kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

アンブッシュ

2024年01月10日 | ★★★★★
日時:2024年1月6日
映画館:バルト11
パンフレット:A4、800円。半分は軍事評論家 大久保義信氏の解説。





イエメン内戦に介入したアラブ首長国連邦(UAE)軍の戦闘を描くミリタリー映画。戦地のど真ん中で孤立する装輪装甲車の話を聞けば、装甲車好きとしては何が何でも見なければならない。(ちなみにアラビア語で話されるUAEの映画を劇場で観たのは初めて。)

劇場は4DX対応シアターでの公開だったが、入り口には「対応していません」表示。えっ、違うんかい。

主人公たちはUAE軍の兵士で、紛争地帯への人道支援活動の一環として食糧を運ぶ任務を担っている。
出動前の駐屯地での描写を見ただけで、映像にかなり力が入っているのが分かる。というより、完全に軍がバックアップしていることが一目瞭然。置かれている備品類からして画面の厚みが違うし、主人公たちの背景でMRAP(耐地雷・伏撃防護車両)が不自然なくらいバンバン走る。

現地で
映画スタッフ「その辺にハンヴィー置いてもらえますか?」
軍広報担当「いやいや、せっかくなんでMRAP走らせましょう!」
なんて会話が交わされたのではと妄想するくらいだ。

もしかするとこのシーンも映画向けのセットではなく、実際の基地や駐屯地でロケしているのかも知れない。

2台のMRAPで出動するが、砂漠の渓谷の真ん中でイスラム教フーシ派の待ち伏せ攻撃にあう。フーシ派がRPGロケット砲や迫撃砲、狙撃手、白兵攻撃を仕掛けてくる中、1台はなんとか退却できたものの、1台は移動できず周囲を敵に囲まれる中で孤立してしまう。

登場するMRAPはオシュコシュやらカイエンやらの実車で、車内外の細かいディテールが大スクリーンで見えたりするともう画面にくぎ付けになってしまう。赤新月社マークをつけた装甲救急車なんて初めて見た。いつかプラモデルで作りたい車両だな。

フーシ派はさらに狭い渓谷の道に対車両地雷を埋設し、孤立したMRAPを救出に来た緊急救助部隊もその餌食になる。
救出部隊がさらに状況を悪化させてしまう構図はどうしても映画としての「ブラックホーク・ダウン」との類似性を感じてしまうが、現実の戦場とはこうしたものなのだろう。

ここから先はほぼ一地帯で話が展開し、さらには出てくる俳優は見たことのないヒゲ面で、おまけに汚れきっているとあって見分けがつかない。愚直なくらいストレートに戦闘シーンが続く。退屈しそうなところだが、そこはアクションシーンになれた監督なのでキチンと見せてくれる。

車載リモート機銃システムRWSやスモークディスチャジャーといった兵装類もフル活用される戦闘シーンも迫力がある。軍全面協力の映画ではよくある話なのだが、特殊効果ではなくおそらく実弾を使用しているんじゃないかと思われるシーンが散見される。

映画スタッフ「あの辺をロケット弾で爆破するシーンを撮りたいんですが・・・」
軍広報「訓練名目で実弾撃ちますよ。迫力が本物だし、何といってもその方が安上がりですよ。」
なんて会話が交わされたのではと妄想するくらいだ。

ラストシーンでは改めて舞台がイスラム教圏で登場人物もムスリムだったことを認識させられる。敵もまたイスラム教徒で、同じ宗教同士で殺し合うことに人間の業の深さを感じさせられる。
さらに普段見ている映画はキリスト教圏の人間が主人公で、ムスリムは基本敵側、良くて異質な味方というステレオタイプだということに気付かされる。
今の現実を認識するためにはこういったイスラム圏の映画もどんどん公開してほしいところだし、アマプラではトルコやイランの戦争映画が配信されているのでちょっと意識的に観てみよう。

世間的は特殊な映画と位置づけられるだろうが、
評価は★★★★★!

ところで、元々、正月一番で観に行くつもりだったが、年始の大渋滞に巻き込まれ上映時間に間に合わず、今年2番目となった。あんな渋滞で立ち往生しているところを待ち伏せ攻撃されてたらイチコロだったところだ。







題名:アンブッシュ
原題:The Ambush
監督:ピエール・モレル
出演:マルワーン・アブドゥッラ・サーリフ、ハリーファ・アル・ジャースィム、ハンマド・アフマド、アブドゥッラ・サイード・ビン・ハイダル


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