司馬遼太郎さんの「大坂侍」から「法駕籠のご寮人さん」です。
主人公は、口入れ屋の女主人のお婦以さんです。気のせいか、司馬さんの小説には、お婦以という名前の女性がよく出てきます。
なので、この話はフィクションかもしれないですね。
<内容>
お婦以は後家で口入れ屋の女主人。
番頭の松じじいは独り身のお婦以をあわれみ、勤皇の越前福井藩士・三岡八郎に主人の話し相手になってくれるよう依頼。
一方で、新撰組の山崎蒸にも同じ依頼をする。
やがて、三岡と山崎が口入れ屋で同席するハメに。勤皇と佐幕という二人だったが、次第に奇妙な友情関係が生まれていく。
そんななか、松じじいだけはあせっていた。
「果たして、お婦以さんはどちらの男と付き合っているのか…」
世の中が騒然とする中、松じじいは二人の動向に注目する…。
<感想>☆☆★
この話の面白さは、番頭の松じじいのおせっかいにあります。
若い後家の主人・お婦以は彼氏が欲しいだろうと思い、二人の男を用意します。
一人が勤皇の志士・三岡。
もう一人が新撰組の山崎。
松じじいはお婦以がどちらの男と付き合っているのか一生懸命推理します(笑)。
そして、二人が激動の幕末を生き残ることを期待します。
そして、最後にはすんごいオチが待っています。
こういうところは、司馬さんならではだと思います。
<山崎蒸>
山崎が死んで、水葬にされる有名なエピソードが登場します。
<松じじい>
は最後に「女は魔物やな~」とこぼしますが、それはちょっと違う気がしますね(笑)。
単純に、松じじいが邪推して、勘違いしただけですからね。
ま、そういうところがこの話の面白いところですけど。
<ご寮人さん>
商家の「若奥さん」を意味する言葉だそうです。「ごりょんさん」と読みます。
法駕籠は、お婦以さんがやっている口入れ屋のことですね。口入れ屋は奉公人の周旋・仲介をするところです。
<次回は…>
「アームストロング砲」収録の「薩摩淨福寺党」を紹介します。
新撰組を困らせた薩摩の男の話です。