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やまめの庭つくり

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桑原邸

2012-06-20 | 庭園見学
日本庭園の観賞方法の一つとして,知識研究的なアプローチがある,と樹仙堂さんの資料にはあります.

庭園の成立した時代や成立の過程,その背景となる当時の文化,今日までその庭園が辿った歴史,庭園の様式や手法上の特徴などを予備知識として得てからのほうが理解しやすいと.

そして,ただ観賞するだけでも,知識だけでもなく,その庭に隠された作者の思いや造庭に託された「意味」を見極め,共感することがもっとも大切であると・・・・

ふむふむ・・・yellow4

しかしどこまで「想い」と「意味」を庭から感じる・・・ことが出来るのか,なかなか自分では答えを見つけることは難しいですが・・・


今回の桑名方面庭園見学会では,朝,米原駅から合流してバスの中で資料を渡され,非常に細かく調べてくれた知識をにわかで頭に入れて,現地の庭園を結構あわただしく観賞.

最初に訪れた桑原邸は,織田・豊臣の重臣として仕え,さかのぼれば平安時代からの家系図がある家柄で,代々農民を統率する,別格の勢力を持った郷士だったそうです.



建物は1733年に火災で焼失し,その後新築されたのが今の建物だそうです.
1800年頃と1886年以降の増築した分もありますが,今も桑原さんはここに住んでいらっしゃいます.

実際に生活の場として使われている築200年近い建物の中を見ることが出来たのは初めてのことです.


upこの長屋門は築450年だそうです.

奥様が家の由来について案内をしてくれたのですが,博物館のように,古美術品や家具調度が置かれています.

その中で,ライオンの置物なんて当時珍しかったのではと思い,いつ頃のものなんでしょうかと聞いてみたところ,

「入手したのはたぶん明治の頃なので,100年前くらいでしょうか,この家では新しいものですね.」

というお返事が帰ってきました.
100年=新しいといわざるを得ない歴史がここ桑原家にはあるんです.





だいぶ旧家としてのしきたりも時代のならいで少なくなってしまっているけれど,やはり,お盆やお正月には当主のみに課されたお役目が残っているとのことです.

普通の人と何も変わらない生活をしているとおっしゃっていましたが,日々,400年の歴史を感じる建物の中で暮らし,先祖が武芸を磨いた場所を見,苔むして時が止まったようなお庭を目にし,近隣地域のつながりも気の遠くなるような長い時を共有してきた,そんな歴史を紡いでいる場所なんだなぁ・・・.

当時の生活や価値観の一端に触れさせてもらえたような気がします.


しかも,武士の家・・・

らしいところが各所にあって,当時の生活が忍ばれました.



廊下に名前のわからない武器のようなものがかけてあるのですが,天井が低いので,背の高い人は要注意.

頭に刺さってしまいそうでしたaliensymbol5



痛そう・・・



弓の練習もしたんですね.



ちなみに,こちら,本玄関.

当主とお客様しか入れないところだそうです.



お白洲のような雰囲気・・・



ちょっとミーハーな情報としては,この場所で映画「蟲師」や,ドラマ「華岡青洲の妻」の撮影を行ったそうです.

田中好子さんがきれいでしたよ・・・と,当時のことを懐かしそうにお話ししてくださいました.



こんな感じで色々なものを見て,聞いて,その場に佇んで,雰囲気を感じて,それがちょっとずつ自分の中に静かにつもっていく・・・のだとすると.

いつか,庭作りや庭園観賞のときに,何かのアイデアや,インスピレーションが生まれるかも.

なんて.

まだまだ難しいことばかりです.





桑名庭園見学

2012-06-19 | 庭園見学
5月20日に,去年も参加させていただいた金沢の庭師,樹仙堂さん主催の庭園見学会に参加してきました.

今年は岐阜県大垣市の郷士,桑原邸と,蛤で有名な三重県桑名市の豪商・実業家の,東諸戸邸と西諸戸邸,昭源寺庭園を見学してきました.

去年と同じく,レジュメは大変しっかりとしたものを配られて,庭の説明はもちろん,いえ,それよりも多く家の沿革,建築の説明,歴史的な変遷など,事細かに書いてあります.

下調べとか,資料づくりがとても大変だと思うのですが,そのおかげで後日になっても改めて勉強することができます.

ありがたいことです.



まず,岐阜県大垣市上石津町の桑原家庭園は,江戸時代末期(寛永12年,1800年),主屋増築の際に土地造成のために作庭されたと推定されるそうです.

「築山庭造伝」後篇の「真之築山之全図」に基づくものと考えられている,築山池泉観賞式庭園です.

中央に池があって,左右に滝が組んであり,右は山からの水を落とし,左は三段落ちの枯れ滝になっています.

写真は座敷から庭を見下ろしたところですが,右から順番に見ている景色と思ってみてください.


右側の滝が奥に見えます.太いスギが建物近くに迫っているので,庭の雰囲気は奥深い山のようです.

中央の池は底の土が自然に透水してしまうため,現在は水が溜まっていない状態です.残念・・・
ここに水があれば,苔や大木の緑と水,石の三位一体,幽玄の世界に導かれるような気がするかも知れません.



up中島の右側には,かなり朽ちかけている木製の橋が見えます.



部屋から庭を観ているところは,湿気対策がとても大変なんだそうです.

そう,ここは現在も桑原さんが住んでいらっしゃる生活の場なのです.

むしろ,そういう生活の場に200年以上前の庭がある,その方がすごいことだと思います.






椿山荘庭園を歩く

2012-06-11 | 庭園見学
昨日の日本庭園学会のシンポジウムに出席する前,午前中は去年の震災によって破損していた般若寺の灯篭が半年かけて修復され,新たに三重塔のとなりに設置されたので,見学に行きました.

フォーシーズンズホテル4階から眺める三重塔.その向こうには,昔,早稲田の気持ちの良い田園風景が広がっていたのでしょう・・・

三重塔の向かって左側に般若寺形灯篭(本歌・鎌倉時代後期)が据えられました.ちなみに灯篭はすべて山縣公の死後,庭園を引き継いだ藤田平太郎氏以降の方によって導入されたのだそうです.知りませんでした・・・

皆さんに説明する師匠.パッと見てもどこが修復されたのかわかりにくく,指摘されてみると,なるほど・・・と納得する京都の石工職人技.
灯篭の重量は相当なものなので,沈み込まないように地下にはマツの杭が埋め込まれたそうです.昔ながらの造園の知恵なんですね.


角に石を貼り,掘り直しています.

立派な笠も,震災の時に下から突き上げるような揺れのために落ちてしまったとのこと.割れてしまったそうですが,よぉく見ないとわからないくらいです.


冠木門の近くの無茶庵の前にある蹲踞に水琴屈を設置したそうです.
ひしゃくで水を流してみるとコーーーン,コーーーンと,よく響く音がyellow11

5日前に完成したばかりでまだ一般公開されていないそうですが,そのうち,看板などを立て,公開されるということです.



ご神木の樫の木は,今まで見た中で一番元気がありそうに見えました.



ずっと弱っていて養生中・・・といった感じだったのですが,足元にはタマリュウ(?)がびっしりと植えられ,神々しい空気に包まれているかのようでした.



ご神木とともに山縣公の時代から引き継がれている,古香井(ここうせい)down



未だにここの水は湧水として,豊かに流れ出てきているのだそうです.

十三層塔は,別の場所にあったものを地震による倒壊の危険性を考えて井戸の後ろに移設されてきました.


伊藤若冲が下絵を描いたという五百羅漢が並ぶ園路の分岐にある庚申塔.

昔は野道だったそうで,江戸時代(1669年)に作られ,ずっとここにあったそうです.

うっそうとした谷戸の風景の中を一本の道が通っていたんでしょうね.

不思議な時間の流れを感じます.



この立派な庚申塔の横には小さな石像が.



四方に仏像のようなものが彫られていたように見えます.



人の営みと思い,自然,時の流れ,色々なものが重なって「庭の歴史」になっているんだなぁ・・・・

椿山荘庭園に対して,今までより一層深く知ることができてよかったと思いました.




バラの園3

2012-05-30 | 庭園見学
深谷で2軒オープンガーデンを見学した後,バスは道の駅経由熊谷へ.

口コミの宣伝しかしていない,ル・ジャルダン・サクレ(秘密の花園)に行ってきました.

途中からバスでは行けないほど道が細くなるので,みんなで畑に沿って歩いていくと,かなたにバラに囲まれた家が見えてきます.



近づくとものすごい量のバラの花がフェンス一面をおおっているのがわかります.







外壁に差し掛かると,みんなそこで写真を取り始めるので,なかなか入場出来ませんyellow22symbol6











コンテナも見応えがあり,ただ単にツルバラが咲いているよりもポイントがあることで,その場にメリハリが生まれます.



upツルバラがしだれています.
こんな使い方も出来るんだ・・・と思いました.


このル・ジャルダン・サクレは,個人邸ではあるのですが,オープンガーデンではなく,ちゃんと入場料1000円を支払って見学するローズ・ガーデンです.

1000円は,見学料とお茶・お菓子付きの値段です.

なので,庭園内には,かなりたくさんのテーブルセットが置いてあります.





おとなりのテーブルを気にせず,自分たちだけの庭であるかのような感覚に浸れるように,うまく配置されています.



12メートルはありそうな,巨大スモークツリーが中央にドーーンと立っています.

ちょうど頭上の高いところで花がわんさか咲いていました.

こんなふうになるなら,庭にスモークツリーがあるのもいいなぁkirakira2

自然樹形,いいですね~.





このローズガーデンの特徴は,バラの最盛期2週間だけ庭を開放し,バラの素晴らしさと草花とのコラボレーションを楽しませてくれることです.



バラとほぼ同じ丈の下草系が色々と植えられ,バラの間から顔を出します.




2週間のバラの季節のため,オーナーのGさんは冬に毎年構想を考え,バラの位置そのものも時には変えてしまうほどの凝りようです.



園内は自由行動でしたが,時々すれ違うみんなの声は,

「あ~感動,感動」

「しあわせ~」

どうやら,とても気に入ってしまったようです.



そして,新しく作出されたバラの導入も怠りません.

down‘ポート・サンライズ’



16時近くに団体で行ったのですが,他のお客さんが少なくなっていたため,ゆったりとお茶を飲んで,心ゆくまでバラの庭を楽しみました.

みんなからは,「ここが一番時間を長くするべきだったんじゃない?」
とか,
「帰りたくな~いyellow15
と,残念がる声しきり.




バラの園2

2012-05-28 | 庭園見学
深谷オープンガーデン見学2軒目はP石材店さんのお庭です.

バスを降りると,遠くからでもオレンジとムラサキの対比が鮮やかなバラで壁面を飾っているお宅が見えました.



ご自宅なのですが,石材店をやっていらっしゃるということで,庭の壁面から園路から,門柱,門扉,ガーデンアイテム,すべて石で統一されています.

バラの下の外壁は,ぴかぴかに光っている大きなみがきの御影石です.






個人邸で,この石の密度,なかなか経験できない空間です.



しかも,御影石に囲まれているけれど南国を感じる,しかもバラいっぱいの庭.

とても個性的なのです.

すべてオーナーのご主人が,ただ好きなものを趣味で集めたらこうなった,とおっしゃっていました.

以前は本当にトロピカルな雰囲気だったらしいのですが,3年前に芝をはがし,普通に園芸店で売っているサイズのバラを植えたら石に囲まれている環境が最適なのか,みるみる大きくなって立派に咲くようになったそうです.

これが本当の遠石(赤)外線効果!!



玄関の両脇にいる2体のチャイニーズライオン(中国獅子lion).

ド迫力のこれらの像と,大きなドラセナが植えられているために,みんな南国にいるような錯覚を感じてしまうのでした.

中国から輸入したそうですが,見る人々は勝手に,狛犬がいたとか,シーサーがいたとか,マーライオンだとか思っていたようです.

更に勝手に,ご主人は沖縄の人だから・・・・とまことしやかにデマも流れていたのですから笑えましたyellow11symbol5



夏になると風がニオイシュロラン(ドラセナともいいますが,ドラセナ属ではありません)の葉擦れの音が,本当に南国にいるような気分にさせてくれるんですよ,とご主人.
かなりうれしそうに話してくれました.

downさらに高さ2メートルくらいある石の噴水.

そこに浮かぶロマンチックなバラの花たち.

あくまでもトロピカルです.



高さ150センチ,笠が横に大きく張り出した石灯籠にもバラが巻き付けられ,何の灯籠かよくわかりませんでした・・・

そこで咲いていた薔薇はとてもかわいい花でした




downブルーフォーユー.

濃いムラサキの花は結構沈んでしまって花が目立ちませんが,中心が白いこの花は,他の植物とも結構相性良く自然な雰囲気で,アリだな,と思いました.



downここでもバラは木に登る・・・

庭に樹があったら,是非バラを登らせてみましょうkirakira2

あっっ
でも,樹木の剪定は大変ですねyellow12



downこのお庭にぴったりなバラ.

トロピカルシャーベット.



バラと石の競演をたっぷり堪能しました.

訪れた人たちの中には,

「男らしい庭ねぇ・・・」

とつぶやく人も多かったです.

石の力強さとバラの豪華さがドーーーーンと味わえたからでしょうか.