kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

ヴェルナー・ヘルツォーク監督特集

2012年09月09日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)


映画館:広島市映像文化ライブラリー

映像文化ライブラリーのおかげで、広島市中にクラウス・キンスキーがにらみを効かせるチラシが置かれているなんて、ある意味、異常事態。(笑)

今回、どの作品もクラウス・キンスキーが登場しており、おそらくキンスキーをスクリーンで見ることが出来るのは最後になりそうだから、何としても4作品とも見たかったのだが、中でも一番見たかった「アギーレ/神の怒り」がある講座と重なってしまい、泣く泣く断念となった。

ノスフェラトゥ
大昔にTVで見たきりで、「ジョナサン・ハーカーくん・・・」というおどろおどろしい吹き替えが特に印象に残っている。ストーリーは「吸血鬼ドラキュラ」をベースにしており、ジョナサンとミナ・ハーカー、ミナ・ハーカーとドラキュラの悲恋の関係に力点が置かれている。

廃墟と化した古城でのロケは雰囲気たっぷりなのだが、むしろドラキュラを運ぶ船を空撮でとらえたり、ペストで徐々に滅びていく町の描写などの方がヘルツォークらしいのかな。(前半後半で描写のトーンが全然、違う。)

フィッツカラルド
これも以前、TVで観ているのだが、あまり印象に残っていない。というより、蒸気船が山を登るシーンがあまりにもインパクトが強すぎて、その他の場面を忘れてしまっていると言う方が適切。

今回改めて、ストーリーを再認識。元々のストーリーの面白さとロケーションが見事に合致していたことに感服した。こんな壮大なロマン、大人の寓話・・・というかホラ話をペルーロケで実現させてしまう監督の力技が素晴らしい。

もちろん、いつもの狂気を炸裂させないキンスキーも魅力的だし、彼の恋人であるクラウディア・カルディナーレとの、大人の恋模様も素敵だ。(彼女が娼館のマダムってところもいい。)
特にラストのキンスキーの笑顔にはこちらまでうれしくなってしまう。

キンスキー 我が最愛の敵
こちらは以前に映画館で観たことがあるのだが、これもあまり記憶に残っていなかった。どのシーンも初めて観るかのようだ。

今回、ヘルツォーク作品、特に「フィッツカラルド」を観た直後にこの作品を観ると全然、印象度が違う。

例えば、キンスキーとヘルツォークの緊張感あふれる殺気だった関係がスクリーン上にも反映されていたことが、よく理解できるし、それ以上に狂っているのが、ヘルツォークが淡々と語る映画の舞台裏だったりする。チェーンソーで足をぶったぎり、妊娠中の妻が死にかけ、インディオから殺人を持ちかけられる!

当初、フィッツカラルド役がジェイソン・ロバーツで、相棒がミック・ジャガーだった訳だが、確かにキャラクターとしてはロバーツの方が近いと思う。キンスキー的なキャラじゃないと思ったが、逆にキンスキーが演じたことでより個性的な映画になったことも確か。ロバーツではここまでインパクトの強い映画にはなっていなかったかも知れない。

マカロニ・ウェスタン関係のインタビューを読むと、キンスキーに関わったスタッフ・キャストには必ず、「キンスキーってどんな人でしたか?」と質問されるのだが、それもそのはずだ。自己偏愛の固まりで自分が注目されていないと大荒れになるのは、いずこの現場でも変わらず、また気の合った人には別人のように接していたのも同様である。(マカロニ・インタビューでも「キンスキー ちょっといい話」が少なからずある。)いずれにしても、10時間がなり続けられるというのは、ある種の天賦の才能だと思うね。

ヘルツォークの話は、正直、まとまりがなく、あっちに行ったり、こっちに行ったりしている感が拭えないのだが、その複雑な心境がそのまんまキンスキーとの関係、もっというならキンスキーそのものを表しているのだろう。天才同士が付き合うのはなかなか大変なのだ。

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