kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

高地戦

2013年02月05日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:2月3日
映画館:サロンシネマ
パンフレット:A4版700円

停戦間近の朝鮮戦争。最後の最後の支配地域獲得と戦闘終結を目前にした兵士の恐怖とジレンマと言われて、「勝利なき戦い」とグレゴリー・ペックを思い出すのは、戦争映画ファンか年寄りである。

近代戦争の映画ではなかなか見られない、高地の分捕りあいが迫真のスケールで表現されていると、前評判の高い本作。ようやく広島でも公開。しかも1週間限定、時間は16:20~の1回。観る方も攻撃の機会は一瞬だけだ。

この映画の舞台は架空のK高地。標高約600メートル、度重なる砲爆撃で丸はげになった山肌が連なる・・・。実に素晴らしいロケ地だ!実際には山火事の跡らしいのだが、こんな殺伐とした山が大好きなので、近くにあればすぐにでも登りに行きたいくらい。

と、浮かれていられる訳がなく、この高地で韓国軍・人民軍の双方が血みどろで死屍累々、折り重なる死者が稜線の形を変える死闘を展開する。結論から言うと、近年まれに見る「登場人物死亡率」の高い映画。おそらく95%超えくらい。手持ちカメラは急傾斜を駆け上がる兵士と共に突撃し、いたるところで迫撃砲が着弾する。頂上にたどり着いても、すぐに反撃をくらい、支えきれず、転がり落ちるような撤退が繰り返される。それを定点カメラで取った取られたの争奪戦を数分で描いたり、グイ~ンとカメラを引いて大エキストラによる戦場の惨状を俯瞰したり、戦争映画の見せ方としては、実に良く出来ている。

そこに前中隊長の謎の死、北との内通者の疑惑、敵味方を超えた奇妙な友情、「2秒」と称される必殺のスナイパー、脛に傷あるモルヒネ中毒の若き中隊長、そして最後の12時間と、ストーリー的にはもうてんこ盛りの内容なのだが・・・

盛り沢山すぎないかい。

多分、どのエピソードもそれだけで1本の映画が作れるだけの奥行きがあるのだが、盛り込み過ぎてしまい、話が右往左往している印象を受けてし まう。

戦闘シーンが良いだけに、作為的に感動させよう、涙させようとした場面が足を引っ張っているのだ。それぞれのエピソードの出来栄えは決して悪 くないのだが、よく出来た戦争映画と言うのは饒舌に語るのではなく、観客の想像力によって人間の痛みを感じさせるものだと思う。(現代の観客 はそれだけの想像力を持ち合わせていないという判断があるのかも知れないが)

出来のいい映画なのだが、微妙なところでストーリー配分のバランスを崩しているかのようでもったいない。いくつかのエピソードを整理して、戦闘シーンにもう少し工夫があれば、「戦争のはらわた」「プラトーン」「プライベート・ライアン」級の大白兵戦映画として戦争映画史に残る傑作なりえたかも知れない。






題名:高地戦
原題:THE FRONT LINE
監督:チャン・フン
出演:シン・ハギュン、コ・ス、イ・ジェフン

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