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インテグラな日々

本、音楽、そしてスポーツ…!

蝶の戦記

2007-09-29 01:20:20 | 池波正太郎



くノ一が活躍する池波さんの「蝶の戦記」を紹介します。この作品も上下巻2冊です。

<評価>☆☆
池波さんの長編忍者ものの中では、ベスト3に入る面白さでした。まず、女忍びの話というのが新鮮。さらに、実在した忍者・杉谷善住坊が出てきたのもうれしかったです。そして、もうひとつ。お婆?くの一・伊佐木の存在。お蝶の保護者的な存在で、この伊佐木の化け物ぶりがいい。まさにスーパーウーマンです。こんな忍者大好きです!

<評価2>
満点ではないですが、ほんとに楽しめました。しかも、お蝶が甲賀を裏切らなかったのがうれしかった! 内心、ホッとしました(笑)。甲賀にも、忠誠を尽くすのがいたのかと…(涙)。

あと「夜の戦士」と併せて読むと、楽しさ倍増です。「夜の戦士」は武田方の話で、本書は上杉方の話なので。両方の見方から、川中島の戦いを見れます。

<スーパーマン>
司馬さんは主人公をスーパーマン(すごい忍者のこと)にしますが、池波さんはどちらかというと主人公以外をスーパーマンにして、主人公はスーパーマンではない感じがします。オレはスーパーマン(なんのこっちゃ!)が好きなので、この伊佐木という存在はとてもいいです。ま、お蝶も「火の国の城」ではお婆になり、伊佐木と同じスーパーウーマンになっておりますが。

<続編>
ちなみに、本作の続編は2つあります。ひとつは、井笠半四郎が主人公の「忍びの風」。お蝶はこの作品では準主役といった感じです。

その次が「火の国の城」。これは丹波大介とダブル主演といった感じですね。池波さんはこの二人が好きだったのでしょうね。しかし、弥五兵衛と違い、残念ながら短編では登場しません。

<内容>
基本的に2部構成になっています。

前半は、上杉謙信の身辺警備をひそかに行うという話。後半は、織田信長暗殺に命を懸ける話です。

そういった中、お蝶は、甲賀を代表する忍びで、頭領の弟・杉谷善住坊とのプラトニックな恋愛に身を焦がします。一方で、上杉家の家臣(名前忘れました)と激しい恋愛を経験します。

<くノ一>
いろいろ調べてみますと、女忍びというのは微妙な存在だったようですね。まず、実在した有名な女忍びはいません。というより、女忍びはいなかったといってもいいですね。やはり、どんな優れたスーパーウーマンでも、男には(身体的に)かなわないわけですから。

しかし、敵に近づいて、情報収集するような人たちはいたようです。しかし、体を武器にというのではなく、妻になったりして、という感じだったそうです。もちろん、本書のように戦働きをするような女忍びはフィクションの世界だけのようですが。

<明智光秀を殺したのは誰だ…!>
ま、だいたい池波さんの作品では、甲賀忍者・岩根小五郎ということになっています。しかし、本書では、お蝶が「私が殺した」と言うております。ただ、面白いことに、池波さんは、お蝶が光秀を殺したというシーンは書いておりません。ただ、お蝶が自分で言うだけです。

お蝶、お前ウソついてないかい?

とも考えられます。

これはぜひ、お蝶の言い分を聞いてみたいですね。

夜の戦士

2007-09-28 01:51:44 | 池波正太郎


池波正太郎さんの長編忍者小説「夜の戦士」を紹介します。上下巻2冊です。

<内容>
甲賀忍び・丸子笹之助は、師匠格の孫兵衛とともに、武田信玄暗殺の密命を帯びる。

無事に武田家に仕官した笹之助は信玄暗殺の機会をうかがっていた。一方、孫兵衛も城下に潜み、同じく機会をうかがっていた。

そのころ、笹之助は小さなミスを犯す。信玄の侍女・久仁と良い仲になっていたのだ。

笹之助は過去、何度か女で失敗しており、頭領・山中大和守俊房から女にうつつを抜かさぬようきつく戒められていたのだった。

やがて、久仁のことがばれた笹之助は、制裁を加えようとする孫兵衛を撃退。しかし、正体を信玄に知られ、信玄の請いを入れて武田方の忍びになる。

そして、信玄の天下統一のために働こうとする…。

<評価>☆☆
これを買ったのは川中島周辺の本屋です。ちょうど、川中島周辺の史跡をまわっていたところで、信玄と謙信の戦いなど、状況が手に取るように浮かび、楽しめました。

笹之助がつい女に走ってしまうくだりや、師匠・孫兵衛のすさまじい忍術、そして両者の因縁と対決。さらに上杉家の女忍び・たよと、魅力的な人物が数多く登場するなど、まさに娯楽小説の秀作といっていいんじゃないでしょうか。

<独立系の話>
本作は、一連の池波忍者ものの長編作の中で、一番最初に書かれた作品だったと思います。違ってたら、ごめんなさい。

だからでしょうか、本作の登場人物だけ、あまりほかの作品と関連性がありません。ほかの作品で登場するのは、頭領の山中大和守俊房ぐらいでしょうか。

<で…、ちょっと>
笹之助の剣術修行や久二との恋、不気味な孫兵衛の存在など、冒頭からグイグイ引き込まれていきます。ただ、早い段階から笹之助が甲賀を裏切ります。

で、前にも書いたことなんですが…

長編「忍者丹波大介」、「忍びの旗」を読んだ後だったので、「また、主人公は甲賀を裏切るの?」と驚きました。読んだ順番が悪かったのでしょうが、3作品読んで、全員裏切ることに違和感を覚えたのも事実です。

<さらに…>
「忍びの旗」の上田源五郎と違い、単純に信玄に正体を知られしまう笹之助。しかも、信玄暗殺を目的とする凄腕の殺し屋のはずなのに、やっちゃいけないと言われていた女と関係をもってしまう。

こんな男に仕事を任せたらアカンやろ、と思ったのも事実です。

人間らしいといえば人間らしいのですが、忍者はプロフェッショナルな集団だったわけで…。

一方で、女と関係を持つのが、なぜいけないのか、とも思いました。信玄のそば近くにいる女と関係を持てば、忍び働きに有利になるのでは? とも思いました。

話は面白いですが、よくよく考えると…?というもの多かったです。

<最後>
どの作家の長編の忍者話も、最初の目的は大きいですが、ほとんど目的は達成せずに終わります。

そういった中、本作は主人公・笹之助が自ら表舞台から去ります。もちろん、外的要因があってのことですが。

そこに、忍びが本来持つ、陰の職業としての悲哀を感じずにはいられませんでした。














忍びの旗

2007-09-27 20:02:41 | 池波正太郎



<評価>☆☆
「忍者丹波大介」の次に読んだ、池波さんの長編忍者小説です。

気づいたら家に2冊ありました…。

それはさておき、読むうちに、これは「寝返り寅松」の話か…、と思いました。「寝返り~」の最後には、寅松にはもっとおもしろい話もある、とあったので、ワクワクしながら読んだしだいです。

フィクション的な歴史(時代)小説ではじめて、同じ内容の短編と長編を読んだので興味深いものがありました。

<内容>
甲賀忍び・上田源五郎は、豊臣秀吉に情報を送るため、北条家家臣・山岸十兵衛の家来として仕えていた。

源五郎は十兵衛から信頼される一方、ひそかに十兵衛の娘・正子と良い仲に。

そんななか、思いがけない事件が起こる。

十兵衛が源五郎に驚くべきことを告白したのだ。

なんと、源五郎の父を殺したのは十兵衛で、源五郎の正体が忍びだろうと言うのである。
(↑若干違ってたかも)

しかし、十兵衛は娘との結婚を許し、情報も自由に漏らしてよいという。

思い悩む源五郎が取った行動とは…。

<山中大和守俊房>
池波さんの忍者ものに出てくる甲賀・山中忍びの頭領です。

「夜の戦士」の丸子笹之助や「忍者丹波大介」の大介もこの人の配下です。

ちなみに、

「蝶の戦記」のお蝶は杉谷忍び。

「忍びの風」の井笠半四郎と「忍びの女」の小たまは伴忍びですね。

で、山中、伴、杉谷は有名な甲賀五十三家の家柄です。しかも、山中と伴は二十一家に数えられる名家のようです。

<ネタバレ覚悟の感想>
「寝返り寅松」のところでほとんど書いてしまいましたが、今作の面白さはスパイとしての情報活動にあると思います。

ここに池波さんは、スパイである主人公・源五郎の父を殺したのは源五郎の主であるというエピソード(因縁)を持ってきます。しかも、源五郎はその娘を妻にするというエピソードを追加します。

そして、源五郎が甲賀を裏切ったと見破った同輩との死闘…。

ま、現実ではありえない因縁の連続、もしくは複雑さが池波忍者ものらしいかなと思っております。

<最後に>
本書は、池波忍者小説としてはボリュームが全1巻と少ないですし、個人的には「忍者丹波大介」より親しみやすく、おもしろいと思います。池波忍者ものの入門書として読んでいただければいいんじゃないでしょうか。


真田騒動

2007-09-26 01:26:18 | 池波正太郎



本日は「真田騒動 恩田木工」収録の「真田騒動」です。

昨日は直木賞受賞作と書きましたが、違いました(笑)。直木賞は本書収録の「錯乱」でした。失礼しました~。

<本書>
おそらく、初めて読んだ池波さんの本です。ただ、前回読んだ時はイマイチでした。しかし、今回読み直して、本書の面白さを初めて感じました。個人的には「錯乱」より本書です。「錯乱」のエピソードはけっこう他の短編などで語られているので…。

<評価>☆☆
え~、限りなく☆☆☆に近い、☆☆です。たぶん、もう一回読んだら満点になる予感がします。

これは「列藩騒動録」でも感じましたが「働く」ということを考えさせてくれる本です。また「“人の上に立つ”とはどういうことか」ということも考えさせてくれました。それでは、内容に触れたいと思います。

<内容>
真田家五代目の信安の時代。信安はうるさい家老どもに手を焼き、かわいがっていた原八郎五郎を家老に抜擢。一番年下の家老・恩田木工は老臣の存在を苦々しく思っていたので、原八郎を応援する。

原八郎は手柄を立てようと改革をはじめ、ぶじに成功する。しかし、次第に藩を我が物にし始め、藩の借金は膨らむ。農民、町人、藩士の怒りは募り、木工に訴えるものが増え続ける。

やがて、木工の運動で原八郎は失脚。続いて、藩の財政立て直しを任された男も私服を肥やし、失敗。

そんななか、自然と藩を立て直せる人材は、木工しかいないのではないかとの空気ができてくる。

そして、藩主・幸弘(信安の子)は木工に藩主に次ぐ勝手掛に任命する。驚く木工は断固拒否するが…。

<恩田木工>
人の上に立つ人間というのは、こういう人じゃないとダメなんでしょうね。人望がある。私利私欲に走らない。

しかし、そういう人間はなかなか権力を持とうと思わない。大役が回ってきても「ラッキー」なんて思わず、責任の重さを痛感する…。

この辺のくだりは、すごいです。木工の親戚一同は大喜びするなか、彼の発した言葉でみんな黙ってしまいます。木工の覚悟を政治家の皆さんにはぜひ知ってもらいたいですね

一方、原八郎にしても、次の勝手掛にしても、大役が回ってくると、いばり、政敵を追い、仲間を集め、私利私欲に走る。

ま、これが普通の人間なのでしょうけど。

<木工の人間としてのエピソード>
私利私欲に走らなかった木工。でも、そんな人間は嘘っぽいですね。池波さんは木工の普通の人間としてのエピソードに触れています。

オレだって普通の人間。倹約令を出していても、酒を飲みたい時はある。

そんな時は、隠れてこっそりと飲む…。

このエピソードに思わず涙がこぼれそうになりました。



























忍者丹波大介

2007-09-25 01:58:10 | 池波正太郎



本日は、池波忍者の長編「忍者丹波大介」を紹介します。

<評価>☆
忍者ものにこだわりがあるオレ的には、評価は低いです。

しかし、うちのオヤジは本書を読んで「あれはすごく面白かったな~」と言うておりました。オヤジ的には☆☆☆の満点です。

ま、なんかの忍者本にも本書を池波忍者ものの代名詞として紹介してありました。オレのたわごとは無視してOKです。

<ひとり言>
ま、オレが司馬忍者ものの続きを読みたいと思っていたのが、そもそもの間違いです。司馬もの、池波もの、それぞれが独立した作品ですからね。

個人的には、大介と伊賀忍者・小虎との戦いや、甲賀忍者・岩根小五郎のかっこよさ、大介のおば・笹江のぶきみさは好きでした。

<内容>
甲賀忍者・丹波大介は真田家の忍びとして活躍。

しかし、頭領・山中大和守俊房は徳川家康のために働くことに決め、真田幸村暗殺を企てる。その指揮を大介にさせることに。

悩む大介は甲賀を裏切り、幸村のために働くことを決める…。

<余談>
本書には、岩根小五郎や奥村弥五兵衛、向井佐助といったおなじみの忍びが登場します。本書の続編にあたるのが「火の国の城」です。

<池波忍者は山本マサ?>
え~、いつも池波忍者と司馬忍者について考えているオレです。

思うに司馬忍者の主人公・葛籠重蔵や霧隠才蔵はプロ野球でいうところの松坂やマー君のような存在ですね。最初からスーパーマンです。だから、どんなピンチでも一人で何とかします。

池波忍者は、中日の山本マサや広島の黒田のような感じですね。入団して数年はパッとしない。しかし、数年後に球界のエースとなる。だから、ピンチになると必ず誰かが(偶然)助けてくれる、というような…。

大介も「蝶の戦記」のお蝶も、出だしはそこそこの忍者ですが、話のラストあたりや次の作品ではスーパー忍者に成長しています。

<ラスト>
個人的には「ちょっと…」という終わり方です。オレ的にはイマイチです。これが良いという人も多いでしょうが、人ぞれぞれというところで…。

オレ的には、大介と於志津のハッピーエンドを望んで読んでおりました。

<余談2>
なんか、いつもこんな感じですが、けっして池波さんを嫌いではありません。明日は、非常に面白かった直木賞受賞作「真田騒動」を紹介したいと思います。














戦国無頼-真田ゲリラ隊

2007-09-23 03:11:46 | 池波正太郎


「霧に消えた影」に収録の「戦国無頼-真田ゲリラ隊」を紹介します。

この小説は、最近のMY池波(忍者&真田)ブームの数年前に買ってました。で、何気にこの本をめくっていたら、真田忍び・奥村弥五兵衛の話があってびっくり。

「そういえば」と思い、最近読み返したしだいです。

<弥五兵衛>
本書を読んでいると、実在した忍びだったというくだりがあります。池波さんは、かなり真田関連の歴史を調べられていたので、本当なのでしょうね。

しかし、いろんな忍者本を読んでも、弥五兵衛の名前は出てきません。あるいは、忍びというより、忍びを統括していた人物だったのかもしれませんね。

<弥五兵衛2>
本書は、弥五兵衛が真田幸村の下で行った様々な忍び活動について言及しています。それは後方撹乱や流言といったもので、池波さんの一連の忍者もので登場する「関ヶ原での家康襲撃」などといった小説的な話はいっさい出てきません。

<評価>☆☆
池波さんにとって、弥五兵衛との出会いは特別だったんでしょうね。池波さんは真田家に詳しい郷土史家と交流があったそうですし、あるいは、そういった出会いから弥五兵衛なる人物を知ったのかもしれないですね。

本書は、なんの予備知識もなく読んだ時は、猿飛佐助や霧隠才蔵といったフィクションではない真田家の忍びの活躍をうかがえて興味をそそられます。

池波さんの一連の忍者ものを読み終えた後に読むと、この弥五兵衛という謎の忍びから、丹波大介や向井佐助といった一連のキャラクターは生まれたのかと思いいっそう興味をそそられると思います。

<最後>
「弥五兵衛の最後は分からない。おそらく、大阪の陣で討ち死にしたのではないか」と書かれてあります。

そう考えると、なんで「真田太平記」では大阪の陣前に死なせたのでしょうか。

もしかしたら、弥五兵衛伝説から生まれた猿飛佐助。その佐助をモデルにした向井佐助に弥五兵衛の役をやらせたかったのかもしれませんね。

でも、弥五兵衛ファンとしてはちょっと残念です…。











霧の女

2007-09-22 03:38:09 | 池波正太郎



本日は「黒幕」に収録されている「霧の女」です。

池波忍者小説をあらかた読んだと思っていたところ、この短編があると知り、深夜ブックオフで買いました。しかし、ブックオフも値段が高いですね~。だいたい小説は350円ですからね。中古本は200円ぐらいにしてほしいですね。


<内容>
長編「忍びの女」の主人公・小たまの話と知り、うれしくなって買ったのですが、内容は「忍びの女」とまったく同じで、ちょっと拍子抜けしました。

<ストーリー>
甲賀忍者・小たまが、福島正則に近づき、家康のために情報収集しつつも、正則を愛し、正則の最後を看取るというもの。

<評価>☆
う~ん「忍びの女」を読んだ後だったので、評価は低いです。たとえば、短編集「忍者群像」に収められている「寝返り寅松」と長編「忍びの旗」などは、同じ話でも楽しめましたが、この作品と「忍びの女」はまったく同じなのでちょっと…、ていうところです。

<短編&長編>
池波さんは本当に同じ内容の話を、長編や短編で何度も発表しますね。しかも、小たまの話はフィクションなのに…。ノンフィクションなら、まだ分かる気がしますが。

あと、真田ものの短編を多く書かれていますが、真田太平記を読んでいると、まるまる短編のエピソードをそのまま書いているところが多々あります。なので、オレみたいに「真田太平記」を読みながら、池波さんの真田ものの短編を読んでいると面白さが半減します。気をつけてください!

一方、司馬さんは、大村益次郎や河井継之助といった実在した人物に限って、短編と長編で書いていますね。しかし、別のエピソードを取り上げたり、継之助にいたっては長編で英雄として、短編では非英雄の側面から書いています。

<天才・司馬、秀才・池波>
司馬さんは本当に天才だったと思います。似たような話は書かないし、剣客・千葉周作や宮本武蔵の長編と短編もまったく違うテイストです。

一方、池波さんは秀才かなと思います。同じ話を何度も書いて、面白さを高めていく。そして、面白くするためには、前に発表した作品の設定を変えることもいとわない。

もちろん、どちらが優れているかではありません。本屋に行ったら、二人の作家の本の多さは他を圧倒しているわけですから。

ま、池波さんは「鬼平犯科帖」「剣客商売」「藤枝梅安」などのフィクションものが主流といえば主流ですし、両者を同じ土俵に上げるのはフェアではありませんね。

(歴史小説)司馬      (中間)池波      (時代小説)山本周五郎

という感じでしょうか。

余談ですが「鬼平」「剣客」「梅安」は、さいとうたかおさんの漫画で全部読んでいます。原作は、読んだことありませんが。知人は小説「鬼平」「剣客」をブックオフでせっせと集めております。

ま、新聞記者(司馬)と脚本家(池波)という2人の出身の違いが、スタイルの違いになっているのもしれませんが。





釣天井事件-本多正純

2007-09-21 02:05:31 | 池波正太郎


池波さんの「霧に消えた影」に収録されている「釣天井事件-本多正純」を紹介します。

なんで…突然、と思われる人もいると思います。なんか、忍者ものに強い執着心があるので、池波さんの忍者もののあら探しをし続けて後味が悪いので、罪滅ぼし的に池波さんの「あら探しをしない」本を紹介しようと思います・・。

<釣天井>
誰の本か忘れましたが、「あの有名な宇都宮釣り天井事件」という一文を読んだことがあります。

「なんだ…つり天井事件って? しかも有名なの?」

ま、当時はウィキペディアなども知らず、つり天井事件が気になってしょうがない。

て、ことで本屋に行って、本書と出会ったしだいです。

<評価>☆☆
いや~、本書を読んで、オレの中で釣り天井がやっと「有名」の仲間入りしました。

本書は「宇都宮釣り天井事件」の俗説と真実を述べた本です。


<俗説>
これは、徳川家の謀将・本多正純が家光を暗殺するため、宇都宮城に釣り天井なるものを作り、風呂に入った家光に天井を落とすというものだったそうです。

家光は東照宮に参詣した途中に宇都宮城に泊まる予定だったそうです。

<真実>
俗説のくだりで、

①正純は家光殺しはしないだろう。
②釣り天井なんか作るより、普通に暗殺すればいいいのでは…

と思いました。

池波さんは、正純は家光を殺そうとしなかったし、そもそも相手は家光ではなく、2代将軍・秀忠だったそうです。もちろん、釣り天井なるものもなかったといっています。

ようは、幕府の重臣・正純と土井利勝の権力争いから生まれた事件ということです。このへんの事情は「列藩騒動録」(海音寺潮五郎)にも詳しいですが。

重臣・正純を追い落とすため、幕府に無断で城を改築したのは秀忠に害をなそうとしているためだ、とか言い立て、それに尾ひれがついたのが真相のようです。

<お坊ちゃん>
本多正純は、今風の言葉でいうなら2世議員です。オヤジは家康の謀将・本多正信です。正信は、若いころに家康に謀反を起こし三河から逃亡するなど、人間の機微というものを知っていた苦労人でもあったそうです。

だから、正信が家康のブレーンになった後年、家康がいくら加増しようとも辞退したそうです。ただでさえ人の恨みを買っているのに、これ以上加増されて、さらに恨みを買わないためだったそうです。

ところが、正純は生まれながらの重臣で、秀忠の謀将でした。だから、家康が加増してくれたら、当たり前のように受けたそうです。将軍のブレーンで大大名となり、周囲の妬みは増すいっぽうだったのに、そんなことはまったく気づかないお坊ちゃんだったそうです。

やはり、苦労しらずの二世なんですね。

そういえば、自民党総裁を辞任した安倍さんは有名な二世議員ですが、総裁候補の福田さんと麻生さんも由緒正しき二世議員ですね。小泉さんもそうでしたが。

こんなんで、日本はだいじょうぶなんでしょうか。














槍の忠弥

2007-09-19 01:25:46 | 池波正太郎


池波さんの「忍者群像」最後の作品です。

内容は…、まったく覚えていません! たしか、これこそ隠密ものだったような気がします。

ま、忍者ものには異常に執着心を見せるオレですが、それ以外はスルーしてしまうのはいけないところですね。で、最初をちょっと読んでも思い出せない…。


<評価&内容>
評価は☆ということで。内容は…、とりあえず、由比正雪がらみの話です。で、槍の丸橋忠弥も出てきます。この二人、あまりよく知りません。

たまたま、この「忍者群像」を読む前に、司馬さんの「大盗禅師」を読んでいました。この作品も正雪がらみで、槍の忠弥も出てきました。しかし、こちらもあまり覚えていない…。

<由比正雪>
ちなみにウィキペディアで調べてみました。江戸時代のたいそう人気のあった軍学者で、駿府で幕府転覆を狙って反乱を起こすも事前に発覚。自害しております。

<丸橋忠弥>
正雪の片腕で、一説には長曽我部盛親の子とも。彼のせいで、幕府に正雪の反乱が露見したそうです。その後、処刑。

<最後に>
え~、本来なら、読み直しても内容を書こうと思ったのですが、毎日レビューはしんどいっすね。ということで、手抜きバージョンで終わります。池波さん、スミマセン!









戦陣眼鏡

2007-09-18 02:56:53 | 池波正太郎


池波さんの「忍者群像」収録作です。内容は忘れてましたが、ちょっと読んで“あれか”と思い出しました。「忍者群像」収録作ですが、個人的には忍者ものとは思っていません。隠密ものですね。

「どこが違うの?」と聞かれても困りますが…。ま、テキトーです。

<内容>


主人公は徳川家の譜代・水野監物忠善で、徳川家光の時代。豪傑肌の彼は、異常に功名心が強かった。

ある時、老中・酒井忠勝に呼び出され、三河岡崎に移れという。このなんでもない命令を、水野監物は大きな意味のあるものと受け止める…。

<評価>☆+半分
☆が二つではない理由は、タイトルを見ても内容を思い出さなかったので。でも、最初のくだりを読み直すと「ああ、あの話か」と思い出したので、☆1・5です。

池波さんの類まれな人間観察力から生まれたような話ですね。主人公の「オイタぶり」がいいです。こんな人間よくいます。ま、おれもそんな感じですが…。

勝手に勘違いして暴走。でも、上の人間はちゃんと知ってて、知らないふりをする。

できることなら、知らないふりをする人間の方になりたいっす。

池波さんの、この人物眼というのはどこからきているのでしょうか。司馬さんもそうですが、オレみたいに漫然と生きている人間とは別の人間のように思えます。

<ラスト>
池波さんらしいラストですね。ま、劇作家出身らしいといえば、それまでですが。「忍者丹波大介」に似ているともいえますね。このくだりは好き嫌いが分かれるんじゃないでしょうか。

今作は、ぼくもありです。

<池波&司馬>
この二人の大作家のファンはどちらか片方のファンになり、片方を毛嫌いするようですね。司馬ファンは池波さんの小説はあまり読まず、池波さんのファンは司馬作品が体質的に受け付けないようです。(ま、司馬ファンは司馬作品を唯一のものと思う傾向がありますが…)

個人的には、ぼくはどちらも大丈夫ですが、どちらのファンかといわれれば、司馬さんの大ファンです。ということで、どうしても司馬さんよりのコメントが出てしまうのはシカタのないことで、池波さんのファンの方には申し訳ありません。