたところで、注目度が薄かったせいもあってのびのびと走れたのであろうか、2位の谷川さんに18分以上の差をつける、2時間31分1秒
でゴール。「小出マジック」が健在であることを見せつけた。(国立大学進学を早くから表明していたスーパー高校生がいつのまにか「門下生」になっていたのもマジックか?)

今年上半期の大きな事件としては、昨年夏の北海道マラソンから、全ての選考レースで上位入賞を果たし、全日本実業団女子駅伝でも初優勝を果たした、資生堂の川越学監督が新たなクラブチーム、セカンドウインドACを立ち上げ、世界選手権代表の嶋原清子らマラソンで活躍したランナーたちがそろって移籍したことである。さらに、そのメンバーに、マラソン英国代表のマーラ・ヤマウチも加入したという事。従来の駅伝がノルマとなった実業団の陸上部とは全く異質のクラブチームが誕生した。

「このメンバーが駅伝に参戦するのを見たい。」
というのは、全くの本末転倒だろう、やっぱり。

この10傑に、長い間故障に苦しんでいたと伝えられていた岡本と大南敬美の名前があるのも、うれしいし、愛媛県人には、大平と真鍋の名前があるのもうれしい。特に真鍋は、マイルリレーの日本代表メンバー、渡邊高博と向井裕紀弘の母校、新居浜東高校の出身である。双子の妹、陽子は競技から退いたが、彼女には更なる記録更新を期待したい。北京の女子マラソン代表、土佐、大平、真鍋と愛媛県出身者で独占、という夢も見せてくれそうだ。

この10傑、1位の原は今年上半期の世界ランキングでは4位に相当する。10位の真鍋でも50位。つまり、世界50傑の5分の1を日本の女子が占めているのである。ちなみに、男子は松宮隆行で36位。50傑入りしているのは、他には41位の藤田敦史のみ。50人中32人はケニア国籍(1位のカタール国籍のムバラク・ハッサン・シャミもケニア出身)。

今もなお、日本は「女子マラソン王国」と呼ばれるにふさわしいだけの実績は残している。今後は、大阪と北京でその力を発揮できるか、そして、セカンドウインドACのランナーたちが、海外のマラソンでも旋風を巻き起こすか、(嶋原のロンドン参戦失敗は、出鼻をくじかれた感じだったが。)お楽しみはいくらでもある。

マスメディアは、相変わらず金メダリストの動向にしか興味がないようだけど。


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