kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

エクスペンダブルズ2

2012年10月13日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
月日:10月11日
映画館:バルト11
その他:ムービープラス試写会

「奴らが帰ってきた!!」って帰ってこなくてもいいよ・・・の「エクスペンダブルズ」の続編。(ついでに「お前が言うなあ!」も見てね。)

スタローン率いる傭兵部隊が悪いやつらをやっつける!!オープニングから「マッドマックス2」ばりの重トラックで突進し、悪いヤツらを皆殺し。相変わらずだなあ・・・。公開にあわせて「映画は生ビールキャンペーン」をやっているが、生ビールとあわせて観終わるとおなかがいっぱいになるような映画。

【以下、ネタばれあり】

と言っても、ネタばれして困るような話じゃないんだけど。

スタローン部隊の今回の任務は墜落した飛行機からの機密データの回収。ところがヴァンダム率いる悪の傭兵軍団にそのデータを奪われたことから、そのデータ悪用を阻止すべく一戦を交えることになる。って、書いている本人でさえこんなカッコいい映画だったかなと疑うくらい、中身は脳みそも筋肉なドンパチ肉弾アクション。

前作の欠点(といっても欠点だらけなのだが)として悪党が弱っちすぎることがあったが、今回の敵は人数も多ければ重武装、なんとT-72戦車まで持っている。滑空砲を撃つT-72、刺激的だなあ。

書き出すのも面倒くさいオールスターな顔ぶれで、実は途中から欠員がでるのだが、そんなこともあんまり気にならない。スタローンどもがピンチになれば、銃仕掛けの神とばかりに応援要員が登場。なんとご都合主義!

そのひとりが「ローンウルフマックイーン」こと一匹狼チャック・ノリス。昔っからもっさりしたオッサンだったけど、もっさり具合には一層磨きがかかっている。で、その登場シーンには、ワタシたちに馴染みの深いある名曲がかかるのだが、チャック・ノリスにあの曲は合わ~ん!!(というか、曲への冒涜だよ。)

ラストちかく、ヴァンダムが「ゲストが来るのが楽しみだ。」ってセリフがあって、悪の黒幕でノンクレジットの誰かが出るのと楽しみにしたが、それは無し。この顔ぶれで悪役を張れる存命のロートル・・・もとい同世代といえば、ドナルド・サザーランドとかマイケル・アイアンサイドくらいかなあ。

ところで、20年くらい前、アンソニー・M・ドースンの「コマンドー軍団3」の高所からロープで滑空して脱出する場面に、ウチの父親が「どうやってロープ張ってん?」とツッコんでいたけど、まさに同じツッコミをする場面に懐かしさと失笑を覚えたのでした。(笑)







題名:エクスペンダブルズ2
原題:The Expendables 2
監督:サイモン・ウエスト
出演:シルベスター・スタローン、ジェイソン・ステイサム、ブルース・ウィリス、アーノルド・シュワルツェネッガー、ジェット・リー、ジャン・クロード・ヴァンダム


エージェント・マロリー

2012年09月30日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)

月日:9月30日
映画館:サロンシネマ
パンフレット:A4変形版600円。
その他:写真は劇場で先着順で配布された「エージェント・マロニーちゃん」。ちゃんとパンチもしています。

本物の格闘技家、ジーナ・カラーノとミヒャエル・ファスベンダーやユワン・マクレガーといった俳優が絡むスパイアクションで、元海兵隊、今はフリーランスの作戦実行屋が、作戦遂行中に命を狙われ、罠にはめられていることに気付く・・・という、何百回も聞いたかのような話。

ソダーバーグという何となく文学青年っぽい監督(偏見)の映画だが、何といっても見せ場はジーナ・カラーノの肉弾アクション。
これまでも強い女アクションは数多くあったのだが、彼女の場合、身のこなしが全然違う。ワタシは格闘技には全く興味がないので、どれだけすごいのか文章にできないのだが、パンチ1つ、蹴り1つにしても、体全体で体重をかけて繰り出していることが素人目にも分かるくらいだ。

かってジュリアーノ・ジェンマがインタビューで、「荒野の大活劇」でプロボクサー、ニーノ・ベンベヌチのパンチが早すぎて、カメラでとらえることができず、ジェンマが「ゆっくり」殴るコツを伝授したって、話をしていたけど、格闘技と映画のアクションは別物だからそれなりのトレーニングをしたのだろうな。(てなことがパンフレットにも書いてあった。)

物語はニューヨークからバルセロナ、ダブリン、ニューメキシコと移り変わり、背景と音楽が相まって、雰囲気は60~70年代のスパイアクション映画のよう。このあたり、当時の映画を愛するソダーバーグ監督らしい。プロモーションにモンキー・パンチを起用したのもある意味、正解。

ところが、このソダーバーグらしいというか、生真面目な作り方が映画を面白くなくしている。作りは上手なのだが、アクション映画としてのケレン味みたいなものがない。最悪の殺し屋もマニアックな技術屋もおらず、味気ないのだ。

さらに、女だてらに主役を張る理由が分からない。たいてい、女性アクションものは家族の復讐とか恋人の復讐とか裏切られた復讐とか(復讐ばっかし)といった明確な理由があるのだが、マロリーの場合、なんで父親の理解も得て命がけの仕事をしているのかが一切説明されない。これが「謎めいた女」なら良いのだが、そうも見えないのも困ったもんだ。

顔もそこそこで、スタイルもよく、アクションは百人力なのだが、同じ路線で突き進んで行くのには無理がありそうな。数年後、「エイリアス」とか「ニキータ」みたいなTVシリーズでゲスト出演してそう。






題名:エージェント・マロリー
原題:HAYWIRE
監督:スティーブン・ソダーバーグ
出演:ジーナ・カラーノ、ミヒャエル・ファスベンダー、ユワン・マクレガー、アントニオ・バンデラス、マイケル・ダグラス




トータル・リコール

2012年08月20日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:8月19日
映画館:バルト11
パンフレット:A4変形横版600円。監督俳優のインタビューほかP・K・ディックの略年表付。

えっ、「トータル・リコール」って、もう再映画化?つい、こないだシュワルツェネッガー版があったばかりじゃん・・・なんて、一瞬思ったのだが、実はシュワ版ももう20年以上前。ワタシも年をくう訳だが、観ている映画は変わっていない。(笑)

シュワ版は、偽記憶が埋め込まれているというP・K・ディック・ワールドより、バンホーベン監督とロブ・ボーディンの毒々しいバイオレンス・ワールドの印象が強すぎた。頭の割れるオバハンに鼻の奥の発信器、ミュータント、地底戦車、血塗れの殺し合いなんか、ちゃんと頭にインプットされている。

【以下、ネタバレあり】

さて、今回は同じ原作をベースに、今流行りの「再構築」とか「リブート」とか「リ・イマジネーション」するのかと思いきや、宣伝を見る限りではあまり変わった様子がない。

これが映画本体の方も実は同様で、結論から書いてしまうと、エンドクレジットにもあるように、シュワ版のまっとうなリメイクなのだ。

火星植民地という舞台設定こそ変わったが、登場人物の名前も展開も一緒。シュワ版でシャロン・ストーンとマイケル・アイアンサイドが演じていた悪役は、ケイト・ベッキンセール一人に集約されているものの、やっていることは同じ。(余談だが、ケイト・ベッキンセールって、この手の映画に本当に便利な女優さんになってしまった。(笑))

ある意味、こんな直球なリメイクって最近珍しいくらいだ。

頭の割れるオバハンはどうなの?とみんな思っているが、あのアイディアはちゃんと活かされているし、そのシーンにはソックリなオバハン(もしかして、同一人物?)が登場し、ニヤリとさせられる。マイケル・アイアンサイドの腕チョンパもちゃんと再現されている。

その辺の懐かしい描写はアクセント程度にとどめられ、当然、前作を知らなくても楽しめる映画になっているが、ディック原作の本来の面白さであるはずの「自分が別の誰かである混乱」とか「偽物が本物を凌駕する恐怖」といったものは、シュワ版同様、薄いと言わざるをえず、やっぱり派手な画面づくりに終始してしまっている。

ディックばりの小道具の使い方なんて上手いと思うのだが、ありきたりの未来都市なんかデジャビュ感さえあり、アクションシーンのコマ割もなんだか歯切れが悪く、メリハリがないまま、ガンガンに流される音楽も途中から辟易とさせられる。

もうちょっと違う中身を期待したんだけどね・・・。リコール社で新しい記憶を注入しなければならないのは、映画そのものだったようだ。

ところで、ディック作品の映画化の時はいつも触れるのだが、早々に「高い城の男」を映像化すべし。チルダーン君。





題名:トータル・リコール
原題:Total Recall
監督:レン・ワイズマン
出演:コリン・ファレル、ジェシカ・ビール、ケイト・ベッキンセール


ネイビーシールズ

2012年07月02日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:6月27日
映画館:TOHOシネマズ緑井
パンフレット:A4版700円。

現役ネイビーシールズ隊員が出演。が売りの本作。平日の初回(9:15!)なのに、それなりに観客が多い。

最近、ディスカバリーチャンネルの「米軍のエリート部隊」を見るのが楽しく、強靭な精神と肉体+システマチックな訓練課程でエリートが養成されていく様がいかにもアメリカ的だった。

ワタシの世代で「ネイビー・シールズ」といえば、チャーリー・シーンとマイケル・ビーンの映画なのだが、なぜかゴルフ場でカートを暴走させて悪ふざけしているシーンに「こいつらアメリカ人め。」と思ったことしか覚えていない。それくらい、同じような映画ばかり見てきたからだろう。(笑)

今回の映画も同じような話で、テロ組織の壊滅に向かう話なのだが、さすが米軍の協力があって、話も南米・オーストラリア・メキシコ・アフリカと世界各地で展開する。

部隊創設とか訓練とかプロローグ的な前戯はまったく無く、いきなり任務に突入。機材に装備は全て本物(らしい)なので、映画用プロップに比べて一回りデカイ。画面の重量感が全然違う。(って、「博士の異常な愛情」みたいな深読みはしないように。)

お話としては、テロ組織から人質を奪還したら、より大規模なテロが計画されていたことが発覚、その阻止に動くことになる。
アメリカ本土に入ったら、ネイビーシールズの管轄外になるんじゃないのか?と思っていたら、ちゃんと(?)国外で戦うような展開になる。んだけど、いかに言っても隣国に無法地帯が存在するのは無茶。1チームが1つの事件を全部担当することなんてないだろうし、主役をリアルに描こうとするあまり、ストーリーがどんどん荒唐無稽になっていくというのもジレンマだな。

どうやってもネイビーシールズの方が強いし、シチュエーション的に不利な状況に持っていくにも無理がある。世界の警察官なんて良いこと言っているけど、やっていることはかなり際どかったりする。結局、最初の人質救出劇のくだりが一番リアルでカッコよかったり。まあ、チェーンガンの恐ろしいこと。

もちろん武器・装備の扱いは手なれたもので、色々と感心させられる。実戦と経験から積み上げられた動きって、なんにせよ説得力があるし、美しい。

本当かどうかは別にして、現役のネイビーシールズなので、演技らしい演技はなく、オフタイムは映画にありがちな悪ふざけや軽口の言いあいもなし。子育ての不安と苦労話ばかり聞かされる。そんなとこがリアルなのも良し悪し。(笑)

ところで、映画に出演する隊員はどうやって選抜したんだろうね。広報要員がいるんだろうか?





題名:ネイビーシールズ
原題:Act of Valor
監督:マイク・”マウス”・マッコイ、スコット・ワウ
出演:ネイビーシールズ隊員、ダンカン・スミス、ロゼリン・サンチェス


[●REC]3 レック3 ジェネシス

2012年06月12日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:6月11日
映画館:サロンシネマ

スペインの一人称カメラ撮影によるホラー映画「REC」の第3弾。とバルセロナのアパートメントが舞台だったが、今度は結婚式場で狂犬病悪魔憑きウィルスが猛威を奮う。

結婚式といえば手持ちカメラには絶好のシチュエーション。しかし、どうやって話を持っていくのかと思いきや、まどろっこしい説明はナシ。見事な(?)展開で一瞬にして、惨劇に切り替わる。

さすがに(TVクルー)・(SWAT)とは違い、ビデオカメラを持っている必然性がないから、今回は一人称カメラは途中まで。それじゃ「REC」シリーズじゃないじゃん!と言いたくもなるが、まあ「クローバーフィールド」みたいに「この状況でカメラ撮影しているというものどうなのか・・・。」と冷めてしまうよりいいかも知れない。

また、舞台が結婚式場とのアパートメントにあったおどろおどろしい雰囲気が失せてしまったのは残念。

その分、悪魔憑きといった宗教ホラー色が前面に出され、鏡に写る悪魔とか古式ゆかしい教会とか神父の祈りとかスペインらしさが良い感じ。甲冑武装なんてナイス・アイディア!(笑)

「REC」シリーズの魅力といえば、やかましく身勝手でリアクションが激しく、全く感情移入ができない登場人物たち。(笑)今回もそんな連中が半ば自滅するのを楽しみにしていたが・・・本作のテーマは「愛」。定番のキャラクター連中が鳴りをひそめ、まっとうなラブラブ新婚カップルが主役ってあたり、安心するような、おもしろくないような・・・。イヤな人間ですね、ワタシって。

ヒネリの効いたラストも嫌いじゃない。シリーズいずれも80分と短めの作品が続いたので、ぜひ、このまま「RECアポカリプス」として、スペイン全土が絶滅するまで続けて欲しいところです。(って、「エル・ゾンビ」シリーズみたい。(笑))





題名:[●REC]3 レック3 ジェネシス
原題:[●REC]3 GENESIS
監督:パコ・プラサ
出演:レティシア・ドレラ、ディエゴ・マルティン


バトルシップ

2012年04月29日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:4月26日
映画館:ワーナーマイカルシネマ


【ウチの奥さんが持っていた「バトルシップ」こと「レーダー作戦ゲーム」。昭和40年代頃のもの。】

この映画、昔あった「レーダー作戦ゲーム」が元になっている。「B-5!」「撃沈!」って、あれですね。

【以下、ネタばれあり。】

リムパック演習中のハワイ沖にエイリアンの攻撃鑑が着水。エイリアン側はバリアを使い、オアフ島を封じ込め、地球侵略の橋頭堡づくりを開始。バリア内に残された日米の駆逐艦(イージス鑑)3艦はエイリアンの攻撃艇4艦に戦いを挑む。

エイリアン側は星間航行を果たし強力なバリアー技術を持つ割に、兵器は実質、火砲と遅延信管とえらくローテク。テクノロジーの進化にムラがある種族で、核兵器さえ持っていないので、戦いはミサイルと大砲の撃ち合い。エイリアンも最近の映画には珍しくほぼヒューマノイド型。スキンヘッドにあごひげが生えていて、海賊船の乗組員のよう。いつの時代の話だ。(笑)

ボッカンボッカン撃ち合い、大爆発が続くのだが、そこに全然、重量感がない。目の前でイージス艦の主砲が発射され、後ろにメインマストが倒れてきても、登場人物はよろめくことさえない。単に演出ミスというより、あえてリアリティを排しているかのようだ。

実際、元になっている「レーダー作戦ゲーム」にしても、1発食らえば500人くらい犠牲になっているはずで、一艦沈むごとに何人死んだかなんて考えたら、とても遊べない。

だから、映画でもリアリティは期待せずに、ゲームとして楽しまなくてはならない。


【駆逐艦サンプソン撃沈!の図】

日米の手持ちの艦艇もなくなってしまった後、起死回生の手段が、退役して記念館になっている戦艦ミズーリの再利用!しかも、操船・戦闘するのは当時のOB船員たち。

ちょっと待てい!!お前ら、戦艦を舐めとんのか!そんなこと短時間でできるかあ!!なんで燃料と火薬を常備してんねん!!
などと思っても、口に出すのは野暮。まともな発想のワタシは思いもつかなかったし、これでちゃんとタイトルの「バトルシップ(戦艦)」にもつながる。劇中のセリフ「現代じゃ古びた戦艦より駆逐艦の方が強いのさ。」も活きてくる。

なにしろ、今の世の中で戦艦が総火力をフルで使う映像なんて、見ることができない。第二次大戦でもほとんど起きなかった映像をCGとはいえ楽しむことができるのだから、ある意味貴重な映像。こんな形で旧日本海軍の巨砲鑑の夢が叶うのは、何となく皮肉だ。

シーンごとのつなぎに説明不足で演出として首をかしげるようなところもあるし、リアリティはゼロ。普通だったら「観たワタシが悪かった」評価なのだが、割り切ってしまうと「バトルシップ」の名には恥じない映画。米海軍が全面支援しているのも当然だな。






題名:バトルシップ
原題:BATTLESHIP
監督:ピーター・バーク
出演:テイラー・キッチュ、浅野忠信、リーアム・ニーソン



マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙

2012年04月21日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:4月19日
映画館:八丁座

アカデミー賞の授賞式で、「また、こいつが出てきたと思われるでしょうが・・・」なんて、コメントをするメリル・ストリープ。普通、そんなこと言えませんよ。もう宴会での乾杯の発声と同じレベル。(笑)

さて、メリル・ストリープが演じるのは、ワタシたちの世代ではロジャー・ムーアの007の大ボスだったサッチャー首相。

国会議員当選から若干、認知の入った現在までを描くのだが、チャーチルやアイゼンハワーならまだしも、戦時中でもない政治家を描いてもそんなにおもしろくない。一本調子になりそうなところを過去と現在を行き来させ、主人のサッチャー氏の幻影(亡霊?)を登場させて、話にメリハリをつけている。

言うまでもなく、メリル・ストリープが秀逸で、サッチャーとメリル・ストリープの真ん中、メリル・サッチャーが実在の人物に思えてしまう。特に老後の現在の姿は特殊メイクもあって、リアル・サッチャーとの違いが分からない。

ところが、メリル・ストリープの演技ばっかりに気をとられているので、あまり意識しなかったが、結局のところ政治家としてのサッチャーの原動力が何だったのかは、語りきれていない。家族への愛なのか、野心なのか、愛国心なのか、男性中心社会に対する反発なのか。いずれも語り尽くされたテーマだし、描写も通りいっぺんなので、指導者の姿としてグッとくるものがない。

そこまで描こうとすると、2時間足らずの映画ではなかなか難しいのかも知れない。「ケネディ家の人々」のようなTVミニシリーズの方がキャラクターが際だつかな。

映画の舞台も室内が多く、群衆シーンもほとんどが記録映像。金がかかっていないよな。

そう思うと、主演がメリル・ストリープでなく、ほかの女優さんだったら、この映画は成立しないか、ずいぶん格の落ちる映画になったことだろう。
メリル・ストリープのメリル・ストリープによるメリル・ストリープのためのザ・サッチャー・ショウ!(笑)






題名:マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙
原題:The Iron Lady
監督:フィリダ・ロイド
出演:メリル・ストリープ、ジム・ブロードベント


戦火の馬

2012年03月09日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:3月7日
映画館:八丁座
パンフレット:A4横版700円。ページ数も多く充実の内容。

タイトルの通り、南北戦争中、南軍の金塊を運ぶ馬車隊を描く・・・って、まだマカロニ大会から抜けきっていませんな。(笑)

第一次大戦を背景に一頭の馬の数奇な運命と人との友情を描いた、スピルバーグの映画だが、非の打ち所のない完全無欠の作品。

イギリスの田舎で生まれた馬のジョーイは、やがて徴用されフランスの戦場へ送られる。激戦の後、ドイツ軍に捕獲され軍馬としてコキ使われ、またその後・・・と流転の運命をたどる。

ミスターエド(古いっ!!)じゃないから言葉を話せない馬に、感情たっぷりに演技させる演出。馬の心の声まで聞こえてきそう。

そのジョーイに関わる青年、イギリス軍将校、ドイツ兵、フランス人少女と祖父・・・と多くの人間が関わるが、元々名馬の血筋を引くらしく、誰しもがジョーイの魅力に惹かれ、なんとか過酷な境遇から救ってやろうとする。

この辺は第一次大戦だからできる話で、第二次大戦下で敵味方を行き来するバイクの話なんて無理ですね。(「鬼戦車T-34」なんて映画もありますが。)

人間側にもそれぞれに物語が用意され、各々の運命に直面する。各エピソードはそれぞれに深みのある話だが、過度に感情移入することなく、少し距離を置いて描かれる。この距離感が程良くて、ちょうどいい。(ただ、ドイツ人もフランス人も英語を話すのは興ざめ。)

ストーリー展開も全体にダレることなく、それでいて緩急の付け方の巧みさには感服させられてしまう。スピルバーグは本当に映画作りを隅から隅まで理解しているんだなと実感。

画面の作りも美しく、オープニングのイギリスの田園からフランスの戦場、塹壕戦と完璧なまでの絵作り。ワタシ的には言うまでもなく、塹壕のディテールとか鉄条網とかマークI戦車に感動するのですが。(「エンジェルウォーズ」に見習ってほしいところ。)

もう、「どうぞ」と熨斗付きで渡されたかのようなオチも分かりきっているとはいえ、予定調和に涙せずにはいられない。

ただ、あまりにもきれいに整いすぎて、アドレナリンが放出されない。実際の人間もそうだけど、パーフェクトな人より少し個性的でどこかクセがあった方が好きになれるんだよな。

今年の年末「年間ベスト映画は何ですか?」という質問に「戦火の馬」と答える映画ファンは、たぶん話が合わないと思う。(笑)






題名:戦火の馬
原題:War Horse
監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:馬、ジェレミー・アーヴァイン、エミリー・ワトソン


シナイ半島監視団

2012年03月02日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:2月29日
映画館:広島市映像文化ライブラリー

先日の「法と秩序」と同じくフレデリック・ワイズマンのドキュメンタリー映画。

1970年代の第四次中東戦争後、シナイ半島に設けられた非武装地帯で活動するSFM(Sinai Field Mission)を取り上げる。

監視団とはいえ、構成メンバーはアメリカの公務員と監視電子機器を運用するテキサスの受託会社の社員。イスラエル軍とエジプト軍が対峙する戦略拠点で緊張した日々が続・・・かないんだな。これが。

どちらの軍も威嚇行為をすることもなく、砂漠のど真ん中のプレハブで、通過する車の台数チェックが主要な仕事となる。「法と秩序」の緊迫感とうってかわって、全体にけだるさが漂う。

歓楽街もないプレハブのキャンプでは、ささやかなゲームとテキサス流のパーティー(カウボーイブーツになみなみと注いだビールを回し飲みする。)が数少ない娯楽となっている。ちなみにキャンプでは絶えず「アテンション、アテンション ○○○さんは○○○に電話してください。」と放送が流れるが、これが「MASH」を彷彿とさせる。

トラブルも発生するが、ドンパチなどではなく、護衛任務に2分間のロスがあっただの、監視所内の規則が守られていないだの、役所的な事務仕事ばかり。

キャンプ内でカントリーバンドが編成されるが、「こんな最果てのつまらん仕事は何とかしてくれ。」と管理職が歌うぼやきソングがおかしくも悲しい。

ただ、つまらない退屈な映画かというとそうでもなく、演出効果を出すために「やらせ」とは言わないまでも、かなり「仕込み」が入っているし、編集も細かい。映像技術的なことは脇に置いておいても、モノクロ映像の砂漠をランドローバーとか大型トラックといった年季の入ったヘヴィー感あふれる車両がのっしのっしと走る映像だけで、充分楽しい。(←特殊な楽しみ方)

ところで、フレデリック・ワイズマンのドキュメンタリー映画には米軍の教練がテーマのものもあるらしいが、広島では上映ナシ。なんでやねん・・・。







題名:シナイ半島監視団
原題:Sinai Field Mission
監督:フレデリック・ワイズマン


デビルズ・ダブル

2012年02月28日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:2月27日
映画館:シネツイン新天地
パンフレット:A4版600円。金で発色させたケバい表紙。金かかっていそう。

サダム・フセインの長男、ウダイの影武者をやらされた男を描く、実話に基づくサスペンス・ドラマ。

時の権力者に影武者がいるというのは、世の常だが、主人公のヤティフもウダイに似ているということでこの仕事を命令される。ウダイとラティフはドミニク・クーパーの1人2役だが、外見が似てはいるが、それでもどこか微妙に違う、ほどよさが絶妙。

このウダイがアホのボンボンそのもので、セックス・バイオレンス・アルコール・ドラッグとやりたい放題。当然、普通の感性のラティフはついていけない。逃げたり、暴言を吐いたりとささやかな抵抗を繰り返すが、身代わりとして死ぬ思いをした後に一矢報いる計画をたてる。

Rー18指定なのだが、ちょっとした暴力描写とエッチがあるだけで、Rー15でもいいんじゃないかと思ったのは、ワタシの感性が麻痺しているせい?
このウダイの愛人役を演じるのは、リュディヴィーヌ・サニエ。(発音できん・・・)たれた目元にツンとした口元、しゃくれぎみではっきりした顎のラインと完全にワタシ好みの顔立ちで、「ジャック・メスリーヌ」でも気になっていた女優さん。脱ぎっぷりもいい。(笑)

ドミニク・クーパーの一人二役がよくできていて、同じ俳優だと意識させない。撮影現場では、どうやって集中して、テンションを維持したのか、メイキングが気になる。

ただ、ウダイだけ狂っているようにしか見えないが、ラティフが逃れられないのも、ウダイを支える体制があってこそ。徹底した国家体制があまり描かれないから、ウダイとラティフ、その周辺だけで、話が小さくまとまってしまっているところが残念。リー・タマホリの演出が手堅いだけに、話の展開に奇想天外さがなく、少し肩透かしだし、大局的に描く予算がなかったことも見え隠れする。(話の幅を大きくしたら、焦点がぼけたかも知れないが。)

ウダイの周りは、ピシッとしたスーツと拳銃を身につけた情報機関のオッサンばかりなのだが、そこが魅力的。ワタシはこういう警察国家で、下級官吏になるのって、案外、性にあってそうだ。(笑)

ところで、友人が「向こうの人って、みんな似ているから、影武者を探すのもラクそう。」って言ってたが、イラクからワタシたちを見たら、同じことを思うだろうな。






題名:デビルズ・ダブル
原題:The Devil's Double
監督:リー・タマホリ
出演:ドミニク・クーパー、リュディヴィーヌ・サニエ