~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
もう一つの 「銀」
(ピョンチャンオリンピックの陰で)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
都営新宿線の瑞江駅の駅前に、都内に3-400ある日本語学校の一つがある。そこに3人のコロンビア人の若者が日本語を学んでいる。彼らは徒歩15分ほどの所にある家に住み日本語の基礎をマスターしたらローマに行くことになっている。ローマには前の教皇ベネディクト16世が四国の高松から移植した「日本のためのレデンプトーリス・マーテル神学院」が彼らを待っている。
3人はローマの神学院を経て司祭になれば、将来宣教師として日本に派遣されることになっている。今現在、彼らの立場は語学留学生であるが、一之江の家での生活のリズムは神学校のそれとほぼ同じと言えるだろう。
昨年7月に日本にやってきて約半年。日本語学校に入学してまだ4か月余りだが、学校の行事の中にスピーチコンテストというのがある。初級の数クラスがひとまとまり、中・上級の数クラスがもう一つの塊で、それぞれのグループの中で予選があって、各クラス2人の代表が本選でスピーチをする。我が家の3人の若者のうち20歳のマテオ君が彼のクラス代表2人の内に選ばれた。私は父兄のような気分で聴きに行った。
マテオ君は休憩前のスピーチのトップバッターだった。
まずは彼のスピーチを聴いてみよう。
テーマ:「時間とともに変わった私の趣味」
マルティネス・マテオ
わたしの好きなことは今まで度々かわりました。
私はこどもの時ビデオゲームが好きでした。そして、アクションフィギュアで友達と遊ぶことも大好きでした。これから今の趣味について話したいです。
だい1は、がっきをひくことです。9歳の時おじさんは私にピアノのひきかたと、がくふの読み方を教えました。ちょっと面白くなかったです。それで、ギターがいちばん好きだったから、10歳の時にはじめてギターをひきました。またうたも好きでしたが上手じゃありませんでした。16歳の時ギターをひくことにつかれましたから、バイオリンを買いました。とても好きでした。今私はピアノとギターとチャランゴとバイオリンをひくことができます。でも、この楽器の中でバイオリンがいちばんできます。
第2は本を読むことです。私は高校をそつぎょうする時まで読むことがぜんぜん好きじゃありませんでした。でも、3年前に読むことをはじめて好きになりました。これはドストエフスキーの本を読んだ時からです。「つみとばつ」という本です。あとでドストエフスキーの本を多く読みました。1か月ごとに本を一さつ読むことをめざしました。去年15さついじょうの本を読みました。そして、さいきんぼうけんしょうせつを読みました。今まで、私の好きな本は3つです。アレクサンドル・デュマの「モンテクリストはく」と「つみとばつ」とC.S.ルイスの「ナルニア国ものがたり」です。どうぞ、皆さんこのような本を読んでいなければ、読んでみませんか。ぜひおすすめします。
はっぴょうをおわる前に、バイオリンでパイレーツ・オブ・カリビアンをひきたいとおもいます。
彼はスピーチを終えるとおもむろにバイオリンを取り出してゆっくりと弾き始めた
全部で40人余りの発表者の中で楽器を弾いたのは彼ただ一人だった
弾き終えてかれは満足げにほほ笑んだ
かれは、原稿は持たず、全て空んじて堂々と話した
発表者の中には途中で詰まって、あとは紙を見ながらと言う者もすくなくなかったのに。金賞が一人、銀賞が二人。金賞には賞状の他に1万円、銀賞には5000円というささやかな賞金もついた。
右のミャンマーからの留学生が金賞、マテオと左のベトナムの女子学生が銀賞だった。後半の中・上級のグループからも金賞一人、銀賞二人が選ばれた。たいてい日本での暮らし、日本で戸惑ったこと、人間関係などの生活の体験にテーマを選んでいたが、マテオのスピーチの内容は少し違っていて印象的だったのだろうか。最後に校長先生から一人一人のスピーチに対して丁寧な暖かい講評があった。
スピーチをした全員の集合写真。上の「ピー」の字の下、笑顔の背広の男性が若い校長先生。情熱家という印象を受けた。マテオ君は最後列右端。
ピョンチャンオリンピックで日本は過去最多のメダルを獲得した。
その蔭で、ささやかな銀賞に輝いたマテオ君を讃えたいと思って、ブログを書きました。
(終わり)