60年目を迎えた元朝日新聞運動部記者・中条一雄のコラム。
中条一雄の炉辺閑話~いろりばたのひまつぶし~
サッカーあれこれ(59)
◎根深い汚職体質
FIFAの賄賂が絡むスキャンダル事件で、再選されたばかりのブラッター会長までが辞任するとは驚きでした。
新聞は連日一面、社会面また時には経済や外報面を使って書きまくりました。関連記事まで切り抜いていたら、スクラップブックがたちまち一杯になってしまいました。
副会長2人を含む14人が米司法省に告発されたあたり(なぜアメリカがやるのか不思議でしたが)、まあこんなことが起こってもおかしくないと思っていました。
いつも貴賓席であぐらをかいて、何となくコソコソ話をしているFIFAのお偉いサン方なら、うさん臭く、賄賂や脅しなどありそうだったからです。
だが、ブラッターまでも、スネに傷を持っていたんですね。それにしても、強欲な連中にはあきれるばかり。
折りも折り、読売新聞に大英帝国の初代首相だったウォルポールが「どんな人間もカネで動く」という記事が載った(5月31日付け)ので、さもありなんと大笑いしました。
◎背景に商業化の波
事件の背景には言うまでもなく、世界スポーツ界で急激に進む商業化の波があります。とくにW杯は開催地にとっては金のなる木です。開催地選定にあたっても賄賂が飛び交います。
また、ブラジルW杯でFIFAは約50億ドル儲けたそうで、それに伴う放映権やスポンサー権、広告権、そしてその手数料も膨大なものと伝えられます。
しかもFIFAはガバナンス(組織統括能力)を欠き、一部の理事には悪いことがあっても見て見ぬふりをする馴れ合いのような、賄賂がなくてはコトが運ばないような持ちつ持たれつの一面があったようです。
日本の競技団体でも見られる傾向ですが、情報が一部に集中し都合の悪いことを外部に漏らさない秘密主義の体質に、この種の事件の根の深さを感じます。
◎自己改革ができるか
問題は今後のことですが自己改革ができるでしょうか。業者との癒着を防ぐため権力を集中させず、役員の新陳代謝を図ることです。役職は長くやらない方がベターです。
そのためには、定年制を守り、ボスの存在を許さないことでしょう。これは日本の競技団体にもいえることです。
ブラッターはアジア・アフリカに支持されていましたが、小さな協会に財政援助することで批判精神をそぎ、支持基盤を拡大し、巧みに票数を稼いできました。
競技団体の役員は、かつては名誉欲を満足させるポジションでしたが、いまや金がからむ利権の場となっています。ブラッターの辞任は背景に根深い黒い霧を感じさせます。普通なら自分から辞めるなんて言い出さないでしょう。
◎アジアの4.5枠よかった
日本はじめアジア諸国にとってよかったのは、ロシアW杯の参加枠4.5が維持されたことでしょう。ブラッターのアジア・アフリカ重視の置き土産です。
ブラジルW杯に出場した日本、豪州、韓国、イランの4カ国の成績は計3分け9敗で1勝も挙げられませんんでした。本来なら3.5に減らされても文句のいえぬところです。
日本はW杯に5連続出場しているといわれますが、私にいわせれば枠が増えただけ。1994年アメリカW杯予選での、ドーハの悲劇当時には2枠でしかなかったことが思い出されます。
(以下次号)
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