新古今和歌集の部屋

養生訓 巻第三飲食上 好きな物 腹八分目 酒食と薬 五思


すける物にあひうゑたる時にあたり味すぐれて珍

味なる食にあひ其品おほく前につらなるともよき

ほどのかぎりの外はかたくつゝしみて其節にすぐすべ

からず。

飲食ものにむかへばむさぼりの心すゝみて多きにすぐる

事をおぼえざるはつねに人のならひ也。酒食茶湯

ともによきほどゝ思ふよりもひかえて七八分にて猶も

不足と思ふ時早くやむべし。飲食して後には必十

分にみつるもの也。食する時十分と思へば必あきみ

ちて分に過て病となる。

酒食過したゝりをなすに酒食を消すつよき

薬を用ひざれば酒食を消化しがたし。たとへば敵わが

領内に乱入しあだをなして城郭を攻破らんとす。こな

たよりも強兵を出して防戦せしめわが士卒多く

打死せざれば敵にかちがたし。薬を用て食を消化する

は是わが腹中を以敵身方の戦場とするなり。飲食

する所の酒食敵となりてわが腹中をせめやぶるのみ

ならず吾が用る所のつよき薬も皆病を攻れば

元氣もへる。敵兵も身方の兵もわが腹中に入乱れ

戦つて元氣を損じやぶる事甚し。敵をわが領内に

引入て戦はんより外にふせぎて内に入ざらんにはしかじ。

酒食を過さずしてひかへば敵とはなるべからず。つよき薬

を用てわが腹中を敵身方の合戦場とするは意の氣

をそこなひてうらめし。

食する時五思あり。一には此食の来る所を思ひやるべし。

幼くしては父の養をうけ年長しては君恩によ

れり。是を思て忘るべからず。或君父ならずして兄弟

親族他人の養をうくる事あり。是又其食の来る所を

思ひて其めぐみ忘るべからず。農工商のわがちからに

はむ者も其國恩を思ふべし。二には此食もと農夫

勤労して作り出せし苦みを思ひやるべし。わするべ

からず。みづから耕さず安楽にて居ながら其養を

うく。其楽を樂しむべし。三にはわれ才德行義な

く君を助け民を治むる功なくして此美味の養

をうくる事幸甚し。四には世にわれより貧しき人

多し。糟糠の食にもあく事なし。或うえて死する

者あり。われは嘉穀をあくまでくらひ飢餓の憂なし。

是大なる幸にあらずや。五には上古の時を思ふべし。上

古には五穀なくして草木の実と根葉を食して飢

をまぬがる。其後五穀出来てもいまだ火食を知ら

ず。釜甑なくして煑食せず生にてかみ食はゞ味なく

腸胃をそこなふべし。今白飯をやはらかに煑てほし

ゐまゝに食し又あつものあり、飣ありて朝夕食に

あけり。且酒醴ありて心を楽しましめ氣血を助く。

されば朝夕食するがとに此五思の内一二なりとも

かはる/"\思ひめぐらして忘るべからず。然らば日々に楽

も亦其中に有べし。是愚か臆説なり。妄にこゝ

に記す。僧家に食時の五観あり。是に同じからず。


【感想】

好きな食べ物、空腹だったり、珍味が有ると、つい食べ過ぎてしまう。食欲とは、抗し難いものである。

ここも有名な腹八分目である。少し足りない、もう少し食べたいと言う時が止め時なのだろう?皿に未だ残っていると、つい食べてしまうのは、小生が貧乏性なのだろう。👋😵🍴

酒の害と薬を、戦争に例えて戒めている。疾患により、抗生物質などを処方されると、胃腸薬、肝臓薬なども同時に渡される。病気を治す治療薬は強い力を持っている為に、自分の身体も損なってしまうと言う事。酒に節操がない小生には、辛い話では有る。

今日は、ロシアのウクライナ進攻から1年。敵に自国領土に入れさせない静かなる戦いが如何に重要かと考えさせられた1年であった。

昔は、食事の前に、家族全員で必ず感謝し「いただきます」と唱えてから食事したものだが、今は、各々が沈黙してテレビ📺️やスマホ📱を見ながら食事している。ただ栄養を摂取して、食事を楽しむ事も無い。これは給餌行為でしか無い。五思とは、

一 親、兄弟、親戚など自分を育ててくれた者に感謝。そしてその食品に携わった農業、漁業、林業、そこから自分の家まで運んでくれた商工業者に感謝する。

二 生産者、流通業者の苦労について感謝する。

三 たいした才能も功績も無いのに、今日も食事にありつける事を思う。

四 自分より貧しい者の中には、餓死する者もいる。粗末な食事とて、ありつける事だけでも感謝する。

五 大昔は、穀物も無く、木の実や根を煮炊きもせず生で食べていた。今は柔らかく炊いたご飯を食べ、温かい汁を食べ、副食も豊富である事を感謝すべき。

と言う貝原益軒の説の理解の愚説。


養生訓巻第三  飲食上

コメント一覧

jikan314
@shou1192_2010 ポエット・M様
いつも愚詠を掲載頂き、有り難うございます。梅の歌について、早速、夕庵様より参考になる旨のコメント頂き嬉しく思っております。掲載をお願いいたします。
ウクライナのロシア進攻から1年。色々な事を考えさせられる事件です。
又愚詠を投稿いたしますので宜しくお願いいたします。😃
shou1192_2010
自閑さん こんばんは。
2月22日付けの「水曜サロン」でも少し触れさせて頂きましたが・・・、

「令和」の出典となった「梅花の歌三十二首并せて序」と共に「梅の歌」の紹介を
頂きありがとうございます。
本件もサロンに集う皆さんにとっても、貴重な資料であり、学びになりますので、
次週3月1日付けの【サロン参加者からのコメント】欄に掲載させて頂きたく、
お願いに参りました。

ご了解頂ければ幸甚です。宜しくお願いいたします。
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