▼めいちゃんの500円玉
なかがわちひろ
アリス館(2015年12月)
道で拾った500円玉がしゃべりだし、めいちゃんに「オレ様で好きな物を買っていい」という。おかし、お花…色々なものを買いに行くけれど、うまく買い物できないめいちゃん。500円玉をなくしてしまったかわりに、手にいれたのは…?
モチーフは、ある意味ありきたりの、そう、『かわいいこねこをもらってください』(なりゆきわかこ/垂石眞子ポプラ社・2007年)と同じもの。而して、しかし、それは石井桃子さんの秀作、例えば、『ことらちゃんの冒険』と同じ素朴かつ強靭なテーストのものと言うべきか。しかも、出来栄えの点では、本書は、『テスの木: Tess's Tree』(主婦の友社)に勝るとも劣らない、少なくとも、これまた世界的に評価の高い『ちいさなあなたへ』(主婦の友社)を凌駕する--比較の点では、ちなみに、『ママがおばけになっちゃった!』(講談社)も『ちいさなあなたへ』に迫る秀作だと思います。--一書、鴨。貨幣の本性と命の貴さを軸に平易に<社会のきずな>のあり方を描き切った出来栄えには感銘を受けました。
貨幣とは「あるものと他のものとの交換価値を表示することをその使用価値とする特殊な商品」とかなんとか、昔、一文にもならない「マルクス経済学」とかで言っていたような。
そう、そんな七面倒な定義はどうでもよいけれど、三年前だけど、2017年のあの有名な「ビッグマック指数:BMI」(by The Economist)の2017年データによれば、マクドナルド(⬅関東では「マック」、関西では「マクド」。そして、アメリカでは「the Big M」)のビッグマック1個の値段は――各州の消費税等々を捨象した場合、日本では3.36ドル(380円)なのに対して、――アメリカでは5.3ドル(599円)とのこと。
そう、500円玉ではアメリカでは
ビッグマックいただけないのです(涙)。
そして、そう、1円玉はどんな意味でもそれは未公表らしいのですが、
貨幣の製造コスト(括弧内、単位=円)は、各々 respectively、
5円玉(7), 10円玉(20), 50円玉(20), 100円玉(25), そして、
本作の主人公!の500円玉(30)くらいらしい。
このことを想起するとき、――あっ、ちなみに、お札の方は、
1000(14.5), 5000(20.7), 10000(22.2)らしいですよ――、
この物語の意味というか、めいちゃんとそのご両親の優しさが
よりくっきりよりほんわり理解できた、鴨です。
・読まずにすませたい保守派のための<マルクス>要点便覧
-あるいは、マルクスの可能性の残余
https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/385e8454014b1afa814463b1f7ba0448
・「左翼」の理解に見る保守派の貧困と脆弱
https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/2045fe3ac164014dde2e644c551d7c38
・瓦解する天賦人権論-立憲主義の<脱構築>、
あるいは、<言語ゲーム>としての立憲主義
実は、作者のなかがわさんは、『テスの木: Tess's Tree』『ちいさなあなたへ』、そして、『魔女のこねこ ゴブリーノ』の翻訳者でもある。翻訳家としての技量には定評のある方。
そして、そう、確かどこかで、なかがわさんは、「ある時、血肉化している言葉というのかな。俳優の江守徹さんの翻訳された作品を知った時、目からウロコだったんです。英語を忠実に訳す、というのではなくて、こんなに大胆に核心をつかんでもいいんだ!と。言葉にはブレスがある。横書きの英語が、縦書きの日本語になり、空間に置き換えられ、息づかいにのるものなんだ、と。 翻訳のおもしろさに揺さぶられた瞬間でした」とか述べておられたと思うけれど、<翻訳屋>としての志というか心意気も確かな人。尚、なかがわさんの訳業については下記拙稿をご参照いただければうれしいです。
・海馬之玄関推奨図書:だいすきなパパへ
--BOARTS FOR PAPA
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/d1f0b590a5f95fec68b54d74787fffaf
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/d1f0b590a5f95fec68b54d74787fffaf
ならば、--少し前に出版社のアリス館に問い合わせたところ、まだその計画はないとのことですが--是非、本書の英語版の出版を希望します。アメリカといわず世界の子供たちとお母さん方に読んでいただくに値いすると思いますから。
まー、ご専門(?)の絵の方は、東京芸大のご出身だからでしょうかね、上手いんだけどパンチに欠ける節も(笑)なきにしもあらずで・・・。なにより、いまいち今風ではないかもしれない。けれど、逆に、ひたすら大きなお目目の「可愛い~! Japanスタイル」でない分、欧米では読者やその保護者の方に安心感をもってもらえる、鴨(wild duck)。
【MV】あの頃の五百円玉 Short ver. / AKB48[公式]