新古今集 14首


夏歌 持統天皇
春過て夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香来山 通定隆雅
秋歌上 左京大夫顕輔
秋風に棚引雲のたえまよりもれいづる月のかげのさやけさ 有定雅

秋歌下 藤原雅経
みよし野の山の秋風さよ更て故郷さむくころもうつ也 院
秋歌下 寂蓮法師
村雨の露もまたひぬ槇のはに霧たちのぼるあきのゆふ暮 有隆雅

秋歌下 摂政太政大臣
きり/\す鳴やしもよのさむしろにころもかたしきひとりかもねん 通有定隆
冬歌 中納言家持
鵲の渡せるはしにをく霜のしろきをみれはよそ更にける 有定隆雅

冬歌 山辺赤人
田子の浦にうち出てみれば白妙の富士の高嶺に雪は降つゝ 隆雅
恋歌一 中納言兼輔
みかの原わきてなかるゝ和泉川いつみきとてか恋しかるらん 定隆

恋歌一 式子内親王
玉のをよ絶なばたえねながらへばしのふる事のよはりもそする 通有定隆雅
恋歌一 伊勢
なには潟みぢかきあしのふしのまもあはでこのよを過してよとや 有定隆雅

恋歌一 曽禰好忠
ゆらのとを渡る舟人かぢを絶行ゑもしらぬこひのみち哉 定隆雅
恋歌三 儀同三司母
わすれじの行すゑまでは難ければけふをかぎりの命とも哉 有隆雅
雑歌上 紫式部
めぐりあひてみしやそれとも分ぬまに雲がくれにし夜半の月影 通有定隆雅
雑歌下 藤原清輔朝臣
なからへばまたこの比や忍ばれんうしと見しよぞいまはこひしき 有定