kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

1917 命をかけた伝令

2020年02月18日 | ★★★★★
日時:2月16日
映画館:サロンシネマ
パンフレット:A4変形版820円。読み応えあり。

1917年第一次世界大戦下のフランス。
ドイツ軍が後退したタイミングでイギリス軍1個連隊が追撃をかけようとする。しかし、退却はドイツ軍の策略であることが発覚、連隊が反撃で壊滅する前に攻撃を中止させなくてはならない。大至急、2名の兵士が連隊に向けて伝令として出されることになる。

とここまでおそらく10分。そこから2人が戦場の地獄を横断する様がほぼ2時間にわたり描かれる。

予告どおり、ワンカット風に見せながら映画は進んでいくのだが、この緊迫感が素晴らしい。
まず自軍の塹壕から出るまでが延々と描かれるが、ワンカット表現によって当時の塹壕の複雑さとデカさが手に取るように伝わってくる。これまでのWW1映画ではできなかったことだ。

全身泥だらけになりながら、鉄条網をかき分けていき、さらに着弾跡のクレーターを這いずり回る様など、個人的に緊張感あふれる興奮のシーンが続く。泥の匂いとか服や装備に何かと引っかかる苛立ちが感じられるくらいだ。何時間でも観ていられるぞ。

あくまでワンカット風なので、この辺でカットを切り替えたなとか何となく分かったりするのだが、演出と撮影が絶妙なので、ストーリー展開に撮影技術で1本で二度楽しめる。

また、第一次大戦を再現したロケとプロダクションデザインも見事で、そこだけでも飽きることがない。金も手間もかけた分だけ画面に映し出されている映画はやはりいい。このトーンで「続・夕陽のガンマン」とか「戦争のはらわた」を観ることができたらなあと夢想してしまうぜ。

戦争映画なので当然、死体がたくさん出るが、ほとんどがまぐれのような瑣末な死。劇中、戦場に積み重なった死屍累々も僅かな差で生死が分けられているのだろうし、実際、戦記を読んでいると人の死にドラマチックなものは何もない。そこには戦争の現実があり、その反対側にはそれぞれの人生があったのだと改めて感じさせられる。(ちなみに広島でもWW1ドキュメンタリー「彼らは生きていた」の公開が決定。)

キャスティング的に主役二人には見覚えがないが、コリン・ファース、マーク・ストロング、ベネディクト・カンバーバッチと現代英国エスピオナージュ顔が大集合で嬉しくなってしまう。(三人とも「裏切りのサーカス」で共演しているし、二人なら「キングスマン」とか「イミテーション・ゲーム」でも共演してる。)

敵地が近づく後半になると「レヴェナント」を思わせるサバイバル映画になり、そこも嬉しいのだが、アドベンチャー風味が加味されすぎてちょっと白けてしまう。モーゼルはそんなに命中せんのかい(笑)

この映画に最大の欠点があるとしたら、予告編。すべてネタバレさせている。そのせいであるシーンの緊張感が台無しになっている。もったいない。
その点を割り引いても五つ星満点評価。

ところで、この映画、ユニバーサル配給なので、数年後USJに「1917ライド」が登場するのを少しばかり期待したりして。






題名:1917 命をかけた伝令
原題:1917
監督:サム・メンデス
出演:ジョージ・マッケイ、ディーン=チャールズ・チャップマン、アンドリュー・スコット


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