:〔続〕ウサギの日記

:以前「ウサギの日記」と言うブログを書いていました。事情あって閉鎖しましたが、強い要望に押されて再開します。よろしく。

★ 教皇への手紙

2011-09-15 00:30:39 | ★ 聖書のたとえ話

谷口神父メール 10/01/26


ローマ教皇に届いた手紙


日本語で「突然このような文書でお願いを差し上げる非礼をお許しください・・・・」という書き出しで始まる1ページ半の請願書が、203人の賛同者の署名とともに発送されたのは、昨年のクリスマス前夜あたりのことだったと推測されます。宛先は、

バチカン市国
ローマ教皇
ベネディクト16世聖下

となっていました。

 差出人は、東かがわ市の元市長と有志達で、閉鎖になった高松の国際宣教神学院「レデンプトーリスマーテル」の土地と建物が第三者に売却されるらしいという噂に対して立ち上がったものでした。

 ローマにいる私たちのもとにその事実が原文の写しとともに知らされたのは、クリスマス休暇明けの今年1月6日過ぎでした。それには、神学院設立当時から地元の人たちに良く知られていた当時の福音宣教省長官のトムコ枢機卿と、信徒省の副長官だったコルデス枢機卿(当時は大司教)に写しを届けてほしいという依頼が添えられていました。

 トムコ枢機卿は、神学校の建物の定礎式のためにわざわざローマから四国まで来られた、いわば神学院の生みの親のような方でしたが、それを受け取った時、近々教皇に会うと明言されました。

 そして今日(25日)、同枢機卿から電話があり、先週の土曜日(1月23日)教皇に会って親しく日本の神学校のことについて話し合った。目下いろいろ検討中で詳しいことは言えないが・・・・、という極めて含みのある話でした。

 アメリカの大統領に宛てて小学生が書いた手紙に大統領から返事が届いた、というような美談がありますが、それは、その種の手紙にきめ細かく対応するためにあるスタッフ集団が書いたもので、いちいち大統領が読んでいるはずはありません。世界にざっと10億と言われるカトリック信徒から、教皇に宛てられて届く手紙の数も半端ではないかもしれませんが、それらはほとんど教皇の知らないところで処理されているだろうと思われます。現に、後で東かがわ市から聞いたところでは、バチカン大使館を経由して送った請願文は確かにローマまで届いたとしても、それは恐らく秘書局止まりで、教皇自身にまで届いたとは思われません。まさに地元の人々の熱意が生んだ奇跡のようなものでしょう。


 



 ここに、その請願書の全文を披露いたしましょう。

~~~~~~~~~~

バチカン市国
ローマ教皇
ベネデイクト16世聖下
                          2009年12月25日

 突然のこのような文書でのお願いを差し上げる非礼をお許し下さい。

下に署名した私どもは日本の東かがわ市と香川県の住民であり、同市の国際宣教神学院「レデンプトーリス・マーテル」の創設と発展に大きな期待を寄せ、その発足以前から過去20年以上に亘り、いささかの貢献をなしてきた有志一同であります。

 私たちは神学院関係者の熱意とその最大の理解者であり協力者であった故長町光男氏らの絶大な努力に共鳴し、この神学院がローマと結ばれた東西文明の架け橋となり、国境を越えた若者たちの交流や人的な絆の深まりが遠い将来に向けての相互の精神文化に大いなる実りをもたらすものと信じ、その永続的な発展に夢を託したものであります。

 ところが、昨年10月には神学生が静かに姿を消し、今年11月には残っていた少数のスタッフも建物から退去しいなくなりました。噂によれば、近い将来その土地と建物は第三者に売り渡されるのではないかと言われています。私たちに対して何の正式な説明もないままこのような事態が進行しつつあることに、私たちは大きな失望と憂慮を禁じ得ず、緊急に直接お手紙を差し上げる次第です。

 私たちが永年に亘りこの神学校の成立と発展に期待し物心両面で協力を惜しまなかったのは、この地方の長い歴史に育まれ根付いている仏教とカトリック教会に代表されるキリスト教という世界の二つの偉大な宗教が、この神学院を介して出会い、その対話を通して世界の平和と精神文化の発展に貢献することを期待したからであります。

 にもかかわらず、私たちに対して何の説明も無いまま一方的に閉鎖され、第三者に売却処分されるようなことになれば、それは地元の私たちに対する重大な背信行為であり、カトリック教会の日本社会におけるイメージを大きく傷つけ、日本における教会の将来に対して修復し難い損失をもたらすことになるのではと危惧するものであります。

 私たちはこの土地と建物が、大勢の善意の人たちの浄財と努力によって出来上がったものであることを知っています。そのような貴重な施設が僅かな価格で、一私企業の利益に奉仕するために払下げられることに私たちは到底同意することはできません。

 とらまる公園から遠望される神学校の佇まいは、既に地元の一つのシンボルとなっています。神学校の入り口には、故長町光男氏の石像が教皇ヨハネ・パウロ二世の賞状と共に佇んでいます。神学院の玄関脇には、1994年に当時の福音宣教省長官のトムコ枢機卿が来日して自ら定礎式を司式した記念の石標が据えられています。神学校の奥庭にはイタリア大理石の聖母像が佇んでいて、早朝地元の敬虔な老婦人たちが崇敬に訪れています。海に向かって聳える大十字架は、夜間照明され高速道路を走る車の道標ともなっています。

地元有志がローマのレデンプトーリス・マーテル神学院を訪れた際にその庭に落ちていた地中海松の実を密かに持ち帰ったその実は芽を出し、今では3メートル余りに育って神学院を守っています。2004年には私たちの有志が、日本の桜の苗木30本を携えてローマを訪れてバチカン庭園に植樹し、時の教皇ヨハネ・パウロ二世に寄贈いたしました。

これらのささやかなひとつひとつが、神学院関係者や地元の人たちの熱い思いと交流、歩みの具体的な形になったものであり貴重な財産でもあります。この土地と建物そして国際宣教神学院「レデンプトーリス・マーテル」が、私たちの期待通りに末永く地元の文化的資産として残り、所期の目的に沿った役割を果たしていくことを強く期待しています。

聖下がこの小さな問題に目を留められ、直接関与することによって将来に禍根を残すことの無いように善処されますよう切にお願い申し上げます。

(署名者)

    藤井秀城    東かがわ市長
    上村 求    東かがわ市副市長
    黒田俊英    前東かがわ市国際交流協会会長、東かがわ市商工会長
    田中勝弘    東かがわ市国際交流協会会長、東かがわ市教育委員長
    矢野昭男    東かがわ市議会議長
    中條弘矩    前東かがわ市長
    長町廣幸    故長町光男氏長男、東かがわ市生涯学習課長 

(この後に賛同者の署名、計203名分が続く)

 
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