介護サービスほっと通信

「暖か介護でほっと一息」をモットーにしています。日々の仕事の中から感じたことなどを発信していきたいと思います。

生活場面における医療行為の介護職員への解禁

2010年08月03日 16時25分38秒 | 雑感
概要文に例示した「医療行為」は、現状では比較的医療行為の中でも「素人」でも実施可能な(支援可能)な行為である。
現実にはもっと高度な医療管理(たとえば人工呼吸器装着のケースやIVHのケース)が必要な状態になっても在宅生活を継続しているケースも少なくない。

現在のルールではこれらの行為に対する支援は医療行為に当たり、医師や看護師等でないとかかわることが出来ない。そのためただでさえ少ない医療系サービス資源を、多くの医療行為を必要としている要介護高齢者が利用をし、新たな医療系サービスのニーズに対応できないという課題を生み出している。

また現在は在宅介護が出来ているが、在宅介護が限界に達した場合の「セーフティー・ネット」としての介護療養型医療施設は廃止されるのか、廃止が廃止になるのかよくわからない状態になっているとともに、着実にその数を減らして受け皿がない状態になっている。この点について厚生労働省では「介護療養型老人保健施設」なる療養型医療施設と介護老人保健施設の「折衷施設」を設けて「受け皿」をしているが、そもそもが老人保健施設なので「医療費の丸め」を抱え込んだままのため実質的に「受け皿」としてまったく機能していない。

そのため在宅介護の限界を超えてもなお在宅以外に「住む場所」がなく、かといってこれらの必要な支援を医療職以外から受けることが出来ない中で、家族が犠牲になって、献身的なケアを続けている状況になってしまっている。

このような状況を改善しようとして、訪問介護員(ヘルパー)にも比較的簡単な医療行為を解禁しようじゃないかという動きが出てきている。その第一歩として特別養護老人ホームにおいてこれらの医療行為については、所定の条件を満たすことを条件として、介護職員に解禁した。

しかしながら、その条件が厳しすぎ、実質的には従前となんら変わりないかむしろ後退しているような状況であるとともに、所定の条件を設定したことにより、条件を満たさない行為の全ては違法なものとして認定されることになり、かえってケアをしづらくしている。

一方で在宅に目を向けて動きを見ていけば、あいも変わらずに訪問介護院への解禁に対する最大の抵抗勢力は看護協会である。おまけに看護協会の反対は、ただ単に反対するだけで、代替案の提示もなければ建設的な議論もなく「ただ反対する」という状況でしかない。
まるで自分たちの職業領域を侵される、専門性や有意性を侵されるという感覚しかないのかとかんぐりたくなるような反対の仕方である。そう、「介護福祉士やヘルパーなんかにこんな難しい行為が出来るはずがないじゃない」という感覚で支配されているような。

もし看護協会が訪問介護員による医療行為の一部を解禁することに反対するのであれば、訪問看護の社会資源を現行の数倍にするとともに、その報酬を訪問介護の報酬と同等にして、医療行為を必要としている利用者や家族のニーズに対応していかれるくらいの代替案を示す必要がある。自分たちの身を一つも切ることなく、単なる我儘に近いような発想で反対を繰り返している職能団体にはその存在意義はもはや意味を持たない。

ところが、医療機関や訪問看護ステーションの看護師と直接話をしていると看護協会の見解とは真っ向から反対する意見をよく聴く。「解禁してもらわなければいけない」という意見だ。要は現場は実情を理解し、利用者や家族の状況、訪問介護院の力量や活動、訪問看護の限界を理解したうえで「経管等の簡単な・家族に許している範囲の医療行為」は解禁すべしという意見が、私が確認した範囲では大多数を占めている。

ということは、看護協会は検討会などに出席する幹部と現場の意見が乖離しているということであり、幹部は現場の声を無視して、個人的見解で発言をしているということになる。であればこのような検討会に看護協会を委員として招いて発言してもらう必要はない。少なくても「職能団体としての統一見解」をまとめた上で発言することが出来るまで委員会等への出席をストップすべきである。

いずれにしても今後これらの医療行為を抱えて在宅生活をせざるを得ないケースは減ることはない。そのニーズにどうやって対応していくのか、どう在宅生活を支援していくのかは、今後の介護の中で最も重要で最も早期に解決しないといけない課題である。

どうか建設的に、前向きに、そして何よりもそれらの医療行為がなければ生活していくことが困難な人たちが希望が持てる議論を進めてほしいものだ。

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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
難しい問題ですね (ベンチ)
2010-08-07 09:15:00
現場のヘルパーとしては、医療行為・医療類似行為の出来る・出来ないの線引きはいつも難しいと感じます。

最近のような暑さが続き脱水傾向にある利用者に対しては、もともと訪問看護が入っていて、訪問看護の協力体制があれば、点滴してくれるように予定を組んでもらうこともできますが、訪問看護と契約を結んでいない利用者は熱中症になっても救急搬送しかありません。
訪問看護が入っていても、一週間に一回では状態の変化に気が付かず、結局ヘルパーの援助時に急変がわかり救急搬送されて利用者も先月いました。

日常的に医療行為が必要な利用者は、入所か家族の支援か、週に数回の訪問看護の利用しかな手段がありません。

ただ、ヘルパーにどこまでの医療行為を任せるのかはとても難しい。日常生活支援で手一杯な場合もあります。上記のように、情報が確実に伝わっていなくて訪問してもちょっとおかしいな、というレベルで判断したり、または利用者の体調の急変にたちあったりすると、現場のヘルパーはとても傷つくし能力不足に悩んだりします。

きちんと利用者に医療職も介護職もむきあえるシステムが無いものか、といつも考えています。
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難しい問題ですね (ベンチ)
2010-08-07 09:15:11
現場のヘルパーとしては、医療行為・医療類似行為の出来る・出来ないの線引きはいつも難しいと感じます。

最近のような暑さが続き脱水傾向にある利用者に対しては、もともと訪問看護が入っていて、訪問看護の協力体制があれば、点滴してくれるように予定を組んでもらうこともできますが、訪問看護と契約を結んでいない利用者は熱中症になっても救急搬送しかありません。
訪問看護が入っていても、一週間に一回では状態の変化に気が付かず、結局ヘルパーの援助時に急変がわかり救急搬送されて利用者も先月いました。

日常的に医療行為が必要な利用者は、入所か家族の支援か、週に数回の訪問看護の利用しかな手段がありません。

ただ、ヘルパーにどこまでの医療行為を任せるのかはとても難しい。日常生活支援で手一杯な場合もあります。上記のように、情報が確実に伝わっていなくて訪問してもちょっとおかしいな、というレベルで判断したり、または利用者の体調の急変にたちあったりすると、現場のヘルパーはとても傷つくし能力不足に悩んだりします。

きちんと利用者に医療職も介護職もむきあえるシステムが無いものか、といつも考えています。
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Unknown (ベンチ待ち)
2010-08-07 09:17:06
すいません。
興奮して2回投稿してしまいました、、、
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連携と役割分担 (兼任CM)
2010-08-07 09:57:29
この議論について、ヘルパーに看護師と同等の衣料を求めるものではないということが衆人が一致して理解しているところです。
家族が出来ることならヘルパーも、ということでしかありません。当然そのためには教育も現任者訓練も必要になります。ただそれは家族が医療機関で行われている「練習」をみても、そんなに長時間にわたるものでなくても大丈夫。

後は医療系サービスとの連携を計っていくこと。そしてそのためにも医療系サービスの量的充実も同時に図っていかないと、対処していくことが出来ません。

またヘルパーも「全てのヘルパー」が出来る・すると言うこともまた難しいので、当初は出来る人を、という発想もまた必要になってくるのではないかと思います。
同時にこのような医療の必要な人への適切な対応のための「報・連・相・確」を確立するための事業所としての体制整備もまた不可欠になっていきます。

いずれにしても現行のルールでは今後訪れる介護場面への対応は困難になります。考え直し、対処できる方法を構築していくことは不可欠だと思います。


ベンチ待ちさん、投稿については気にしないでください。
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はじめまして。同感です (ポチ・タマ)
2011-03-03 22:13:53
同じように考えてる人に、出会えて安心というか、嬉しくなりました。
たまたま たどり着いたサイトでしたが、時々 寄らせていただきます
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