くノ一が活躍する池波さんの「蝶の戦記」を紹介します。この作品も上下巻2冊です。
<評価>☆☆
池波さんの長編忍者ものの中では、ベスト3に入る面白さでした。まず、女忍びの話というのが新鮮。さらに、実在した忍者・杉谷善住坊が出てきたのもうれしかったです。そして、もうひとつ。お婆?くの一・伊佐木の存在。お蝶の保護者的な存在で、この伊佐木の化け物ぶりがいい。まさにスーパーウーマンです。こんな忍者大好きです!
<評価2>
満点ではないですが、ほんとに楽しめました。しかも、お蝶が甲賀を裏切らなかったのがうれしかった! 内心、ホッとしました(笑)。甲賀にも、忠誠を尽くすのがいたのかと…(涙)。
あと「夜の戦士」と併せて読むと、楽しさ倍増です。「夜の戦士」は武田方の話で、本書は上杉方の話なので。両方の見方から、川中島の戦いを見れます。
<スーパーマン>
司馬さんは主人公をスーパーマン(すごい忍者のこと)にしますが、池波さんはどちらかというと主人公以外をスーパーマンにして、主人公はスーパーマンではない感じがします。オレはスーパーマン(なんのこっちゃ!)が好きなので、この伊佐木という存在はとてもいいです。ま、お蝶も「火の国の城」ではお婆になり、伊佐木と同じスーパーウーマンになっておりますが。
<続編>
ちなみに、本作の続編は2つあります。ひとつは、井笠半四郎が主人公の「忍びの風」。お蝶はこの作品では準主役といった感じです。
その次が「火の国の城」。これは丹波大介とダブル主演といった感じですね。池波さんはこの二人が好きだったのでしょうね。しかし、弥五兵衛と違い、残念ながら短編では登場しません。
<内容>
基本的に2部構成になっています。
前半は、上杉謙信の身辺警備をひそかに行うという話。後半は、織田信長暗殺に命を懸ける話です。
そういった中、お蝶は、甲賀を代表する忍びで、頭領の弟・杉谷善住坊とのプラトニックな恋愛に身を焦がします。一方で、上杉家の家臣(名前忘れました)と激しい恋愛を経験します。
<くノ一>
いろいろ調べてみますと、女忍びというのは微妙な存在だったようですね。まず、実在した有名な女忍びはいません。というより、女忍びはいなかったといってもいいですね。やはり、どんな優れたスーパーウーマンでも、男には(身体的に)かなわないわけですから。
しかし、敵に近づいて、情報収集するような人たちはいたようです。しかし、体を武器にというのではなく、妻になったりして、という感じだったそうです。もちろん、本書のように戦働きをするような女忍びはフィクションの世界だけのようですが。
<明智光秀を殺したのは誰だ…!>
ま、だいたい池波さんの作品では、甲賀忍者・岩根小五郎ということになっています。しかし、本書では、お蝶が「私が殺した」と言うております。ただ、面白いことに、池波さんは、お蝶が光秀を殺したというシーンは書いておりません。ただ、お蝶が自分で言うだけです。
お蝶、お前ウソついてないかい?
とも考えられます。
これはぜひ、お蝶の言い分を聞いてみたいですね。