亀の啓示

18禁漫画イラスト小説多数、大人のラブコメです。

パラレルストーリー 年上美月④

2018-08-12 00:07:33 | 美月と亮 パラレルストーリー
「亮~ぅ。」

休み時間。隣のクラスの女友達から呼び出し。

一年の時に同じクラスだったんだが
美人でボインでスタイル抜群
その上頭もいいとくる。
性格も良くて同性にも敵を作らない女。

なんか、今日は様子がおかしい。

「新任の、おたくの担任。何とかしてくれない?」






そもそも、俺と美雪は同じ中学で
出会いは入学式の日だ。
つき合いは6年目になる。

良くある話で、俺は美雪にポーっとして
鼻の下を伸ばしてたんだよな。
今思うと頭悪かった。中1の俺。

美雪はその頃から胸の膨らみは
ある程度目を引くサイズだったし
それこそ人形みたいに、きめ細かい白い肌で
黒目パッチリ、小さめの唇は桜色でぷっくりと
艶があって、男は俺だけでなくみんな美雪に
見とれて動きを止めるほどだったんだよ。

でも、同じクラスになり日々彼女の振る舞いを
見ているうちに冷静になった。

美雪は決して集団行動では前に出ないが
リーダーが覚束ないときは、ピタリと
参謀ポジションについて
後ろから操ってまとめ上げる。
いつも優しそうにニコニコしているお母さんが
実はお父さんを尻に敷いて実権を握っている、とか
良くある話だよね。それを12歳そこそこで
自然とやってのける。それと回りには悟らせない。

俺は、こいつを怒らせたら何されるか
わからないと思ったので、当然その時点で
浮わついたスケベ心なんか吹き飛んだのだ。

美雪は好きな男以外には関心を示さない
極論、男に媚びない女なので
自分を女と見ない男には友好的だ。
俺たちはある程度の距離を取り
尊重しあいながら、友情を築いた。

俺は高校に上がってすぐに
美雪の様子がおかしいことに気づいたのだ。
だが、誰とつき合い始める様子もなく
恋しているのはわかるが、その向こうの相手が
見えてこないという変わった事態になった。

だけど、美雪は毎日たのしせつなそうで
充実してるなと思ったし、もし困ったことでも
起きたなら、乞われればお手伝いをしようと
そう決めて見守ってきたのである。




「あれ?そっか。美雪の恋人って。」

「毎度察しが良くてThank Youよ。」

俺たちが入学した二年前。
坂元先生も新任でこの高校に入ってきたのだ。
生物の教科担任で、俺たちより七歳上だ。

美雪が恋人を隠していたのは
ガチでヤバかったからである。

待てよ?て、ことは
俺と美月だってガチヤバいってことだよ。
わ、わかってるよ。

「鷺沼先生って、天然なの?」

「少女みたいな女性だから。」

「鼻の下伸ばしてんじゃないわよ。」

あ。やっぱりバレてる。

「坂元先生とくっつきすぎ。あんたがコントロール
しなくてどうすんのよ。いい加減になさい。」

一方的にこき下ろされて俺は憮然とした。

「お前もある程度努力しろよ。」

要するに美雪は嫉妬丸出しで彼にごねるのが
嫌なのである。気持ちはわかるが。
過ぎた焼きもちは男から疎ましく思われる。
扱いが難しいものなのであるからして。

「あの二人がイチャイチャしてるとこ見ちゃって
不貞腐れて授業サボったりしたくせに。」

「なんで知ってるの?」

怖っ!この女、怖っ!

「んふふ。賞平さんが教えてくれたわ。」

俺が準備室の扉を細く開けて覗いていることに
気づいた坂元先生は、逃げ去る俺の姿を目撃した。
色々と感づいた彼は、美月から情報を引き出し
美雪と共有しているのだろう。

「お互い同じ立場なんだもん。助け合おうって
言うのが賞平さんの考えよ?」

怖っ!このカップル、怖っ!

「ただ。仲が良すぎると思わない?」

美雪は再三強調する。
だが、美雪の言い方では
美月ばかりが悪者である。
俺が聞いた話では、鼻毛を抜きたいと
絡んでくるのは坂元先生だし
美月は迷惑に思っている節もある。

だが、これを言っても堂々巡り。
喧嘩になるだけだ。

美雪にも「恋は盲目」なんて言葉が当てはまるんだな。

ここは男である俺が譲歩しよう。






「わかってるよ。あんなことがあったんだし。」

自覚のないものに
自覚を促すのは本当に難しいものだ。
つくづくそう思う。

「美月。俺も何度か準備室にお邪魔したけど。
もう少し。あの。あんまり、坂元先生には
触らないように、だ。」

もう、これは正直自分の嫉妬を自分で
煽ってるようなもので、不自然に辛い。

俺たちは教室から理科準備室に向かって
職員室側の渡り廊下を歩いている。

「やきもち?」

美月は嬉しいようだ。
すごく可愛く微笑む。

「そういうつもりじゃ、ない。」

これは、本当だし、嘘でもある。

坂元先生と何故あんなに寄り添わないと
話ができないの?顔、すごい近いよね?
おっぱい押しつけてないのあれ?
触ってる絶対触ってる!
美月から坂元先生の肩に手を回してる時あるよ?
それ以上に坂元先生の手がお前の背中に回って
さわさわしてる時あるからね!何あれ?!
こないだお尻ギリギリの腰を抱いてたみたいに
見えたんだけど気のせいだったのかな
見間違いかい?なあ!!

「亮?」

「ち、違うよ!だって坂元先生だってさ
恋人いるわけだし。」

美月は首を傾げた。

「え?あいつ今フリーだよ?」

「え?」

美雪の話と食い違ってきた。
どういうことだろう。

「とにかく!坂元先生とはくっつきすぎ!」

俺が強引に話を畳むと、美月は肩を揺らして
かわいい声をたてクスクス笑った。

「わかった。ごめんなさい。」

美月はさりげなく、俺の指先に触れた。
柔らかく絡めて、すぐに離した。

俺は、興奮した。







「え?知らないってどういうこと?」

美雪に、美月が二人の仲を知らないって
教えてやったら、思いっきり眉間にシワを寄せた。
美人が台無しだが、こんな表情も俺には違和感はない。

「美月は坂元先生をフリーだって。」

「どういうことなのかしら、ね。」

これはどういうことかをさとっていて
そこからどうするかという台詞だ。
美雪姐さん、落ち着いてください。

「賞平さんは、妹分と友達以上恋人未満の
甘酸っぱいイチャイチャが出来なくなるのが嫌で
そこで情報をストップさせてるのよ。」

「うーん。いい度胸だな。」

俺と美雪は坂元先生に軽く、殺意を抱いた。

「これは、鷺沼先生に見せるしかないわね。」

美雪は悪巧みを絵に描いたような顔をする。
もう、美人が台無しとか言うレベルじゃなくて
人間離れしてきちゃった。頼もしいな。

まず、美雪と坂元先生に準備室で
イチャイチャしてもらう。
そこへ、俺が美月を連れてきて
鉢合わせさせる、という単純明快な作戦だが
綿密な計画を仕上げていかないと
情報が漏洩する。

美月にはバラしたいが
他の人には絶対にバレちゃいけない。

この日からしばらく、俺と美雪は
小さな穴も漏らさず潰していき
確実に目的を達成するため
計画を練りに練った。

「最近、一目散に学校を出るよね。
なんかあるの?」

美月が屈託なく訊いてきたときには
どう取り繕うかとドギマギしたが
結局、中学のときの友達とクラス会の計画を
立てているという真実味のある嘘でやり過ごした。

美月は可愛らしく頷いていた。












「月曜日。」

Xデーが遂に確定した。

各学年でのミーティングが多く
文化系の部活の活動時間が変則的になる
月1の部長会議なんかが重なって
理科準備室に詰める教師の人数が極端に減る。
美月は新任なので出席する会議もない。
坂元先生は去年まで顧問をしていた
生物部が廃止の憂き目に遭い、今年から
顧問を持っていない。

「まず、あたしが賞平さんを誘うから。」

そこへ俺が美月を連れていけばいい。

まずは彼女がHR上がりに真っ直ぐ準備室に行くのを
阻止するために、カップルシートの話題を出す。
裏庭温室の横に置かれたベンチは、人目につかない
非常にイチャイチャしやすいところにあり
カップルでしけこむに人気のスポットだ。
そこではイチャイチャせず、見学するだけだ。
当たり前だけどね。
それはすべて、美雪が坂元先生を準備室に誘い込み
イチャイチャを始める準備をする時間稼ぎだ。

タイミングが合わなくても
もう開き直って美雪がカミングアウトすると
そういう取り決めにしている。
でも、なるべくなら、イチャイチャを直に見て
大いに驚いてもらいたいのだと美雪は考える。

「じゃあ、決行するからね。」

俺たちは学校とは一駅離れた
地元の私鉄駅のファストフード店で
最終検討を終えて、解散した。

俺は一人、家までの道すがら
ふと自分に自信を無くす。

もしかして、フリーだと思っていた兄貴分の
坂元先生に彼女がいたと知り、そこで初めて
自分の本当の気持ちを自覚してショックを受け
やっぱりあたし、賞平くんが好きだった!
ごめんね亮。自分を誤魔化してた。あたしが
悪かったの。わかって。もう、おしまい。

「うがっ!!」

俺は縁起でもない妄想を強制終了させるべく
奇声を発した。前を歩いてたおばちゃんが
軽く振り返ったので、慌てて愛想笑いをする。

美月は、俺を好きでいてくれてる。

その、はずだ。

いやいや。好きって言ってくれたし
お互いのファーストキスで濃厚に舌も絡めた。
ここ数日、キスする機会がないな。
抱き締めて、あの細くて柔らかい体を
その暖かさを感じたい。

えっと。何だっけ。

そうだ。久しぶりに、キスしたいってことだ。

違ったっけ。










「カップルシート?」

俺はHRを終えて、準備室に向かう美月を捕まえる。

「そう。俺はガールフレンドの一人も出来たこと
なかったから、今まで無縁だったんだけど。」

美月は困惑したように小首を傾げる。
また、妙にチャーミングで俺は困った。

「あたしもそんな用途では無縁の高校生活だった。」

今なら、一緒に座る相手がいる。
お互いそうは思ったものの、 わざわざ学校の
恋人たち御用達のベンチに並んで座る勇気はない。

「ちょっとだけ。見に行こ。」

俺が、今度は美月の指先に触れた。
軽くまさぐったら、ピクンとして手を引っ込めて
しまった。嫌だったのかなと、顔を覗く。
赤くなって俯いていた。

「ん。もう!」

あれれ。ご機嫌損ねちゃったかな。

美月は先に立って裏庭へ歩き始めた。
俺はその後をついていく。

美月の歩き方は歩幅が大きく、モデルのような
堂々とした歩き方だ。
でも、俺を見つけて近寄って来るときには
ちょっと違う。少し内股に、歩幅も小さく
まるで小鳥のようにチョンチョンとステップを踏む。
今の歩き方は少し内股。とび跳ねるように。
かわいい。どうして、こんなにかわいい?

美月とカップルシートを見学したあと
準備室に向かった。

そろそろ、美雪が坂元先生とイチャイチャ
し始めているはずである。
俺は勝手に様々に思い巡らしドキドキしていた。
美月が準備室の扉に手をかける。横に開いた。

「あれ?確かあなたは。C組の村瀬さん。」

いるいる。でもまだイチャイチャしてなかったのかな。
美月の反応がすごくフラットだ。
俺が美月の後ろから入って行くと
準備室には美雪一人しかいない。

「亮!!」

あちゃー。タイミング最悪。
これは大目玉だな。

またこき下ろされる身構えをしたところに
美雪が抱きついてきた。
あまりのことに、自分が何者だったかさえ
意識から飛んだ。

美雪は飛びつかんばかりで
俺の首根っこにぶら下がるようにして
きつく抱きついてくる。
大きな胸がぎゅうぎゅうと押し付けられる。
俺は腕を横にだらんと垂らしたままで。
多分半分白目だろうな。目の前で何が起きてるか
見たくないんだろう。脳みそがフォーカスを
合わせるのを頑なに拒むのだ。

背後で扉が破壊されたような、けたたましい
音かして、廊下を駆けていく足音が遠ざかる。
陸上選手みたいな、ドバダダダダダダという
いかにも凄い力強く、スピード感溢れる音が
響いた。誰かにぶつからないといいけど。
怪我するよね。暴走列車だよこれ。
妙に冷静に頭の中で一通り考えたあと
もう、ダメかなあと涙が滲んだ。

「とお、るぅっ!たす、け、てっ!!」

は?美雪の発した言葉に黒目が戻った。

「ご、ごきっ…」

美雪がいた、窓際の流しの方を見た。

春先だからまだベイビーなんだが
確かに独特の佇まいのあいつが
フラスコを洗うブラシのあたりを
散歩していた。

「あー。美雪。待ってな。やっつけてやるから。」

そのわりに、抱きついたまま離れてくれない
美雪の肩をたたいた。

「美雪。おい。離してくれないと
退治出来ませんけど?」

「こわいぃぃ!」

「じゃあ、やっつけなくていいのかよ!」

「いやだ殺して早くう!」

押し問答を続けながら揉み合う俺たち。

気づくと、坂元先生が冷たい顔で俺を見ていた。








「すまんっ!!悪かった!」

俺は坂元先生に殴られて鼻血を出していた。
歯は欠けていない。
尻餅をついたまま、床に座り込んでいる。

もう、坂元先生と目が合ってからは早かった。
俺に抱きついている美雪を引き剥がし
反対側に押しやってから、俺の胸ぐらを
掴んで引き上げ、振りかぶると思い切り
振り切ってぶん殴った。

美雪の金切り声が響く。
まずいな。目の前で友達が殴られたら
女の子ならショックなはずだ。
と、思ったら。

「賞平さあん!!ご、ご、ごき!こわいぃぃ!!」

俺から引き剥がされたとき。
流しの方に押しやられたのだ。

俺は立ち上がって、美月を探しに行った。