kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

2022年ベスト映画

2023年01月04日 | 年間ベスト3
今年は劇場鑑賞数が過去最低かも知れない。これぞという劇場公開作も少なくなったし、土日はミリシア活動に精を出していたからかも。1週間10日とか1日36時間とかにならんかな・・・

そんな中、今年のベスト映画
「シェイン/世界が愛する厄介者のうた」
Pogues大好きのワタシにとって、色んな意味で楽しくてツラかった映画。Poguesが好きだった若き日々は二度と来ないと痛感させられた。

クライ・マッチョ
荒野に立つ美しい枯れ木を眺めるかのような作品。

ベルファスト
今年は珍しくアカデミー賞ノミネートの作品を数多く見たのだが、その中で一番良くて好きだった作品。モノクロ画面が心に沁みます。

ブレットトレイン
やはり、こういうバカ映画は年1本は劇場にかからなくてはいけない。
ちなみに着ぐるみ殺し屋は最初、マシオカの役だったというのを面白いルートで教えてもらった。

ニューヨーク1997
とうとう、この作品までリバイバルで観られるとは!

アマプラ配信ものでは
「リーチャー」(オリジナルシリーズ)
「アウトロー」「ジャック・リーチャー」でトム・クルーズが演じたジャック・リーチャーが主人公のシリーズ。主人公は原作どおりでっかい人になり、多くの登場人物と重なり合う事件がうまいこと映像化されている。

「シエラ・デ・コブレの幽霊」
これをさらっと配信するアマプラってこわいですね。

ワースト映画
トップガン:マーベリック
内容的には悪くないんだけど、居心地の悪さゆえあえてワースト認定しました。
普通のミリタリー映画なら全然アリなんだけど、「良かった!感動した!」という世の中の風潮にはやはり違和感があった。

2021年ベスト映画

2022年01月09日 | 年間ベスト3
今年もコロナ禍ということもあり、昨年に引き続いて、ちょっと本数が少なかったです。
劇場側もスケジュールが確定せず、電撃的に公開された作品も多く。振り回された感はありますね。

そんな中、今年のベスト映画です。

ノマドランド
ハッピーな映画じゃないですが、フランセス・マクドーマンドの魅力と日々生きる人の素晴らしさ、素敵なロケ景色とかなりワタシ好みの作品でした。

007 ノー・タイム・トゥ・ダイ
恐らく一生のうちで一番予告編を観た映画(笑)
そして今年見た中で一番メジャーな映画(笑)
新旧のテイストを巧みに融合させた点で、007好きとしては高評価です。
次作のボンド登場とオープニングをどう捌くのか、今から楽しみです。

ONODA 一万夜を越えて
太平洋戦争後30年間、ルパング島に潜伏していた日本軍の小野田少尉を描いた映画。
フランス人監督であるにも関わらず、日本的なタッチで、それでいて公平な視線で描いた作品。

「グッドフェローズ」
リアルタイムで鑑賞できたにも関わらず、見逃していた90年代傑作ギャング映画。朝十時からの映画祭でようやくスクリーンで観ることが出来ました。
何度観ても面白い!

この他、「カラミティー」や「JUNK HEAD」も良かったです。

ワースト映画
残念ながら今年はハズレ映画もなかったです。残念な作品もありましたが、配給スケジュールに無理やり押し込まれたようなところもあったし。

昨年に引き続いて配信で珍しい作品も多々観ることができましたが、やはりスクリーンで見るもんですね。

ONODA 一万夜を越えて

2022年01月09日 | 年間ベスト3
太平洋戦争後、比ルパング島に約30年間、潜伏していた小野田少尉をフランス人監督がどのように描くの興味深く、ぜひ観たかったのだが、上映時間3時間に二の足を踏んでいた。ようやく八丁座で公開されたので、劇場へ。

全編日本語、キャスティングも日本人なので、日本人監督が撮ったと言われても違和感がないくらい、日本的な映画だと思うのだが、小野田少尉と距離を置いた視線はやはり外国人なのかも知れない。

今の私からしても、30年間、ジャングルに潜むということがどういった心理状態なのか非常に興味があるし、監督もそういった点にも惹かれたのだと思う。
実際、秘密戦に配属されて、生き残りをかけ、時として狂信的な行動に走る小野田少尉の半生を史実にもほぼ正確にうまく描いている。密林で自活する様など、サバイバルネタ好きとしても参考になる点が多い。ただ自活だけでは生存できないから、野盗まがいのことをして殺し合いに発展していく点もシビアに描いている。
3時間という上演時間も長く感じさせないし、30年の経過を体感させるには必要な時間だったとも思う。

小野田少尉を演じた遠藤雄弥と津田寛治も戦争と一線を超えた人間の秘めた執念がにじみ出ていて忘れがたいのだが、キャスティングの中でひときわ輝いているのは谷口少佐を演じるイッセー尾形。
陸軍中野学校の教官、古本屋の亭主、過去を清算する元軍人という3つの顔を笑いに転ずる一歩手前でギリギリに演じるあたり、十八番芸だ。

最後、小野田少尉がヘリで帰国するところで映画は終わるが、そこで手を離したようにクレジットに転じるのはこの映画の本質を端的に示していたように思う。普通の映画だったらここで「1973年小野田は日本に帰国し、その後、ブラジルに移住。2013年没、享年91歳」とテロップが出るところだった。
日本人的には歴史の再現という視点で見てしまうが、むしろ特異な環境下で生きた人間を描くという視点を見るべきだし、そういった面で成功している映画だ。

ところで、ポスターのビジュアルアート、何度も言うがワタシではない。

評価:★★★★☆









題名:ONODA 一万夜を越えて
原題:GREENBOOK
監督:アンチュール・アラリ
出演:遠藤雄弥、津田寛治、イッセー尾形

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ

2021年10月19日 | 年間ベスト3



3年近くも予告編だけを観てきただけに「ノータイム・トゥ・リリース」とか「リバイバルかと思った」とか「ダニエル・クレイグがもう1作、ボンド役をやった」とか勝手な思い込みが進行してそうな本作、ようやく公開。

【以下、ちょいネタバレあり】

今回もアバンタイトルからスタートだが、これが長い!作品名が最後に出るのかと思ったくらいで、なんと25分近くある。(上映時間も2時間44分とシリーズ中最長)しかも予告編映像の約半分はこの25分間に盛り込まれている。

ようやくメインタイトルが流れるが、いきなり「007ドクターノー」のタイトルデザインで始まるのだから、嬉しいじゃないか!
そう、本作は過去の007作品の総集編的な色合いがかなり強い。
このタイトル部分でも時計台やダイバーのシルエットが出てくるあたり、初期の007タイトルを彷彿とさせる。そういった意味でも本作未見の方には、事前に「女王陛下の007」や「007/カジノロワイヤル」「007/スペクター」は観ておかれたい。

ストーリー的には前作の続きとなっており、敵もスペクターと新たな敵サフィンの2本立て。

007ストーリーの王道として最初はアイテム探し。場所はキューバとなるが、アナ・デ・アルマス演じるパロマのドジっ娘のキャラとドタバタ感覚は「007ダイヤモンドは永遠に」や「007/死ぬのは奴らだ」時代、特にロジャー・ボンドのテイストを思い出させる。

そこからストーリーテイストが一変して、クレイグボンドのダークで身内の物語に重点を置いた展開になっていく。

MとかQとかノミとかボンド側のキャラクターに時間が割かれすぎているきらいがあるのは好きになれないが、その中で全編に登場する殺し屋プリモ(サイクロップス)がいい感じ。オッドジョブ、ジョーズ、スタンパー、ヒンクスの系譜をひく不死身だけどどっかツメの甘いキャラクター。ヴィラン好きとしてはうれしくなるなあ。

悪の組織が秘密基地を抱えているのは超重要だが、日本近郊にある〇〇施設っていうのは原作の「007は二度死ぬ」に出て
きた設定そのもの。よもやフレミング時代の設定を持ってくるとは思ってもみなかっただけに、ちょっとしたサプライズだ。

さらにサフィンの悪の施設もケン・アダムスのデザインを彷彿とさせて、「007/私を愛したスパイ」のストロンバーグのタンカー内観にソックリ。やはり総集編的なテイストがかなり強い。

この秘密基地でクライマックスを迎えるが、ここでワンシーンワンカットの戦闘シーンが登場する。よもや007でそんな描写があるとは思っても見なかった。

全編、新旧のテイストをまぶしながら上映時間の長さを感じさせない仕上がりだが、ただ、惜しむらくはヴィランのサフィンの存在感が薄いこと。犯罪の目的がイマイチはっきりしないし、ストーリー全体がボンド寄りの話になって、ボンドとサフィンがクライマックスまで対峙しない。やはり劇中、一度は顔をあわせて腹の探り合いと当てこすりの言い合いをしてほしい。

さて、次作と次ボンドがどうなるのか非常に気になるところだが、心配はいらない。原作の「007は二度死ぬ」→「私を愛したスパイ」の流れはまさに本作と次作を予期させるし、逆に映画で「女王陛下の007」でボンドの顔が変わった時には何の言及もなく、その後も代替わりしても誰も何も言わなかった。
最後にいつもより大きく「JAMES BOND WILL RETURN」と出たしね。






題名:007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
原題:NO TIME TO DIE
監督:キャリー・フクナガ
出演:ダニエル・クレイグ、ラミ・マレク、レア・セドウ、クリストフ・ヴァルツ

ノマドランド

2021年04月08日 | 年間ベスト3
日時:4月3日
映画館:サロンシネマ

2008年、アメリカの石膏メーカーが倒産し、企業城下町も消滅。そこに暮らしていた主人公、フランセス・マクドーマンドは夫を病気で失ったこともあり、バンの車中に居を構えながら中西部の町々で短期雇用の仕事を転々とするノマドとして生活していた。

実話に基づく映画化でアカデミー賞レースにもがっつり食い込んでいるようなのだが、ワタシの関心は話の主題よりフランセス・マクドーマンド。「ファーゴ」以来、あの口元が好きだし、近年の図太いオバハン役も好きです。

バンやトレーラーハウスの集まるキャンプサイトを転々としながら、クリスマスシーズンにはアマゾンでバイトし、その他のシーズンは自然公園や農場で働く彼女は自分のことを「ホームレス」ではなく「ハウスレス」だという。

車中生活でその日暮らしを続けるというと日本人の感覚では否定的に取られるところだが、家や家財道具に縛られることなく美しい自然を目の前にしながら、同じ生活スタイルの人たちと交流し、情報交換し、そして別れていく姿を淡々と描いている。こういう生き方をちゃんと商業映画に乗っけられるのが、米映画界の懐の深いところ。

キャンプサイトやガソリンスタンドで出会う人たちはみんな心優しい。互いの境遇を思いやりながら、お互い必要に応じて助け合いながらも、過度な干渉はしない。劇中でノマドを演じているのは、基本本人たち、つまり素人なのだが、醸し出す空気感がとてもいい。

さらに中西部の果てしない平原を捉えた寒々とした撮影も素晴らしい。何もない平原を延々とバンで走って、たどり着いた先で生活するなんて、憧れるよな。「ジェシー・ジェームズの暗殺」とか「わたしに会うまでの1600キロ」とかが好きなもんだから、こういう風景はたまらない。

映画として大きな事件も起きないまま1年が経過する。ただ、そんな中でも2回ほど彼女が物に固執する場面があり、その辺は自分ならそこで切り捨てられるかと考えさせられる。

フランセス・マクドーマンド主演ってとこを抜きにしても、それぞれの人の人生は素晴らしいと思わせる映画。







題名:ノマドランド
原題:NOMADLAND
監督:クロエ・ジャオ
出演:フランセス・マクドーマンド、デビッド・ストラザーン

2020年ベスト映画

2020年12月31日 | 年間ベスト3
毎年やってる今年のベスト映画です。
みなさん同様ですが、今年は公開数も致命的に少なく、映画館は休館の時期があり、公開予定作は延期に延期であまり見ることができていません。

◆ベスト作品
チェルノブイリ
HBO配信の超重い作品で、すでに昨年配信されていますが、語り口のうまさや圧倒的な映像、ソ連車両が大挙登場するリアリティ、そして主役の目つきの悪いオッサン2人とワタシの好みにピッタリでした。製作陣の真摯さも感じさせます。

彼らは生きていた
ピーター・ジャクソンによる第一次大戦ドキュメンタリー。「1917」も捨てがたいが、素材の活かし方でこちらの方が良かった。

次点
ナイブス・アウト/名探偵と刃の館の秘密
数年に1回、こういうミステリーもいいですね。

1917 命をかけた伝令
細部までの作り込みとそれを見せる映像が素晴らしい。

「続・荒野の用心棒」「豹/ジャガー」「殺しが静かにやってくる」
横川シネマらしいマカロニナイト。

ワールドエンド
ロシア軍車両万歳!

ようこそ映画音響の世界へ
定番のお仕事ドキュメンタリーですが、素直に感動した。

◆ワースト作品
見た本数も少ないのでセレクトする必要もないのですが、あえて言えば

「デッド・ドント・ダイ」
ゾンビ物は大好きだし、ジャームッシュも好きだけど、なんか食い合わせがすっきりしなかった感じ。

来年も公開本数は少なくなりそうなので、来年のベスト作品はリバイバル作品になるかもですね。

チェルノブイリ

2020年08月28日 | 年間ベスト3

ちょっと出遅れたが、周りでも話題になっているので、ようやくイッキ見したHBOミニシリーズの「チェルノブイリ」。

当然、救いのない重苦しい内容なのだが、これが実によく出来ていて面白い。
チェルノブイリ原発事故の発生から現在まで約5時間で語るのだが、脚本の面白さやキャラクター造形が巧みで全く飽きさせない。

もちろん、ストーリーは絶望的だし、オチも分かっているのだが、その中での人間の生きざま、科学者、大臣、消防士、炭鉱夫、兵士、一般市民、KGBなどなどをさまざまなエピソードが語られる。 一部脚色があるものの、ほぼ史実通りの内容で、被ばく死の様子など恐しい迫力を持っているし、(被ばく死の実態を見たことがないので、リアルかどうかは分からない。)炉心が溶融してチャイナシンドローム化した最悪のシナリオなど、現実的な同世代の恐怖としてのしかかってくる。

ワタシ自身は原発に賛成でも反対でもないが、こういったドラマを見ると、原発の必要性と日々の生活のありようを改めて考えなくてはならない。

このドラマの素晴らしさをさらに高めているのが、美術とキャスティング。 ロケ地はウクライナとリトアニアらしいが、ロケできる資金力もさることながら、景色や建物が醸し出す雰囲気だけで説得力が違うし、UAZやGAZのトラック、軍用車両などの実車がわんさか出てきて、それだけでもワタシは満足。(セリフが英語なことは目をつむろう。)

さらに主役の二人が素晴らしい。主役の科学者にジャレッド・ハリス、現場責任者の大臣にステラン・スカルスガルド。普通なら主役じゃない顔の二人。後者はまだ知名度があるものの、ジャレッド・ハリスなんて個性的な悪役顔で以前から好きな俳優だが、一般には認知度があるとは言えない。その顔を主役に据えられる俳優の層の厚さを改めて実感する。 政治家と科学者という対立軸のふたりが史上初最悪の事故の中で職務を果たし、さりげない友情を培うあたりなど涙。オッサンが目で友情を語る作品に弱いのだ。

最終話のエンディングで登場人物のその後をちゃんと語るあたり、製作陣の真摯な姿勢を感じる。 当然辛い作品だか、また見よう。

ところで、ジャレッド・ハリスは、ハリポタシリーズのダンブルドア校長のリチャード・ハリスの息子なのだよ。

題名:チェルノブイリ
原題:CHERNOBYL
監督:ヨハン・レンク
出演:ジャレッド・ハリス、ステラン・スカルスガルド、エミリー・ワトソン、ジェシー・バックリー

 


彼らは生きていた

2020年06月19日 | 年間ベスト3

悪趣味カルト映画の監督と「ロード・オブ・リング」「ホビット」シリーズのアカデミー賞監督の顔ほかに第一次世界大戦オタクにして複葉機コレクターの顔を持つピーター・ジャクソン。

そのピージャクが監督した第一次世界大戦のドキュメンタリーというのだから、期待は高まろうというもの。
ちょうど広島での公開初日とコロナ禍による劇場休館が重なり、一時はあきらめざる得ないかと思っていたのだが、晴れて広島でも公開。(ちなみにひと頃4月末にスターチャンネルで放送されるという話があったので、まもなくそちらでも見られるだろう)

開幕、傷だらけモノクロの記録映像で第一次世界大戦開戦が伝えられる。あれ、カラーライズされた映像じゃないのか。
その後、インタビュー音声とともに、当時の若者がイギリス軍に志願し、訓練を受け、フランスに送り込まれるまで、モノクロ記録映像が続く。

いよいよフランスの戦場に着いたとたん、映像が現代のニュースのようなカラーに切り替わると、目が覚めるかのよう衝撃を覚えてしまう。まさに「彼らは古い映像の中のいたのではなく、本当に生きていた。」ことを実感させられる見事な展開だ。(実はここに技術的な仕掛けがあるのだが、そこは後述)

そこから塹壕戦の退屈で泥だらけの毎日、小規模な戦闘、砲撃、休暇などの日常がつづられ、世界初の菱形戦車が登場した後、いよいよ大規模攻勢に転じる・・・のだが、大損害を被り、死屍累々の中、やがて休戦と、西部戦線に従軍したイギリス軍兵士の目線で見た第一次世界大戦が再現される。

全編、オーラルヒストリーによるナレーションや音響がただならぬ臨場感を高め、休戦の場面など安堵感と空虚感の狭間に実際に我が身をおいているかのようだ。

当時の撮影フィルムのキズやヨゴレを除去し、カラリゼーションしただけでなく、実はフレーム数も追加している。当時のカメラは手回しで平均12フレーム/1秒で撮影されているから、スクリーンにかけた時に例の「カクカク」した動きになってしまう。これを現在の24フレーム/1秒にするため、前後の動きからフレームを追加しているのだ。これで動きがスムーズになる。

さらに当時は音声が記録できなかったので、映像から読唇して発言内容を確定させ、部隊名から兵士の出身地を特定させて、そこの訛りを話す俳優にアテレコさせているのだ。

さすがWETAというか、メイキングだけをさらに1本のドキュメンタリーとして観たいくらいだ。(ソフト化されたら映像特典として付くだろうか。)

もう一方で、徹底したリサーチの賜物としても映像の半分くらいは新たに製作されたものだし、当時の兵隊のオーラルヒストリーも必ずしも映像が撮影された場所とリンクしているわけではない。
真贋の見分けられない映像とドキュメンタリーの関係とはなんぞやと改めて考えされられることにもなった。(まあ、ピータージャクソン自身がそんなエセドキュメンタリー「コリン・マッケンジー」を撮っているのだが)

さて、力技でもって第一次世界大戦を追体験したワタシは帰国した兵士たちが誰からも感謝されなかった虚しさには涙し、ロストジェネレーションする自分さえ予見としてしまう。

この技術で別の切り口からの新作を見たいし、広島に住んでいるものとしては、この技術を使って被爆前の広島の様子を再現できないものかと考えてしまう。
単に戦争ドキュメンタリーとしてだけでなく、上質のよく出来た映画として、ぜひ見るべき一本。






題名:彼らは生きていた
原題:They shall not grow old
監督:ピーター・ジャクソン





2019年ベスト映画

2019年12月28日 | 年間ベスト3
毎年恒例の年次報告です。今年は例年以上にたくさん観た一年で、良作も多い年でした。

◆ベスト映画
ROMA/ローマ
教科書的回答ですが、ストーリーと映像の緊張感のバランスが絶妙でした。暴動から病院に至るシーンやラストの1シーン1カット、主役の女の子の魂の告白など今、思い出しても泣けます。

ウトヤ島7月22日
後味の悪さしかない映画ですが、その重さが貴重。

「八甲田山」「東京裁判」「日本のいちばん長い日」
いずれもリバイバルですが、劇場で腰を据えて観ることに価値があります。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
ストーリーはさておき、映画の語りの中に惹き込む力はさすがタランティーノと唸らされました。心底、映画が終わってほしくなかった。

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト」
そりゃ、まあね、泣くよ

T−34/レジェンド・オブ・ウォー
本物のT−34がずっと戦い続けるって、それだけで充分。

アイリッシュマン
円熟の伝統芸能の世界。

ドクター・スリープ
全然期待していなかったのですが、キューブリックとキングの世界観を見事にまとめきっていたところに感慨深いものがありました。

他にも「恐怖の報酬/オリジナル完全版」「ファーストマン」「グリーンブック」なども良かった。

「JOKER」については、実はもっと極悪な展開を期待していただけに、ベスト入はしていません。

◆ワースト映画
GODZILLA/キング・オブ・モンスターズ
世界を守り、怪獣を倒すために、核兵器でゴジラにパワー注入しなければならないのなら、そんな人類は滅びてしまえ!

今年は映画の本数だけでなく、映画館での滞在時間が長い一年でした。とにかく上映時間のデフォルトが2時間30分。未見の作品を含め3時間超えもザラにあったのが印象的です。

今年の年末映画はまだですし、来年も楽しみな映画がいっぱいです。




アイリッシュマン

2019年11月16日 | 年間ベスト3
日時:11月16日
映画館:イオンシネマ広島

ROMA/ローマ」に引き続いて、NETFLIXのオスカー対策公開。今回の劇場公開は予想していただけに身構えていたけど、それでも公開のお知らせは直前。油断も隙もない。

スコセッシにデ・ニーロ、ペシの顔合わせで「グッドフェローズ」「カジノ」路線の実録ギャング映画。実在のギャング(かな)フランク・シーランの半生を描く。セルフ・リメイク的位置づけかと思いきや、シーラン本人が今回の事件を告白した書籍が出版されたのが2004年だったそうなので、新ネタといえば新ネタ。原作も早速読まねばなるまい。
(ちなみに先の2作品の原作者、ニコラス・ピレッジは本作のエグゼクティブ・プロデューサーを務めている。)

デ・ニーロ扮するシーランはトラック運転手だったが、ひょんなことからギャングのボス、ラッセル(ペシ)と知り合い、裏社会の仕事に手を染めていく。やがて、当時アメリカで強大な権力を持つ全米トラック運転手組合の委員長、ジミー・ホッファにも近づくことになる。

ジャック・ニコルソンが扮したこともあるホッファを演じるのはアル・パチーノ。まあ、アクが強い(笑)
他にもハーベイ・カイテルだの、スティーブン・グレハムだの、ジェシー・プレモンズだの、現代ギャング映画のオールスター映画みたい。

上映時間3時間半ととにかく長いのだが、映画そのものも1950年代から2000年頃までのアメリカ裏社会を総覧させてくれる。劇中時間も3つの世代を行き来し、最初、シワシワのペシが出たときには不安がよぎったが、1950年代パートではILMの特殊効果で見事に若返って登場する。色々言っているスコセッシ、ここはいいんだ(笑)

パブリシティでは殺し屋のように紹介されているシーランだが、映画の半分以上はマフィア組織と組合との間で右往左往している。この辺は「グッドフェローズ」のレイ・リオッタみたいだ。(とは言え、もちろん人もたくさん殺す。)

時代的にキューバ革命、ケネディの大統領選出、ピッグス湾事件、ケネディ暗殺などなど派手な事件が続き、登場人物たちもそれらの事件に何らかの形で翻弄される。先の2作だったら、背景にガンガンに当時の音楽やロックが流れるところだが、今回はその辺はおとなしめ。

その分、マフィアと組合の組織をじっくりと描き、全くダレることがなく、「すぐ誰かが死体になる」異様な緊張感が続く。

だが、今回印象的なのは組織と個人の関わりを丹念に描いたところだと思う。そう思うと、やはり先の2作はその点が突っ込み切れていなかったと思わされる。
もちろん、映画の上映時間もあってのことだと思うが、シーランが組織のしがらみと友情の狭間で逡巡するくだりや暴力的な仕事を嫌う娘との確執など、これまでスコセッシが描きたかったものがキッチリ描かれているように思う。
デ・ニーロが半生を振り返って改悛するエピローグなど、ある意味、スコセッシの集大成的なシーンかも知れない。

オールスターなキャスティングが鼻につくところはあるが、しっかり楽しめる3時間半。







題名:アイリッシュマン
原題:THE IRISHMAN
監督:マーティン・スコセッシ
出演:ロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシ、アル・パチーノ、ハーヴェイ・カイテル