ついに、国民文学といわれた吉川英治さんの代表作「宮本武蔵」全8巻を読み終わりました。
非常に読みやすいです。こんなに読みやすいのは、池波正太郎さん以来ですね。しかも、吉川さんは文章に定型がないので、めちゃくちゃ文章力があることが分かります。さすが、大家ですね。
で、わたしめの感想は…☆★★ 星一つです…。
全国の吉川英治ファン、宮本武蔵ファン、バカボンドファンに謹んでお詫びいたします。
<はじめに…>
そもそも、斜に構えて読んでしまいました。
やれ、説教くさいだの、現実の武蔵とだいぶ違うだのという噂が本書にはありましたから。
しかも、1巻の出だしに前書きが二つあって、それが宗教チックなことが書かれていて不安も感じましたし。
ま、そういうところや主人公のくそまじめぶりが武士道に興味のある海外の人には受けるのでしょうが。
ただ、言い訳じゃありませんが、読み始めたら面白く、「おお!」と思ったのも事実です。さすが、戦前とはいえ、国民文学!!と。
ただね…、2巻、もしくは3巻ぐらいから完走を目的にがんばって読んだ感じになりましたね。
ぼくが戦前の人間だったり、もしくは中学生ぐらいの時に読んだら面白かったと思います。
歴史小説というより、舞台の台本を読んでいる感じです。もしくは「3匹が斬る」や「水戸黄門」といった時代劇といった感じです。しかも、そこに出てくる登場人物が、なんと言うか、よく言うと真面目すぎる人と性格が悪い人しか出てこないというね…。人間って、そんな簡単に割り切れないでしょう。悪い人でも良いことはするし、良い人でも悪いことはします。だからね…。
<ストーリー>
播州の乱暴者・宮本武蔵が沢庵和尚の薫陶を受け、戦国時代を代表する剣豪になるまでが描かれています。
前半のハイライトは吉岡一門との決闘であり、ラストは佐々木小次郎との巌流島での決闘です。
それに、武蔵を慕うお通、武蔵のことが好きな朱美、武蔵のことを嫌うかっての親友・又八、又八の母で武蔵を敵と狙うお杉ばば、武蔵の2人の弟子・城太郎と伊織、沢庵和尚、小次郎らが旅をしながら、まあ、どこに行っても偶然出会うというような流れです。このへんはまさに「3匹」と同じです。
<宮本武蔵>
この作品では求道者として描かれています。ただ、これは梅原猛さんも指摘されていますが、ちょっとリアリティーが感じられないです。ここまで女を排除し、お杉ばばに誹謗中傷されても常に寛容でいて、仕官ができなくなったら自分の目標のためにも良かったと言い、吉岡一門や小次郎らから悪人といわれたら自分の不徳の致すところと考える。
世の中にこんな人いるのでしょうか。
しかも、弟子たちには誠実でいろと言い、勝負事には真摯でいろといいながら、自分は巌流島の戦いに2時間も遅れていく。
さらに、個人的にはなぜ巌流島の戦いをやるようになったのか、理由がしっかりしていなかったところも気になりました。
<お通さん>
武蔵のことを慕い、離れ離れになりながらも武蔵のあとを追うヒロインです。武蔵も彼女のことを好きながら、剣の道のために彼女を近づけません。
ただ、お通さんもね~。何度もお杉ばあさんに殺されそうになって、それでも彼女の窮地を救おうとしてやっぱり殺されそうになる。
ここまでくると、誠実というより、ちょっとア×マが足りないのでは…とひねくれている自分は思ったりしました。
<解説>
一番興味深く読ませていただいのは、京大教授が書かれた解説ですね。吉川さんの武蔵と司馬さんの武蔵を比較しています。文章を読むと、司馬さんの武蔵には説得力があるが、吉川さんには…というような文章が続き、最後の5行で吉川さんのフォローを入れている感じがします。
<時代>
やはり、吉川さんの「宮本武蔵」は時代が書かせた小説のような気がします。吉川さんが戦後の作家だったら、このような現実離れしたヒーローとして書かなかっただろうし、司馬さんが戦前の作家だったら、やはり求道者として描いたと思います。
僕のようなひねくれた人間には素直に楽しめる作品ではありませんが、やはり小学生や中学生、高校生のようなまっすぐ成長してほしい若者たちには読んでもらいたい作品であることは間違いないと思います。
ま、批判もあると思いますが、僕が思ったということで勘弁してください。人それぞれということで。
というところで、次は司馬さんの「宮本武蔵」を読みたいと思います
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