kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

「がまくんとかえるくん」誕生50周年記念 アーノルド・ローベル展

2021年04月27日 | 展覧会
展覧会『「がまくんとかえるくん」誕生50周年記念 アーノルド・ローベル展』
会場:ひろしま美術館



「がまくんとかえるくん」、世代によっては教科書にも取り上げられていたらしいが、ワタシはもうちょっと年寄りなので、肝心の作品をあまり知らないままに展覧会に足を運んだ。

さて、今回の展覧会、作品もさることながら作者のローベルの生き方に強くフォーカスしたキューレーターの姿勢を感じる展覧会となっていた。

まず最初にローベルの半生のポートレートが展示され、彼がどのように作家になり、そしてゲイでもあったことがさらりと触れられる。あえて年表が展示されず、まして死没していることにも触れられていないのは興味深い。
あとで考えると「歴史」ではなく「ひとりの生きた作家」として紹介しようとする意図があったのかも知れない。

展示会の全体構成として、前半は「がまくんとかえるくん」以外の作品を時系列で展示しているが、スケッチやアイディア案の他に発案やレイアウトの経緯なども詳しく触れられ、幼いころの疎外感や家族を愛する気持ちなどが作品に反映されていることがすんなりと理解できるよう構成されている。

後半は「がまくんとかえるくん」の展示となるが、ここでも展示の中で一番力が入っているのがローベルと編集者のやりとり。編集者の指摘に対してローベルがどのようにリアクションしたか、ローベルの人となりが見えてくる構成になっている。

個人的に作家の表現に至るプロセスとスポンサーや編集者の思いとのせめぎ合いや調整など大好きな話題で、「るろうに剣心」なども単行本に寄せられた作者のキャラづくりの苦悩など本編より印象に残っている。

「がまくんとかえるくん」の最終話でふたりの存在理由や生き方をキチンと整理したうえで、大団円を迎えさせるあたり、キャラクターに対するローベルの強い愛情を感じさせてじんわりとくるし、それが作品にもにじみでているから愛されているのかも知れない。

通常の絵本原画展とは一味違い、ちょっとキューレーターとの対話すら感じさせてくれた。


広島県立美術館特別展「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」

2019年05月11日 | 展覧会
「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」

ここ数年、ひろしま美術館と広島県立美術館では毎年、ラリーのように浮世絵関連の展覧会を開催。浮世絵初心者のワタシにとっては毎回楽しい。

今回は歌川国芳とその弟子たちの展覧会だが、描かれる題材が風景や美人画などとは一線を画し、かなり俗っぽいのだが、それがいい。

展示作品のテーマは「怪獣」に「戦争」「打ち首」に「エロ」「お化け」に「幽霊」とワタシの人生の大部分を彩ってきたものばかり。ないのはUFOと宇宙人くらいなものだ。
画面もいたるところが流血に血しぶき。まさに江戸末期の中二病ワンダーランド!

















現代で言えば、週刊誌やゴシップ紙のような役割を果たしてきた訳で、当時の人々は眉をひそめながらもワクワクして見ていたんだろうなと思う。
さらに現代のサブカル文化や表現に通じるところも多々見受けられ、何百年にもわたって引き継がれてきたものも感じる。

もちろん、歴史的、技法的な解説もちゃんとなされていますので、ご安心ください。

本展はほぼ個人コレクションに基づいており、個人の偏った趣味でも後世に役立つといった点でも強く励まされるものを感じたな。(笑)


さらに嬉しいことに本展は写真撮影自由。到底、ポストカードで販売されそうにないエログロ作品でもスマホの待ち受けにできるのだ!(笑)


広島市現代美術館開館30周年記念特別展「美術館の七燈」

2019年05月04日 | 展覧会
広島市現代美術館開館30周年記念特別展 美術館の七燈

今年で開館30周年を迎える現代美術館、あまり冴えないチラシのビジュアルに収蔵作品の総覧的な展示かと思っていたら、これがさすが周年事業だけあって渾身の展示内容!

そのボリュームにいろいろと再発見し、考えさせられる展覧会となっているが、7つのテーマはワタシには説明できないので、印象的だった事柄だけ列記。

これまでの「ヒロシマ賞」の受賞作家とその作品が一覧できるようになっているが、改めて見返すと賞の性格がより明確になってきていることが分かる。ワタシが惹かれ考えさせられるのはもちろん、作家が描く人間の闇の部分なのだが。
よって次回の受賞作家、アルフレド・ジャーの作品も楽しみだし、同氏が軍事政権下のチリで行ったインタビューもぜひ展示してほしい。

リニューアルされたオープンされた平和記念資料館の観覧数日後に観たこともあり、現代美術館の位置づけやヒロシマ賞の理念により思いを巡らせた。(本業も含めて)ぜひ、セットで観覧すべきだろうな。

保存収集や修復をめぐる展示と問題提起も博物館・美術館の三大原則「保存・収集・展示」、もっと言うと博物館・美術館とは何ぞやと改めて考えさせてくれる。このあたりに現代美術館の強い意思さえ感じさせる。

本展で数多く展示されているのは現代美術館の設計と建設にまつわる展示だが、これも単に経緯にとどまることでなく、街の中で美術館がどう存在していくのかを意識させる。美術だけでなく、都市計画とかまちづくりに興味のある人でも面白い内容だと思う。

15年ばかり公私に渡り現代美術館には足を運ぶことも多く、お付き合いもあったが、これからもますます好きになりそうだ。

ところで、ちょうど10年前、同館が開催した「荒木経惟の広島の顔展」でポートレイトを撮ってもらったのだが、本展では写真集やらポスターやら最後の最後にはチラシまで展示されていて、懐かしいやら気恥ずかしいやら。
帰宅後、写真集を改めて見るとこの10年で知り合った人も何人かいたなあ。(笑)







広島県立美術館特別展「サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法」

2019年01月09日 | 展覧会
「サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法」
会場:広島県立美術館
会期:2019年1月5日(土)~2月11日(月)





今回、ポスターアート展ということで、まずは解説も読まず、ざっと通し見。短時間で一巡してから、再入場。そうすることで第一印象を大切にして観覧することができる。

広告ポスターは一番最初に世に出る時、単品で人目に触れることは少ない。他のポスターと並べて掲示されることで作品が際立つものだと思う。なので、今回のようなボリュームでまとめて観ると、個々の作品の印象が薄れてしまうのも確か。

ただし、ポスター作品だけでなく、下絵やレイアウト構成図、当時のパリの写真なども併せて展示され、様々な角度から作品について知ることができる。

時代を感じさせないカラフルな色使いや言葉遊びとかモチーフのトランスフォームといった遊びごころにはフランスらしさを感じるし、作品の削ぎ落とされたシンプルさと分かりやすいメッセージは数多くの優れた工業製品に通じている。



さて、彼のポスターが張り出されていた時代、ヨーロッパはまさにマカロニウエスタン全盛期。たぶん、サヴィニャックのポスター横にマカロニのポスターが貼られた場所もあったに違いない。
ということで、ポストカードを並べて、当時のフランスの街角を妄想してみた。

(ちなみにこの「」(昔々◯◯で)というフレーズは、館内上映されているサヴィニャックのドキュメンタリーにも出てくる。多分、何かの縁がある。)

ところで、この展覧会、テーマ別の展示と解説も細かく構成されている一方、会場の面積と構造上、なかなか順路がわかりにくい。観覧の際は作品一覧と確認しながら、ご覧になることをおすすめします。

ひろしま美術館特別展「シャルル=フランソワ・ドービニー展」

2019年01月05日 | 展覧会
「シャルル=フランソワ・ドービニー展」
会場:ひろしま美術館
会期:2019年1月3日(木)~3月24日(日)

今年の展覧会第一弾は「シャルル=フランソワ・ドービニー展」。

風景画中心の展覧会ということで、いかにもひろしま美術館らしい。(笑)

野山が好きな身としては、バルビゾン派の絵画は心安らぐものがあって、こんな森や平野、渓谷、海辺を流浪できたら、どんなに楽しいかと思う。(バルビゾン派とは元々そうしたもんだ。)

ただ、同じような風景画が続き、展覧会としては正直なところ退屈。

そんな中、ドービニーのアトリエ船の模型とか連作のエッチング版画「船の旅」とか遊び心に満ちた作品で楽しい。映画「ミスター・ノーボディ」のサントラが聴こえてきそうなのんびり感だ。

ところで今回、一番気になったのは、ドービニーにしては珍しく点描で描かれた「森の中の小川(Ruisseau sous-bois)」。このタッチ、どこかで見たような気がしたが、ナチ親衛隊の迷彩スモックのカモフラ柄にソックリ。
当時、軍需メーカーは影響を受けたかな?まさかね。


広島市現代美術館特別展「松江 泰治 地名辞典 gazetter」

2018年12月25日 | 展覧会
「松江 泰治 地名辞典 gazetter」
会場:広島市現代美術館
会期:2018年12月8日~2019年2月24日

飛行機で着陸の間際に見える景色が好き。眼下を走る車1台1台に運転手や同乗者、乗客、貨物の物語を想像してしまう。

もうひとつ、砂漠や荒地、雪原といった荒涼とした景色が眼前に広がるのも好き。こちらは中々お目にかかれないので、映画のスクリーンで堪能することが多い。

さて、そんな好みに見事にハマったのが、今回の「松江泰治展」。

最初の「Hiroshima 1983」と「TRANSIT」は路上観察の写真のようでそこまで好きではなかったが、第2室以降の世界中の旅先を撮影したものになると、もうワクワク感が止まらない。何でも今回の展覧会は中年男性の入館率が異様に高いらしいが、まあ、こういう写真が好きだよな。オッサン。

「YEMEN」「CYPRUS」「CALIFORNIA」とかの砂漠の景色って、たぶん何も面白くないのだが、ワタシは大好き。以前に観た「シナイ半島」というドキュメンタリー映画を思い出させたが、何の変化もないが個性あふれる砂漠や荒れ地を見ていると、そこに佇む自分を夢想して飽きない。(言うまでもなく「三つ子の弾ほしい百まで」*の西部劇好きやサバイバルもの好きが影響している。)

*「三つ子の弾ほしい百まで」:マカロニ諺。幼いころにガンクレイジーになると死ぬまで治らないの意。







ビデオ動画も面白くて、「ATLAS 121593」や「AYACUCHO 132681」なんて一人で1日中、見ていても飽きないと思う。以前同じ現代美術館で開催された「俯瞰の世界図」展にあった作品も大好きだったが、変哲のない景色の淡々とした変化はなぜか飽きない。毎日が慌ただしく忙しいから、逆にこういう景色を眺めることが贅沢なのかも。





とても気に入った「俯瞰の世界図」展でも広島市を空撮した松江泰治作品があったらしいが、あまり覚えていなかった。イッキ見した方が松江泰治作品は面白さがより伝わるな。




ワタシの友人に多いバックパッカーや旅行好きならきっと楽しめると思うし、こんな写真を見ていると世界の果てに旅したくなる。

興味深かったのは作家本人が旅好きの写真家というところ。ワタシも山に行って写真を撮るが、当然のことながら、山頂からの眺めや急な傾斜をいかに立体的に収めようかと苦心するのだが、松江泰治作品はあえて立体感を削ぎ落としていて、平面的にしか見えない。その辺の思いが作家性なんだろうと思うと面白い。

ちなみに本展は写真撮影可。そこはうれしい。

ひろしま美術館特別展「ミュシャ展〜運命の女たち」

2018年04月24日 | 展覧会
「ミュシャ展〜運命の女たち」
会場:ひろしま美術館
会期:2018年2月24日(土)~4月8日(日)

毎年、どこかで開催されているミュシャ展。
今年はひろしま美術館でチマル・コレクションの展示。(ちなみに来月、米子市美術館でOZAWAコレクションの展示もある。)

チマル・コレクションは以前、海のみえる杜美術館で展覧会があった時、そのボリューム感に驚いたことがあるので、今回も楽しみにしていた。

今回は彼にまつわる女性をテーマに全体構成がされており、ほぼ時系列に作品を観覧することができる。

学生時代・無名時代のミュシャのノートや素描など、やはり作品としてなかなか見ることができない。「ジスモンダ」で有名になる以前の作品に後年「ブルネット」などに見られる横顔の大きな耳飾りがすでに描かれていることなど興味深い。

ミュシャと言えば、まずは、サラ・ベルナールのポスター作品となる訳だが、今回は展示ケース内ではなく、壁面での直接展示なので、間近に寄って作品を観覧できるのは実に嬉しい。手抜き部分を含め細かいタッチや印刷の色などよく分かるし、周辺の縁取りが針金のようにひねって描かれていたことなど、これまで全く気づいていなかった。

チマルコレクションの特徴として、本の挿絵や雑誌の表紙が多いのもマニアックで面白いのだが、やはり今回の目玉はホーム・デコ社の装飾パネル4点セットだろう。図録にはその入手過程が紹介されているが、非常に珍しい作品。当然のことながら、こんな作品は初めて見たし、作品的にも面白い。まだまだこんな作品が出てくるのかと思うとワクワクしてくる。(完全にコレクター目線で一般の観客にはあまり訴求していなかったようだが・・・)

他にも繻子に印刷された連作パネル「四季」なども珍しいのだが、素材ゆえに損傷が激しいのは涙。

あと写真の展示が多いのもコレクションの特徴で、ミュシャの作品の裏側が垣間見えて面白い。

同じチマル・コレクションの「知られざるミュシャ展」の図録と今回の図録を見ていると、ミュシャ財団のコレクションとの違いも見えてくる。

次にどこかで開催されるのが楽しみ。

広島市現代美術館特別展「交わるいと 「あいだ」をひらく術として」

2018年03月06日 | 展覧会
「交わるいと 「あいだ」をひらく術として」
会場:広島市現代美術館

テーマの難しさからなかなか足を運べないでいた同展だが、会期最終日に滑り込みで観覧。結果、ものすごく伝わるものがあって、早々に行かなかったことに反省しきり。

作品の画像は下記専用サイトでご覧ください。
https://hiroshima-moca.jp/majiwaruito/

北村武資「羅」 
工芸品として仕上がりが素晴らしく、糸の交わりを凝視しながら制作方法を考えていると時間の経過を忘れるぐらい楽しくて仕方ない。
繊維1つ1つの構成が生物の細胞や素粒子の配列を思わせて、今、いる場所のスケール感の混乱を引き起こしてくれる。

熊井恭子「AIR CUBE」
絡み合ったスチールウールの輝きが宇宙の泡構造を想起させる。マルチバースの別宇宙からこの宇宙が観測できたら、この作品のように見えるのかも知れない。私たちはスチールウールのどこか一角の片隅に存在している。

宮田彩加「MRI SM」
コンピュータミシンによって表現された脳のCTスキャン断面図。繊維1本1本が血管やシノプスのようだ。糸を人間の血管に見立てて拡大・立体再現された人間の脳内や人体模型があったら、スチームパンク小説に使えそうだ。

堀内紀子「浮上する立方体の内包する空気」
この作品に限らず布をつかった作品は、平面であり立体でもあるという不安定な存在であることが面白い。
一枚の布の時は向こうが透けて見えるが、枚数が重なるうちに見通せなくなる当たり前のことが新鮮に感じられる。
布や繊維の集合体の中には空間が存在しており、その空間の中に入り込めそうな印象・錯覚を覚える。

いずれの作品も当然、お触り禁止。でも、肌で作品を感じてみたいのも確か。
今まで平面、もしくは縫い合わされた立体でしか見ていなかった布に新しい見方が出来るようになったかな。

ところで、展示作品の中にある細かくほぐされた繊維を見て、「これが火口ならアウトドア用のファイヤースターターで一発着火しそうだ。」と真っ先に閃くワタシは、本質的に退廃芸術狩りや焦土作戦、焚書でも躊躇せずできる人間なんだと思う・・・

ヤマザキマザック美術館「木彫りどうぶつ美術館 はしもとみおの世界」

2018年02月20日 | 展覧会
「木彫りどうぶつ美術館 はしもとみおの世界」
会場:ヤマザキマザック美術館
会期:2017年11月24日(金)~2018年2月25日(日)

毎年、マカロニ大会で名古屋に伺うが、マカロニ大会オンリーでは対外的に恥ずかしい。

という邪心から、今年は「木彫りどうぶつ美術館 はしもとみおの世界」展に立寄ってみた。元々、三沢厚彦の作品や木彫作品が好きということもあるが、先日、広島県立美術館で本展のチラシを見かけたのは、まさにグッドタイミング。



モチーフは犬猫の小動物が中心となっており、多少、デフォルメが入っているものの写実的な仕上がりになっている。彫りで再現された毛並みはマジマジと見ていても飽きることがないし、多くの作品はありがたいことに触っても良いので体つきの再現を手で感じることができる。(作品によっては足元が若干不安定で、冷や汗をかいた。)







木彫なのだから、多少遊びが入っても良いと思っていると、逆に遊び心のある作品は絵本の挿絵に近いテイストがあり、作風の幅が広いし、作家の若さを感じる。









あわせてガチャ・フィギュアサイズの木彫作品が数限りなく展示されており、作品の細かさと数のボリュームに圧倒される。木彫だけでなく、スケッチなどいずれの作品を見ても、生き物への愛情がひしひしと伝わってくるなあ。



ワンコ・ニャンコの個々の来歴も詳しく説明され、それはそれで面白いのだが、できれば素材の木材も記載してほしかったところ。(それを知ってどうなるというものでもないが。)いずれの作品も彩色だが、素材の木目を活かした作品も見てみたいところだった。

美術館の元々の展示スペースがアール・ヌーヴォーの家具展示スペースなので、展示作品そのものに対する印象がアール・ヌーヴォーの家具の影響を受けてしまうのは明らか。たぶん、今回の同じ作品を通常の美術館やギャラリーで鑑賞したら、全然違う印象を受けるだろう。
作品によっては効果的とも言えるし、逆に却って作品の良さを打ち消しているようにも思う。

お目当ての展覧会はすぐに見終わったので、ついでに常設展も覗いたが、これが予想以上の素晴らしさ。展示作品はひろしま美術館常設展と似た構成なのだが、展示作品より美術館として素晴らしく、サロンを意識し、こだわった内装が時間を忘れさせてくれる。
赤の間は映画「鑑定士と顔のない依頼人」のオークショニアの部屋のようで、いやいやこんなところを独占できたら何時間でも滞在できそう。
また、黄の間のクールベ作品前の空間など贅沢な作りで、絵画を見る楽しさの別の一面を感じることができる。この空間を一般市民にも提供している美術館の創立者には感謝の意しかでてこない。









また、名古屋時間の楽しみがひとつ増えたぞ。

ひろしま美術家特別展「平木コレクション 生誕220年 歌川広重の世界展―保永堂版東海道五十三次と江戸の四季」

2018年01月18日 | 展覧会
「平木コレクション 生誕220年 歌川広重の世界展―保永堂版東海道五十三次と江戸の四季」
会場:ひろしま美術館
会期:2018年1月3日(水)~2月12日(月・振休)

先週の広島県立美術館に引き続いて、こちらも浮世絵展。こちらは完全に作家中心の展覧会で「東海道五十三次」「名所江戸百景」+根付展の三部構成。

まず、「東海道五十三次」については過去にも同展を鑑賞した際に感じたが、ワタシの仕事である観光パンフレット制作のまさにご開祖様。現代にも充分通用する表現技術を見いだすことができる。いずれの作品にも老若男女の躍動的な人物が盛り込まれていることもそうだが、その人物描写に無駄がない。また、「東海道五十三次」全体を通して、ストーリー展開がなされている点も素晴らしい。誰か観光パンフレットとしての「東海道五十三次」を研究していないのだろうか。

続いて、「江戸名所百景」。こちらはご当地写真集といったところなのだろうが、全体を通してみるとむしろ表現方法の見本集といった感じを受ける。判型もまちまちだし、遠近法が用いられている作品があれば、二点透視図法で描かれた作品もある。モチーフが画面から大胆にはみ出した作品などかなり実験的な雰囲気が感じられる。
後世の絵師に向けたお手本集といった趣だ。

根付展は1室のみの展示だが、元々なにかを作るのが好きなワタシは細工の精細さに「ほお〜」「う〜ん」「ふぅわー」など嘆息が尽きることがない。テーマも遊び心にあふれていて、時に大胆すぎて吹き出してしまう。着物の時にぜひ凝った根付を身に着けたいところだが、高確率で壊してしまいそうで怖い。

本展、いずれも作品が小さく展示総数もそれなりに多いので、見終わったらどっと疲れます。時間に余裕を持った観覧をおすすめします。

ところで、次回特別展はミュシャ展。楽しみ。