約束は守る。
例え裏切られても自分は裏切りたくない。
手酷く傷つけられようとも人を傷つけたくはない。
どんなに失望させられても自分は失望させたくない。
どんなに汚れても冷たい人間にはなりたくない。
そんな傲慢な思いを胸に、ファミコンカセットを手に、今日彼と会ってきました。
ライブでの僕の目論見が脆くも崩れてから数日、彼から「ソフトまだ?」という催促が来ていました。
あの場に来なかった彼にはもう失望していたので、わざわざファミコンなんて貸してたまるかよと決めていたのですが、僕は筋金入りのお人好し、意気地なしであったようです。
ここ数日彼のことを考えない日はありませんでした。
良心の呵責?
それとはなにか違う。
もっと不気味な感覚、拭っても拭っても不安が消えない、どう振舞っても惨めな結果にしかならない予感・・・
六時に駅改札、彼はすぐに見つかった。
メールどおりの黒いジャケットと迷彩色の鞄 に 何故か、苛つく。
僕は何も言わず彼に歩み寄っていった。
そして目の前に立った。
しかし彼は僕から目を逸らした。
何も言わずにしばらく立っていたがやはり目を合わせようとしない。
どうやら、僕のことが分からないらしい。
恐らく僕の髪型や服装が以前会った時と変わっていたためでしょうか。
それとも初めから僕の顔なんて覚えていなかったのでしょうか。
たまたまアルバイトで一日一緒になっただけです。
顔なんて忘れても仕方ありません。
でも、僕は彼の顔を忘れなかった。
余りに僕のほうを見ようとしないので、何も言わずガムでも勧めるようにファミコンカセットが入った袋を差し出してみました。
そうしてやっと彼は僕に気づいたようだった。
ひさしぶり。
彼は何か色々と言っていましたが、ほとんど耳に入ってきませんでした。
ただひとつ「あの、これ"貸し"だよね?」とだけ聞かれたこと以外には何も覚えていません。
僕は飽きたら返してねとだけ言ってすぐに彼と別れた。
一分でも早くその場を離れたかったのです。
何のために律儀に彼と会ったのかといえば、それは彼との因果を断ち切るため。
毎日どこかで感じている不安を払拭するため。
そのために僕は彼に会って、ファミコンを手渡した。
なのに、どうして、僕の気持ちは少しも晴れないのだろう。
それは彼がライブに来なかったせいだろうか。
それとも僕が彼の黒いジャケットと日焼けした肌を見て嫌悪感を抱いてしまったせいだろうか。
すべての物語がハッピーエンドを迎えるなんてことはありはしない、そんな事は百も承知ですが、終わりはどのような形であれ終わりであることそれ自体が、それだけで、価値のある素晴らしいことなのではないでしょうか。
だから、もう終わりにしよう。
できれば彼にはずっと飽きずにファミコンをやり続けていて欲しい。
帰りの電車、座席に座りながら眺める車窓、僕の厚ぼったい唇の向こう側、ビルの間に見え隠れする今日の月は妙に赤く濁っていた。
後ろにいたサラリーマンの声がやたらとでかく聞こえた。
僕はいつものように自分の駅に着くまで耳を塞ぎ目を閉じ続けた。
いつものように音楽を聴こう。
CDプレイヤーは持っていませんでしたが、彼のことを無言で思えばいつでもブランキージェットシティの「ディズニーランドへ」が流れるのです。
ノイローゼになってしまった友達が 僕に言う
「あの楽しそうなディズニーランドへ一緒に行こうよ」って
でも 僕は行く気がしない なぜなら彼は気が狂ってるから
一緒にいるのが とてもつらくてたまらないから
一緒にいるのが とても恥ずかしくてたまらないから
でも 僕はこう答えたんだ「もちろん行こうぜ 約束するよ」って
でも 僕はたぶんその約束を破る事になるだろう
彼は 悲しくて涙も流さないだろう
一緒にいるのが とてもつらくてたまらないから
一緒にいるのが とても恥ずかしくてたまらないから
そして 僕は冷たい人間の仲間入り
そして 僕は冷たい人間の仲間入りさ
例え裏切られても自分は裏切りたくない。
手酷く傷つけられようとも人を傷つけたくはない。
どんなに失望させられても自分は失望させたくない。
どんなに汚れても冷たい人間にはなりたくない。
そんな傲慢な思いを胸に、ファミコンカセットを手に、今日彼と会ってきました。
ライブでの僕の目論見が脆くも崩れてから数日、彼から「ソフトまだ?」という催促が来ていました。
あの場に来なかった彼にはもう失望していたので、わざわざファミコンなんて貸してたまるかよと決めていたのですが、僕は筋金入りのお人好し、意気地なしであったようです。
ここ数日彼のことを考えない日はありませんでした。
良心の呵責?
それとはなにか違う。
もっと不気味な感覚、拭っても拭っても不安が消えない、どう振舞っても惨めな結果にしかならない予感・・・
六時に駅改札、彼はすぐに見つかった。
メールどおりの黒いジャケットと迷彩色の鞄 に 何故か、苛つく。
僕は何も言わず彼に歩み寄っていった。
そして目の前に立った。
しかし彼は僕から目を逸らした。
何も言わずにしばらく立っていたがやはり目を合わせようとしない。
どうやら、僕のことが分からないらしい。
恐らく僕の髪型や服装が以前会った時と変わっていたためでしょうか。
それとも初めから僕の顔なんて覚えていなかったのでしょうか。
たまたまアルバイトで一日一緒になっただけです。
顔なんて忘れても仕方ありません。
でも、僕は彼の顔を忘れなかった。
余りに僕のほうを見ようとしないので、何も言わずガムでも勧めるようにファミコンカセットが入った袋を差し出してみました。
そうしてやっと彼は僕に気づいたようだった。
ひさしぶり。
彼は何か色々と言っていましたが、ほとんど耳に入ってきませんでした。
ただひとつ「あの、これ"貸し"だよね?」とだけ聞かれたこと以外には何も覚えていません。
僕は飽きたら返してねとだけ言ってすぐに彼と別れた。
一分でも早くその場を離れたかったのです。
何のために律儀に彼と会ったのかといえば、それは彼との因果を断ち切るため。
毎日どこかで感じている不安を払拭するため。
そのために僕は彼に会って、ファミコンを手渡した。
なのに、どうして、僕の気持ちは少しも晴れないのだろう。
それは彼がライブに来なかったせいだろうか。
それとも僕が彼の黒いジャケットと日焼けした肌を見て嫌悪感を抱いてしまったせいだろうか。
すべての物語がハッピーエンドを迎えるなんてことはありはしない、そんな事は百も承知ですが、終わりはどのような形であれ終わりであることそれ自体が、それだけで、価値のある素晴らしいことなのではないでしょうか。
だから、もう終わりにしよう。
できれば彼にはずっと飽きずにファミコンをやり続けていて欲しい。
帰りの電車、座席に座りながら眺める車窓、僕の厚ぼったい唇の向こう側、ビルの間に見え隠れする今日の月は妙に赤く濁っていた。
後ろにいたサラリーマンの声がやたらとでかく聞こえた。
僕はいつものように自分の駅に着くまで耳を塞ぎ目を閉じ続けた。
いつものように音楽を聴こう。
CDプレイヤーは持っていませんでしたが、彼のことを無言で思えばいつでもブランキージェットシティの「ディズニーランドへ」が流れるのです。
ノイローゼになってしまった友達が 僕に言う
「あの楽しそうなディズニーランドへ一緒に行こうよ」って
でも 僕は行く気がしない なぜなら彼は気が狂ってるから
一緒にいるのが とてもつらくてたまらないから
一緒にいるのが とても恥ずかしくてたまらないから
でも 僕はこう答えたんだ「もちろん行こうぜ 約束するよ」って
でも 僕はたぶんその約束を破る事になるだろう
彼は 悲しくて涙も流さないだろう
一緒にいるのが とてもつらくてたまらないから
一緒にいるのが とても恥ずかしくてたまらないから
そして 僕は冷たい人間の仲間入り
そして 僕は冷たい人間の仲間入りさ
俺なら借りたいのなら、
テメェの二本の足で歩いて来い!
といってやってるぜ。
彼はきっと借りパクするつもりでしょう。
二日後にはメアド変わってるよ。
でも良いんだ。
笑っとけば、みんなで笑っとけば、きっと心の底から笑えるようになるのさ