:〔続〕ウサギの日記

:以前「ウサギの日記」と言うブログを書いていました。事情あって閉鎖しましたが、強い要望に押されて再開します。よろしく。

★ 知床日記、または、鹿とウサギのデート、または、神学的対話-その12

2008-05-21 20:40:47 | ★ 日記 ・ 小話

     

〔ウサギ〕 「ファンダメンタル・オプション」ってなーに?聞いたことないな。
〔エゾ鹿〕 それはまあ、平たく言えば「基底的選択」とか「根底をなす選択」ということかな?
〔ウサギ〕 エーッ?ちっともひらたくなんかない。ますます分かんないよ。
〔エゾ鹿〕 それでは、何かたとえで説明するとしよう。優しいお父さんが、小さな坊やに、「遊びに行った先のお友達の家で出されたお菓子は、たいてい何を食べてもいいよ。だけど、チョコレートだけは絶対駄目だよ。だって、お前はカカオアレルギーなんだから」と。
いい子の坊やは、お友達のお母さんが出してくれるおやつをいつも喜んで食べた。けれども、チョコレートが出ると、すぐお父さんの言いつけを思い出して、手を出さなかった。自分の家で食べたことがなかったから、食べないことにたいした意思の努力も必要なかった。それどころか、お父さんの言いつけを今日も守った事で、内心誇らしく思い、いい気分だった。家に帰って、お父さんに、今日「○○君のお家でチョコレートが出たけれど、お父さんに言われていたから僕食べなかったよ」というと、お父さんは「坊やはいい子だね」といって褒めてくれて、膝の上で優しくしてくれた。とても嬉しかった。
ところが、お友達の中に一人凄い悪餓鬼がいた。その子のお母さんは、坊やのアレルギーのことを知らずに、おやつにチョコテートを出してくれた。坊やは、この日もお父さんの褒めてくれるときの優しい顔を思い浮かべながら、当たり前のことのように手を出さなかった。
すると、悪餓鬼はいった「おや、どうして食べないの。いいから、お前もたべろよ。これ美味しいんだぞー!」
「だって、お父さんが食べたら駄目だって言ったもの。僕、アレルギーなんだって。食べたら悪い副作用が出て、死んじゃうんだって。だから、お父さんの言うとおり、僕食べない!」
「バッカだなー、お前。チョコレート食べて死んだなんて話、聴いたことないよ。お前の父さん、餓鬼のころ貧しくてチョコレート食べられなかったもんだから、ひがんで、お前にも同じ思いをさせようとして、嘘ついてるんじゃない。アレルギーになんてなるわけないさ!美味しいんだぞー、これ!」
そういって、悪餓鬼はチョコレートを一つ口に放り込み、さも美味しそうに、むしゃむしゃと食べて見せた。彼の口から、噛み砕かれたチョコレートの甘い香りが漂ってきて、思わず坊やの口の中に唾が湧いてきた。
「おいしそうだなー、欲しいなー、食べたいなー。でも、だめだ、分かったらきっとお父さんがっかりする。叱られるかも・・・。」
悪餓鬼は、またもう一つのチョコレートを二本の指でつまんで、彼の目の前に突き出し、それをゆっくり自分の口の中に放り込んだ。またも、甘い香りが漂ってきた。
「美味しそうだなー。欲しいなー。でも、だめだめ。お父さんが悲しむ。僕はいい子で居なきゃ。・・・でも、もしお父さんが嘘ついてるのだとしたら?いや、そんなわけあるはずがない、あの優しいお父さんに限って。・・・だけど、おいしそうだなー!一つぐらい食べても、黙っていればわかんない?!でもそんなことしたら、お父さんの顔、まともに見られなくなる。」
心臓がどきどきして、胸が苦しくなって、頭ががんがんして、口の中に唾が溜まって・・・・。
         (さて、この子はその後どうなったでしょう?続きをお楽しみに。) 
 

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