新古今和歌集の部屋

式子内親王集 百首 恋



172 沖深み釣りする海人の漁り火の仄かに見てぞ思ひ初めてし
おきふかみつりするあまのいさりひのほのかにみてそおもひそめてし
沖深き→A本

173 思ふより見しより胸にたく恋の今日打ち付けに燃ゆるとや知る 玉葉集
おもふよりみしよりむねにたくこひのけふうちつけにもゆるとやしる
思ひより→B本 思ふかり→神宮本 思ひより→三手本・岩崎本 たくたいの→A本 焚く恋を→益田本 くたく恋の→神宮本・C本・京大本、ただ恋の→河野本 燃ゆるとやする→京大本

174 哀れとは流石に見るや打ち出でし思ふ涙のせめて漏らすを
あはれとはさすかにみるやうちいてしおもふなみたのせめてもらすを
打けて→神宮本 打出でて→国会本 うちはてし→三手本 せめてもらすな→三手本 せめてもくつを→C本 さめてもらすな→春海本 せめてもしすを→神宮本 せぬてもらすを→森本

175 思ひかね浅沢小野に芹摘みし袖の朽ち行く程を見せばや
おもひかねあささはをのにせりつみしそてのくちゆくほとをみせはや
浅沢小野:摂津住吉の歌枕 あさくはをのに→A本 浅沢沼に→神宮本
本歌:芹摘みし昔の人も我がごとや心に物は叶はざりけむ(俊頼髄脳)

176 仮にだに未だ結ばねと人言の夏の野草と茂き頃かな
かりにたにまたむすはねとひとことのなつののくさとしけきころかな
夏の野草も→B本・三手本・岩崎本・京大本・神宮本
本歌:人言は夏の野草の茂くとも君と我とし携はりなば(拾遺集 人麻呂 万葉集)

177 我が恋は逢ふにも代へずよしなくて命ばかりの絶えや果てなむ
わかこひはあふにもかへすよしなくていのちはかりのたえやはてなむ

178 仮初めに伏見の里の夕露の宿りは帰る袂なりけり
かりそめにふしみのさとのゆふつゆのやとりはかへるたもとなりけり
仮初めの→春海本 伏見の→C本 舎りはかへる→三手本 やどりはかへら→京大本 袂なり→森本

179 浅ましや安積の沼の花勝美かつ見馴れても袖は濡れけり
あさましやあさかのぬまのはなかつみかつみなれてもそてはぬれけり
花の色→C本・京大本・神宮本 袖は沽けり→神宮本・河野本

180 我が袖の濡るるばかりは包みしに末摘花は如何様にせむ
わかそてのぬるるはかりはつつみしにすゑつむはなはいかさまにせむ
末摘花の→岩崎本 いとさまにせむ→B本 いとせむ→三手本

181 入りしより身をこそ砕け浅からず信夫の山の岩のかけ道
いりしよりみをこそくたけあさからすしのふのやまのいはのかけみち

182 年月の恋ひも恨みも積もりては昨日に勝る袖の淵かな
としつきのこひもうらみもつもりてはきのふにまさるそてのふちかな
恋も恨みを→春海本 つもりきては→C本 つもりきて→京大本
本歌:筑波嶺のみねより落つるみなの川恋ぞつもりて淵となりぬる(後撰 陽成院)
 世の中は何か常なる飛鳥川昨日の淵ぞ今日は瀬になる(古今 読み人知らず)

183 常磐木の契りや紛ふ龍田姫知らぬ袂も色変はり行く
ときはきのちきりやまかふたつたひめしらぬたもともいろかはりゆく
帚木の→春海本

184 猶然らば御手洗川に禊ぎせむ(闕)
なほさらはみたらしかはにみそきせむ
なほさらに→神宮本
本歌:恋せじとみたらし川にせしみそぎ神はうけずぞなりにけらしも(伊勢物語 古今 読み人知らず)

185 唯今の夕べの雲を君も見て同じ時雨や袖にかくらむ
たたいまのゆふへのくもをきみもみておなししくれやそてにかくらむ
若もみて→三手本 同じ時にや→春海本 袖に掛からん→B本・三手本・岩崎本・京大本・文化九本・国会本・河野本 袖に返らむ→春海本

186 黄昏の荻の葉風にこの比の訪はぬ習ひをうち忘れつつ
たそかれのをきのはかせにこのころのとはぬならひをうちわすれつつ
打ち忘れけむ→春海本・文化九本

参考
式子内親王集全釈 私家集全釈叢書 奥野 陽子 著 風間書房
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