
「果心居士の幻術」に収録されている
「飛び加藤」を紹介します。
この作品には、飛び加藤の本名は出てきませんし、どこの忍びかも明記されていません。ただ「果心居士の幻術」に飛び加藤が紹介されており、そこには名前は分からないとあります。
しかし、忍者本などを見ると、飛び加藤は伊賀者で、本名は加藤段蔵となっています。(一説には、風魔とも)
飛び加藤とは、その身軽さからつけられたあだ名のようで、さしずめNBAのマイケル・ジョーダンをエア・ジョーダンと呼んだのと同じでしょうか。
<内容>
時代は、群雄割拠する戦国時代。越後の上杉謙信の家臣・永江四郎左衛門は内裏に金品を献上するため京にやってきた。そこで、人垣ができていたので、のぞいて見ると…。
一人の男(飛び加藤)が見物人に向かって「牛を飲む」という。そして、男は牛を少しずつ飲み出すが、木の上で見ていた(術がかかっていない)人間が種を明かし、術が解けてしまう。舌打ちした男は今度は生花術を見せたという。
四郎左衛門は男の技に驚き、主君謙信の下で働かせようとする。しかし、謙信は加藤の術のすさまじさに驚き、かえって害になると思い殺害を決意。察知した加藤は上杉家を逃げ出し、甲斐の信玄のもとへ走るが…。
<評価>☆☆☆☆
話のテイストは「果心居士の幻術」に似ています。不思議な術を使う謎の怪人が、上杉謙信に仕官を求めるも、殺されそうになり、越後を逃亡。それなら、武田信玄に仕官しようとするが、結果は同じ…というもの。面白さ、興奮、という感じを抱く作品ではありませんが、戦国時代に実在したという忍者の生態を知るにはもってこいの作品だと思います。
<感想>
この作品で面白いのは、司馬さんが最後にサジを投げていること。「飛び加藤」伝説を小説にしながらも、ラストのくだりで「さすがにここまでくれば、話は荒唐無稽になる」と言って筆を置いています。ま、最後のくだりは現実ではぜったいありえないことですからね。ちなみに「生花術」とは、種を地面にまくと、瞬く間に花を咲かせるという幻術です。
<幻術>
加藤も果心と同じ幻術使いで「呑牛術」も「生花術」も、ようは自分を売り込むための大道芸のようなものだったのでしょうね。だから、そんなこけおどしではなく、本当はもっとすごい技を持ってたんでしょうね。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます