亀の啓示

18禁漫画イラスト小説多数、大人のラブコメです。

パラレルストーリー 年上美月 同棲編

2018-08-18 08:42:25 | 美月と亮 パラレルストーリー
朝、起きる。

夜には俺の隣で、腕枕でまどろんでいたはずの
美月はもういない。

「あさごはん。もうすぐ出来るよ。」

台所から味噌汁の匂いが漂う。

「今日は卵焼きね。」

幸せの黄色い卵焼き。
ここはケチャップでダイスキとか
書いてもらいたいところだけど
この卵焼きにはおろし醤油が合う。
ネギたっぷりの納豆が小鉢で糸を引く。

焼きのりとお新香。梅干し。

しっかりした朝ごはんだが
そんなに手間は掛からないんだよ、と
美月は満足そうに笑う。

「ん。美味しい。」

美月は料理上手、というか
凝った料理よりも俺の好みをピンポイントで
突いてくるというか。
ありがたく毎食頂いているが
俺も少しは手伝わないとな。

「洗い物はやっとくよ。」

「助かる。でも遅刻しないでね。ギリギリだったら
後であたしがやるからね。」

美月は俺より家を出るのが早い。
俺も早めに準備をして一緒に出掛けようと
思うんだけど、なかなか難しい。
朝に家のことを片付けてやれれば
美月が帰宅してからのんびりできる。

リビングに軽く掃除機をかけて。
キッチンのテーブル下にクイックルワイパーを
突っ込んでまんべんなくなで回す。
今日は午後から雨だから洗濯物は外には出さない。
火の元戸締まりを確認して出る。
玄関で鍵を掛けると一息つきたくなる。
今までは自分の忘れ物がないかくらいしか
考えなかった。
うちはお袋が専業主婦だったし
俺は家事手伝い全般免除で
洗い物だってしたことなかったのだ。

同棲を始めてから、美月に
簡単な家事は手伝いたいと教えを乞う。
彼女はまず、食器洗いを教えてくれた。
油ものはペーパーで拭いてから。
ご飯茶碗はお湯につけてから。
汚れているものほど後から洗う。

こんなこともやり慣れないとわからない。

彼女は馬鹿にせず、一から丁寧に教えてくれた。

「こんなに協力的に家事に向き合ってくれるとは
思ってなかった。ありがとね。」

洗い物が終わると、頬っぺたにキスしてくれた。
まあ、その後すぐリビングで押し倒した。




「なにニヤニヤしてんの?」

俺は玄関先で思い出しニヤケをしていた。
お隣に住む若奥様、美雪がゴミ袋を持って
ジト目でこちらを見ているじゃないか。

「おはよ、美雪。」

「ウチも新婚だけど。もし賞平さんも
こんな顔してるんなら、ちょっと情けないわ。」

んー。そこまで言われるとぐうの音も出ない。

「年上の彼女にトロトロに甘やかされてるみたいね」

「ちゃんと家事も手伝ってるよ?」

「それが甘やかされてるっていうのよ。
あんたは親がかりの学生風情。先生とは所詮
ルームシェアも同然じゃない。手伝う、じゃなくて
分担しないと偉そうには言えないわ。」

まあ、美雪の言いたいことはわかる。
もっともだと思うが。

「じゃあ、お宅の旦那様は手伝ってくれるのかい。」

「彼は大学出てから一人暮らししてたから。
頼めば何でもやってくれるけど。
あたしが頼まないだけよ。」

これは本当なようだ。
縦のものを横にもしないタイプではないみたい。
でも何でもやってくれるってのは、どうだろうな。

「あんたは先生の負担にならないように
せいぜいお手伝いなさいよ?」

何故、上からなんだよ。

俺は曖昧に笑うと手を上げて挨拶し
階段を下りて駅へと向かった。





大学にもだいぶ慣れた。
俺は教授の紹介で、行政書士の先生の事務所で
バイトを始めた。その先生は教授の教え子で
俺たち学生からしてみればOBに当たるのだが
もう40をいくつも越えている。何代も上の先輩だ。

バツイチ。
男前だ。
女には困っていないようだが
もう結婚は懲り懲りだという。
いろいろと、揉めたらしい。

事務所には講義が終わってから
あるいは始まる前、1日四時間ほどを
伝票整理をして過ごす。
だいたいはパソコンへの打ち込みである。

この沖田行政書士事務所の沖田衛(まもる)先生は
顔は綺麗なのに字がムチャクソ汚くて
伝票を書いてもそれを解読できる部下に恵まれず
雑用をちっとも切り離せないとお嘆きだった。
自業自得だろうと思うのだが、求人の第一条件が
「俺の字を解読出来る者」だったのである。

先生は恩師である教授に、このような者がおらぬか
広く求めたいと相談されたという。

「長内くん。君が一番正答率が高かった。」

教授はプロジェクターにでかでかと
沖田先生のミミズが土から這い出し
陽の光に炙られて断末魔の叫びを
上げたような字を映し出して、学生に
解読テストをさせたのである。

俺は適性を認められ、求められて
この事務所にやってきたのである。

「亮は彼女、いんの?」

俺は沖田先生にはナンパされる女子高生
みたいな扱いを受けていて、気に入られてるけど
馬鹿にされてるなと思う。

「まあ、ボチボチで。」

俺は言葉を濁す。
もし、この女グセの悪い先生に
美月のことが知れたらちょっかい出されやしないか
俺は心配なのだ。
だって美月は可愛くて凛として
それでいて色気も持ち合わせた大人の女性だ。
先生も興味を引かれないとは限らない。

「亮はかわいいなあ。お前の彼女、横取りなんて
しねえから安心しろって。あははは。」

沖田先生には、かなわない。






「ただいま。」

バイトを終えてアパートに帰ると、靴が一足多い。
男物のビジネスシューズだ。
あ。直樹くんだな、これは。

「よう。兄貴。遅かったじゃんか。」

直樹くんは美月の双子の弟である。
地元の銀行にお勤めである。

「今晩は。もう仕事は終わったの?」

直樹くんは真面目なやんちゃ坊主というか
美月が壁の上を歩くのなら、この人は壁の上で
バク宙くらいするんじゃないか、という人だ。

「ん。今日は得意先から直帰だったから
面倒な残業はパス出来たよ。」

来たばかりだったのだろうか
美月が珈琲を入れてリビングにやって来た。

「直樹は何の用なの?どうせみつえちゃんと
待ち合わせの時間潰しでしょ!」

みつえちゃんとは、直樹くんの彼女だ。

「俺も家出ようかなあ。」

直樹くんはさも俺らを羨ましいと言わんばかりに
部屋を見回した。

「結婚、すんでしょ?」

直樹くんは俺と同じく、彼女を将来の嫁と
認識しているのだ。また、みつえちゃんも
直樹くんを将来の旦那様と思ってるみたい。

「まあね。1~2年だから大人しくしてるか。」

どうせしばらくしたら結婚して独立するので
その間、貯蓄に励もうというところだろう。

俺たちは、ほら。俺がまだ、大学生だから。
同棲し始めたことは後悔してないけど
貯蓄はあった方がいいよな。

直樹くんは俺にも良くしてくれるのだが
なんせ五歳も年上の男性なので
話の内容も大人で、ついていくのがやっとだ。
この間は大人の玩具の話、その前は住宅ローンの話。
ためになる話なんで必死に食らいつくが、
振り落とされないようにするのに精一杯。

「おっと。そろそろ時間だ。またな。」

直樹くんはこれからデートなので
珈琲にクッキーでおしゃべりしていったが
それに合わせて珈琲につき合っていたら
凄く腹が減った。
直樹くんが帰ったのを見届けると、美月に甘える。

「今日は、晩御飯なに?」

「鳥ももが安かったから。唐揚げにしようと思って。」

俺は一緒に台所に立ち、たれを揉み込んだり
粉を投入してまんべんなくまぶしたりを
お手伝いした。

一番食べたいのはお前だよ、と
美月の頬っぺたに一度だけキスした。

何故一度だけかといえば
揚げ物の最中にイチャイチャするのは危ないので
俺がリビングに戻されたからである。