亀の啓示

18禁漫画イラスト小説多数、大人のラブコメです。

パラレルストーリー 美月と亮 番外編

2018-08-08 07:27:25 | 美月と亮 パラレルストーリー
夏だ。

受験生の夏休みというのは
今までの夏休みとは似て非なるものだ。

それは、わかっているんだけどね。

うちの親父の田舎は、名古屋からすこし
奥に行ったあたりにあるんだけど
夏休みには毎年帰省するんだな。

お盆を挟んだ数日間。
親父とお袋、妹の悦子が一緒に
帰省することになった。

悦子も中3なんで受験生なのだ。

「あたしも残って勉強しようかな。」

なんて言い出したので、俺は大いに慌てた。

悦子の狙いはなんだ?
やはり、俺の壮大な計画の妨害か!
俺もそれなりの策略を練ろうと決心した。
実の妹を陥れるのは心が痛むが仕方がない。

「えっちゃん、なんで行かないの?」

「だって。面倒くさいし。朝は叩き起こされるし。」

「あっちでだって勉強できんじゃん?」

「集中できないよ!教えてくれる人もいないし。」

「あれ?明くんも帰省してくるんじゃねえか?」

明くんとは親父の弟の息子で、俺たちの従兄弟だ。
東京の大学に通っていて、頭はいい、性格もいい
イケメンでバンドマンというてんこ盛りの兄貴だ。

「えっ?!明くんがっ!!」

妹の悦子も明くん崇拝者だ。

「田舎、帰るっ!絶対帰るぅ!!」

すまない。悦子。口からでまかせだ。
多分、明くんは三年生で就職活動に勤しむ夏に
なるだろう。きっと名古屋には帰ってこない。

口八丁手八丁で家族をまるごと帰省させることに
成功した俺は、震える手で受話器を取った。



「お邪魔しま~す!」

美月が機嫌良くやって来た。

もう俺は欲望を隠すことなく、彼女の体を
抱き締めて熱くキスした。

「いやんっ!」

あ。拒まれた。

「もうっ!全然元気じゃん!!」

そうだ。俺は夏バテの振りで
帰省で家には誰もいない、助けて美月ぃ
とSOSを送ったのである。

「えー。元気はないよ?なんか食欲もないし
勉強も進まないし。」

美月はすぐ甘い顔になって俺の頭を撫でる。
くふう。かわいいかわいい。

「冷しゃぶつくってあげる。材料買ってきたから。」

ポン酢と大根おろしでさっぱり
食欲も戻るかもよ?と
俺の頬にわざと音を立ててキスした。
かわいいかわいい。

「手伝おうか?」

俺がそう申し出ると美月は複雑な顔になる。

「なんか、料理進まなくなりそうだから。」

なるほどな。一緒に台所に立っても
俺がまとわりついて、体のいたるところに
ちゅっちゅくしてたら料理は進まないだろう。
おとなしくリビングで待つことにした。

「もう一回だけ。」

俺が捨てられた子犬みたいな目でおねだりすると
美月から唇にキスしてくれた。
ああ。かわいいかわいい。

俺の頭には今、性欲しかない。
抱きたい。もう、俺のものだ。
めちゃくちゃにしたいのだ。
もう、俺しか受け入れられなくなるように
すみからすみまで可愛がって。
いつでも俺を思い出してうっとりするように。
せ、っ、く、す、したい!!

なんて言ってもね。俺だって経験はないよ?
実はキスらしいキスしたのだって
美月が初めてだよ。
でも、それなりに研究はしている。
伊達に二年間悶々としてませんよ。
長い休みの度に美月と会えなくなる。
夜な夜な美月を思いながら繰り広げられる
予行演習だってエスカレートして
ゴムの着け方だって完璧なんだから!
自分のサイズだって把握してるしね。
ちょっと、立派。
あ、サイズがではなくて心掛けってこと。

あー。
どうしよう。
きかん坊の息子が。
俺の意に反して。

「亮?」

後ろからいきなり声をかけられて
俺はソファから押し出された
ところてんみたいにずり落ちた。

「出来たよ。どうする?こっちに運ぶ?」

「あ。キッチンで食おうか。」

俺はリビングでローテーブルに座れば
飯食う前に美月を押し倒したくなると思う。
キッチンに移動した。

美月は冷しゃぶに温野菜のサラダ
わかめと豆腐の味噌汁を作ってくれた。

「食欲ないって言ってたから少な目にしたよ。」

美月は彩りとか盛り付けとかにちまちまと
凝るタイプではないので、直樹なんかは
つまらないと悪態をつくんだが、俺はそれより
味を重視する。美月が作ってくれただけで
たまらなく嬉しい上に美味しいんだから
嬉ション漏らすレベルなのだ。

「おい、しい?」

いつも不安そうに訊ねる美月。
その表情ももれなく美味しい。
なんか、泣けてきた。

「どうしたの?!」

「いや、幸せすぎて。」

美月が水を出してくれる。
一口二口飲むと、落ち着いてきた。

「なあ。美月。結婚しよう。」

「何言ってんの。もう。」

これは俺のプロポーズ第一号だ。
それから何回かプロポーズを繰り返し
ついに成就するのだが、それはまた何年か
後の話になるのである。

食事が済んで、美月が熱いお茶を淹れてくれた。

「暑いときにこそ熱いものだよ。」

母親のようなことを言う美月。
きっと家ではお母さんが美月にこうして
お茶を出してくれるのだろう。
お宅のお嬢さんはいい娘さんにお育ちです。
俺は美月の家族を思い出して、心密かに
胸の中で詫びる。

いただきます。
幸せにしますから。

お茶一杯でここまで思いめぐらせる
俺の拗らせ具合、誰か共感してくれるだろうか。

「さ。やるよ!」

美月が立ち上がる。

俺は真っ赤になった。
望んでいたことなのに、いざとなると
怖じ気づく自分が情けない。

「今日は英語にする?それとも数学?」

あ。そっちの「やる」ね。
あ。はい。そっち、か。
おかしいとは思った。思ったよ!
まさか美月が率先してお相手してくれるなんて
ありえない!俺が迫って、可愛く拒むところを
こじ開けて、怯えるのをやさしく解きほぐすんだから!

「亮?大丈夫?」


美月は夏バテ(そういう設定)の俺に
勉強への意欲と集中力がないと悟り
食後の昼寝を勧めた。

「小一時間で起こしてあげるから。」

俺は部屋のベッドに横になる。
で、美月はすぐ横の俺の机で参考書を開く。
なんだ。この状況は。

「美月。ひとつ訊いていい?」

「なに?」

「この家には、俺とお前しかいないんだよ?」

「うん。それが?」

「例えばさ。檻の中に腹を減らした野獣がいる。」

「?」

「その中に、生肉を投げ込んだら、どうなる?」

「喜ぶねえ、食べるよねえ。」

「それがすんなりわかるんならさ。今の状況
どう考えてるわけ?」

「どうって。亮が夏バテで体調悪くて
横になってて、あたしは勉強してる。」

「………………美月。俺はね。」

「何、具合悪い?どっか撫でてあげようか?」

美月はもちろん背中とかお腹とかのつもりだろう。

「俺は。お前を抱きたいんだよ。わかる?」

「だ、抱くって。」

美月はもっと慌てるかと思っていた。
案外と冷静だ。

「いつもいきなり抱きつくじゃん。」

おかしいと思ったパート2ッ!
日本語としては間違ってないけどさ。
言葉って複数の意味を持つものも多いよね!

「セックスしたいの!だいたいね、いい年した
男が惚れた女前にして抱きたいって宣言したら
概ねそっちの意味だからね!」

「亮。元気じゃんか!せっかく心配して
飛んできたのにい!」

あ。やばい。俺は嘘をついてわざわざ美月を
呼びつけたのだ。逆ギレできる立場じゃなかった。

「ごめん、ごめんよ美月!」

「亮のばか!」

「美月ぃ。」

美月は半べそをかいて、俺の枕元に座った。
猫パンチみたいなパフパフのゆるいげんこつで
俺の胸を両手で左右交互に殴る。
俺は美月のパンチを手で避けながら起き上がる。

「美月。愛してるよ。」

「ばか。」

美月の耳を甘噛みした。

歯を立てて軽く噛みながら、間から舌先で舐める。

「あん!」

美月も、もう始まったことくらいは
わかってくれたと思う。
俺は恥ずかしいくらいに息があらくなった。

美月の首筋に下りて丁寧にキスした。

「いやあ。んあん!」

「やめない。やめないよ。止まらないから。」

美月はきつく抱きついてきた。

「亮ぅ。好き!大好きぃ。」

俺はもう、体がバラバラになるほどに切なく
痛いくらいに勃ちあがり。美月の体を必死に抱いた。


俺が自らにゴムを着けていると
美月が恥ずかしそうに覗き込んだ。

「計画的だったの。」

「もちろん。計画しないような男は信用するな。」

「ん。変なの。相変わらず。」










「いたい。」

終わっても美月はだるそうに
俺のベッドで横になっている。

「まだいたい。」

美月はあきらかに俺に見せつけるように
腰を左右にもぞもぞ動かしている。

「まだ、入ってるみたい。異物感。」

俺は美月の身体中にキスした。
終わった後も、気持ちが収まらなくて
美月のすべすべの肌に吸い付いている。
胸元を強く吸った。

「きゃあん。」

少し痛かったみたい。
でも、そこには小さなアザが残る。
これを残したかった。

「こんなつまんない体で、よかったの?
亮はずっと欲しがってくれるの?」

美月は自分の体がどれほど綺麗で
俺が何度も抱きたいのを我慢してるか
全くわかっていない。

「いい女だ。身も心も。」

俺は美月の唇にキスした。

「俺がお前の最初で最後の男になる。」

これがプロポーズ第二号だ。
よくよく考えてみると、俺は結婚するまでに
美月に何百回とプロポーズをしていたような気もする。

「嬉しい。ほんとだね?」

あれ。ここで早くも美月からオッケーが出ていた。
あの頃は気づいてなかったし、そんな余裕はなかった。
ただ、好きで。どうしようもないくらいに好きだった。