介護サービスほっと通信

「暖か介護でほっと一息」をモットーにしています。日々の仕事の中から感じたことなどを発信していきたいと思います。

利用者の意向の尊重

2010年08月10日 08時46分23秒 | 介護サービス
「利用者の意向を尊重する」ということは、利用者の意志や考えに沿った思考と支援を展開するということである。それは「したいこと」「したくないこと」に対応することを基本としている。

しかしながらここで明らかにしておかなければいけないことは「したいこと・したくないこと」の定義とその明確化の課程だ。裏返せば「利用者の言ったとおりにすること」とは異なってくるということである。もし仮に「利用者の言ったとおりに支援をしなければならない」というのであれば「もう生きていたくない、早く楽になりたい」と言われた場合、「早く楽になれる支援」を行わなければいけないということになる。

これを理解していくためには「ニーズ(必要性)」と「デマンド(要望)」の違いを理解するということだ。「早く楽になりたい」把握までも要望の域を脱しない。ニーズにはならない。よってそれは意向にはなりえない。

「したいこと・したくないこと」は、利用者がどのように生活をしていきたいのかという目標が明確になり、その目標の達成のために必要な様々な状況や要素を整えていく中から生み出されてくるものである。

「○○を叶えていくためには△△をこういう情況にしていくことが必要で、そのためには□□という手段が一番手っ取り早いと思われるが、いかがか?」
「□□はじぶんにとってはあまり好ましくない。」
「では●●という手段ならどうか?」
「それなら何とかできる」

このようなやり取りをすることによって「意向に沿った思考や支援」が組み立てられていく。

また、利用者の意向と家族の意向の食い違いが最もみられるのは入所系サービスの利用の場面だ。ショートステイを例にとるとわかりやすい。

利用者が自ら望んでショートステイの利用を希望するケースはレアケース。多くは家族の都合が優先されての利用にいたる。
それは家族のレスパイトという理由での利用の場合、なぜ家族はレスパイトする必要があるのかを明確にする必要がある。レスパイトすることによって何をしたいのか、レスパイトによって利用者に何をもたらすのか。それを考えてみる必要がある。

そうすると家族は単に自分が休みたい、介護から開放されたいという思いでショート利用をするわけではない。ショートを利用して休むことで、心身ともにリフレッシュをし、ショート後の在宅生活の支援をまた頑張ろうという気持ちになろうという考えを持ってショートの利用を希望する。
しかしながら利用者はけっしてそれを理解してショートの利用をするのではない。
利用者は家族がそういうので仕方なしに利用を行う。
だから得てして「ショートにはいきたくない、自分は一人でも何とかできるから大丈夫だ」という。そしてここの間で介護支援専門員は「どうすべきか」で悩むことになる。

このような場合、多くは「大丈夫って言っても現実問題大丈夫じゃないから頼むからショート使って」ということになる。

ここですべきことは説得をすることではない。
利用者が大丈夫だと思っているので、家族の休養の期間中に必要になるさまざまな生活上の活動をどのように「一人」でこなしていくのか。
それの何が出来て大丈夫なことになり、何が大丈夫ではないことになるのか。
さらに大丈夫ではないことに対して、介護家族以外の誰がどのように補填していくことが出来るのか。
さらにさらにそれらの検討を行ってもなお残る家族の様々な不安をどう解消できるのか。

これらを明らかにした上で、利用者や家族と一緒に「どうしたらよいか」を検討することが必要になる。
そうすることで理四社はショートの利用をしぶしぶではあるが「納得」しやすくなってくる。

このように「利用者の意向の尊重」と「利用者の言うがまま」ということは異なっている。
この両者の違い、対応の違いを理解してアセスメントを行わないと間違った支援に陥ることになる。


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (love)
2010-08-10 11:39:46
本人が「家族のために?家族の一員として、家族のためにショートステイを利用する」ということですかね。
本人が「家族のためにできることがショートステイに行くことで、そして、家族の一員としての役割を果たせる」という自己決定もありかなぁ。と思ってます。
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いろいろな考え (兼任CM)
2010-08-11 15:08:25
うん。どんな手段・考えであったも間違いではない。
要はその考えに至るまでにしっかりと考え、話をすることが大切なんです。
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独居で認知無し75歳男性 (ガッキー)
2014-07-22 22:19:49
本人の意向がなにがなんでも自宅で暮らしたい、主治医やケアマネの意見は問題では無い、腎不全と転倒を繰り返す独居老人であり、家族支援者がいない場合、主治医の先生には緊急ショートを勧められたケース。家が男性の一人暮らしでゴミ屋敷になっており、二度程レスキュー隊と訪問介護に助けられる。ベッド横のゴミと布団に挟まり助けを呼びました。今は訪問介護と自費サービスで少しずつ家のゴミは片付きつつありますが、まだまだです。本人の意向は自宅で自分のペースで生活したい。緊急ショートも途中で帰りました。今は週に二回の訪問介護、通所介護で入浴しています。時間や曜日を守ることはほとんどありません。本人の意向は尊重され、このまま一軒家でゴミに埋もれて生活するのが苦々しく思っています。
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