新古今和歌集の部屋

式子内親王集 百首 冬



157 神無月風に任する紅葉葉に涙争ふ深山辺の里
かむなつきかせにまかするもみちはになみたあらそふみやまへのさと
涙を洗ふ→C本

158 冬の夜は木の葉隠れも無き月の俄に曇る初時雨かな
ふゆのよはこのはかくれもなきつきのにはかにくもるはつしくれかな
無き月を→森本

159 幾返り託言に付けて村時雨外山の梢染め廻るらむ
いくかへりかことにつけてむらしくれとやまのこすゑそめめくるらむ
ことだにつけて→益田本・B本・三手本・C本・京大本・森本・国会本・河野本・春海本 染め廻るらむ→岩崎本・三手本

160 冬来ては深からねども起きてみる朝の原は霜枯れにけり
ふゆきてはふかからねともおきてみるあしたのはらはしもかれにけり
ふふらぬとも→C本 ふりしらねども→春海本 朝の原も→森本 霜枯れにける→A本・京大本 霜は枯れにけり→C本

161 廻り来る時雨の度に答へつつ庭に待ちとる楢の葉柏
めくりくるしくれのたひにこたへつつにはにまちとるならのはかしは
夜半に待ちとる→B本・三手本

162 頼みつる軒端の真柴秋暮れて月に任する霜のさむしろ
たのみつるのきはのましはあきくれてつきにまかするしものさむしろ
霜のさびしろ→春海本

163 旅枕伏見の里の朝朗け刈田の霜に鶴ぞ鳴くなる
たひまくらふしみのさとのあさぼらけかりたのしもにたつそなくなる
刈田の雪に→三手本・B本

164 解けて寝ぬ夜半の枕を自づから氷に結ぶ鴛鴦ぞ言問ふ
とけてねぬよはのまくらをおのつからこほりにむすふをしそこととふ
夜半のまえらは→C本

165 落ち滾つ岩切り越えし谷水も冬は夜な夜な行き悩むなり 新勅撰
おちたきついはきりこえしたにみつもふゆはよなよなゆきなやむなり
岩切りとをし→B本・三手本 岩切り越えし→文化九本 谷水に→森本 行き悩むらむ→春海本
本歌:天つ風雲のかよひぢ吹きとぢよ乙女の姿しばしとどめむ(古今 宗貞(遍昭))

166 雲の上に乙女の姿暫し見む影も長閑けき豊明かりに
くものうへにをとめのすかたしはしみむかけものとけきとよのあかりに
しましみむ→森本 影に長閑けき→春海本

167 然らでだに思ひの絶えぬ冬の夜の松風吹きぬ霰乱れて
さらてたにおもひのたえぬふゆのよのまつかせふきぬあられみたれて
さしてだに→国会本 松風更けぬ→益田本

168 霜置きて猶頼みつる小屋の蘆を雪こそ今朝は枯れ果ててけれ
しもおきてなほたのみつるこやのあしをゆきこそけさはかれはててけれ
にやの葦を→C本・神宮本 雪も朝は→三手本 枯れ果ててけり→B本 刈り果てにけれ

169 高砂の松の梢の雪折れを谷の庵に聞き明かすかな
たかさこのまつのこすゑのゆきをれをたにのいほりにききあかすかな

170 今朝の雪に誰かは訪はむ駒の跡を尋ぬね人の音ばかりして
けさのゆきにたれかはとはむこまのあとをたつぬるひとのおとはかりして
今朝の雪を→森本 誰かはとみん→春海
本説:韓非子 説林上 管仲随馬

171 せめて猶心細きは年月のいるか如くに有明の空
せめてなほこころほそきはとしつきのいるかことくにありあけのそら
有明の月→春海本
本歌:梓弓春たちしより年月のいるがごとくも思ほゆるかな(古今 躬恒)

参考
式子内親王集全釈 私家集全釈叢書 奥野 陽子 著 風間書房
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