源氏物語 浮舟
3 「あやしく」と「あやしう」
前述の通り「あやしう」は、「あやしく」のウ音便であり、あやしの連用形である。
これを更に各帖ごとに、見てみると表2の通りである。
「あやしく」と「あやしう」を全体としては、各々123語、99語の55%と若干「あやしく」が多い。
「あやしく」は、若菜上、若菜下、総角、宿木において語数も多く100%となっている。又、語数は少ないものの、桐壺、帚木、空蝉、蛍は全て「あやしく」となっている。続いて朝顔、野分、椎本、藤袴、浮舟、橋姫、梅枝、蜻蛉で、宇治十帖が高い傾向にある。
逆に「あやしう」は、真木柱、明石、葵、澪標、胡蝶で全てとなっている。又、1、2語の語数は少ないが、全て「あやしう」は、紅葉賀、賢木、須磨、澪標、蓬生、幻、紅梅、早蕨、夢浮橋である。更に夕霧、若紫が出現率が高い。
これをヒストグラムのグラフ(横軸は出現率で、表記数値の以下としている)にしてみると、「あやしう」の語数は少ないが、主体となる帖が多い事が分かる。
又、度数が、左右両極に分かれる事から、確率的に発生する誤写では無く、他の要因により異なっていると言える。