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【原稿保存のための記事、だから、古いです🙇】衛星放送型通信教育☆サテライトの思想的可能性

2020年06月08日 23時31分09秒 | 教育の話題

 

March 03, 2012 10:42:21

*コロナウイルスくんのおかげのStay Home の断捨離中に発覚❗

なんとこの記事、「本家ブログ」のgooにあげてませんでした❗

よって、原稿保存のために「再掲」。(^_^)v

 

[Ⅰ]
サテライトの思想的可能性。(河合塾・代々木ゼミナール、就中、東進衛星予備校のサービスに代表される)衛星放送型通信教育、すなわち、サテライトは日本と教育をどう変え、教育と世界はサテライトをどう遇するか。「サテライト」(衛星放送を使用した講義配信)の本質と意義はどのようなものなのか。

 

「サテライト講座」は人工衛星を使った教育番組である。
「サテライト講座」は衛星放送される教育番組にすぎない。

 

総ての虚飾を剥ぎ取る時、Jリーグのサポーターは私設応援団にすぎず、国家なるものは共同の幻想にすぎないとするならば、サテライト教育システムはもう1つの教育テレビでしかあるまい。

随分前、けれど一世を風靡したフレーズに、「冷蔵庫、電気なければただの箱」という家電メーカーのTVコマーシャルがあった。しかし、逆にただの箱は冷蔵庫ではない。否! 冷蔵庫が単なる冷却装置付きの箱であるとしても、それは大仰に言えば「人類の食文化」を変えたのである。

一方、今流行のJリーグやアメリカのメジャーリーグでは、新しい言葉を使うことで、なんの変哲もない事柄を全く新しいものに感じさせるという魔術を使っている。曰く、サポーター、チェアマンそしてサテライト。片や、クローザーやセットアッパー。これらはどう見ても、私設応援団や財団法人の専務理事、そして、二軍の選手組織や抑え投手と中継ぎ投手でしかあるまい。昔、誰かが「国家とは共同の幻想」と言ったけれど、言葉とは便利で怖いものだ。

冷蔵庫はただの箱ではない。それは自動車が単なるエンジン(内燃機関)付きの大八車や人力車ではないことと同じである。自動車や冷蔵庫はただの箱や人力車が持っていない機能を備えているし、繰り返しを怖れず言えば、人々の生活様式を(人間の文化や人類の歴史自体を、)変えたのだから。ゆえに、「サテライト」がただの「遠隔講義」に過ぎないのか否かは、その付加機能と文化や歴史への影響力の二者に懸かっているのではないだろうか?

そして、この両者から衛星放送による教育プログラムを眺めてみることで、「遠隔講義」というかディスタンスエデュケーションが情報通信技術(Information Technology)の支配する次のディケードでどのような可能性を持ちうるのかを究明できるかもしれない。

 


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[Ⅱ]
サテライトは、同時性と放送内容の合目的性及び国際性を特徴として持つ。そして、ある意味での相互性と同時代性とが更にその三者のコロラリー(派生的な性質)として成立する。放送は、送り手と受け手の同時存在を前提にするし、更に、「サテライト」は海を越えた同時存在を受け手に意識せしめようから。

私の言うサテライトの三つの特徴、すなわち、(1)放送の発信者と受信者の同時存在性、(2)放送内容の合目的性、及び、(3)放送の国際的な受信・発信の可能性に関して、これらの一つ一つを保有するメディアはサテライト以前にも存在した。

同時性はTVやラディオの総ての番組が具現している。高校や大学教育に焦点を当てたコンテンツも、CATVを使用したものは米国ではごく普通の存在である。三番目の国際性については、CNN等の「衛星放送」の総てがそうではないか。しかし、三性質の結合は今の所「サテライト」だけの特徴と言えると思う。もちろん、これはサテライトシステムと言うべきであって、個別河合塾や代々木ゼミナール、東進衛星予備校のサテライトが今後、この特徴をメリットとして享受し続けていくためには多くの工夫と努力が必要であろうけれども。このことをもう少しきちんと吟味してみよう。


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[Ⅲ]
同時性は言葉を越えるものを伝える能力をメディアに与える。講師の表情や衣服の色や形、言葉使い・・・、これらの言わば全人格的なものをメディアは受け手に伝える。否! 伝わってしまう。

昔、マクルーハンがTVの持つ機能の一つとしてこれと同じことを言ったが、重要なことはアイドルタレント並に肥大した人気講師の影響力ではなく、リスナーやオーゥディエンスは、ディスプレーに映っている者も偉そうにはしているが、やはり、普通の一人の人間であることを感じてしまうことである。

将棋や囲碁の世界でも、京都あたりの哲学研究者のコミュニティーでも、「師匠」は普通、弟子に言葉ではほとんど教えないらしい。しかし、弟子は師匠との全人格的な交わり(言葉によらない情報のやりとり)のプロセスを経てのみ<プロ>になっていく。現代のように高度な情報化社会での人と人の交わりでは、この言葉を越えるコミュニケーションこそが逆説的ではあるが最も重要になるのかもしれない

内容の合目的性。これは、サテライトのソフトが受験と言う切り口を通した限定的なものとしても、日本の学術の一応の水準を踏まえていることに発する。そして、科学の領域で国境が一応消失している現在、それは世界の学術水準と言ってもよい。まさか学術の最前線ではないとしても、そこからの報告を聞くことは視聴者に「同時代」に生きていることを痛切に自覚させないではおくまい。

更に、受験と言う競争の是非は別論としても、サテライトの視聴者は自分が日本社会や日本がなにがしかの役割を果たす国際舞台で生きていると言う意識を持つことは確かであろう。ここにも「同時代」への契機がある。

リスナーやオーゥディエンスは、教養か娯楽や受験か資格かにその内容を絞り込んでいない多くの番組と異なり、その内容と目的がより絞り込まれているが故に、自身が学術の現在の水準と日本社会の競争の中にいることを痛感する。これは、エキサイティングなことである! 今流行っている、高校や中学の入試問題から題材を選んだクイズ番組と比べられないくらいエキサイティングではないか!

国際性とは何か? 

これは現在においては同時性と相補的であり、自分が世界の中の日本やその日本の番組を聞いている非日本人であることをリスナーやオーゥディエンスが感じるということである。勿論、海外においてさえも日本流の「受験」を持ち込むことの当否や是非は別に論じられるべきではあろう。しかし、現実はもっと先に進んでいるのではなかろうか?

子供達や素人の感性、本物と偽者を見分け嗅ぎ分ける力、を馬鹿にしてはいけない。しょうもない講師や講義は淘汰されるし、「受験体制」自体のしょうもなささえもなし崩し的に変容させられている。現在の大検受験者の増大や海外留学志望者の増加はその証左であろう。ある意味では、子供だましの「受験体制や学歴秩序」の崩壊と、その後に来る世界規模の競争の激化を固定観念としがらみのない素人は専門家や業界人よりも鋭く速く感じ取っているのかもしれない。


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【画像解題】
時は1996年10月30日、所は岡山県倉敷市「倉敷市芸文館」。第9期竜王戦七番勝負の第2局終盤80手目、後手番の挑戦者・谷川浩司九段が指した△7七桂は、正に、谷川永世名人資格者の<光速の寄せ>の炸裂。後に「歴史に残る」と評されることになる有名な一手。蓋し、この「△7七桂」にせよ、数多の「羽生マジック」にせよ、おそらく、サテライトやe-learningだけで産み出されることはないの、鴨。では、個人の才能や努力の契機を捨象して<教育>に引きつけた場合、何が「△7七桂」を産み出すのか? それが本稿を貫く私の問題意識なの、鴨。

(ちなみに、「△7七桂」前後の展開に興味のある方はこちらを↓どうぞ!)
 http://uraniwa.org/kif2swf/12503842471/1996%20Habu-Tanigawa%20Ryyou2.swf

 

【再掲】哲学と将棋のアナロジー遊び

 https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/9abf0d867b44c252371be43906817a07

 <再改版>渡辺明永世竜王誕生に思う「定跡」と「人格」の弁証法的交錯

 https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/d92fb757ef7c12a46b294004cd777c5a

 

[Ⅳ]
サテライトは現代に何を提案しているのだろうか? サテライトの文化と歴史への貢献は何か? それは、徹頭徹尾、サテライトの特徴である、同時性、合目的的性、及び国際性と表裏一体のものでしかあるまい。

ならば、サテライトの問題提起は、結局、受験と言っても科学や学問と言っても、それらは所詮人間のやっていることだということ。そして、自分は日本人(や、日本の番組を聞いている非日本人)であることを意識させることに他なるまい。この二つのことを自分の目で見て体得する若い世代を養成することこそサテライトの貢献の一つであることは間違いない。

サテライトはリスナーやオーゥディエンスに他者とのコミュニケーションの大切さとその方法を示唆する。サテライトは人気講師をアイドルにするにとどまらず、総ての講師を単なる偶像や陳腐な存在にさえする。しかも、サテライトは評価を講師の編成と内容の質にフィードバックするから、3ヵ月~1年間の時間軸の上では、リスナーやオーゥディエンスの評価は送り手に反映される。このことは、政治や文化やビジネスの世界、つまり人間が構成する社会や世間の本質をオーゥディエンスやリスナーが身体で知ることに連なるのではなかろうか? これがサテライトの属性としての「相互性」である。

そして、人と人とのコミュニケーションにおける相互性の体得は、文字通りの国際人、根無し草ではないインターナショナルに活躍できる日本人としての資質であり、これからの日本人(または、非日本人)が国際人でしかありえないことの自覚をサテライトが促すと私は考えている

本当を言うとサテライトがどんな文化をこれからの日本と世界にもたらすのか送り手も確かな所はわからない。しかし、それは今の受け手の成長によって確実に具現化していくものであろう。サテライトはただの箱ではない――ボンカレーやカップヌードルが単なるレトルト食品ではないのと同様に、――多分。


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<解題>
このエントリーの元記事は、1994年の夏(!)、河合塾から依頼を受けてその広報誌のために書いたものです。今から18年前【↖令和2年の「今」からだと26年前❗】の文章。サテライトシステムどころかe-learningが一般的になり、むしろ、曲がり角にきている徴候さえ見える現在からは、我ながら内容的な古さは隠せないと思います。

・英語学習 de スマホアプリについて--歴史の証言付(←おおげさ)

 https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/d1cd7bb7daac719f4d8698ad5e68eca1

・ピグライフは勝れものの「マネージメントスキル開発ツール」かも

 https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/ee74458c5f6769163b91f13e9a13d8f4

・草稿・科挙としての留学の意義と無意味

 https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/3d2bc3378bcef0da078a1b30c9681d79

・ソフトバンクホークス秋山幸二監督に見る<指導者の器>と保守主義の精神

 https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/ec277ba8d36bcd28834dcd0752624c7a

・海馬之玄関ブログ年表附記--「第三次産業革命」の思い出--現在完了進行形的断想

https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/0fe37c325934fbc18ef197bbc9f11ce4

・真学問のすすめ・・・コロナウイルスによるおうち時間は日本の子供たちにとって天祐神助、鴨。

 https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/330bdb926c48ac4ba682713ad13565ab

 

要は、本稿の元記事は、インターネットが日本で普及する(有名な1995年のクリスマス商戦の1年前という、今から思えば)「直前」の時期に書かれた文章。本編のキーワードとして使った、「相互性」や「同時性」なども「インタラクティブ」や「同期性」という用語で現在は一般的になっている。ならば、今、「衛星放送型通信教育」を俎上に載せるのなら、e-learning(ネット)の特性である、オンディマンドや自己組織性とサテライトの特性である「大量同時伝達」との差異を補助線にして書きなおすべきだと自分でも考えています。

では、なぜ、【2020年にも❗】これを敢えてアップロードすることにしたのか。磯自慢じゃなじゃった自己自慢? 【それとか――渡辺麻友さんが引退されたので?――記事のネタキレ?】 はい、それもある、鴨ですけれど (/。\) 

それは、原稿保存の意味と、加之、サテライトシステムとe-learningを含むIT化された遠隔授業(IT-based distance education:それは、コスト的観点からヒューマンタッチを極小化する誘惑をコンテンツとサーヴィスの提供側に仕掛ける「教育」の形態なのですが、それら)に共通する可能性と危うさをこの記事は原初的ではあるが、逆に、だからこそ原理的に捉えているのかもしれないと思うからです。

いずれにせよ、この18年間【26年間】のこの社会と教育の変化を念頭に置いた上で、この国の教育改革の方途についてこれを読んでいただいた皆さんが何か考える契機になればよい。そうであれば本当に嬉しいし、18年前【26年前】の記事を掲載した目的は100%達成されたと言えると思います。

尚、教育が立ち向かっている日本人と日本社会の現状に関する当時の私の基本的な理解に関してはとりあえず下記拙稿をご参照下さい(今後、現在の「働きたいのに働く場が乏しい中高年」が置かれている状況をも包摂した上で、本稿と併せてこれらの記事も順次「改訂新版」をアップロードしたいと考えています)。


・仕事にありつけない若者? 能力が低いだけだよ
 http://kabu2kaiba.blog119.fc2.com/blog-entry-56.html

・なぜ日本人は働かなくなったのか:労働観の変遷とその底流
 http://kabu2kaiba.blog119.fc2.com/blog-entry-65.html

・就職活動で失敗しないための思考の基礎技術
 http://kabu2kaiba.blog119.fc2.com/blog-entry-57.html

・無能な指導者と指導者の無能
 -開発されるべき日本人の能力とはどのようなものだろうか?
 http://kabu2kaiba.blog119.fc2.com/blog-entry-59.html

・コミュニケーションの不全とリーダーの不在
 http://kabu2kaiba.blog119.fc2.com/blog-entry-58.html

・書評☆都立水商!

 https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/24ac2ee08b16ecdb33cb9e8c535a8b7a

 

 

 

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