KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

マラソンを愛する皆様、こんにちは。
2022年は積極的に更新していく心算です。

北京国際マラソン2006雑感vol.2~五輪前哨戦と言うよりも・・・

2006年10月31日 | マラソン観戦記
男子のレースは、前半こそ2時間7~8分台のペースで進んだが、25km過ぎてペースダウン。先頭を走るケニアの凸凹コンビを沖野剛久が追っているという。陸連の男子マラソン強化部長である河野匡氏(大塚製薬陸上部監督)は、30kmまでは抑え気味に入り、後半ビルドアップしていくレースプランこそ、北京五輪本番で日本男子がメダルを獲れる道として、今回もそういうレースを指示したという。前半の5km15分ペースについていた中国のランナーが皆、揃って失速したことを思えば、「賢明な選択」だったのかもしれないが、もはやこのような展開でないと上位は望めないのも、今の日本男子の実力である、というのも寂しい現実である。

それにしても、昨年も後半のペースダウンが甚だしかった。北京のコースは平坦なようで、アスファルトの固さのせいか、ランナーの足にダメージを与えるようである。一時は先頭まで1分11秒差まで迫った沖野だが、逆転はならず。トップ争いは、ラスト1kmでスパートした、小さい方のランナー、キプサングが優勝。タイムは2時間10分36秒と、10分切りはならなかった。沖野は1分48秒差の2時間12分24秒でゴール。今年の別大でマークした自己ベストを2分以上も切った。5位には同じ中国電力の尾崎輝人、駅伝では「無敵の1区マン」(中国実業団駅伝の中継より)の異名を持つ活躍をしているが、マラソンのベストは2時間21分台だったというのだから、大幅な更新である。7位でゴールした松浦仁一も含めて、3人のランナーが自己ベストを更新したという点では、昨年よりも「収穫」があったと言えようが、参加メンバーの中で、2時間11分台のタイムを持つ鷲尾優一と喜多健一が奮わなかったのが惜しまれる。

女子のレースは5km18分台のスローな展開となり、終盤抜け出した、ケニアのパメラ・チェプチュンバを抑えて、中国の孫偉偉が優勝。タイムは2時間34分21秒と良くはないが、実は彼女、一週間前にケルンマラソンで29分台で走り2位に入賞しているという!かつて、教え子の2週連続マラソン出場を断念させた、解説席の小出さんは何を思っただろうか?キム・クンオクも5位で入賞。はたして、彼女は12月のドーハにやってくるのだろうか?そして来年の夏の大阪には・・・。いや、その時彼女の祖国はどうなっているのか?

2年後の北京五輪のマラソン・コースで行われた大会ではあったが、参加者の顔ぶれにしても、記録のレベルにしても、「五輪前哨戦」とは言えなかったと思う。10000mで世界選手権4回、五輪で2回金メダルを獲得した「皇帝」ハイレ・ゲブレセラシエが自己ベストを更新して独走優勝したベルリン、女子は上位4人がナショナルレコードを更新したシカゴの方が、今の世界の最前線のマラソンだったのではないかと思える(実際にレースの映像を見ていないので、あくまでも報道された記録からの想像)。とりわけ、シカゴの結果は凄い。優勝したエチオピアのベアハヌ・アデレら上位3人がいずれも10000m30分台のタイムを持つスピード・ランナーだったのだ!

それらのレースと比べると、五輪の前哨戦というよりも、「試走会」以上でも以下でもないかなと思った。来年は日本とケニア以外にも多くの国のランナーを招き、「プレ・オリンピック」(懐かしい言葉!死語か?)として盛り上げてもらいたいところだが、大阪での世界選手権との兼ね合いもあるから難しそうだ。

1つ、興味深いリポートを見つけた。実業団や大学で長距離のコーチをした実績を持ち、現在は実業団OBや市民ランナーの交流の場となるクラブ・チーム「ラフィネRC」を運営する“隊長”さんのブログより、

隊長さんも北京を走り、2時間44分台でゴールしたのだが、
「声援が少なかった。」
というのである。

“沿道には人がいるのに、私が1人で走っているときはあまり応援してくれなかった・・・

中国の選手と並走しているときは、「チャーヨ!」と皆が声をかけるんですが・・・独走の時は子供たちだけが「チャーヨ!」と応援してくれると言った感じ・・・

もちろんそれはそれでうれしかったですが、やはり複雑な感情があるんでしょうか・・・”

新聞やテレビでは決して伝えられなかった、貴重な証言だと思った。五輪本番では、代表ランナーはかなり厳しいレースを強いられそうだ。

※参考文献
「ラフィネRC 隊長と仲間たち」

http://raffine-rc.cocolog-nifty.com/rc/

23:38 コメント(0) 編集 ページのトップへ


コメントを投稿