kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

サム・ペキンパー 情熱と美学

2015年11月21日 | ★☆☆☆☆
日時:11月21日
映画館:シネツイン
パンフレット:A5版800円。蓮實重彦とか川本三郎のコラムがいかにも。

男なら絶対、見ておかなければならないサム・ペキンパーの映画。
そのサム・ペキンパーのドキュメンタリー映画。
となれば、職場が関与している某映画祭を袖にしてでも行くのが男というものだ。(ちょっと違う。)

が、面白い映画を作る面白い映画監督の話と面白いドキュメンタリー映画は別物だった。

関係者(特に俳優)のインタビューを通して、ペキンパーの全作品を取り上げるのだが、これまで聞いたような話ばかりで、初心者向けの内容。さらに映画としてのテンポが悪く、全体に冗漫で単調。時系列に構成されているので、一番盛り上がる「ワイルド・バンチ」の話題が早々に終わってしまう。(ちなみに「ワイルド・バンチ」のコスプレをやっているおバカさんたちの様子はこちら。)

80年代90年代なら面白かったかも知れないが、スローモーションや編集といった独特の技術面でのアプローチや彼に関する新発見・見解がないと、21世紀のドキュメンタリーとしては弱い。(実際、日本公開まで10年もかかっているもの、さもありなん。)

さらにペキンパー映画のフッテージを使っておらず(使えなかった?)、インタビューの他はスチール写真を中心に構成される映像面も弱いし、文字情報と音声情報が錯綜する編集もあまり上手くない。

監督のプロフィールを見ると、映画研究家らしく、なるほどなあ、映画の作りが書籍的で生真面目なのだ。
研究書なら面白いエピソードを全部盛り込んで詳細に語ることも出来るが、時間に制約のあるドキュメンタリー映画にはもっとメリハリが必要だ。省略すべきところは省略し(作品数が少なく、どの作品も個性的なのでちょっと難しいが)、その一方でペキンパー映画の映画史的な価値をスコセッシが語るとか、「イタリアのペキンパー」と賞賛されたエンツォ・G・カステラッリ監督にインタビューするとか、もっと多層的な構成でも良かったのではないか。

個人的には、あまりお目にかかれない「戦争のはらわた」のメイキング映像が見れたのは良かった。露助のT-34は20台オファーしていたのが、3台しか来なかったらしい。まあ、20台も攻撃してきたら、さすがのシュタイナー分隊も脱出できなかったろうけど。(笑)

ところで、この監督、セルジオ・ソリーマとかフェルナンド・バルディのドキュメンタリーも撮っているである。そっちを日本公開してよ!!






題名:サム・ペキンパー 情熱と美学
原題:Passion & Poetry: The Ballad of Sam Peckinpah
監督:マイク・シーゲル
出演:R.G.アームストロング、L.Q.ジョーンズ、アーネスト・ボーグナイン、ジェームス・コバーン、クリス・クリストファーソン

ターミネーター/ジェニシス

2015年07月12日 | ★☆☆☆☆
日時:7月11日
映画館:109シネマズ
パンフレット:A4版720円。監督・出演者のインタビュー掲載。よくある1~4の振り返りは無し。

今年はとにかく大型映画が目白押しだが、その1本。思えば「ターミネーター」を見たときは、まだ高校1年生だったから文字どおり30年もお付き合いしているわけだ。劇場に来ている観客の半分は「1」も「2」も劇場で観ていないんだろうな・・・。

シリーズでやはり一番よく出来ていたのは「2」だし、「3」の迷走ぶりは痛々しい。「4」は評判が悪いんだが、個人的には近未来ポストアポカリプスものとして好きだった。(しかし、ほとんど記憶に残っていない。)

【以下ネタばれあり】

「1」から30年も経つと、さすがに「これまでの「ターミネーター」は・・・」と解説しないと分からないのか、前半は「1」と「2」のおさらいとなる。1997年の「審判の日」シーンなどは、久しぶりにこういった黙示録描写を観たなあという感じ。旅客機の中から目撃する核ミサイルの交錯なんて、なかなか斬新。

そこから話は最初の1984年に行き、カイル・リースとT-800×2台、T-1000の乱闘と展開していくが、この辺から話がグダグダに・・・

話を盛り上げるために色々なギミックを盛り込むのだが、それがどんどん荒唐無稽になって白けてしまう。時空転送機が作れるなら、何でもアリになってしまう。2017年にタイムスリップする必然性が、1984年のセットを作る手間だけにあったとしか思えない。(あとで考えてみたら、未来から来たロボットが主人公を助けて、タイムスリップまでするなんて、「ドラえもん」と同じ話だった訳ですね。)
また、アクションシーンの演出もキャメロンに比べて歯切れが悪く、緊迫感と程遠い。銃を撃ちまくって、爆破して、車をひっくり返せば、アクションになる訳ではないし、監督出身のTVと映画では描きようが違うのだと思う。悪い意味でCGに頼りすぎ。
さらにシュワ・ターミネーターとサラ・コナーの関係の描き方も甘いうえ、サラ・コナーとカイル・リースも痴話げんかばかりしているように見える。「1」「2」の時にあった絶望感みたいなものが皆目感じられないのは、いかがなものか。

さらにパブリシティにも問題があって、予告編でT-3000の正体を見せてはイカンでしょう。T-3000も「スター・トレック」のボーグみたいで、この映画の中では説得力に乏しい。

肝心のシュワ・ターミネーターを誰が送り込んできたかと言う問題は、サワリもなければ、次回への伏線もなく、最後まで明かされず。そりゃ、無いでしょう。
要するに今回の「ターミネーター」は全然、評価できません。

ところで、これまでシルバーマン博士が担ってきた「事態に薄々気付いている部外者」の役割を、本作ではJ・K・シモンズが演じているのだが、先日の「セッション」の印象が強過ぎて、いつ怒鳴りだすのかとヒヤヒヤしてしまった。






題名:ターミネーター新起動 ジェニシス
原題:TERMINATOR GENISYS
監督:アラン・テイラー
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、ジェイソン・クラーク、エミリア・クラーク、ジェイ・コートニー、イ・ビョンホン

荒野はつらいよ アリゾナより愛をこめて

2014年10月19日 | ★☆☆☆☆
日時:10月18日
映画館:TOHOシネマズ緑井
パンフレット:B5版720円。

TED」の予想外の大ヒットのおかげで、こんな映画でも劇場公開されるようになった。広告にはもちろんTEDが引っ張り出されるが、全然関係はない。

セス・マクファーレン扮する羊飼いのダメ男はワイルド・ワイルド・ウェストでサバイバルできるのか?というコメディ、元々不安なものがあったが、今回は的中。全然、笑えない・・・。

コメディ調西部劇なのか、西部劇のパロディやオマージュなのか、田舎を笑いとばした映画なのか、コメディとして腰が座っていない。トーンの違う笑いをバラバラに繰り出すから、そこで笑っていいのかどうか混乱してしまう。ボケとツッコミの役割分担も不明確だから、キャラクターのリアクションがふらついている。笑いがちょっとひとりよがり。

TEDでも連発したお下劣ネタもぬいぐるみのTEDがやるから面白いのであって、ブルーカラーの薄汚いオッサンどもが下ネタを披露したら引いてしまう。(まあ、最近、職場でもセクハラまがいの冗談を言う人が少なくなって、時々、露骨な下ネタを聞いたりすると伝統芸のようで、それはそれで面白いのだが。)

原題の「西部での100万の死に様」どおり、ムチャクチャな死に様も連発されるが、個人的にはそこにフォーカスしたブラック・コメディの方が良かった。

とはいえ、最新の映画とあって、画面はとてもきれい。モニュメントバレーと砂漠がくっきりとスクリーンに映し出されるのはそれはそれで満足。

インディアン役でウェス・ステュディも出ているのだが、原語でもインディアンと言っているのに字幕は「アメリカ先住民」。インディアンと言っているのなら、字幕もインディアンだろっ!

「The End」のあと、思いがけないゲストスターがガンさばきを披露。これが一番、笑えたな。
ところで、このシークエンスはエンドクレジットの後も続くのだが、どうもつながりが悪い。ひょっとしてエンドクレジット後にあったワンシークエンスを2分割したんじゃないか?






題名:荒野はつらいよ アリゾナより愛をこめて
原題:A Million Ways to Die in the West
監督:セス・マクファーレン
出演:セス・マクファーレン、シャリーズ・セロン、レイフ・ファインズ、アマンダ・セフライド

ワールド・ウォー・Z

2013年08月22日 | ★☆☆☆☆
日時:8月20日
映画館:全然そぐわない八丁座
パンフレット:A4版700円。

ワタシの心震わすフレーズは「人類滅亡」なのだが、現実のシナリオとして、核戦争はまだ可能性があるし、隕石が落ちてくることもあるだろう。最悪のウィルスが蔓延することもあるかも知れない、気候変動や天変地異も起こり得る。宇宙人が攻めてくることも無いとは言えない(だろう。)

しかし、これだけは確実だ。
未来永劫、死者が甦って生者を襲うことなど、絶対に起こらない。

と、本作の原作を読んだときに書いた。

その原作の一部エッセンスを抽出し、ストーリーは大幅に違う映画版。目の周りの小じわが痛々しくなったブラピがゾンビ災厄の対策を求めて、芋づる式に世界を飛び回り、その過程でワールド・ワイドな災害をものすごいスケールで描いている。(正直なところ、ブラピは活躍しているんだか、身勝手なのだかよく分からないのだが。)

近年のゾンビ映画の特徴として、映画開幕と同時に世界は大混乱。今までのゾンビ映画ではわずかにしか登場せず、見たくても見れなかった人類滅亡の序曲が描かれるあたりはうれしい限り。その反面、大人の事情で残光描写は控えめ。

ところが、それだけの規模のカタストロフィを描きながら、ラストは肩透かし。
「それで終わり?」
エッエッエッ~!

ちょっと待った!身内や知り合いはゾンビ化しないのか?暗鬱なラストじゃないのか?それって、ゾンビ映画の基本を外していないか?

先に残酷描写が控えめと書いたが、この映画、普通にゾンビを描くものすごく「生真面目なゾンビ映画」なのだ。(変な表現だが)
これまでの心に残るゾンビ映画は悪趣味だった。悪趣味なテイストがなかったら、ゾンビ映画として生き残れなかった。(これまた変な表現だが)
ゾンビ」「サンゲリア」「死霊のはらわた」の全編全て、「ビヨンド」の意味不明さ、「ブレインデッド」のグッチャグッチャ、「ナイトメアシティ」の無意味なヌードシーン、「REC」の感情移入できない身勝手な登場人物と度肝を抜くラスト、「ドーン・オブ・ザ・デッド」のアンディ射殺や殺人チェーンソー、「28週後・・・」のロンドン壊滅とエンディング、「バイオハザード5」の露助ゾンビ軍団・・・書き出したらきりがないのだが、この映画には予告編以上の心に残る悪趣味さが感じられない。

最初に書いたように、死者が甦って生者を襲うことなど、絶対に起こらない。他の滅亡要因は過去の経験をブローアップさせたものとして予想できるのだが、ありえもしないゾンビ災厄は人間の想像力に頼るだけでは映画として限界がある。誰も死後の地獄を見たことがないから、これまで地獄の責め苦は生きたまま皮はぎとか、針の山とか、血の海とかのように、分かりやすい表現が使われていたのと同じことだ。

表現がソフトになったことで、せっかくの超大作が「ゾンビ作って魂入れず」になってしまったのは非常に残念だ。






題名:ワールド・ウォー・Z
原題:WORLD WAR Z
監督:マーク・フォスター
出演:ブラッド・ピット

法王の銀行家 ロベルト・カルヴィ暗殺事件

2011年09月25日 | ★☆☆☆☆
日時:9月25日
映画館:広島市映像文化ライブラリー(イタリア映画特集)
パンフレット:プレスシートスタイル300円

ロベルト・カルヴィ事件とは「マンガ日本経済入門」とか、あと何といっても「ゴッドファーザーPart3」で描かれたバチカンとつながりの深かった銀行頭取、カルヴィがロンドンで死体で発見された事件である。

その事件を現在(製作は2002年)分かっている事実を元に再構成したのが、この映画である。

ただですら分かりにくい金融犯罪を映画にするのである。フィクションだった「ゴッドファーザーPart3」でさえ事件の背景が分かりづらかったのだから、上手くまとめるか、かなり脚色しないと、付いていけないのではないか?

実際、その通りだった。
もう開幕15分で事態が見えない。カルヴィがバチカンの一部と絡んで、不正に手を染めていることは分かるのだが、あまりに多い登場人物それぞれの立場が全然、分からない!(分かりにくさには、司法・金融制度の違いやバチカンの大きな存在も起因している。)

かっての日本映画のようにナレーションと字幕で事細かに説明が入るようなこともなく、どんどん話が進む割に、ストーリーが整理されている感がなく、真実が明らかになるスリリングさとか悪事が破綻する負のカタルシスもない。

飛び交うのは説明くさいセリフと犯罪の証拠となる文書(=紙切れ)なので、映像としてとても持たない。

また、どんなタイミングで挿れられているか判断に苦しむピノ・ドナッジオの音楽もイライラするだけ。とても21世紀に入ってからの映画とは思えないセンス。

主演のカルヴィも追いつめられて逃げ回るだけで、威厳が感じられない。元々、大銀行の頭取だった人間がそんな羽目に陥るというところにも面白味があると思うんだがな。

やはり、金融犯罪を映画として伝えるのは限界があるな。犯罪の本質を絵にできないもんな・・・。

プレスシートがあるってことは、一応、日本公開された(2003年)んだろうけど、相当、事件に詳しいか、イタリア映画なら何でもOKという人でないと楽しめなかっただろう。ワタシでさえ、楽しめなかった・・・。







題名:法王の銀行家 ロベルト・カルヴィ暗殺事件
原題:I banchieri di Dio - Il caso Calvi
監督:ジュゼッペ・フェッラーラ
出演:オメロ・アントヌッティ、パメラ・ヴィッロレージ、ジャンカルロ・ジャンニーニ、ルトガー・ハウアー


ラスト・ターゲット

2011年08月04日 | ★☆☆☆☆
日時:8月2日
映画館:シネツイン新天地
パンフレット:プレスシート300円。

ジョージ・クルーニーがイタリアの田舎に隠居した殺し屋を演じる・・・というストーリーだけで、是が非でも観たくなろうというもの。

で、事前に原作小説「暗闇の蝶」を読んでおく。派手さこそないものの「陽光あふれ、自然豊かなイタリアの田舎町の美味い酒と食事」「神父をはじめ気のいい地元住民との交流」「バイト娼婦とのささやかな恋愛」「伝説的な改造銃の名工」「裏社会の住民ならではの猜疑心あふれるモノローグ」・・・どこを読んでも、感性をくすぐられ、背中がゾクゾクとしてくる。

小説のおいしい部分を全部すくいあげることは、たぶん、難しいだろうと思っていたし、ドンパチな映画にはなりそうもない。それでも、「イタリアでの隠居生活が美味しそうで素敵!」とか「銃改造のプロセスがマニアック!」「バイト娼婦との年の離れた恋愛が切なくて、いい!」みたいな、(例によって)偏った楽しみ方が出来そうな気がしていた。

さらにアメリガ版のポスターがカッコいい。60年代のヨーロッパ映画を思わせるデザインと色使い。

それがどこをどうしたものか・・・映画の方は、全然、おもしろくない!

一言で言うなら、全編中途半端。何一つ魅力的に見えないんだな。小説の描写にある楽しさのエッセンスをとらえきれず、表面的になぞっただけに思える。

ジョージ・クルーニーも不健康に顔がむくんでしまい、カッコいいはずのシーンは怪しく、不細工なシーンはよりブサイクに見えてしまう。

劇中、TVで「ウエスタン」が放送されるシーンがあり、食堂のオヤジが「セルジオ・レオーネ、イタリアの監督さ」と教えるシーンがあるのだが、それもそこで終わり。
エッエッエッ!?どんな意味があったの?(マカロニ的に)

この映画がイタリア映画だったら、また違っていたんだろうな。パンフレットが作られなかったのも、むべなるかな。

ところで、バイト娼婦を演じるのはヴィオランテ・プラシド。あのミケーレ・プラシドの娘なんである。ビックリ!






題名:ラスト・ターゲット
原題:The American
監督:アントン・コービン
出演:ジョージ・クルーニー、ヴィオランテ・プラシド、パオロ・ボナッチェリ


エクスペンダブルズ

2010年11月06日 | ★☆☆☆☆
日時:11月6日
映画館:TOHOシネマズ
パンフレット:A4横版800円。主要キャストのインタビューのほか、キャストの出演映画一覧や日本独自の背景設定、杉作J太郎の対談、エンドクレジットのフル掲載など、映画同様、ムダに充実した1冊。(笑)

スタローンとドルフ・ラングレンも来日した、往年の肉体系アクションスターが総出演する「だけ」の傭兵部隊映画。とにかくヒネリがなさすぎる直球勝負。脳ミソまで筋肉ってヤツですね。

【以下、ネタばれあり】

とにかく、ストーリーも描写もいい加減で、そういった意味では80年代のワンマン・アーミーものの雰囲気を時代を越えて伝えている。(笑)

傭兵部隊が攻略するのは200人の軍隊を持つ人口6000人の小島なのだが、それってそこらへんの町くらいの大きさじゃないの?

この島に何か戦略資源でもあるのかと思いきや、あるのは荒れたコカ畑だけ。誰が何のためにこんな島を欲しがるのだ?

200人と言っても敵が持っているのは、トラック2台と数台のSUVだけ。戦車・対地ヘリとまでは言わないまでも、装甲車の1~2台持ったせろよ。さもないと、勝負にならない。(大砲1つないのに、砲弾だけはある。)

それでも、わざわざ現地に事前偵察も出向くのだが、そこで得た情報レベルはグーグル・アースでも分かるだろう!

赤いベレー帽の精鋭部隊もいて、一目で「精鋭だ。」と見抜くのだが、やっていることは地元住民の露店をひっくり返すだけ・・・。そこでおもむろにSUVから降りるのが、悪の黒幕エリック・ロバーツ。そんな些事の陣頭指揮をするな!

これを5人の軍隊がバカ正直に真っ正面から攻める!適当にプラスチック爆弾を張り付ける!ここで、外部への通信機関を破壊するとか、重火器を先につぶすとか、アンチマテリアルライフルのスナイパーが配置されているとといった戦術面の描写でもあれば、面白味も増すけど、そんなことも一切無し。ブランアン・G・ハットンの「荒鷲の要塞」「戦略大作戦」のカッコよさの爪のアカを煎じて飲ませたい。

この手の傭兵ものの面白さの1つは、必要に応じたプロを集めるプロセスと、そのプロの日常生活を描くことにあると思うんだが、当然、そんな描写も無し。日頃からツルんでバイクを乗り回しているようにしか見えない。

フォーサイスの「戦争の犬たち」の面白さは、全体の10分の1にしか過ぎない戦闘シーンではなく、残り9割の実行までのプロセスにあるんじゃないのかい?

ブルース・ウィリスとミッキー・ロークは実働部隊に参加しないのだが、遠方からの側面支援もしない。あんたら、何してんねん!ちなみにシュワルツェネッガーも特別出演するが、スタローンとの2ショットは光の加減が合成くさい。

で、傭兵の悲哀も殴り込みの危機感もなく、「エクスペンタブルズ(消耗品部隊)」と言いながら、終わりまで身内の戦死者ゼロ!オイオイ!

せめて、血しぶき描写(と致死武器描写)を「ランボー最後の戦場」くらい、ムチャをやってくれたら、少しは楽しめたんだけどね・・・。

映画を観てて、思い出した作品がクリストファー・ウォーケンの「マクベイン」とかロバート・デュバルの「ハリー奪還」、アンソニー・M・ドーソンの「コマンド軍団」シリーズってあたりに、この作品の「時代観」と「安さ」を示していると思います。

ところで、この手の映画に不可欠の悪人顔ダニー・トレホが出てないと思ったら、「マチェーテ」で忙しかったんだろうね。(笑)






題名:エクスペンダブルズ
原題:EXPENDABLES
監督:シルベスター・スタローン
出演:シルベスター・スタローン、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ドルフ・ラングレン、ブルース・ウィリス、ミッキー・ローク

アデル ファラオと復活の秘薬

2010年07月07日 | ★☆☆☆☆
日時:7月6日
映画館:シネツイン新天地
パンフレット:B5横版600円。

今や、信用力のないブランドナンバー1、「リュック・ベッソン」。

その最新作は、予想以上の破壊力!脱力系極まれり。スタンプカードの無料招待で観ていなかったら、激怒もんだ。

「Extraordinary Adventure」という映画のタイトルにはあまり使われない単語が示すように、原作はコミック。原作の未見だが、そのテイストがどんなものか、とても気になる・・・。

【以下、思いっきりネタバレ。】

いきなり、ナレーションたっぷりの開幕で、登場人物が次々と説明されるが、実はその辺にあまり意味はない。無駄なシーンの連続。

この後、ようやくアデルがエジプトに登場するのだが、砂漠を舞台にしたダラダラした展開は「レイダース」の二番煎じ華やし頃の作品みたい。この作品の前では「ハムナプトラ」でも大傑作だ。

それからも、脈絡のないストーリーにつながらない登場人物、テンポの悪い展開とイライラさせられること、この上ない。黒づくめの悪の教授が因縁ありげに出てくるのだが、登場するのは最初だけで、あとは本筋に絡まない。明快な悪役の不在に話が盛り上がるはずもない。(演じたマチュー・アマルリックが雰囲気のあるいい役者なだけに不憫だよ。)

この映画のどこが「アドベンチャー」やねんと憤慨していると、脱獄を巡るクドい展開あたりから、ようやくこの映画がコメディ映画だと気づく。ところが全然、笑えない・・・。

なんで5000年の眠りから甦ったミイラがいきなりフランス語が話せんねん!!

せめて美術とか画面の雰囲気だけでも、フランス映画とかヨーロッパ映画の香りがあれば良いのだが、これさえハリウッドに毒されすぎで、面白味のかけらもない。

主演のルイーズ・ブルゴワンはフランスのテレビ局で「ミス天気予報」として、日替わりファッションが人気を博したんだという。
何のことはない、ベッソンが好みの女の子にコスプレ・ショーをさせたかっただけじゃないか!(いつも、そうか・・・。)

まあ、日本で言うなら、NHKの半井さんを主人公に着せかえをして、世界に売れる1本の映画を作るのだから、考えようによってはベッソンは偉大だよ。

いや、半井さんじゃなく、甲斐まりえさんにしておこう。それなら、ワタシもぜひ観たい。(笑)






題名:アデル ファラオと復活の秘薬
原題:Les Aventures Extraordinaires d'Adere Blanc-Sec
監督:リュック・ベッソン
出演:ルイーズ・ブルゴワン、マチュー・アマルリック、ジル・ルルーシュ

G.I.ジョー

2009年08月27日 | ★☆☆☆☆
日時:8月26日
映画館:TOHOシネマズ
パンフレット:A4版700円。

この映画、20年~25年ほど前にあったハスブロ社のおもちゃ「G.I.ジョー」が原作になっている。「G.I.ジョー」といっても着せかえ可能な1/6フィギュアではなく、多国籍特殊部隊GIジョーとコブラ軍の戦いを描いたオリジナル・ストーリーの3.75インチフィギュアの方。

フィギュアは日本でも販売され、TVアニメにもなりました。なんでこんなこと知っているかというと、当時、フィギュアを購入したり、TVアニメを観ていたんですなあ。(多分、大学生のころ・・・)

そのTVアニメはもちろんアメリカ産で、「トランスフォーマー」同様、善悪の組織が戦いながら、犠牲者ひとり出ないというなまっちょろさに、内容はほとんど覚えておらず、その実写版の予告編といっても、CGだらけで触手が動かなかったのだが、製作・監督がスティーブン・ソマーズ!
「ガンメン」「ザ・グリード」「ハムナプトラ」といずれの作品でも「続・夕陽のガンマン」の三つ巴テイストを盛り込んで、話を面白くする監督とあっては気になるじゃないですか。(前作「ヘルシング」でちょっと肩透かしをくらったことは、この際目をつむろう。)

で、作品の方といえば、話はGIジョーVSコブラ軍(正確にはコブラ予備軍なのだが)の善悪対決だけで、肝心の三つ巴テイストが全然ない!ストーリーがちっとも面白くないぞ。無理無理に続編に持っていくオチもどうなんだか。

さらに画面のほとんどが、予想どおりライブ感のないデジタル紙芝居。GIジョーの「基地セット」とかリカちゃんハウスとかって、現実にはないバラバラのスケール感でいろいろなものが詰め込まれているけど、映画もオモチャみたいなプロダクション・デザインにしたらダメだろう。

全体に失望感が漂う中で、オリジナルのキャラを踏襲したザルタン役のアーノルド・ヴォズローや、「ハムナプトラ」つながりのブレイダン・フレイザー(ノンクレジット)、ソマーズ映画常連のケビン・オコナーといった脇役陣にはニヤリ。「トロピック・サンダー」のクソガキ、ブランドン・スーフーもいいぞ。

コブラ軍の戦闘機「ナイト・レイブン」がMIG31こと「ファイヤー・フォックス」にそっくりで、雪原から離陸した上、母国語による音声認識操作なんて仕掛け(←ストーリー上全く意味がない。)があるんだから、大いに楽しくなってしまう。

おまけに、海底要塞や水中戦なんか「007サンダーボール作戦」や「私を愛したスパイ」を彷彿させると思ったら、監督本人もそれをやりたかったとのこと。監督のそういったセンスが大好きなんだよなあ・・・。

ビッグバジェットで老若男女受けを狙った作品じゃなくて、低予算でもいいからマニアックに走って大喜びさせてくれる作品を作って欲しいよ。






題名:G.I.ジョー
原題:G.I.Joe The rise of cobra
監督:スティーブン・ソマーズ
出演:チャニング・テイタム、シエナ・ミラー、クリストファー・エクルストン、イ・ビョンホン、デニス・クエイド

三重スパイ

2008年11月01日 | ★☆☆☆☆
日時:10月31日
映画館:広島市映像文化ライブラリー
その他:フランス映画特集の1本として上映。

舞台は第二次大戦直前のフランス。主人公はパリ在住のギリシャ人女性で、夫は元ロシア白軍の将軍で現在、亡命者からなる在仏ロシア軍人会の重要なポストに就いている。

戦雲急を告げる中、元将軍の夫はフランス、ソビエト・ロシア、ナチス・ドイツなどと水面下で交渉と続けているが、妻には何も知らせない。夫はどの体制のために働いているのか?妻の疑念は深まっていく・・・というようなお話なのだが・・・・

はっきり言って、つまらん。

一応、史実をベースに脚色を加えたことになっているが、基本的に妻の視点で物語が進行し、夫の将軍が何をしているのか全く描写されないまま、全ての事件と政治状況が夫婦の会話の中で説明される。

緊張する敵対国の間を綱渡りし、一つ間違えれば逮捕・処刑とか事故死を装って葬られる話なのだから、描きようによってはいくらでも面白い話になりそうなものなのに、そういった緊迫感が全然、伝わってこない。じゃあ、何かしらの真実に気付いた妻の身に危険が迫るかと言えば、そういった兆しさえもなし。見た目、不倫中で妻の前でぼろを出さないようにしている男の話と違いがないのだ。

時代背景の説明として当時のニュース映像が流されるが、トハチェフスキーの粛清などある程度、時代背景を知らないとついて行けない部分も多い。これじゃ、事実上、日本公開されなかったのも無理はない。

エピローグで事件の顛末らしいものが語られるが、あまりにも唐突で「結局、それで?」という感じはぬぐえない。

これで「三重スパイ(Triple Agent)」では、ちょっと悲しい。






題名:三重スパイ
原題:Triple Agent
監督:エリック・ロメール
出演:カテリーナ・ディダスカル、セルジュ・レンコ