kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

敵こそ、我が友~戦犯クラウス・バルビーの3つの人生~

2008年11月24日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:11月22日
映画館:シネツイン
パンフレット:B5版700円

コメディ映画「ラット・レース」で、ユダヤ人一家が子どもにせがまれて「バービー博物館」に寄り道するけど、実は「クラウス・バルビー博物館」で見物客はバリバリのネオナチばかりというネタに大笑いした覚えがあるなあ。

さて、クラウス・バルビーといえば、「リヨンの虐殺者」と報じられたナチの戦犯。その辺までは知っていたが、このドキュメンタリーでは、ナチ→CIC(アメリカ軍陸軍情報部)→南米ボリビアの実業家→戦犯という波乱に満ちた人生が、多くの証言で語られる。

ナチの領袖に関する文献を読むとなかなか面白いのは、彼らが非常に優秀な官吏であり、その才能が全く別の方面で発揮されてしまった矛盾なのだ。

端的な例がCICにスカウトされたくだりで、冷戦下、フランスで活動していたCICが「フランス共産党に一番詳しい者は、戦前から彼らと対峙していたナチス・ドイツ以外をおいていない。過去のことはさておき、彼らを活用しない手はない。」という合理性には口を差し挟む隙さえなく、国際政治の暗部を実感させられてしまう。

さらにその才能を南米のボリビアに売り込み、右派軍事政権の樹立に多大な貢献を果たしていくあたりが、一番面白い。(チェ・ゲバラの死も絡んでくる。)

この時代の証言が最も充実している一方、相反する証言も多く、バルビー自身が本気で「第四帝国」の建設を夢見ていたのか、軍事政権の顧問として私財を蓄え余生を送ろう目論んでいただけなののかが、興味深いところだ。

最後にフランスに送還され、戦犯として裁判を受けるが、弁護士がこれまた個性的な人物で最後まで面白い。

特殊な才能と実力に時代の流れが合えば、買い手が現れる現実。しかし、バルビーの最後の一言「世界中が必要としたのに、裁かれるのは私ひとり。これこそ偽善だ。」それもまた、現実なのだ。

ところで、「沈黙の戦艦」を思わせるサントラがなかなかスリリングでいい。欲しいなあ。

題名:敵こそ、我が友~戦犯クラウス・バルビーの3つの人生~
原題:MON MEILLEUR ENNEMI
監督:ケヴィン・マクドナルド

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