KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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2011福岡国際マラソン雑感 vol.2

2011年12月26日 | マラソン観戦記
今夏の世界選手権で川内優輝に先着した日本人は旭化成の堀端宏行と安川電機の中本健太郎、いずれも「駅伝育ち」の九州の実業団ランナーだった。僕にはそれが、「実業団ランナーの意地」に見えた。今回もまた、前田和浩と今井正人、九州の実業団ランナーが意地を見せるレースとなったかと思ったが、今井と前田、2人のペースが意外と上がらない。これはいけない。前田にとっては今年2月の別大毎日マラソンの二の舞になりそうな展開となった。あの時も、別大に優勝経験のある元日本記録保持者の藤田敦史をマークして、先行する外国人ランナーを追わない展開となった。どうして藤田ではなく、前を往くアハメド・バタイやダニエル・ジェンガ(ちなみに、藤田と同年齢である'76年生まれ)を追わなかったのだ。その点に不満が残った。

後方から川内がペースを上げてきた。香椎の折り返しで、日本人トップとの差は16秒。昨年2位のサフロノフをとともに順位を上げてきた。ロシアもマラソンに関しては日本以上に「女高男低」の国だが、そんな中、久しぶりに現われた面白いランナーだ。東西冷戦体制の時代において福岡は、ソ連や東欧、北朝鮮のランナーも迎え入れていた。米国や西欧のランナーたちにとっては、五輪以外に彼らとともにレースを走れる数少ない機会だった。彼を巧くペースメイカーとして利用しながら川内は、バラノフスキーや岡本直己をかわしていった。日本人トップ争いに加わろうというのか?

35km地点で11秒差まで迫ってきた川内がスパートをかけた。サフロノフを引き離し、今井と前田に迫っていく。苦痛に顔を歪めてはいるが、ペースは落ちていない。36km過ぎてついに、日本人トップに躍り出た!ここで勝負をかけてきたか。しかし、今井と前田も無抵抗ではない。3人で前を追うんだ。トップのダビリは5km15分を切るペースで飛ばしているぞ。表情は苦しそうなのにペースは上がっていく川内。まるで全盛期の谷口浩美のようだ。

千鳥橋を渡る3人のランナー。この橋の名前を僕は福岡出身のバンド、チューリップの「千鳥橋渋滞」で知った。38kmの給水ポイント、気温は上がっているのか、頭から水をかけた川内がペースを上げて二人を引き離した。前田は離されたが今井は川内に迫ってきた。こんな凄まじい「(日本人)トップ争い」は久しぶりに見る。ダビリとムワンギの存在を無視してしまえば、これは日本のマラソン史上に残る名勝負と言えそうだ。

片道四車線の道路を巧く内側に位置どる今井。川内の弱点がこの辺りの位置取りの拙さと指摘したのは解説の花田勝彦。メイン解説の大先輩よりもいいぞ。

しかし、川内は今井を引き離す。何という男だ。今年2月の東京で見せた走りをここでも見せた。練習が不十分と言っていたのだが。

ダビリは初マラソンながら2時間7分36秒でゴール。1分遅れでムワンギもゴール。そして川内も3位でゴールした。2時間9分57秒。東京に次ぐセカンド・ベストをマーク。今井が4位でゴール。2時間10分32秒は彼にとっては自己ベストタイムだ。

もはやマラソンにおいては日本のトップが世界のトップではない。しかし、このレースで川内に代表内定を与えてもいいのではないかと思えた。もはや彼は「異色の公務員ランナー」ではない。ライバルが嫌がるところでスパートを仕掛ける事も出来、苦しげな表情でペースを守り続ける走りで見る人の胸を打つ、「マラソン・ニッポンの王道を往くエース」となった。本当に彼のレースは面白い。もう、彼を「公務員ランナー」と呼ばなくてもいいのではないか。2週間後の防府マラソンにも出場し、2位でゴールした彼を、「鉄人ランナー」と名付けたスポーツ紙もあったが、それでいいのではないかと思う。

今月発売の陸上競技専門誌が表紙に横浜国際女子マラソン優勝の木良子ではなく川内を選んだ。これついては異論もありそうだが、今、一番注目を集めるマラソン・ランナーとなった。大晦日恒例番組の審査員には選ばれなかったが、練習したいので断ったのだと思いたい。(初めからそんな話は無かったのかもしれないが。)

彼の活躍のせいだろうか。カンボジアに国籍を移して五輪出場を目指そうとした、タレント・ランナーの話題が消え失せてしまった。ひたむきにマラソンに打ち込むのは分かるのだが・・・。





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