日時:4月3日
映画館:八丁座
映画館:八丁座

ローマ法王が逝去された。次の教皇を選出するために教皇選挙、コンクラーベが実施される。というそのままの映画。
教皇は約200人の枢機卿の互選で選ばれ、外の社会から完全に隔離された環境で、ひとりの枢機卿が2/3の得票を得るまで選挙は続けられる仕組みとなっている。この選挙運営を仕切るのが、前教皇によって主席枢機卿に指名されていたローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)。
有力な候補者として、ローレンスと同じリベラル派のベリーニ、保守派で前教皇にも近かったトランブレ、アフリカ系のアデイエミ、保守強硬派のテデスコなどが名を連ねる。
皆、神に仕える身であるため、不法行為など行われるはずもないのだが、カソリック教会最高の権力者ともなれば、そうもいかず野心が表に出て、足の引っ張り合いが表面化してくる。ローレンスは表向き中立な立場を取りながらもベニーニを応援しているが、ローレンスに投票する枢機卿がいたことから票が割れてしまう。さらに特定の枢機卿に関するネガティブ情報が入り、その扱いに苦慮することに。
管理職とか複数の人の間で調整ごとをしたことがある人なら、胃が痛くなるような展開が続くが、渦中のローレンスの心情を表すのが、ちょっと画角や構図のずれた不安定なカメラワークと、クローズアップと短いカット割りが繰り返される編集。映っているものは荘厳で物静かなのに、観ている方はずっと落ち着かない。ちなみに編集の方はオスカー候補に挙がっている。
映画の多くはローマで撮影されているようだが、さすがに投票会場となるシスティーナ礼拝堂でロケできる訳がなく、セットを組んだとしたら、なかなかの力業。
サスペンス映画ではないので、殺人や謎の事件が起きるわけではなく、起きるスキャンダルも想定の範囲内。また、実話ではないので、キャラクター設定がステレオタイプで、どうしても平板な展開になってしまうのはやむを得ないところ。
それでも途中に予想外の事件が発生し、選挙の流れも影響を受け、最後には新教皇も決まる・・・
いずれの枢機卿も「神の教えにしたがい、より良いキリスト教社会を作り上げる」という信念(目的)は一緒なのだが、そのために達成しようとする目標が異なり、そこが軋轢を生んでいくというのは実社会の縮図でもあって面白い。
神を信じているはずなのに、その達成のための手段が先行してしまい、神や教皇の教えに背くことになっていく。好むと好まざるとにかかわらず、手段と目的が転化するあたり、身の回りでもよくある話だ。
重厚な雰囲気で、今の社会が抱える問題も巧みに盛り込んでいるので、
評価は★★★★☆
ところで、最近観た映画と同じテーマも扱っており、アカデミー賞候補のトレンドも垣間見えたりしたな。
題名:教皇選挙
原題:CONCLAVE
監督:エドワード・ベルガー
出演:レイフ・ファインズ、スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、イザベル・アジャーニ
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