夏に
最後の住人が出ていった
築80年以上の木造アパートは無人となった
道路からアパートまで
幅2メートル弱の小道が続くが
夏草の勢いに負け
小道はふさがれてしまった
ずっと
前から朽ちかけていたのだ
もうここに家は建たない
小道が細すぎるからだ
がらんと、壊れていくしかない
けれど
廃屋となるだろう空き家は
すぎ去った昔を考えている
ここで生まれたもの
ここから嫁いでいったもの
ここに孫を見せにきたもの
そして
ここから見送ったものたちを
楽しげに
物干し場から
声が
聞こえてくるのだ
(おはようございます
(おはようございます
今日はいい天気ね、
R2.9.16