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ビジネス英会話の教材☆Global Links

2006年02月10日 12時51分50秒 | 英語教材の話題


ビジネス英会話のテキストは汗牛充棟です。それに加え、毎年毎年、幾つもの出版社からはそれぞれ工夫を凝らした新作が発表される。而して、大学・短大で英会話指導にあたっておられる先生方や英会話スクールで教務を担当しておられる方は、ビジネス英会話の教材選定にはいつも苦労されておられると思います。実際、この作業は真面目に取り組めば取り組むほど<正解>が見つからない悩ましいタスクですよね。

しかし、あんまり真面目ではない英語教育屋の私は、だからなのでしょうか、あまり悩みません。その理由は二つ。①ビジネス英会話の教材選定に「正解」などもともとないと思っているから、②少なくとも、TOEICで470点前後の再入門者から初級者で英会話スキル向上にそれほど時間を割けない忙しいビジネスマン対象のクラスで使用する教材を決めているからです。

そして、悩まずに選ぶ幾つかの教材のその一つがここで紹介する”Global Links English for the International Business”(Longman, 2001:尚、自習教材として使われる場合、テキスト付属CDはさわりの応答しか収録されていませんので、少し高価ですが別売CDが必須になります)。

前者の理由について一言。「ビジネス英会話の教材選定に「正解」などない」という主張は、例えば、「どんな教材も似たようなものさ」とか「絶対正しい解なんかない」などの斜に構えた、ある意味、書生論的な物言いではありません

めったにありませんが特に機嫌の悪いときなどに「どんな教材も似たようなものすよね」なんて、駆け出しの教務助手君が口にしようものなら私は彼/彼女を厳しく注意してしまいます。もっと機嫌が悪いと、にっこり笑って、「教材棚からどれでもいいからテキストを2冊取り出してご覧なさい」と言って、彼/彼女が取り出してきたテキストの違いを延々とその「書生君」が「考え違いをしていました」と非を認めるまで言い続けたりします。悪趣味? <同僚・上司にしたくない英語教育屋de 賞>というものがあったら受賞候補にノミネートされること間違いなしですね。反省。

人間の小ささを暴露してしまいお恥ずかしい限りですが、何をいいたいかというと、それは「誰にとっても最適な教材などはないけれど、この研修者の今の状況では最適な教材は存在する」そして「LongmanにせよOxford University Pressにせよ、Cambridge University PressでもMcmillanも、旺文社も東進ブックスもそれぞれの企画担当者や著者は今までにないような特徴を持ち効果のあがる教材を作ろうと思い念じて、実際、かなりの程度にはその狙いが形になった教材を社会に提供している」ということです。要するに、誰にも最適な教材というものはないが、今の<貴方>に最適な教材というのはおそらく存在する

ポイントはその「最適な教材」を探すコストや労力は、「面倒くさいからこれでいいや!」とばかりに結果的に次善や三善のテキストを使った場合のデメリットに見合うほどではないということ。まして、講師や学習アドバイザーが研修成果に占める度合いに比べて、あるいは、奥様やご主人やお子さんの激励に比べて英会話教材が最適であるか次善かなどはほとんど無視してもよいくらいの差異しかないと私は考えているということです。要は、教材よりも(どの教材でもいいから、その)やり方が比べようもないくらい重要ということ。



と、前口上が長くなりましたが、上で述べたちょっと複雑な観点に立って、ビジネス英会話のテキストとして”Global Links”を推薦する理由を書きます。まず、この教材が向いている対象者の条件を再度言いますと、それは、

・TOEICで470点前後の英語再入門/730点前後の初級者
・英会話研修にあまり時間を割けない方
・週1~2回のレッスン以外は自習を中心に学習せざるをえない方
・成果を短期間に欲しい方

本書は現在、入門・初級の2種類が出版されています。すなわち、
・Global Links Book 1: English for International Business
 By Keith Adams

・Global Links Book 2: English for International Business
 By Angela Blackwell


いずれも編集構成は共通で、各課(Unit)は、「自己紹介」「電話応対」などのビジネスシチュエーションごとに、(1)基本になる会話、(2)リスニング訓練、(3)発話訓練、(4)関連文書購読、そして、(5)関連文書作成の内容。1冊で14課、2冊で計28課のボリュームになっています。而して、本書の特徴は下記の5点だと思います。

(イ)英会話力は低くとも、あるいは英語力は低くとも日本語でものをきちんと考えられる大人のビジネスマンを退屈させない情報というか知的水準のレヴェルをキープしていること:研修者の英語力が低いからといって、例えば、『赤頭巾ちゃん』や『三匹の子豚』を都銀の営業課長研修に使うようなシュールな事態にはならないこと

(ロ)これを全部、適宜使えるのであれば(少々ブロークンでも)ビジネスを英語でなんとかデールできるだろうという英会話スキルが獲得できること、逆に言えば、内容を厳選していること

(ハ)主題となる定型Talk→Listening→Speaking→Reading→Writingと言語コミュニケーションの異なる領域を移動しながら進む構成が、実は、本書の眼目たる英会話力養成(=定型Talk)の重層的な復習作業になっており記憶とスキルの定着に配慮されていること

(ニ)各課が内容的にもページ数的にも等分のUnitに分けられているので、ビジネスマンとしては受験参考書や問題集をやるのと同じで学習計画が立てやすいこと(英会話スクールの教務としてはレッスンプランが立てやすいこと)

(ホ)各課の主題が明確であり、また、聞く・話す・読む・書くの技能に別れているために、クラスや研修者の能力や関心・必要に応じて、内容を割愛したり、逆に、他の教材を「バインダー方式」で加えていくことが容易なこと(実際、私は短期練成が課されたクラスでは、リーディングの部分にその日の英字新聞の記事を追加するように指示して本書を増強したりします)


これらの特徴は本書だけのものではなく、例えば、第1点はそれこそNOVA英会話スクールの教材として有名な” New American Streamline”(Oxford University Press)の<売り>であり、”Workplace English Office File”(Longman)や”Business Objectives”(Oxford University Press)等、幾つかこの5点すべてを満たす教材は他にもあります。ではなぜ、私は本書”Global Links”を一押しにするのか? “International Express”(Oxford University Press)でも”Business Express”(Cambridge University Press)でもなく”Global Links”を推薦するのか? 

私は、例えば、ある超大手複写機製造メーカーで新入社員全員を対処とした英会話研修に本書を毎年1000冊以上購入して使用していましたが(企業は甘くないですよ。ちゃんと、講師の力量や熱心さはもちろん、教材からカリキュラムに至るまで事後調査をしますからね)、その企業でも本書の評判は極めて高かったです。なぜでしょうか? 簡単です。

それは、本書が薄いからです。それは、本書の構成(定型Talk→Listening→Speaking→Reading→Writing)の各パーツの独立性が高いからです。要は、身軽な上に、上で述べた(ニ)「受験参考書や問題集をやるのと同じで学習計画が立てやすい」点が際立っているからだと私は考えています。

英語学校の講師や教務担当者は(私を除けば?)英語を使うことが好きで好きでたまらないという方が多い。でもって、彼等はできるだけ多くの知識を研修生に与えたい、英語にまつわるこんな面白い話もこんな愉快なエピソードも受講生に提供したいと思う。それが善意でありそれが良心的なことだと考えて豪も疑わない。彼等は、自分が英語を話せなかった少女や少年の頃の記憶などとうに失っている。少なくとも私にはそうとしか思えない英語教育屋の方が少なくない。

しかし、今時、「英語なんかいらへんわ」と思っているビジネスマンが極少数であると同時に、「英語の勉強は楽しいわ、事情が許せば一日中英語勉強しときたいんねんけどな」と思うような受講生がほぼ皆無であることも事実でしょう。

蓋し、「最小限の努力でなんとか胡麻菓子のきく程度の英語力」を身につけたいと受講生の圧倒的多数は考えている。少し極端ですが、英語学校の教務担当者はそう認識していてちょうど良いくらいだと私は思っています。彼等大部分の受講生にとっては、よって、講師や教務担当者が「こんな面白い話もこんな愉快なエピソードも伝えたい」とばかりに情報や知識を提供することは有難迷惑以外の何ものでもない。

ならば、紹介されている会話表現の数と全体のワード数から見て、類書の約三分の一のボリュームで上に述べた五つの長所を備えた本書は多くの忙しいビジネスマンにとって最適なテキストの一つである。そう言っても満更間違いではないと思います。是非、お試しください。








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