kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

トップ・ガン/マーベリック

2022年06月05日 | ★★☆☆☆
日時:6月2日
映画館:サロンシネマ

周囲での鑑賞率がやたら高い本作、ワタシも2日前に席を確保して土曜日に観に行ったが観客の年齢層もやたら高い。皆さん、青春プレイバック(笑)

前作から実に36年、コロナでの公開延長を差し引いても30年以上前。前作を鑑賞した当時、ワタシは高校生だった。

【以下、ネタバレあり】

映画の中も同じように年を取り、米海軍のエースパイロットだったマーベリックことトムもそのスキルを最大限活用し、やりたいことだけやる気ままな海軍ライフ。
そこに艦隊司令官にまで昇りつめた旧友のアイスマン(バル・キルマー)からの直々の指名で特殊ミッションにあたる若手パイロットたちの教官を命じられる。特殊ミッションとはならず者国家のウラン濃縮プラントの爆撃破壊だった。

ちょっと待てい。戦争状態にない国に対して、米海軍はそんなことしてもいいのか?

そんなことは脇に置いてストーリーは進む。プラントは谷底の地下深くに建設されており、2段階攻撃が必要とされる爆撃作戦の特訓は過酷を極める。

ちょっと待てい。どうやったらそんな面倒くさいところにプラントが作れる。建設道路も通れないところにどうやって掘った?(劇中で説明されたと時は思わず失笑した。)

そんなことは脇に置いてストーリーははどんどん進む。
前作で事故死したパイロット、グースの息子も登場させ、前作への目配せを随所に盛り込みつつ、その一方でトムはジェニファー・コネリーとの恋愛にも忙しい。前作では若き美男美女のラブロマンスだったが、今回はイケメン壮年と美熟女(子持ち)のラブロマンス。プラント攻撃同様、観客のターゲット層もよく研究されている。おそるべしブラッカイマー。

何とか特訓も終え、いよいよミッション開始。露払いとして、いきなりトマホークミサイルでならず者国家の空港施設を破壊。

ちょっと待てい。米海軍は何の警告もなしに敵施設に猛爆撃を加えてもいいのか。飛行するF-18の頭上をミサイルの群れが追い越していく映像はなかなかカッコいいのだが、空港施設も無人ではなかろう。

そんなことは脇に置いて、いよいよプラント施設への2段階爆撃を敢行。もちろん際どいところで作戦は成功し、プラント施設は華々しく吹き飛ぶ。

ちょっと待てい。プラント施設には技術者や科学者、建設労働者など民間人はいないのか。

そんなことは脇においておいて・・・いやいやもうおいてはおいたらイカンだろ。
映画だから荒唐無稽な話は全然構わない。それが映画のいいところなのだが、それを米海軍が全面的にバックアップしていることにはさすがに違和感があるぞ。

ワタシ自身戦争映画は大好きだが、実は前作もそんなに好みではなく、むしろ同時期に公開された、アカがアメリカを占領する「若き勇者たち」の方が大好き、後年公開されたパロディ映画「ホットショット」の方が大好きなクチだったが、今回も前作に引き続いて苦手感を拭いきれなかった。

全編に感じられる「やったもの勝ち」感・・・
力のある側が力づくで勝利する映画はやっぱり面白くない。対等な勝負だったり、敗者の苦々しさだったり、逆に力ある側が貧しく弱き者たちから反撃されたりする方が映画は面白いし、そこが人生にも通じるところがあるんだな。

もちろん、米軍全面協力(と命知らずトム)による撮影、そこにデジタル技術もフル活用して、息を飲むライド的な映像と音響効果はやはりスクリーンで観る映画を実感させてくれる。

で、クライマックスは感動と噴飯の紙一重の展開。
ちょっと待てい。普通、飛行場はそんな近くにはないし、敵地では10キロ歩くのも大ごとだぞ。
とはいえ、そこに持っていく伏線の張り方なんかは感心するのだが。

Imdbのランキングが8点以上とはちょっと信じがたいが、
ワタシの評価は★★☆☆☆。

ところで、エンドクレジットの「トニー・スコットに捧ぐ」にはさすがに涙。






題名:トップ・ガン/マーベリック
原題:TOPGUN MARVERICK
監督:ジョセフ・コシンスキー
出演:トム・クルーズ、ジェニファー・コネリー、マイルズ・テラー、バル・キルマー、エド・ハリス



大怪獣のあとしまつ

2022年02月20日 | ★★☆☆☆


我が家の年中行事は、誕生日でもなく結婚記念日でもなく「家族で怪獣映画を観る」ことである。

今年は「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」や「シン・ウルトラマン」も公開され、すでに怪獣が暴れまわることが予定されているのだが、本作はその後日談「怪獣を倒したら後はどうすんねん」というお話。

日本らしき某国で巨大怪獣が出現し、天からの謎の光を浴び絶命。残された巨大な死骸の処置に国を挙げての大騒ぎとなる。
所轄官庁の押し付け合いに始まり、結局、国営の第三機関である特務隊がその任務に当たる。

話そのものは政治家と現場の不毛な議論をネタにした笑いが多く、ワタシとしてはウルトラマンの「空からの贈り物」みたいに考えられる手段を次々に打ち出す大がかりなホラ話としてのドタバタを期待していた節もあるので、その辺は肩透かし。政治コメディとしてもあまり成立しているとは言えない。ちなみに怪獣の死体をインバウンド観光の目玉にと目論むが、そこを仕切るのは外務省ではなく国土交通省ですと心の中でツッコんでしまうのはやむを得ない。

西田敏行の時代がかった総理大臣役をはじめ豪華なキャスティングで、個人的には松重豊の町工場社長役が妙に説得力があったり、菊地凛子の安定した猛女ぶりに実生活の旦那を思い出したり(後で登場する:笑)
「時効警察」組も多数出ており、特に国防大臣役の岩松了と環境大臣役のふせえりが強烈な印象を残す。
こうなってくると、山田涼介と土屋太鳳の主役2人の影が薄くなってしまい、特に土屋太鳳についてはコメディエンヌっぷりも感じられない。ちょっとこの主役には弱かったかな、

でラストは某ドラマと同じ展開になるのだが、確かにここは賛否の分かれるところだろう。ワタシはスッと腹落ちしたって感じ。主人公の一言によって、この映画全体が1つの壮大なパロディだったことが分かる構成になっている。その煙の巻き方にはちょっとした基礎知識が要るので意地悪なオチでもある。

監督の笑いのセンスが好きか嫌いかという点はあるが、評価は★★☆☆☆






題名:大怪獣のあとしまつ
監督:三木聡
出演:山田涼介、土屋太鳳、西田敏行


355

2022年02月09日 | ★★☆☆☆
日時:2月6日
映画館:バルト11


コロンビアの犯罪カルテルが次世代型ハッキングデバイスを開発、闇ルートで販売しようとするが失敗。この情報を得たCIAは工作員(ジェシカ・チャステイン)に入手を命じるものの妨害を受け、デバイスは行方不明に。
そこから、世界各国の女性エージェントを巻き込んだデバイス争奪戦が始まる。

「RONIN」の女性版みたいな話で、女性エージェントたちの顔ぶれが豪華。(ペネロペ・クルスは実は事件に巻き込まれた女医という設定。)

なのだが、一言で言うと脚本が悪い。
主人公たちを活躍させるためにストーリーが進み、物語の上に登場人物が乗っかっていないから、あらゆることが矛盾と混乱に満ちている。
本来対立している陣営が共同戦線を組む話は007でも米ソとか米中ってあったわけだが、この映画では協力する意図が全然見えない。新世代型ハッキングデバイスを手に入れたら米中どころか、米英独間でも取り合うぞ。もっと言うと開発した当の犯罪カルテルが販売などせず、それを元手に脅迫事業をやればいいだけの話。なので、辻褄合わせのストーリーを追いかけるだけで疲れてくる。
さらにそこに「女性だから」みたいな話を入れるから余計に混乱するし、逆にこのご時世、敵をだますためのハニートラップもそんなに派手には盛り込めない。

さらにアクションを銃撃戦と格闘戦のみでカーチェイスの展開にならないから、流れも単調になっている。ところが埠頭のチェイスはリアリティと迫力のいい塩梅だし、クライマックスも悪くはない。各アクションシーンの出来はいいだけに余計にもったいなく感じる。ホント、物語がアクションしていないのが残念。

女性エージェントを演じるのはチャステイン、クルスのほか、ダイアン・クルーガー、ルピタ・ニョンゴ、ファン・ビンビンだが、無鉄砲な狂犬キャラを演じるクルーガーが一番カッコよく輝いている。
逆にファン・ビンビンの顔は不自然で苦手だなあ・・・

ロケで世界各国に行っているところはスパイ映画らしくでいいのだが、中国ロケは台北?

評価は★★☆☆☆

ところで、もうちょっと妙齢の女優で同じような映画という話で盛り上がったことがあり、そのキャスティング案はフランセス・マクドーマンド、ジュリアン・ムーア、ティルダ・スゥイントン、ヘレン・ミレン、シガニー・ウィーバー・・・で、やはりその時も若手として名前があがったのがチャステイン(笑)







題名:355
原題:The 355
監督:サイモン・キンバーグ
出演:ジェシカ・チャステイン、ダイアン・クルーガー、ペネロペ・クルス、ルピタ・ニョンゴ、ファン・ビンビン


ザ・スーサイド・スクワッド “極“悪党、集結

2021年09月24日 | ★★☆☆☆
前作は未見なのだが、今回、監督インタビューによれば「戦争ケイパー映画のスーパーヒーロー版」であり、大好きな映画は「荒鷲の要塞」であるという。

人生で「無人島に持っていきたい50本の映画」の1本に同作をあげている者としては観ないわけにはいかない。

「荒鷲の要塞」とは
アリスティア・マクリーン原案、ブライアン・G・ハットン監督の戦争映画。
第二次世界大戦中のヨーロッパ、ドイツに不時着し、通称「鷲の城」に監禁された米軍将軍を救出するため、米英混成の特殊部隊が送り込まれる。しかしこの救出作戦にはもう一つ裏の目的があった・・・
史実的には無茶でも60年代冷戦下の空気感あふれる緻密な構成、後半のド派手なアクションシーン、イーストウッドにアントン・ディフェリング、素敵な冬山ロケーションと登場するドイツ軍装備の数々とワタシの人生の針路を決定づけた一作。

今回もオープニングからして、刑務所から釈放され指令を受けるヴィラン連中で始まる。犯罪者に捨て石同様の死のミッションを与えるって、映画的でいいですね。
演じるのは内田裕也みたいなマイケル・ルーカー。そして、メンバーのひとりがマーゴット・ロビーのハーレ・クイン。

任務は南米の小島コルト・マルテーゼの独裁者を排除し、同国が秘密裏に研究開発を進めてきた宇宙怪獣を抹殺すること。清く正しいアメリカの手先が中南米の独裁政権に鉄槌を下すっていつの話だ(笑)ストーリーといい、中南米の景色といい80~90年代テイストに満ちていていいなあ。

ところがこのミッションは早々に血みどろの失敗。主演級のマイケル・ルーカーも爆死。「エグゼクティブ・ディシジョン」のセガールとか「デッドロック」を思い出させる(笑)

で、ようやく本題。同任務にはもう1チームが派遣されており、イドリス・エルバのリーダーのチームがミッションに挑む。
時間構成を解体したり、テロップを挿入したり、ガイ・リッチー映画を思わせる進め方をするが、なんかイマイチ、リズム感が悪い。なんだろうね。

一行は先のチームのメンバーを救出したりとお決まりの展開をたどりながら、島中を血みどろにしていく。最近の映画では珍しい描写が続き、そこはR-15指定通りで気持ちいい。

ただ全体に緊迫感がない。というのも、主人公が特殊能力をもつスーパーヒーローで、敵側がただの兵隊だから全然ピンチに陥らない。ワンサイドゲームじゃ面白くない。ここが、戦争映画だとナチ側も強いという前提があるのでそれなりに盛り上がるのだが。

さらにここに予測不能な暴力行動を起こすハーレ・クインが参入し、本来任務の宇宙怪獣の抹殺に挑む。
ハーレ・クインの言動が好きな人にはいいんだろうけど、個人的にはちょっと中途半端な感があったな。アブナイ人ならもっと振り切れた描写でも良かったかと思う。

ナチ残党が建設した要塞で研究、育成されてきたのは、宇宙怪獣スターロ。日本人的にはどこかで見たデザイン(笑)
巨大化したうえ、人間を操り、コルト・マルテーゼの市街を大破壊。サイズ感が巨大すぎず、50年代のハリウッド怪獣映画くらいでちょうどよい。
で、あれやこれやで怪獣退治を果たしめでたしめでたし。

評価的には、全体にもう少しハードな方が逆に笑えて面白かったんじゃないかと思うので、★★☆☆☆。

ところで、予想どおり「荒鷲の要塞」へのオマージュな場面も。現地でバーで手入れされるシーンなんて、そのまんまの展開だし、アサルトライフル2丁撃ちもイーストウッドがやってた。エンディングで現地から立ち去る機中で疲労困憊したメンバーのショットもそれだね。
「今度はアンタらだけでやってくれよな」
言って欲しかった(笑)







題名:ザ・スーサイド・スクワッド “極“悪党、集結
原題:THE SUICIDE SQUAD
監督:ジェームス・ガン
出演:マーゴット・ロビー、イドリス・エルバ、ジョン・シナ


モンスターハンター

2021年04月14日 | ★★☆☆☆

ワタシ自身はビデオゲームをプレイしないのだが、ポール・W・S・アンダーソンの新作となれば、やはり行かねばなるまい。

国連治安維持軍のミラ・ジョヴォヴィッチのチームは砂漠で嵐に巻き込まれ、異世界へ放り込まれる。そこはモンスターの跋扈する世界だったが、異世界の原住民とともにサバイバルに挑む。

まあ、モンスターハントが主題の映画なので、それ以上の展開の広がりを期待できるわけでもなく、いつになったら話の本筋に入るのかと思いきや、前半はダラダラした展開が続いてしまう。特にジョヴォヴィッチと原住民のトニー・ジャーの遭遇とそこからのケンカなどくどい、くどい。「ゼイリブ」のプロレスシーンを彷彿とさせるのだが、そこはカーペンター好きのアンダーソン監督も狙っているのかも知れない。(狙わなくてもいいけど)それでも一定の水準以上で見れるのは監督の手慣れた手腕のもんだな。

手製の武器や知略を持ってモンスターを退治したり、逃げたりしていると、原住民代表のロン・パールマンとも遭遇。砂漠の中で帆船を操っていたりするあたりワクワクするのだが、帆船はあくまでもイメージに過ぎないので手下数十人をこき使って操船する堂々たるキャプテンぶりが見られるわけでもない。

【以下ネタばれあり】

このまま、ボスキャラモンスターの火吹き竜リオレウスを退治して終わりかと思いきや、いきなりジョヴォヴィッチは嵐の中で元世界に戻り、オスプレイに救出される。
ここからが「巨大メカ大好き」なアンダーソン監督の真骨頂。追いかけてきたリオレウスがオスプレイ、ハマー、エイブラムス戦車、AWACS機を相手に大暴れ。なまじの怪獣映画を上回る迫力なのは、監督の視点が巨大メカに行ってて破壊するためのパワーが直接的に表現されるからではないかと思う。
リオレウスがエイブラムス戦車の砲塔を投げ上げるのだから、やはりアンダーソン監督はこうでなくっちゃ。
ワタシの心の眼にはすでにアンダーソン監督がいつかは撮るであろう本格派戦争映画が見えている(笑)

南アフリカでロケされた景色も荒々しくてステキなのだが、せっかく南アフリカでロケしたならキャスパーとかマンバとかご当地装甲車を起用すればいいのに(笑)

コロナ禍のこのタイミングで公開されたのは、映画の出来の裏打ちになっているのではと邪推してしまうし、アンダーソン監督の中でも出来がいい方ではないので、評価は★★☆☆☆。

ところで、巨大メカともう一つアンダーソン監督映画に欠かせないのが、ジェイソン・アイザックスだが、今回は残念ながら登場せず。AWACS機内から指揮しててほしかった。






題名:モンスターハンター
原題:MONSTER HUNTER
監督:ポール・W・S・アンダーソン
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、トニー・ジャー、ロン・パールマン

スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち

2021年01月11日 | ★★☆☆☆

今年の観始めはこの映画。
緊急事態宣言のドタバタで急遽上映が決まったようだが、映画製作系ドキュメンタリー好きとしては見逃すわけにはいかない。

タイトル通りハリウッドで活躍するスタントウーマンにスポットを当てたドキュメンタリーで、進行役はこの人しかいないであろうミシェル・ロドリゲス(笑)

すでに70歳代に入った生ける伝説のような方から現役までの30人以上のスタントウーマンをメインにその他の映画関係者のインタビューをつないでいく。

70歳代ともなると出演した作品がTVシリーズの「チャーリーズエンジェル」とか「ワンダーウーマン」だったり「フォクシーブラウン」だったり「恐怖のメロディ」だったりして、貴重な当時のビハインドシーンを見られたりするのはなかなか嬉しい。

スタントウーマンということで、話の半分は男社会の映画製作業界で女性として活躍することの難しさの話題となる。この辺は女性の社会史の50年を見ているようだ。

先人の偉業をたたえ、現場の美談に終始するかと思えば、不幸な事故の話題に触れずにはいられないのはスタントマンものの決まり事だろう。

様々な映画の裏話を話してくれるのは面白いのだが、身内の話題が多く話の切り口が広がらない。また、映画として章立てされておらず、次々と話題が切り替わっていくのでまとまりの悪さと食い足りなさが残ってしまうのが難。このご時世Iでなければ配信のみで終わっていたかも知れない。

ところでこの映画、IMDBでは2021年1月11日現在で評価7.9/10(投票数37)。それは身びいき過ぎ(笑)






題名:スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち
原題:Stuntwomen: The Untold Hollywood Story
監督:エイプリル・ライト


異端の鳥

2021年01月01日 | ★★☆☆☆
見た目もタイトルも暗いが中身も暗い作品。

モノクロの画面に描かれる東欧のどこかの寒村。いきなり名もなき少年が子どもたちのイジメ(というかリンチ)に合う。少年は家庭の事情で叔母に預けられているようだが、この叔母が急死した上、失火により家は全焼。

生活の場を失った少年は荒野をさまよった後に別の寒村にたどり着くが、そこでも悪魔の使いとして虐げられた挙句に川に逃げることに。
今度、たどり着いた農家では老主人(ウド・キアー!)と若い妻、そしてその妻とねんごろになる使用人が際どい関係を続けていた。妻の不貞に気付いた老主人は狂気の行動にでる。

おまけに上空にはドイツ軍の十字マークをつけたシュトルヒ偵察機が飛び交い、少年はナチ占領下に足を踏み入れていく。

こうして、少年は行く先々で人間の「悪」の部分を散々見せつけられる。人間の欲の根源、性欲にまつわるものも多ければ、ナチのホロコースト、ナチについたコサックによる虐殺、ソ連軍の進軍と戦争にまつわる残虐行為も描かれる。

少年はこれらの人間の悪に残酷に巻き込まれ、悪の中で生き残りをせざるをえなくなる。物語もして何かを声高に語るわけではなく、諸悪の行為も事実として淡々と語られる。

寂寥としたモノクローム映像は時として残酷、時として物静かに状況を語る。さっと引くような編集もあって、何とも言えない印象を残す。

キャスティングも先のウド・キアーをはじめ、ハーヴェイ・カイテル、ステラン・スカルスガルド、バリー・ペッパー(また狙撃兵役!)と不穏な空気のオンパレード。

2時間40分の殺戮ツアーは時として「デッドマン」、時として「ソドムの市」を思い出させ、救いのない気分にしかさせないが、ラストシーンでわずかな希望を感じさせる。

人にオススメするにはなかなか厳しい作品でした。

題名:異端の鳥
原題:The Painted Bird
監督: ヴァーツラフ・マルホウル
出演:ペトル・コトラール、ウド・キアー、ハーヴェイ・カイテル、ステラン・スカルスガルド、バリー・ペッパー、ジュリアン・サンズ

シチリアーノ 裏切りの美学

2020年12月25日 | ★★☆☆☆
1980年代、シチリアのコーサ・ノストラを裏切り、裁判で証言した組織の大物ブシェッタを描く実録ドラマ。

パレルモでの抗争の激化が予想され、身の危険を感じたブシェッタはブラジルに逃亡し、豪勢な生活を送ってたが、パレルモでは親族や仲間が100人単位で殺害されていた。
やがてブラジルで官憲の手にとらえられたブシェッタはイタリアに送還され、実力派判事に協力することになる。

ここからコーサ・ノストラを一掃していく裁判劇になるのかと思いきや、実はil Traitor(裏切り者)のタイトルどおり、裁判ドラマより裏切者となった一人の男の半生が描かれる。

もちろん映画の半分は裁判シーンなのだが、起訴案件の全体像が分からない上、登場人物も多い。出廷者目線でドラマが進むから、どんな捜査が進展しているかも分からない。おまけにイタリアの司法制度が分からないから、どの局面での証言かも分からない。(法廷に檻があったりとなかなか興味深い。)

分からないことづくしなので、正直ドラマに乗れない。現実はこうしたものなのだろうが、そうやって思うと「グッド・フェローズ」みたいに多くの事件や関係者を整理して本質を分かりやすく語るのは、ハリウッドの圧倒的な力量だな。

また、主人公ブシェッタが裏切者になった理由として、今のコーサ・ノストラのやり方に抵抗感を感じたと語るのだが、身内の殺害以外にそのやり方が具体的に描かれないので、彼の信念がワタシには見えてこない。

裁判はいつの間にかフィナーレを迎え、ブシェッタもアメリカに移住したり、またイタリアに戻ったりと、完全に裏切者となったブシェッタの生涯を映画は追いかけることになる。

事前の予想以上に淡々とした映画でひと頃のにぎやかな犯罪組織映画を見慣れたものとしては、いささか食い足りなかったかな。






題名:シチリアーノ 裏切りの美学
原題:Il TRAITOR
監督:マルコ・ベロッキオ
出演:ピエル・フランチェスコ・ファヴィーノ、ルイジ・ロ・カ~ショ

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ

2019年06月12日 | ★★☆☆☆
日時:6月16日
映画館:バルト11

我が家には「家族で怪獣映画を観る」という年中行事がある。
「GODZILLA/ゴジラ」「ジュラシック・ワールド」「シン・ゴジラ」「ジュラシック・ワールド/炎の王国」・・・
2年前の「キング・コング 髑髏島の巨神」から期待してきた本作、遂に公開だよ。

なのだが素直な感想は
こりゃイカン!(ネガティブな意味で)

怪獣大決戦は良い。それしか観たくないのだから。

しかし、それに至るストーリーがひどいし、全体のつぎはぎ感がハンバない。

研究所に普通に出入りして不用意に事態を混乱させるガキ、支離滅裂な科学者、ジェット戦闘機と並航できる高速オスプレイ、どうやって資金調達して作ったのか想像だにできないモナークのひみつ基地とひみつ兵器・・・あれ、これまでのゴジラ映画を揶揄しているワケじゃないよ。

【以下ネタばれ、映画未見の方は絶対読まないでください。】


ただもう、感情的に本質的に心の底から侮蔑するのは一度倒れたゴジラを核兵器で復活させる点。しかもそれを起爆させるのが芹沢博士。さらにメルトダウン直前のゴジラは超高熱で廃墟を溶かしながら最終決戦に挑む。

もう、核兵器への恐怖というゴジラの本質に唾しているとしか思えないし、よくこの脚本を東宝が認めたものだと思う。まあ、もの言う立場ではないだろうが。

個人的にはこの作品がヒロシマで上映されたことが許せなかったし、上映を拒否しなかった映画館も情けない。まあ、上映拒否なんてありえないし、上映されないと評価もできないのだが。

まあね、怪獣オール総進撃のFinal Warsで愚かな人類に鉄槌が下り、70億人ほど死ぬならまだ良いのだが(良くはないし、それでもスクリーンの片隅では2~3億人が死んで、全米中が放射能汚染されている。)、なぜか万事丸く収まるエンディング。
オイオイ、自然とか神をなめていないか。

キャスティング的にはミア・ファミーガもチャールズ・ダンスも好きなのだが、どうも全然活きていない。

やっぱり「こりゃイカン!」

ところで一緒に観に行ったウチの奥さん
「キングキドラのね、首の動きにもっと「吊り感」が欲しかったよね~」







題名:ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
原題:GODZILLA KING OF MONSTERS
監督:ピーター・ファレリー
出演:カイル・チャンドラー、ミア・ファミーガ、チャールズ・ダンス


オーヴァーロード

2019年05月13日 | ★★☆☆☆
日時:5月11日
映画館:TOHOシネマズ緑井

三題噺のお題を出すまでもなく、ナチ&生体実験というだけで予想を裏切らない、そのまんまな映画。

1944年ノルマンディー上陸作戦の前夜、米101空挺師団の一部隊が教会に設置された妨害電波発信基地を破壊するため、フランスに降下する。
大損害を受け、数名になった米軍が基地で見たのは、攻撃目標に加え、ナチの生体実験施設だった。

って、いつの時代の話やねん。とツッコミたくなるくらいの王道路線。だいたい、この辺の実験になるとスーパー兵士(武器人間)とかゾンビ兵士になのだが、まあその辺は見てのお楽しみ。令和の時代ともなると予想を裏切る展開となってほしいのだが。

特殊効果にILM社が入っているせいか、ノルマンディー上陸作戦のスケール感は見事に再現されているし、最近の映画だけあって、軍装や兵器などの考証もしっかりしている。

なのだが、肝心の話が面白くない。話を面白くしようとして、戦争映画ともホラーともどっちつかずの展開になり、却ってストーリーを混乱させている。
舞台が東欧とかドイツではなく、フランスの村ってところも不気味さに欠けるし、米軍の助っ人としてフランス人女性が登場するが、レジスタンスでもないのにやたら武器の扱いに精通している。オイオイ。

グリーンインフェルノ」のように同種の旧作に限りない愛情を注いでいるわけでもなく、悪趣味路線に突っ走ったわけでもない、腰の引けたところも弱いな。

この手の映画にしては、大規模なセット(かロケ)が組まれ、安っぽさを回避しているのが救いか。
あと、クライマックスではCG込なのだろうが、なかなか面白いワンカット撮影が見られる。

正直、半分寝ながら観ていた映画でした。





題名:オーヴァーロード
原題:OVERLORD
監督:ジュリアス・エイブリー
出演:ジョワン・アデポ、ワイアット・ラッセル、マティルド・オリビエ