本日も、池波さんの「忍者群像」収録作を紹介します。
主人公は、昨日紹介した真田忍び・奥村弥五兵衛です。この作品は「闇の中の声」の続編にあたる作品で、前作から4年後に発表されています。
<内容>
徳川家康が天下を統一し、秀頼を屈服させようと躍起になっていたころ。家康は加藤清正の存在を疎ましく感じるようになっていた。
一方、清正は豊家安泰のために淀殿を消すしかないと考える。そこで、九度山に蟄居中の真田昌幸に密書を送る。密書を運んだのは、真田の忍び・奥村弥五兵衛だった。
そこには
「真田の忍び・弥五兵衛を貸していただきたい。折を見て、淀殿を暗殺したい」
そう書かれていた。
弥五兵衛は昌幸の返事を清正に伝えるため、九度山を抜け出した。
そんな弥五兵衛の前に忍びが現れる。
「おれが九度山へ行ったことがどうしてばれたのだ…」
なんとか、敵を撃退した弥五兵衛は力尽きる。そこへ、小たまという女性が現れる。彼女は、弥五兵衛が仁兵衛という名前で京に住む家の隣家の女だった…。
<評価>☆☆
映画で見るスパイ合戦同様、忍者の戦いは油断もすきもない。そう感じさせる話です。忍びには、つくづく平穏な時間はなかったのだろうなと感じてしまいます。
この作品の恐ろしさ(面白さ?)は、まさに弥五兵衛というスーパー忍者の心のスキをついた相手方の忍びの暗躍にあると思います。油断大敵ですね!
池波さんはこの作品がよっぽど気にいったのでしょうね。手を変え、品を変え、いろんなところで書いています。ちょっと手を変えすぎかな…と。
<梅春>
この「やぶれ弥五兵衛」のエピソードには必ず登場します。加藤清正のお抱え料理人で、この話のキーマンです。長編「火の国の城」「真田太平記」にも登場します。梅春の設定は変わらないのですが、そのほかは変わっています。
<小たま>
まずはこの人ですね。本作、長編「火の国の城」「忍びの女」で微妙に設定が違います。しかも、3作を並べると微妙なんですが、2作(どの作品だったかは忘れました)を比べるとまったく設定が変わります。さらに、「真田太平記」に梅春は登場するのに、小たまは出てこない、なんてことも。
<弥五兵衛のラスト&京の隣の家&襲撃>
この作品は弥五兵衛のラストがクライマックスですが、「真田太平記」「火の国の城」「忍びの女」でそれぞれ違っています。
さらに弥五兵衛の京の潜伏先の隣家に敵の忍びが潜伏しています。この辺のエピソードも作品によって微妙&まったく違っています。
さらに…弥五兵衛が清正の家来になる&ならない。もしくは、その辺のエピソードも微妙&まったく作品によって異なります。
ま、正しい読み方は、オレのようにあら探しみたいなさもしいことをせず、どのエピソードが面白いかを読み比べることでしょうね。
でも…、オレみたいなひねくれ者にはつじつまがあってる方が楽しめます。
だって、歴史小説のファンなので。本能寺の変で、殺された人間が小説によって違っていたらイヤじゃないですか…。
飛躍しすぎかな。